第九話 送った手紙
「手紙だー!」
郵便受けを開けたらツバサからの手紙が入ってた。
冒険者になったこと、仲間が出来たこと、強くなれたこと。
色々書いてあったけど、一番嬉しかったのは最後に迎えに行くって書いてくれたこと。
「いつかな? すぐだと良いなぁ」
はやく迎えに来てほしい。会いたい。
「仲間ってどんな人たちだろう? もしかしたら女の人とかもいるかも……」
それはちょっとヤダな。
「でも、迎えに来てくれるって言ってたし、大丈夫だよね。うん!」
ツバサを信じて待とう。そうしよう。
「ミコトー、食事会に行くわよー」
「はーい」
手紙を大切に仕舞う。
「食事会かぁ……」
またヒエンくんと顔を合わせなきゃ。
§
ツバサと最後にあった門を潜り抜けた先がアマジキ家。
「やあ、こんにちは」
「こ、こんにちは」
ヒエンくんに挨拶をしてお母さんの後ろに隠れる。
「ははー、嫌われてしまったみたいで」
「そんなことありませんよ。ね? ミコト」
「う、うん」
ヒエンくんはいつも通り、お母さんとお父さんの前ではびっくりするくらい人がいい。
でも私は知ってる。それはただの演技で、本当はすっごく怖い人だって。
ツバサを虐めている時の怖い顔が、ヒエンくんを見るたびに頭に浮かぶ。
兄弟なのにツバサとは大違い。
いやだなぁ。ツバサもいないし、はやく帰りたい。
「あら、どうしたの?」
知らないうちに足が止まってた。
「えーっと」
とにかく足を前に進めたくなくて、言い訳を考える。
「あ、そうだ。おトイレ!」
「こら、ミコト! はしたない!」
「ごめんなさーい! 行ってきまーす!」
ヒエンくんから逃げるみたいに小走りに廊下を進む。
何度も来たことがあるから、道順はわかってる。
トイレで時間を潰して、ご飯を食べたらすぐに帰ろう。
「――厄介――った。――ツバサが――を――かも知れん」
「ツバサ?」
ふとツバサの名前が聞こえて足と止めた。
廊下の角からそっと見てみると、誰かが話してる。
「あれは……」
そう、ヒエンくんといつも一緒にいた大人の人。
たしかシゲノリさん、だっけ。
「面倒ごとは回避したい。ダンジョンで始末しろ。なに、新人冒険者が死んでも誰も不自然に思わん――ん?」
シゲノリさんがこっちに向くのを見て、すぐに身を隠す。
「どうかしましたか?」
「……いや、なんでも。では、手はず通りに」
「はい」
壁にもたれて息を大きく吐く。
「……伝えなきゃ」
ツバサが殺されちゃう。
§
ギルド、キメラジーンの食堂にて。
「二人に頼み事がある!」
そう言ったバリーはやけに深刻そうな顔をしていた。
「ど、どうしたんですか? 急に」
「実は事情があって、まとまった金が必要になっちまったんだ」
金か。
「貸すのはいいけど、そんなに持ってないぞ」
持ち出せた金は少ないし、サラマンダーの素材で得た金の残りも多くない。
「そいつはありがたいけど、違うんだよツバサ。いくら金に困っても仲間から借りるようになったらお終いだ。そうじゃなくてこの後の仕事で第三階層に行くだろ?」
「そうですね。鉱石採掘場に魔物が出たというので」
「あぁ、その魔物の素材の一番価値のある部位を俺に譲ってほしいんだ。それでなんとか事態は収まるんだよ。頼む、この通りだ!」
机を割るような勢いで頭を打ち付けたバリー。
どうやら本当に切羽詰まっているみたいだ。
「セレナ」
「はい」
顔を見あわせて頷き合い、答えを出す。
「顔を上げろよ、バリー。譲るからさ」
「ほんとか!?」
「ただし、後でちゃんと訳を聞かせろよ」
「ああ、ありがとう! この借りは絶対に返すぜ!」
バリーの頼み事を聞き入れ、席を立って食堂をあとにする。
その足でダンジョンへと向かい、第一の森と第二の砂漠を越えて第三階層を目指した
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