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第六話 ギルド【キメラジーン】


「あぁ、よかった! 一時はどうなることかと」


 そこで保護した子供を作業着姿の父親が抱き締める。

 涙を流す様子からは本物の愛情を感じられた。

 これが親子の本来あるべき姿なのだろう。

 そう思った。


「いやー、助かったよ。マジで」


 そう胸を撫で下ろしたのは、この伐採場を護衛する冒険者の一人。

 彼の後ろには作業着を着た人たちと、数人の冒険者がいる。


「大事な雇い主を失うところだった。まさか作業場から抜け出すとはね、子供の行動力ってのは凄いねぇ」

「そういう事情だったんですか」


 第一階層に子供が一人でいるわけないと思っていたけど、これで状況が把握できた。

 たぶん伐採重機に乗せてやろうと、子供を連れてきてしまったのだろう。


「キミ達どこの所属なんだい? あとでお礼を言いに行かないと」

「ああ、いえ。俺たちはまだどこにも」

「あれ、ほんとに? そっか、もう新人が入ってくる時期かぁ」


 そう話していると後方からまた別の冒険者たちが戻ってくる。


「よう、レイン。子供が見付かったって?」

「あぁ、この子たちだ。無所属の新人くんたちだ」

「そりゃいい。俺たち全員、新人に救われたな」


 笑い声が響く。


「まぁ、それはそれとして帰ってくる途中でサラマンダーの亡骸を見たぞ」

「嘘、マジ? あっぶねぇ。大火事一歩手前だったな」

「だろ? 鳥が止まってたから誰かが討伐したんだろう。そっちにも新人と同じくらい感謝しないとな」

「あの」

「ん? どうした?」

「それ、俺たちです」


 二人は顔を見あわせ、再び俺たちを見る。


「え? まさかキミ達がサラマンダーを?」

「おいおい、階層上がりを無所属の新人が? 冗談だろ」


 そう言いつつ俺たちの周りを回り出す。


「あぁ、でもそうだな。たしかに痕跡が残ってる」

「この臭いに服の焦げを見るに、間違いなさそう」

「ってことはだ」

「あぁ、そうだね」


 二人は再び顔を見あわせ、こちらを見る。


「キミ達! 僕たちのギルドに入らないかい?」


§


 ギルド、キメラジーン。

 親父が所属する酒呑童子に勝るとも劣らないトップクラスのギルド。

 実質、酒呑童子との二強と言ってもいい。

 所属するギルドを決めかねていた俺たちはとりあえず話を聞きに向かった。

 そしてギルドマスターであるアルベスさんと面談することとなる。


「やぁ、優秀な遺伝子諸君」


 遺伝子?


「キミ達はキメラを知っているかな?」

「色んな生物の特徴を持っている魔物、ですよね?」

「その通りだ。我々はこのキメラに習い、優秀な遺伝子。つまり人材を集めている」


 あぁ、だから俺たちのことを遺伝子って。


「まぁ、どこでもそうだが、我々は特にその傾向が強い。コネも金も通用しない完全実力主義だ。そんな我々の仲間がキミ達をスカウトしたのなら優秀に違いない」


 銀色の髪を揺らして、彼女は立ち上がる。

 赤い瞳に見据えられ、思わず姿勢を正した。


「是非、キミ達の遺伝子を提供してくれ。そうすれば我々は更に強い存在になることができる。そう、キメラのようにね」


 そう言われて俺達は顔を見あわせる。


「俺は構わないぜ。酒呑童子にも誘われてるけど、こっちのほうが性に合いそうだ」

「わ、私は所属できるならどこでも文句はありません」

「そっか。なら、決まりだな」


 三人でアルベスさんに向き直る。


「俺たち三人とも、アルベスさんの世話になります」

「期待通りのいい返事だ。キミ達と一つになれたことを嬉しく思う」


 こうして俺達はギルド、キメラジーンに所属することになった。


「早速だが、キミ達に仕事だ」


 書類がふわりと浮かび、俺達の手元にくる。


「第二階層で依頼人が立ち往生している。彼らを地上まで護衛するのがキミ達の役目だ。活躍を期待しているよ」

「はい!」


 俺たちは席を立ち、その場を後にする。

 所属ギルドも決まり、冒険者としての一歩を踏み出した。

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