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第86話 魔王ちゃんは逃げられない

半畳世界の魔法も結構チート。

-双子の妹マリナ視点-


おにいとカリナとサフィ姉さま、そしてシェリーが居なくなったの!


でも、すぐに二人からCHAINチェインが来たの。


カリナ『シェリーが元の世界の魔王に召喚されて、サフィを連れて行かれそうになって、おにいと一緒に来てしまったです!』


そんなことに!

でも、CHAINチェインが通じて良かったの!


カリナ『カリナとサフィは無事。カリナたちはシェリーの所有物にされたけど、ついでに別の世界ではカリナたちがどうなるか色々試すです』


さすがカリナ。

そんな状況でもしっかりしてるの!


カリナ『もちろん『みょぎりんこ』についても調べるです』


そっちも知りたいけど、そういうのはちょっと控えめに報告してほしいの。


あれ?お兄ちゃんは?


ケイト『お兄ちゃんはシェリーの上司の魔王と一緒にいる。魔王の所有物にされたです』


どうしてそうなってるのっ?!



-主人公ケイト視点-


こんな小さな6歳くらいの可愛い女の子が魔王?


この子の角はあの魔王の角と形は似ているけど、まさかあの姿もシェリーみたいな『戦闘服』なのか?


「この椅子はどうやって使うのでしゅ?こうでしゅか?こうでしゅか?」


座り込んでいる俺の肩や手をぐいぐいと動かす。


どうして俺を椅子だと思い込むんだろう?

どう見ても人間なのに?


あと、『でしゅ』って幼児言葉可愛いんだけど。


「あの」

「わあっ!」


あっ、驚いた。


「人間の形をしているだけあって話ができるのでしゅね」


どうしよう?

人間だっていうより、話せる椅子って方がいいかな?


もし人間だってバレたらまずいかもしれないし、この可愛らしい部屋とか魔王の正体を見ちゃったわけだし。


「魔王様。私はケイトとお呼びください。それでは椅子になりますので、お座りください」

「おお!自分で形を変えられるのでしゅね!」

「背もたれのある形と、無い形になります。こうと…こうです」

「疲れたから背もたれがほしいでしゅ」

「わかりました」


座椅子状態になる。


「どうぞ」

「うわあっ!なんて座り心地!あたちの鑑定眼のとおり、まさに『最高の椅子』でしゅ!」


鑑定眼で『最高の椅子』って出るからそう思い込んだのかな?


それに『あたち』って姿相応の一人称だな。

何歳なんだろ?


シェリーが10歳の見た目で17歳だったから、6歳の見た目なら10歳くらい?

でも10歳で『あたち』は無いか。


「2時間は休憩でしゅから、人形遊びでもするでしゅ」


人形遊び?


「さあ、来るでしゅ!」


ふわふわふわ


飾られている人形がいくつか飛んできて、魔王様の手のひらに収まった。


「お前は勇者でしゅ。お前は村娘。お前は…」


人形に配役してる。

本格的だな。


しかも自分で動かせるから遊びやすいだろうな。


…まさか俺ってあのまま自分で動かなかったら、本当の椅子の形になるように無理矢理に動かされていたんじゃ…怖っ!


「いくぞ魔王!勇者様がんばって!さあ来い!あたちが支援するでしゅ!」


あれ?配役おかしくない?


人形が勇者、村娘、魔王の役で、魔王様が勇者の仲間?


「マリーの支援で勇気百倍だ!」


どっかで聞いたセリフだな。

って、魔王様はマリーって言うんだ。


「とどめだ!ぎゃー!倒したぞー!」


自分が倒される人形遊びってなんなの?



「ううう…どうしてあたちは魔王なんかに産まれたでしゅか?あたちは勇者を支える仲間とかが良かったでしゅ!」


勇者じゃなくて支える仲間とか、そんな立ち位置になりたいんだな。

ちょっと変わってるな。


「そして勇者と恋に落ちるでしゅ!ちゅっちゅー」


おいおい、勇者役の人形にキスし始めたよ。


そっか、勇者パーティのヒロインになりたいんだな。


「魔王様」

「なんでしゅか、ケイト?」

「魔王をやめることってできないんですか?」

「責任を投げ出すことはできないでしゅ。『魔王』はこの国にかかった『呪い』なのでしゅ」

「呪い?」




魔王は魔族の国の王。

だが、人間の国を攻めたいわけではない。


しかし『呪い』によって人間の国を攻め滅ぼすように『命令を出させられてしまう』。


あの姿は呪いに囚われたマリーの姿で、その姿の間は恐ろしい魔王として君臨することになる。


もし魔王であることを捨てたいなら、人間の国を全て滅ぼすか自分が死ぬか異世界に逃げるしかない。


異世界に逃げても、この『呪い』は魔王の国にかかっているもの。


自分の親族か、それがいなければ優秀な配下がその呪いを引き継ぎ、恐るべき魔王となる。


「それなら魔王国自体を無くしたらどうです?共和制とかご存じです?」

「もちろん知っておるでしゅ。でも、仮に魔王国が消滅しても呪いは消えないでしゅ」


どういうこと?


「この『呪い』は国が亡んだら近隣の国に移ってしまう。そしてそこが人間の国であるなら、『悪の人間の国』となって、周囲の国を侵略し始めるのでしゅ!」


なんだそれ!

それじゃあまるで…。


「それって、常に悪役を作って戦い続ける世界であることを義務付けられているってこと?」

「そうでしゅ!誰も逃げられない呪いなのでしゅ…うううう」


泣き出すマリー。


俺は後ろから抱きしめ、頭を撫でてあげる。


「…ちょっと泣いたらすっきりしたでしゅ。ケイトよ、誰にもこのことを言ってはならんでしゅよ。あたちの姿の事も、この部屋の事も」

「はい」


かわいそうだな。

何とか助けてあげたいけど…国にかかった呪いなんてどうやって解くんだろ?



すーすーすー


あれ?いつのまにか寝てる?


よし、今のうちに調べてみよう。


「『上級鑑定』この国の呪いについて」


『悪役の呪い』

この呪いは国にかかる呪いで、その一番上に立つ者を侵略者に変える。

その者が倒れたらしばらくはこの呪いが収まるが、世界に平和が蔓延する前に再び呪いが発動する。

その期間はおよそ20年から100年。


こんな呪いが…。


(鑑定の続き)

呪いを解呪するには世界規模の魔法陣と膨大な魔力が必要である。

どんなに頑張っても解呪なんて無理だからあきらめたら?

って、どうしてこんな会話っぽくなってる?


「あれ?もしかして『鑑定さん』?」


(鑑定の続き)

『鑑定さん』ってなんだ?というか、どうして会話が成立している?

お前何者だ?

異世界から来たのか。

人間みたいなのに椅子だと?

わけのわからん奴だな。

そもそもどうしてこうなった?


「違う人なんだ。じゃあ、『鑑定ちゃん』って呼ぶね」


(鑑定の続き)

『鑑定ちゃん』って何だよ!

それに変な魔晶石だなそれ。使って無くなる魔晶石なんて初めてだぞ。


「この世界では違うの?」


(鑑定の続き)

体内の魔力を使う代わりに魔晶石内の魔力を使って魔法を唱えるから、魔晶石そのものは残るんだよ。

空っぽの魔晶石にはまた魔力をチャージできる。


「そっか。そういえば『異世界ものの基本の魔晶石』はそういうものだったっけ」


今の魔晶石に慣れちゃったからな。


(鑑定の続き)

ちなみにこの呪いは魔王が10人集まっても解けないぞ。


「そっか。いいよ。何とかしてみるから」


(鑑定の続き)

できるはず無いからな!


「大丈夫…な気がする。少なくとも、マリーは泣かせない」


(鑑定の続き)

好きにしろ。



「う、ううっ」


あれ?マリー?

うなされてる?



-魔王ブラッディマリー視点-


優しかったお父様とお母様。


しかし、ある時、突然お父様は変わってしまった。


恐ろしい魔王の姿になり、部下に命じて人間の国を攻めさせた。


それを止めなかったお母様。


「この呪いは止められないのです。ですが、もしあの人が死んだなら、私も一緒に」




そのうち勇者がやってきて、魔王は倒された。でも…


「どうして我を殺さぬ!」

「俺にはあなたが本当の悪とは思えない!」

「甘いぞ勇者!」

「うわあああっ!」


油断していた勇者たちは魔王の攻撃で気を失った。


「あなた」

「すまぬ。もうこれ以上は…」

「わかっています」


お母様はお父様をその手に掛けて自分も死んだ。


目を覚ました勇者とその仲間たちは、目の前で死んで居る魔王とその妻を見て、全てを悟って泣いたという。



それから50年。


あたちにその順番が回ってきた。


55歳だった私は人間で言うと20歳くらい。

魔王として最適な年齢だった。


だから、私は秘術で幼児になった。


それなら魔王にならなくて済むと思ったから。



甘かった。


幼児になった私を、呪いは恐ろしい魔王の姿に変えた。


年齢なんて関係なかった。


ここで逃げ出すこともできる。

異世界への転移は私の得意魔法だ。


でも、私が逃げたら誰かが同じ目に遭う。


そのための『魔王の一族』。

呪いを一身に受けて、魔族を守るために存在する。


私は頑張った。

なるべく悪いことをしないように呪いに抵抗した。


でも…


「はっはっは!さすが魔王様だ!」

「あのような恐ろしいことをよくも平気でできる」

「魔王様のせいで、我ら魔族は他の種族から疎まれる」

「俺が魔王だったらもっと恐ろしいことをしてやるぜ」

「魔王様の前でだけいい顔をしておけばいいさ。どうせまた勇者に殺されるんだ」

「次の魔王にだけはなりたくない」

「いや、むしろ魔王になって好き放題したいね」


みんな、みんな、好き勝手なことを言って!


「代われるものなら代わってあげるわよ・・だって!」


ああっ!

またあの夢?


「魔王様、今の言葉…」


あっ?!

幼児言葉じゃないのがバレた?


でも、ケイトは椅子だからいいわね。


「そうよ。これが私本来の話し方なの。もう何もかも嫌になって、魔王の時は魔王らしく、この姿の時は幼児っぽくして現実逃避していたのよ。それでもこんな夢ばっかり見て…」


ぎゅっ


え?抱きしめられた?


なでなで


「ケイト、私の事、慰めてくれているの?椅子なのに?」

「椅子でもマリー様の悲しみはわかります。決めました。俺がマリー様を救います」

「椅子のくせに、そんなことできるわけないわ!」


椅子にそんなことなんて…できるのかしら?


できるなら、助けてほしい。


私を、この運命から救ってほしい!


「ちょっと魔法を使わせてもらいますね」

「ケイトって魔法が使えたの?いえ、魔法の残留を感じるわ。私が寝ている間に魔法を使ったの?」

「はい。この世界を『鑑定』していました」

「世界を鑑定?!そんなことできるの?!」


世界を対象にした鑑定なんて、聞いたことないわ!


「それによると…」



まあ、そうでしたの。


「やっぱり無理ですのね」

「いえ、呪いを解くのが無理なだけです」

「どういう意味?」

「呪いを受け渡せばいいんです」


どういうことなの?

お読みいただきありがとうございます。

ブックマークとか感想とかいただけると励みになります。

次回も明日、2月8日18時更新です。

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