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オモイデバナシ  作者: 星河弘郎
第1章 ハジマリハジマリ
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出会い-7

「何をしている!!こんな事も出来ないのか!?これじゃあそこら辺のフリーターを雇って任せた方が全然効率的だ!!」


「す、すみません…!」


「すみませんじゃ済まないだろう!?ダメだダメだこいつ!おい!高橋君!こいつの代わりにこの案件は君が代わってくれ!」


「でたよ…部長のいびり。かわいそ…。」


「助けたらこっちにもとばっちりくるからね…。」


「お前は明日からそこら辺の掃除とお茶配りでもしてろ!!ったく、これだから無能は困る。下がれ!!」


「…ねばいいのに。」


「ん…?なんだ!?何か言ったか!?」


「い!いえ!何も…。」



【死ねばいいのに】




「マジキモい無理。何あのキモオタ、何で生きてるわけ。」


「絶対将来なんの役にもたたないよな。」


「あれで頭も悪いから救いようないよね。ウケるー。」


「人生の到達点見えてるわー。あははは。」


大きく響く声に、俯くその人は何も言い返さない。



【死にたい】




「フェーズ4です。長くてもあと半年…でしょう。」


「そんな…!先生!なんとかならないんですか!?」


「…申し訳ない。現在の治療法では、残念ながら。抗がん剤で症状を緩和することはできますが、しかし根本的な治療はもうできない状態です。」


「そんなぁ…。あなた…。」

悲壮な表情で涙を滲ませるその女性は、主人に抱きつき、彼の胸の中でその顔を酷く歪ませる。

頭の中で、遺産を何に使うかの算段がすでに始まっていた。



【早く早く早く死ね】



パワハラス、いじめ、病。

人が死を想う原因に、これらはほんの一例であり、本来ならばこんな想いが重なり想現の有が顕現することは稀である。

それは、同時に人は『生きたい』と『本気で他者の死を想うことが少ない』を胸の内に抱えるからだ。

しかし、悠真の住む都市はバツが悪かった。

都会・都心・豊かな経済圏から大きく外れたこの都市は、経済的問題からの就職難、娯楽の少なさから来るストレスの加速と蓄積、閉塞的な地域性、社会問題や人間の悪意など、人が明るく生きていくのにマイナスになる多くの要因がそれを後押しした。


ありとあらゆる『死』への想いが、この駅を中心に運ばれ、集まり、募った。

自分に対して、他者に対して、大なり小なりの想いが長い時間をかけて形になる。

そして形には、色がつき、意思が宿る。

意思を持ち、それを願った主人の代わりにそれを叶え、叶えようとし、叶った。


それが悠真を襲い、優雨に斃された想現の有である。

仮に『メメント・モリ』と名付けるには、あまりにも愚かで、悲惨な存在は、生きることの希望や喜びは知らず、他者に死を撒き散らし、与えられた死に対して、やっと光を見れた。


死を想い、死を与え、死を望んだ、名もなき哀れな怪物。

いや、愛さなければならない『想い』。


それを悠真と優雨は予測ができても、事実として知る術はもう無い。


またいつの日にか顕現するであろう、彼又は彼女が、同時に願われた『生きたい』に気づき、その時『メメント・モリ』であることを願うばかり。



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