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第十一話 指名依頼


「よう、新人! また手柄を立てたってな」

「期待の大型ルーキーの登場ね」

「うかうかしてるとあっという間に追い抜かされちまいそうだ、あははっ」


 キメラジーンのエントランスを歩いていると先輩冒険者たちから声が掛かる。

 ほかにも色々なところから反応があった。


「な、なんだか注目されていますね」

「そりゃそうだろう。まさに破竹の勢いって奴だしな、俺たち」

「まぁ、立て続けに依頼を達成してはいるけど……」


 ついつい周囲の先輩たちに疑いの目を向けてしまう。

 ミコトからの手紙にあった刺客のことが気に掛かるからだ。

 このキメラジーンにも刺客が潜り込んでいるかも知れない。

 金もコネも通用しない実力主義ギルドとあって、ここから新たな刺客が入ってくる可能性は低い。

 けれどすでに所属している者がいれば話は別だ。アマジキ家の者が入り込んでいる可能性がないとは言い切れない。

 今もどこからか俺の命を狙っているかも。

 そう考えると何もかもが怪しく見える。

 注目されてることにも警戒してしまっていた。


「そのうち指名で依頼がくるかもな」

「俺たちにそこまでの知名度はまだないだろ」


 そんな話をしていると。


「おーい、新人。マスターがお呼びだ」


 ギルドマスターのアルベスさんに呼び出された。


「キミ達の活躍には目を見張るものがある」


 ギルドのマスタールームにて、アルベスさんが愉快そうな笑みを浮かべていた。


「階層上がりのサラマンダーを討伐したと聞いて、新人にはキツい依頼を割り当てたつもりだったが、キミ達はそれを見事に乗り越えた。キミ達はよくやっている。正直、驚いているよ」

「あ、ありがとうございます」

「それで、だ。そんな優秀なキミ達にいい話が来た」


 ふわりと浮かんだ書類が手元にくる。


「キミ達宛ての指名依頼だ」

「俺たちに?」

「あぁ、どこかで噂を聞きつけたようだ」

「ほらな、二人とも。俺の言った通りだぜ!」

「ほ、本当に指名されちゃいました」


 喜ぶバリーに、驚くセレナ。

 その様子を横目に思案する。

 このタイミングで指名依頼はどう考えても怪しい。

 人を殺すならダンジョンがもっとも適している。

 誘い込んで罠に掛けられるかも知れない。


「いいか? これはキミ達の評判を信じた指名依頼だ。何があっても信頼を裏切るな。キミ達の行動如何ではギルドの印象すら大きく損なわれる。そのことを肝に銘じるように」

「はい!」


 とはいえ、依頼を断る訳にはいかない。

 たとえ罠だとしても冒険者になったからには依頼を遂行しなければ。


「よし、すぐに準備だ!」

「わ、忘れ物をしないようにしないと」


 部屋を出て張り切る二人の後ろを追い掛ける。

 その足取りは二人とは違って重いものだった。


§


「お手紙、届いたかな?」


 私の魔法で折った紙飛行機だから大丈夫だと思うけど心配だな。


「私にもっとなにか出来たらいいのに」


 ベッドに倒れてすこし背中が跳ねた。

 天井を見上げて頭の中をぐるぐるさせる。

 ツバサのために何が出来るだろう?


「あ、そうだ!」


 飛び上がって魔法で紙を折った。

 私の固有魔法は折神おりがみ、折った紙に命を吹き込める。

 山折り、谷折りを繰り返して出来上がったのは一羽の小鳥さん。

 小さな翼をぱたぱたして私の肩まで飛んできた。


「あははっ、よーし!」


 部屋の窓を開けて小鳥さんを外へと離す。


「行っけー! アマジキ家に潜入だー!」


 折り紙の小鳥さんを通して情報収集すればツバサの役に立てるかも。


「待ってて、ツバサ。私も手伝うから!」


 空へと飛んでいった小鳥さんは風に乗ってアマジキ家に入る。

 見付からないように慎重に潜入しなきゃ。

 

§


 準備を整えて第一、第二、第三階層を越える。

 第四階層、遺跡。

 滅びた街が、俺たちを出迎えた。

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