うざぁ
「この娘は俺の仲間だ、余り敵意を向けないで貰いたい!」
今にも掴み掛ってきそうな連中を注意する。ったく、ウザい連中だ。
正直なところ、この場にいる全員で襲われても燿子が負けることはない。何故なら今の燿子は滅狐の時より強くなっているからだ。
《種族:白色九尾
名前:燿子 加護:獣母 ランク:S レベル:1(自己再生、主人登録)
称号:Sの壁を越えし者(+全能力補正・大)
称号Ⅱ:冥神の使徒(+半神化)
魔術適性:大気、大地、回復、空間
信仰魔法:冥神プルート、獣母神エキドナ
種族スキル:【大霊力】【九尾狐火】【不滅】【幻影】【変化】【感知】【遮断】【冷気】
固有スキル:【獣聚蟲卒】【夢幻泡影】
上級スキル:【地脈吸収】【霊魔障壁】【体術之才】
スキル:【獣体術】【俊足】【飛翔】【吸収効果上昇】》
俺の鑑定能力が低下している為、能力値を数字化出来ないが、反則級の強さになっているのは分かる。
まず、加護が追加されてる。【獣母】は自らの力だけであらゆる獣種族の子を生すことが出来るらしい。
次に称号【冥神の使徒】は【半神化】を得る。半分神になれるんだ、つまり神気を扱えるようになる。
いつの間にか魔法が使えるようになってるし、【夢幻泡影】が追加されている。
コレは実態を持たない精神生命体とも言える状態になれ、影に溶け込むことも可能となるスキルだ。一切の物理攻撃は意味を成さなくなる。魔術程度なら無効化し、これを破るには魔法か精神攻撃に限られる。
後は【気配感知】や【気配遮断】は限定されていた“気配”の文字が消え【感知】【遮断】に。【狐火】と【冷気】が操れるようになった。
体術の才能も上がり、彼女を傷つけれる者は、森から出た時点でほぼ居ないと言っていいだろう。
かくいう俺は逆に弱体化している。
《種族:神魂・神、肉体・人
名前:女神・文月(神名:プルート)
加護:絶対神力(使用制限) ランク:B
称号:女神流・継承者(+能力暴昇)
称号Ⅱ:神の創りし肉体(+本体接続)
称号Ⅲ:呪体(+本体接続不能)
状態:万を超える呪い(弱体化・極大)
神格(不能):冥神、豊穣神、剣神
神能・魔法:使用制限
限界スキル:【名前付与】【名前破壊】【レベル概念付与】【自動知識収集】【亜空間】
固有スキル:【天譴】
上級スキル:【武芸之才】
スキル:【身体強化】【思考加速】【再生】【偽装隠蔽】》
まぁ、元々のステータスを知らないから、どれだげ弱っているのか分からない。
神であるプルートは健在で影響を一切受けてないからその辺は安心している。
何だか知らん間に知識が増えていたのは自動知識収集のお陰だったらしい。初めて知った新事実だわぁ。
おっと、分析している場合ではなかったか。未だにぎゃいぎゃい騒ぐ連中に辟易するも、無視することは出来ない。が、そこにある男が喝を入れる。
「黙らんかっ!時間が無い時に何を言い争っている!」
この場で最も威厳に満ちた男の怒声に、皆が呑み込まれたように静寂が訪れた。このおっさんが国王だな、他とは放つ覇気が違う。
「ミネルヴァ、その男は何者だ。其奴の抱く魔物は何だ。説明せよ!」
「はっ、彼は名をフヅキと申します。我々が強狂怖大森林にて苦戦を強いられていた時、颯爽と現れ助けてくれた御仁です。この魔物はフヅキ殿の仲間で、決して我等に敵対するものではありません」
団長さんが俺との出会いのことを大まかに話始める。
古竜騎士団の面々が魔物の群れに襲われている所に出くわし、そこから団長さんの救助に向かい、テュポーンの欠片との戦闘まで話した。だが、上手いこと都合の悪い事や、燿子が滅狐だったことを逸らかしてくれた。感謝!
「ふむ、俄には信じられんな。お前程の者が手も足も出ない相手に、其奴は単独で勝利したとは……」
そこに厳つい兄ちゃんが口を挟む。
「陛下、幾ら手なずけられていようと魔物は魔物、放置していい存在ではないでしょう。先程の話も真実かどうかなど分かりません、ミネルヴァ殿の作り話と言う線も考えられましょう。更にこの男がミネルヴァ殿より強者という点も疑問があります。私の見たところ、この男はBランクが関の山。ましてAランクであるミネルヴァ殿を上回る敵を単独で倒すなど不可能と断言できます」
「エナス殿、私が嘘の報告をするとお思いか!虚言を吐く意味など何処にもない!」
今度は団長さんとエナスとやらの言い争いが始まった。更に金髪美女も言い争いに参加し始めた。彼女は団長さんの味方をしてくれているようだ。
ふむふむ、名前はヴィクトリアで団長さんの義理の姉ですか。なるほど実兄の嫁さんね、おお、団長さんと同等の実力者とは中々に凄い。
ええっと、エナスとやらもAランクか、だが、確実に二人より劣っている。自益優先の男と聞いていたが、聞いたままの性格をしてそうだな。一言で言うならヤナ奴ってことだ。
と、早く次に進まないかなぁ。聞いてて気分のいい物じゃないし、次に移ってくんないかな。
こんなことならセシャト達に燿子を預けてくれば良かったよ。魔物がこんなに忌避されてるなら最初に言っといて欲しかった。
燿子の戦闘力を考えて連れて来たのが間違いでした。キララと一緒に預ければ問題なかったもんな。現にキララは今、受肉させセシャト達と団長さんの館に居る。
初めて会わせた時は突然現れたキララにビックリしてたなぁ、見ていて面白かったよ。
何気に燿子は竜騎士団の面々に人気があったりする。よく触らせてくれと頼まれ、わしゃわしゃされている姿を見ることが多い。気持ちいいんだよ、ふわっふわっの毛並みが癒しを与えてくれるんだぁ。
それに子狐サイズがまた可愛いのよっこれが!キュッキュッ鳴きながらわしゃわしゃされてる燿子はたまりませんよ。
「……は?」
って、現実逃避している間に偉いことになってました。
「え?」
兵士に引きずられ、
「あれ?」
地下牢の檻の中!
「なんでだぁ————!!!」
ちょ、え、あれ?あれぇ?何でこんなことになってんの?嘘だろ、ちょっと思考の中に浸ってただけで投獄されてんだけど?
キュッと首を傾げ俺を見上げる燿子の姿を見て少し安心する。良かった、燿子もいる。
魔物を危険視しての投獄だろうけど……、こんな檻など容易くぶち抜ける。こんな稚拙な檻では燿子はおろか今の俺でも破れるんだけどいいのか?
いやいや、勝手に出たら団長さんに迷惑が掛かるから暫く此処でのんびりしようかな。
食料や飲み物なんかも亜空に仕舞い込んであるし、一通りの武具も持ち込んでいる。
レヴァンや燭台切光忠等の初期の武装はペティ・シオンに送ってあるが、普段使いの必需品は個人用の亜空間に常備してある。
黒蝶の衣服や玉龍鬣の外套などはペティ・シオンの大蔵大臣に突っ込んでたりする。
大蔵大臣は元亜空修繕箱の小箱ちゃんだったけど、今は立派な巨大な蔵屋敷になっている。レベルも上がり無機物だけでなく、内包する全てを復元するようになった。怪我も治っちゃうんだぜい。
それだけでなく、なんと!入れた物の複製品を勝手に作り出す能力にまで目覚めた超優れものなのだよ。
魔法が付与された物や意志ある物は複製出来ないが、レタスの葉なんかを入れておけば修復し、量産してくれるのだ!
収納環も入れてある。装備してから外せなかった収納間だが、中身を全部取り出せば外すことが出来た。空間転移って手もあったけどね。ってな訳で色々と量産してるんだ。量産したものを俺の亜空に放り込んでるわけだよ。そういう事で暫くは餓死する事も無いし、のんびりしてても良いかなぁって思ってるのさ。
カツカツカツカツッ————
誰かが急いで近付いてくる足音がする。
「フヅキ殿」
慌ててやって来たのは団長さんでした。
「申し訳ありません!まさか、有無を言わさず投獄するとは思いも寄りませんでした。なんとお詫び申し上げればよいか分かりません。誠に申し訳ありませんでした!」
深々と頭を下げる団長さんに、返ってコッチの罪悪感が芽生えてしまう。
「私は余りにも迂闊でした、少し焦りがあったようです。都市の内部に魔物が入った事は今までになかったのです。それをフヅキ殿に伝え忘れるとは……、これは大きな失態です」
気負い過ぎだなぁ。仲間とは言え魔物の燿子を考え無しに連れて来た俺にも責任がある。
何せ少女騎士達の間で可愛がられている姿を見たら、警戒も薄れてしまうのも当然だろう。
「気にしてないから頭を上げてくれ、俺も燿子も無事だし問題無いよ。問題があるとしたらキララだ。どう動くかが心配だから団長さん、会ったら下手に動くなって釘を刺しといて。俺の名前を出せば言う事聴くと思うから」
「分かりました。此処から直ぐにお出ししますので、暫しの間辛抱願います。私だけの力では陛下の許可が頂けませんので、妃殿下を頼ろうと思います」
解放するには国王の許しが必要になる。
「ああ、無理しなくていいよ、俺は暫く此処でのんびりしようかと思う。整理しときたいこともあるし、出たい時は自力で出るから無茶は止めてくれよ」
「この牢は魔法師による結界となっております。魔術やスキルといったものは一切使用を封じられております」
「ウソッ!」
驚き亜空からあんパンを取り出す。あれ?普通に取り出せたぞ?
「使えるけど……。はい、これあげる」
「……」
無言であんパンを受け取る団長さん。あれ?何か不味いことした?
「……あ、有難うございます。これは?」「パンだよ。美味いから食べてみ」「は、はぁ、お、美味しい!」
なんてやり取りをして、ハッとした団長さんが、「え?何で?」的な顔をした。
「どうも、結界は弱ってるみたいだね。俺が出てから修復した方がいいね」
適当に誤魔化しを入れておいた。
「衣食住の衣食は問題ないから、俺のことは心配無用だ。そうそう、会議の方はどうなったの?」
「はい、あれから暫く騒然としましたが、陛下が収めてくださいました。ですが、私はそのまま此方に来たのでその先の事までは分かりません。正直なところ、あのように纏まりのない国では、帝国には勝てません」
「まるで連携が取れなさそうだな、ここの連中は。まさかとは思うけどこのまま突っ込まないよね」
「流石にそれは無いと思います」
「うん、そうだよな。……さて、そろそろ戻った方がいい。いつまでも居たら怪しまれるかもしれない」
「はい、では、私は戻ります。必要な物が有れば何でも仰って下さい。直ぐに用意しますので。看守には丁重に扱うよう頼んでありますのでご安心下さい」
スキルの使用を実際に見せたお陰か、団長さんは申し訳なさそうにしていたが、素直に戻っていった。
「さて、俺はどうしようかなぁ。ねぇ、わしゃわしゃわしゃー、燿子は気持ちいいなぁ」
「キュキュッキュキュッ」
お腹を触ると燿子は喜んだ。可愛いなぁもぉ~。
これからの問題としては、俺達、特に燿子の扱い方だ。団長さんはああ言っていたが、もし乱暴されれば命がない、……乱暴した奴のな。かと言いて逃がせば騒動になるのは必至、夢幻泡影で姿を消すことも問題だ。この場はスキルや魔術が封じてあると言っていたからな、下手に姿を消せば訝られる。
……まぁ、何とかなるか。戦争に突入するらしいし、どさくさに紛れて逃げちゃおう。
俺は混乱が生じるまでの時間、のんびりと燿子におやつをあげ、ブラッシングを楽しみ、わしゃわしゃして癒され充実した時間を牢獄で過ごすのだった。




