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第87話 呪われた魔王は解放される

これはまだ導入部分。

-魔族シェリー視点-


帰ってきて10日経った。


そろそろ新しいダンジョンができてそっちへ行ける頃ね。


「おい!聞いたか?!」


誰かしら?お城の廊下でうるさいわね。

部屋にまで聞こえる声でしゃべらないでほしいわ。

魔王様のお城なのよ。


前のダンジョンの時は最下層で静かすぎたのよね。


でも、これからはカリナ様やサフィメイド長がいるから寂しくないわ!


どうして呼び方が今までと一緒かって?


10日経っても関係が変わらなかったのよ!


だって、あの二人が私より上手(うわて)すぎるもの!


直ったのは話し方だけだわ。


『おにいの前では『わらわ』と『でしゅ』を忘れずに』

ってどうしてなの?!


なんであんな冴えない男に奉仕させようとしてるのよ!


「魔王様が後継者を決めるらしいぞ」

「今までそんなことってなかったよな」


なんですって?!


「ああ。それで『面接』があるらしい」

「戦って勝ち残ったらじゃないのか?」

「魔王様なら、一目でどんな力かわかるらしいから、むやみにその能力をひけらかすような戦いはさせないそうだ」

「なるほど。新しい魔王がその全ての能力を知られていたら都合が悪いからな」

「お前は行くのか?」

「戦わなくていいなら行こうかと思ってる」

「そっか。俺はやめとく。魔王って大変そうだからな」

「そうか?好き放題できるぞ」

「ははっ。ならお前が魔王になったら俺を直属の配下にしてくれ」

「考えておく」


そんな話になってましたのね!


「シェリー」

「はい、カリナ様」

「シェリーは魔王になりたい?それともダンジョンマスターに戻りたい?それとも別の生き方をしたいです?」


何の質問?


「ダンジョンマスターに戻って頑張れば、魔王様の期待に応えられるからそれがいいわ」

「魔王様の期待?じゃあ、シェリーは魔王様の期待に応えられるなら、何だってするの?」

「そうよ。私は魔王様に忠誠を誓ったもの」

「じゃあ、新しい魔王様になったら?」

「それって、今の魔王様が倒されるってこと?」

「代替わりしたとしてです」


魔王の代替わり?!

年老いた人間の王みたいに?

そんなの聞いたことないわ!


体も精神も老いない魔王は死ぬまで魔王なのよ。


「もしそんなことがあれば今の魔王様についていくわ」

「どうしてそこまでするです?」

「私を初めて認めてくれたお方だからよ」


だから、もし魔王様が花壇の世話をしろとかお菓子を食べに行こうとか言ってくれるなら、それでもいいのよ。


魔王様が私を認めてくれているなら、何だってしてみせるから。


「それならいいです。ここからはすごく大切な話になるです」

「『はいせつな話』?」

「シェリー、またおもらしさせられたいです?」

「聞き間違えただけですっ!」


あれだけはごめんだわ!


「実はこれから…」



-魔王ブラッディマリー視点-


魔王になりたいという野心を持っている者がこんなにいたとは。


「魔王になって何をしたい?今の状況をどう考える?人間を捕らえたらどうする?」


そういう質問への回答は千差万別だ。


そして彼らの能力もまちまち。


その全てを記録してくれているのがケイト。


ケイトを私に抱きつかせたまま魔王の姿になったら、うまい具合にケイトが魔王のボディの中に取り込まれてくれた。


『これって姿が変わるというより、着ぐるみに近いんですね』

『体を動かすのは能力で動かすのよ』


二人で一緒に居るっていいものね。

って、二人じゃないわ。

ケイトって椅子だもの。


記録とか相談事とかできる、ちょっと優しい椅子なんだから。





これで全員ね。


私は部屋に戻って、データを確認する。


「能力順ならこんな感じで、過激さ順はこう、それからバランスは六角形に近いほど…」


能力を数値化したり、見た目にわかりやすくしたり、比較したり、その『タブレット』というのはすごく便利なのね。


「次の魔王に相応しそうなのはこの者ね」


そう、彼ならうまく次の魔王をやってくれるだろう。


強く、野心家で、人間を憎んでいる。


しかし残虐過ぎるというほどでもない。

無抵抗な人間なら奴隷にする程度にとどめるだろう。


「あとは、この『魔王』を譲り渡せるかだけね」

「別の呪いでうまくいったから、何とかなると思います。いえ、してみます」


頼もしいことを言ってくれるのね。


ケイトには別の呪いで『呪いの移動』を試させてたのよ。


『『特性召喚』!この者にかかっている呪いをこちらの者に!』


その実験は大成功。


実験台になってくれた城のメイドたちには、すぐ呪いを解いて褒美をあげましたわ。


きっとこの呪いもうまくいくはず。


でも…魔力が足りるかどうかの問題があるのよ。


ケイトの『上級鑑定』で、この呪いの移動には1兆ポイントのMPマジックポイントが要るってわかったわ。


ケイトの持ってきている魔晶石はなぜかMPが測定不能。

もしかするとそれで足りるかもしれないけど、あてにはできない。


MPは並の魔族がひとり2000ポイントから5000ポイントくらい。

1兆ポイントとかありえない数字。


ケイトは何とかしてみせるって言ってたけど…。



-主人公ケイト視点-


1兆ポイントもの魔力を集めるのは難しい。

でも、できないことは無いはずだ。


頼れるのは『向こうの世界から持ってきた魔晶石』だ。


この魔晶石に含まれるMPは測定不能だった。


つまり、これにはある意味無限の可能性がある。


だからってそれだけに頼るというわけじゃない。


MPが1兆ポイントあれば確実に成功するとわかっているなら、むしろそっちを目指す。


俺は巨大な魔晶石の前に立つ。


これは直径5mもある魔晶石だ。

理論上は1兆ポイントでも込められるらしい。


それは魔王の謁見の間のオブジェとして飾ってあるもので、今は人払いがしてあるから俺とマリー様しか居ない。


「『超越能力召喚』!この魔晶石に入れられるだけの魔力を!」


キュイイイイイン!



魔晶石が光って魔力が充填されるのがわかる。


「マリー様、どうですか?」

「150万ポイントよ。先は長そうね」

「いえ、手伝ってもらえば何とかなります」


超越は魔晶石を10個以上消費する必要があるけど、同時にいくつでも消費できるから時間はそんなにかからないはず。


それでもこのままでは魔晶石が足りない。


そこで魔王城の宝物の一部を『通信売買メルカル』で売り、魔晶石に変え、それを使って魔力をチャージする。


その作業を俺とカリナとサフィ姉さまと、


「私も手伝います」

「シェリー、ありがとう」

「魔王様がこんな可愛らしい女の子だったなんてね」

「それでもシェリーより年上よ」

「そうなのね。でもこの忠誠心は変わらないから!魔王様、任せて!」


すごくやる気のシェリーは、あの世界に行ったことで『召喚』や『通信売買(メルカル)』の魔法が使えるようになっていた。


そして…この世界に戻ってきても『体質』は変わらないらしい。

『トイレでうん〇をしなくていいって、すごく嬉しいわ!おな○も出ないし』

とか言ってたらしい。


これだけの人数で協力すればすぐにできるはず!



-魔王ブラッディマリー視点-


数日経ったわ。


「マリー様!できました!」


とうとう1兆ポイントの魔力が溜まったのね。


私はすぐに『魔王の代替わりの儀式』を行うとお触れを出した。




目の前に立つのは、次代の魔王になると決まった男。


魔王の姿の私はその魔族の頭に触れて…こっそりケイトが魔法を唱える。


『(小声で)『超越特性召喚』マリーの呪いをこの男に』


ああああ…わかる…私の呪いが…抜けて…移っていく…。


その男は呪いの力で『魔王』となり、私に負けないほどの立派な魔王らしい姿になった。


「新たなる魔王よ。吾輩はここを去る。あとを頼んだぞ」

「任せろ。さらばだ、先代の魔王よ」



私の魔王の姿が薄くなっていくので、消える前に私室に移動する。


ギリギリこの姿を人目にさらさなくて済んだわ。

ケイトも一緒ですから見つかったら一大事だったわね。


「一応、全部持っていきますね」


ケイトが私の私物を全部異次元箱に入れてくれた。


もう私は自由だ。

どこにだって行ける。

何にだってなれる。


「魔族でも勇者の仲間になれる世界に行くといいですよ」


そうだった。

ケイトは私の夢を知ってくれていたんだ。


それと…ケイトやカリナは椅子じゃなかったのね。


ううん、椅子だけど人間でもあるって変わった体質だって。


「サフィ、カリナ。少しケイトを借りるわね」

「必ず返すです」

「わかってるわ」

「行きましょう、マリー様」


私はサフィとカリナを元の世界に転移魔法で送り返し、自分たちも新しい世界に飛んだ。



-主人公ケイト視点-


二人と新しい世界に来て1か月。


前の世界もそうだが、この世界もクリス様たちのいる世界とは時間の進み方が大きく違う。


むこうではまだ数時間しか経っていないはずだ。

…とこの世界の『鑑定たん・・』がそう言ってた。


ぱたぱた


そして俺の周りに『鑑定たん』が飛んでいる。


キャンティみたいに人物化したので、エメル姉さまのために連れて帰るつもりだ。

ちなみにこの前の世界の『鑑定ちゃん』はサフィ姉さまが連れ帰った。


ディアナ様のは、またいつかでいいかな。

うん、優しいからきっと大丈夫だよ。


「ケイト」


そう言うのはすらりとした美女。

クリス様が美少女なら、この人は同じようなレベルでの美女だ。


「もう大丈夫だから。今までありがとう」


そう、彼女は大人に戻ったマリーだ。


この世界の勇者にその実力を認めてもらえて、一緒に魔王を倒しに行くことになった。


元魔王が魔王を倒すって…。

ま、いいか。


「ケイト」

「シェリーも元気でな。マリーを頼むよ」


シェリーももちろん一緒だが、マリーの魔法で体を18歳くらいに見えるように成長させてもらっている。


ちなみに俺はもう呼び捨てでいいと言われて二人を名前で呼んでいる。


「ケイト。ちょっとは感謝してるからな。マリー様を救ってくれて…その、なんだ…ありがとうな」


もじもじそう言われると、結構可愛いな。


いや、元々かなり可愛い子なんだが…うちの王国は偏差値高いものな。


「じゃあ、送り返すぞ。元気でな」

「ああ。二人とも良い旅を」



俺はマリーの魔法で世界を飛び越える。






「ケイト!」


ぎゅっ!


転移するなり抱きついてきたのはクリス様だった。


「おかえりなさい!戻ってきたのね!」

「はい。あの、今はいつですか?」

「まだケイトが居なくなった日で、今寝る時間ですわ。ケイト、お風呂とかは?」

「向こうは朝でしたから、夕べ入りました」

「まさか魔王や魔族の人と一緒に?」

「まさか」


じーっと見てくるクリス様。

まさか嫉妬してくれてるのかな?


「角がある女性って、頭を洗う時どんな感じなのか聞こうと思っただけですわ」

「あんまり変わりませんよ。ただ、触ると変な気分になるらしいのでなるべく触らないように…あっ」


しまった。


「ふふふふ。ケイト、一緒に入ったのね?」

「いえ、お風呂じゃなくて、旅をしていて宿が無い時に水浴びをして、その時にマリーの頭を洗っただけです。1度だけですから!」

「それでも一緒ですわ!」

「すみません!」


俺はすかさず土下座…じゃなくて四つん這いの椅子のポーズになる。

どのようにでも、お仕置きしてください!


「『わたくしのベルトよ!』。いいえ、まずは『おしおき磁石を!』」


『おしおき磁石』って何?


クリス様の手元に見覚えのある「大きな超強力磁石」が現れる。


あれは以前、俺の股間に直撃したやつだ!


そしてクリス様は寝間着。

金属は俺のベルトと股間のチャックのみ。


俺はその磁石がベルト部分に行くように願った。


「甘いですわ!起動スタート!そして『撤去』ですの!」


いつの間にか出してあった舞闘会用駒を起動して、駒が素早く俺のベルトを撤去する。


なんて見事なコンボ!


手で受け止めることもできたけど、これはクリス様のお仕置きだからと甘んじて受け止めて…


ごすっ!


死ぬ…

お読みいただきありがとうございます。

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次回も明日、2月9日18時更新です。

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