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第95話 椅子は異世界で仲間を守る

テンプレ的な。

-魔族シェリー視点-


いつの間にかマリー様がケイトを連れてきていたわ。


「じゃあケイト。色魔法の伝授をするから私の部屋に来て」

「自分の部屋に?シェリーはケイトに高速伝授をするつもりなのかしら?」

「いえ、時間がかかるので部屋でゆっくりとやろうと思いまして」


ケイトがマリー様にこれ以上手を出せないように『念押し』するのをマリー様に見られるわけにはいかないわ。


「それならもういいのよ。ケイトに低速伝授はできないってわかったから。種族が遠いと無理なのよ」

「人間でもできるはずですが…椅子だから?!」

「そうね。だからシェリーに無理はさせないわ」


よかったわ。

ケイトとキスなんてごめんですもの!


「今からケイトと武具屋に行くけど来るかしら?」

「もちろんです」


マリー様に危害を及ぼすような奴はそうそう居ないだろうけど、マリー様の忠臣としてなるべく側に居ないと。




武具屋では武器や防具の種類だけでなく大きさのチェックをしているみたいね。


「刀の装備に合う和装もあるけどサイズがクリス様に合わないな」

「そうね。あの身長であの胸の大きさでは無理そうね」

「刀も長すぎるかな?いや、長いのは異次元箱から取り出せばいいか」

「とっさに使うのは身に付けていた方がいいから、ちょうどいい長さがいいわね。居合いもするのでしょう?」

「マリーは居合いって知ってるの?」

「ええ。配下にそういう技を使う者が居たわ」


二人で話が盛り上がっているのが気に入らないわね。


それにしても、高速伝授しかできないってことは、もうキスをするしか方法がないのよね。


それとも、もういくつかの色魔法の伝授はすましたのかしら?


「じゃあそれで」

「買う楽しみが減るのは仕方ないわね」

「それは普通の服とかで楽しんだらどうかな?」

「じゃあそういう店にも行きましょうか」


マリー様ったら楽しそうね。


もしかしてマリー様とケイトを引き離そうとする事自体が間違っているのかしら?


そもそも私ってマリー様に必要とされているのかな?


もしかして、私なんか居なくてもいいんじゃないかしら?


その方がマリー様が幸せかもしれない。



「シェリー」

「あ?はい、マリー様。何でしょう?」

「何か考え事してるの?次の店に行くわよ」

「わかりました」


駄目だわ。

ちゃんとマリー様の話を聞いてないと。



-元魔王ブラッディマリー視点-


ぴろん


目の前に居るのにケイトからのメール?


ケイト『シェリーの様子が何かおかしくありません?』

マリー『何だかぼうっとして、考え事してるみたいなのよ』

ケイト『心当たりあります?』

マリー『わからないわ』

ケイト『あんまり気になるようなら『神託の王座(オラクルスローン)』を使います?』

マリー『まだいいわ』


ケイトったらシェリーの心配もしてくれるのね。

シェリーはその優しさに気づかないのかしら?





「普通の服屋ならクリス様たちが着れる服がたくさんあるみたいですね」

「サイズの合う和装もあるけど刀を使うための作りではないわね」

「普段着のショッピングだけでもクリス様たちは楽しんでくれるからいいですよ」

「あそこにはアクセサリーもあるわね」

「早く稼いでみんなに買ってあげたいな」

「特にクリス様にでしょう?」

「もちろんです」


ちょっとだけ羨ましいけど、もう妬いたりしないわよ。



-魔族シェリー視点-


マリー様、楽しそうね。


私の事なんか、視界に入ってないみたい。


「マリー様、ちょっと店の外で待っていていいですか?」

「いいわよ」


別に私が側に居なくてもいいわよね。



店の外に出ると冒険者らしい3人の男たちがこちらにやって来たわ。


「君はこの前冒険者ギルドに来て登録してた子だよね?」

「やっぱりそうだ」

「ちょっといいかな?」


誰かしらこの男たち?


「連れの女性は?」

「今一人なの?」

「良かったら、俺たちの仲間にならないか?Dランクパーティなんだぜ」

「遠慮するわ」

「Fランクなんだろ?俺たちと一緒の方がいいって」


しつこいわね。


「Fランクだけど、あなたたちより強いから困らないわ」

「もしかして異世界から来たのか?」

「奇遇だな、俺たちもさ。だからDランクだけど本当はもっと強いんだぜ」


とてもそうには見えないわね。

うっとうしいけど、店に戻ったらマリー様に絡みそうで嫌だわ。


「放っておいてくれるかしら?」

「つれないねえ」


3人の男たちは私を囲むように動く。


しかしこの街中で派手なことはできないはず。



うっ!



なっ、体が動かない?


状態異常にはなってない?

まさかこの位置関係だけ限定の束縛スキル?!


「あれ?調子でも悪くなった?」

「仕方ないなあ。俺たちの泊まっている宿に連れていくか」

「じっくり介抱してやるよ」


こんな初歩的な罠にかかるなんて!

や、いや…声が出ない。


そうだ!内蔵品のメールで!


でもマリー様に助けてもらったら、ますます私はマリー様の足手まといだわ。


「じゃあ行こうか」


いやっ!触らないで!


バチッ


私に触れようとした男の手がふいに弾かれる。


「な、何だ?」

「防御魔法?どこからかけた?」

「仲間が居るのか?まさか連れの女か?」

「あれはものすごい美女だったからな。よし、そいつも連れていこうぜ」

「うまくここに誘い込めるか?」

「無理なら逃げるだけさ」

「ここは治安がいいが、現行犯以外では証拠がない限り捕まらないからな」

「さて、早く姿を表さないかな?子猫ちゃん」


マリー様!来ては駄目です!


ぴろん


ん?まさか、マリー様?

そうだ、来ないように連絡を…ケイトから?


ケイト『回りの男3人に絡まれてるのか?』

シェリー『そうよ。私が何とかするから、マリー様を来させないで!』


からん


店の扉が開いて、ケイトが一人で出てきた。


え?一人で?


そして私を見もしないで男たちの横をすり抜けようとする。


「あれ?こんなところに何か落ちてる…あっ!宝石だ!」

「何だと?!」


ケイトが拾い上げたものを見る3人。


「誰かの落とし物かな。届けにいかないと」

「それは俺のだ。返せよ」

「そうですか。はい」


男が差し出した手に宝石を載せるケイト。


「…」

「は?何だって?ほうっ!」


男は口から泡を吹いて倒れる。


「え?その宝石って呪われているんですか?」

「おいっ!しっかりしろ!」

「馬鹿っ!位置を変えるな!」


体が動く!


「はあっ!」


私は一瞬で二人の鳩尾に突きを入れる。


「あがっ」

「うごっ」


この一撃で昏倒しないとかしぶといわね。

確かにDランクより上って言うのは認めてあげるわ。

性格は最低ランク

だけど。


「それ以上やると衛兵が来るから、あとは俺に任せて」


ケイト、男たちの体に触れて何をする気?


「おい、今度俺の大事な仲間に手を出したら…」

「はがっ!は、腹が焼けるっ!」

「ぎゃあああっ!う、うええ!」


何だか血のようなものを吐いてるわ。


「失せろ」

「は、はひっ!」


倒れた男を引きずって逃げていく男たち。


「マリーは試着中だけど、そろそろ戻らないとな。この事は言わない方がいいだろ?」


な、何私なんかに気を使ってるの?


「シェリーが居ないと心配だから中に戻ろうよ」

「あんたに心配されなくても」

「マリーも心配してるからな」


えっ?


「マリーはシェリーが出ていってからずっと外を気にしていたんだぞ。だから試着している間は俺がシェリーの様子を見ていたんだけど」


そういうことね。

はあ、私って凄く馬鹿だわ。

かえってマリー様に迷惑かけてるじゃないの。


「ところで、今のって魔法じゃないわよね?」

「シェリーに触ろうとしたのを弾いたのは教わった色魔法だけど、さっきのは『昼食召喚』であいつらの胃の中に超激辛カレーを召喚したんだ」


何それ、エグいわ。


「一応食べ物だから、証拠も残らないだろ?」

「思ったより策士なのね。拾った宝石も本当はあなたのでしょう?」

「いきなりあいつらの体に触れようとしても対応されるだろうし、俺の宝石を自分のだって言うような奴なら遠慮は要らないと思ってね…しまった!宝石持って行かれちゃった」

「何を忘れてるのよ」

「シェリーが無事だったからほっとしちゃって」


宝石より私が大事だって言うの?

そんなこと言われたって、なびいたりしないんだから。

しないんだからね。


「じゃあ、助けてもらったお礼に、無の色魔法を教えてあげるわ」

「えっ?いいの?だって…」

「いいのよ!ちゃんと伝授してあげるから!」


なびいたりなんかしないつもりで、何でこんなこと言っちゃったの?


「じゃあ呪文1つだけでいいよ」

「1つとかじゃなくて全部に決まっているわ!」


どうやったら呪文を1つずつ伝授できるって言うの?

馬鹿なの?


「聞いたわよシェリー!」

「マリー様!」


襲われていたところ、見られてないわよね?


「やっとその気になってくれたのね!ケイト、良かったわね。無属性の色魔法を全部(・・)伝授してくれるって」

「マリー、そういうのはずるいと思うぞ」

「シェリー、二言は無いわよね?」

「当然です。マリー様に誓って」

「待て待て。シェリー、俺には高速伝授でも」

「ケイトは黙って。私はマリー様に誓ったことはたがえないのよ」


ぴろん


ケイト『30分キスしても呪文1つしか伝授できないから、早く間違えたとか言って!』


な、何よそれ!

そんなの聞いてないわっ!


ぴろん


マリー『どうせケイトに事情聞いているのだろうけど、無理はしなくていいのよ。でも、これから凄く時間かかりそうだから、私一人では寂しいのよね。シェリーも一緒にしてくれると、ううん、せめて側に居てくれると心強いわ。ケイトも男の子だから、何があるかわからないでしょう?』


そうなの?!

私がマリー様を守らないといけないのね!


「ケイト!30分くらいのキスなんて大したことないから!」

「シェリー、外でそんな大声出したら…」


あっ?!


はわっ!回りの人の視線がっ!


ああっ!そんな目で見ないでっ!


「はいはい。帰るわよ」


しゅんっ!




マリー様の瞬間移動で家の玄関に戻ってこられた。


良かった、恥ずかしくて死ぬところだったわ。


「じゃあ早速しましょう」

「え゛?」

「一緒にしてくれるのでしょう?」

「え、えっと」


ぴろん


マリー『さっきケイトに助けられてドキドキしなかったの?』


マリー様、見てたの?!


マリー『とりあえず借りの分だけでも返すべきよね?』


そうだけど…。


「マリー、一度帰っていいかな?クリス様が気になるから」

「えっ?わかったわ。じゃあ続きは今度ね」


ぴろん


ケイト『つり橋効果ってのもあるから頭冷やしておいて。それでもいいって思うのならお願いするから』


『つり()効果』って何?

…『つり()効果』じゃなかったの?


マリー様とケイトが転移魔法で帰っていったわ。


でも本当に馬鹿な奴ね。


魔法を覚えたいならこのままマリー様の言葉に乗っかればいいのに。


ケイトは私とキスするのが嫌なのかな?


私はマリー様みたいにものすごく綺麗じゃないし、性格悪いし、初対面最悪だったし…。


「シェリー」

「はっ?!マリー様いつの間に戻って?」

「ケイトを置いてきただけよ。あとケイトに言われたけど、大切な仲間に無理強いさせたら駄目だって」


大切な仲間か。

さっき助けてくれた時もそう言っていたわね。


「ケイトは私の事を大切な仲間って思ってくれてるのね」

「私にとってもシェリーが大切な仲間だから無理強いさせるなって意味で言われたのよ」


え?


「それに最近ケイトにかまけてシェリーの事をなおざりにしていたみたいね。悪かったわ」


ケイトって、何てお節介なの?


きゅ


あれ?胸が?


こんなことくらいで釣られたりしないわ!


きっと『つり()効果』のせいよ!


好きになんてなってないから!




-主人公ケイト視点-


俺をクリス様の世界に戻したマリーが姿を消してから、俺はがくっと膝をつく。


こ、怖かった。


何とかシェリーを助けられたけど、いつもあんなにうまく行くとは限らないよな。


柄にもなく『失せろ』なんて言っちゃったし。


万が一の時はマリーに頼れるって思っていたから少しは気が楽だったけどな。


でも、クリス様たちを守るなら、あのくらい何でもないくらいにならないと。


「ケイト、お帰りなさい」

「ディアナ、ただいま」


ディアナが抱いているルビィアの頭を撫でる。


「ルビィア、ただいま」

「きゃっきゃっ」


何だか楽しそうに笑ってる。

可愛いよな。


「ケイト、もしかして怖い目に遭った?」

「うん…ちょっとだけね」

「無理はしないで…ってするわよね。ケイトだもの」

「ははは」

「ルビィア、ちょっと待っててね。ケイト、いらっしゃい」


ルビィアを布団に寝かせたディアナが両手を広げる。


ぎゅむにゅん


大きな胸に顔が埋もれるけど…エッチな感じじゃなくて、凄く安らげて…。


なでなで


「ディアナ、このまま少し休ませて」

「はい」


そのまま頭を膝にずらして、顔はディアナのお腹のほうを向いて…俺の顔の横に胸が布団のように載っている。


天国だなあ。

でも、落ち着いたらクリス様の所に戻らないと。

お読みいただき、ありがとうございます。

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次回も明日、2月17日18時更新です。

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