第6話 ドS王女様はミニスカートドレス
この小説、恐ろしい勢いで筆が進みます。
当分は毎日更新できそうです。
令和2年1月4日
初期でクリステラの言い回しが現在と違っているため修正しました。
-主人公ケイト視点-
トイレに行きたくなった。
いつまでも遠慮はしていられない。
さすがに聞かなくてはならないだろう。
「クリス様、トイレはどこでしょうか?」
「おトイレ?そこに行くにはこれを使いますのよ。『共用鍵よ、出なさい!』」
クリス様は空中から鍵を取り出されました。
「この大陸にはいくつもの王国があって、トイレとお風呂は共用になっていますのよ」
四畳半一間のアパートなら共用トイレは普通かもしれないけど、『連合王国共用トイレ』みたいに考えたらすごく違和感あるなあ。
「この鍵は領地を共用部分につなぐための魔道具で、場所を言いながら空中にできた鍵穴に差し込んで…せっかくだからやってみますわよ」
クリス様は立ち上がって鍵を掲げると、
「『共用扉召喚』!おトイレへ行きたいですわ!」
俺はその光景に目が離せなくなっていた。
-王女クリステラ視点-
トイレへ行くのは簡単ですわ。
魔晶石も使わない、この魔道具だけで十分ですの。
でも、立ち上がってやらないと、出現した出入り口がなぜか背の低いものになってしまうのはなぜでかしら?
ともあれ、私は立ち上がって呪文を唱えますの。
「『共用扉召喚』!トイレへ行きたいですわ!」
わたくしの声に応じて、目の前に鍵穴が出現しますわ。
その鍵穴に鍵を入れて回すと、扉が壁に現れますの。
「どう?わかったかしら?」
「はい、あの…よくわかりました」
なぜか顔をそむけて赤くなっているケイト。
そんなに扉が現れるのに興奮したのかしら?
「先に、わたくしが行ってきますわ。私がこちらに戻ると扉が消えるから、次はケイトがやりなさい」
そう言ってわたくしは扉(引き戸)を開けてトイレに入っていきましたの。
-主人公ケイト視点-
ど、どうしよう。
見えてしまった。
クリス様が座っていた時に見えていたのが生足だったから、もしかしてスカートかなと思っていた。
立ち上がって分かった。
ミニスカートっぽいワンピースドレスだった。
ドレスは白だけど、中身はシマだった。
あれが伝説の『しまぱん』か。
黒とか思ったのに、まさかの白青。
おっふ。
いつの間にか戻ってきていたクリス様が俺の背中に腰かける。
「どう?わかりましたの?」
「は、はい」
鍵の使い方も、色も良くわかりました。
「じゃあ、ケイトの番よ」
そう言って、俺に鍵を手渡してくれる。
「クリス様」
「なにかしら?」
「立ってもいいでしょうか?」
「駄目ですわ」
クリス様は無情にもそう言った。
「そこでも扉は出せますわ。それで、丁度くぐれるくらいの扉が開くはずですの」
なんだって?!
ようやく立てると思ったのに。
ついでに狭いからクリス様の胸があたるかとか期待してたのに。
いかん、これはきっと邪な気持ちになった罰だ。
下着だって見ないようにしよう。
クリス様にバレたら、もうここに居られなくなるから。
「『共用扉召喚』!トイレへ!」
四つん這いのままそう言うと、目の前に鍵穴が現れたので鍵を差し込んで回した。
「おおお」
俺の眼の前の壁にすごく小さな扉が現れた。
一応取っ手も付いている。
引き戸でスライドするのはありがたい。
そもそもこの世界でこちら側に開くドアとかありえないよな。
「クリス様、立っていただけますでしょうか?」
「そうね、わたくしが座っていたら行けないわね」
立ち上がるクリス様を見ないようにして、俺は目の前の扉をスライドさせる。
トイレが見える。
洋式だ。
異世界だけあって、ウォシュレットではないな。
いつかウォシュレット付きの便器を召喚してみたいとも思う。
異世界で広める文化と言えば、ウォシュレットトイレとマヨネーズが定番…あっ、マヨネーズを夜ご飯に出してみよう。
そう思いつつ、トイレに入る。
-王女クリステラ視点-
ケイトがトイレに行ってから気づきましたわ。
わたくしが用をたしているときの音、もしかして聞かれてたかしら?
でも、ケイトが入って扉を閉めてから、何一つ物音はしませんの。
そうでしたわ。
小さいころ家族一緒に暮らしていた時、トイレに行った姉が中で転んでも、全然こちらに音が聞こえなくて気づかなかくて、助けに行くのが遅れたことがありましたわ。
あ、戻ってきましたわ。
って、どうして後ろ向きで戻って来るんですの?
「ケイト?私にお尻を向けながら戻って来るとはどういうことかしら?」
「あ、その、このほうが戻りやすくて、(びしっ!)あうっ!」
わたくしは持っていた教科書でケイトのお尻を叩きますの。
「いけない下僕にはしつけが必要ですわね」
「申し訳ありません!」
「では、ちゃんと頭から戻ってきなさい」
「…できません」
下僕が反抗?!
これは『れぼりゅーしょん』とか『えぼりゅーしょん』とか『こらぼれーしょん』というものですわね!
反乱でも起こす気かしら!
「言うことを聞かないと、もっと叩きますわよ!」
叩かれたケイトはそのままトイレに戻っていった
「あの…それでしたら、クリス様、座って待っていただけませんか?」
と、トイレの中から声がする。
「わたくしに畳に座れと?いつからそんな偉い立場になったのかしらね?」
「わかりました…では」
ケイトが入ってきましたが、今度は目をつぶっています。
「何?わたくしの顔を見たくないと言うのかしら?」
むかむかむか。
無性に腹が立ってきましたわ。
そしてケイトは四つん這いのまま前進してくるので、わたくしはそれをよけて、
「えい!」
お仕置きとばかりに、勢いを付けて、ケイトの背中に座りましたわ。
「うっ!…ええっ?」
ケイトが苦しそうな声ってなかなかそそるものがありますわね。
でも、そのあとの驚いたような声は何でしょうか?
それに、何だかお尻の所がさっきまでと違う感じがしますわ。
ケイトの背中の形が良く感じられるというか…。
背中の温度を感じられると言うか…。
-主人公ケイト視点-
目をつぶっているところに、勢いよく座ってきたクリス様。
きっと怒っているんだろうな。
顔を見るのが怖いよ。
え?でも?
背中の感触がおかしい。
なんだか、温かいし柔らかいし。
眼を開けてみる。
特におかしな様子は無い。
クリス様の足のある方とは反対側を見る。
そこに、クリス様のスカートのすそが見える。
スカートのすそが反対側にあるってことは…。
えっと、
えっと、
背中の上には、
直にしまぱん?!
-王女クリステラ視点-
わたくしの「ぐんじょ色の脳細胞」が全てのピースを繋ぎ合わせましたわ。
そう、わたくしは王女としてあるまじき、はしたないことをしていたのですわ。
ケイトにスカートの中を見せ、それを見ないようにしているケイトの背中に勢いよく座ったせいで、スカートがふわりとめくれて、下着で直にケイトの背中に座ってしまったのですわ。
なんて愚か!
なんて恥!
シュガーレイク王家の恥さらしですわ!
一瞬でも、ケイトの不忠を疑ったわたくしを許せませんわ!
でも!でもっ!
ここで間違いを認めるわけにはいきませんの!
わたくしが勘違いしていたことを。
わたくしがはしたないことをしたことを。
わたくしが…この背中の暖かさをもっと感じていたいと思ったことを。
わたくしは立ち上がって衣服を整えると、改めて座りなおしますわ。
もちろん、スカートは元のようにお尻の下に捲込んでありますの。
「ケイト。そろそろ夕食の時間ですわ」
「あ、はい?」
「魔晶石を渡しますから、わたくしの分も何か美味しそうなものを召喚しなさい。それで今回のことは不問にして差し上げますわ」
あくまで王女らしく。
下僕に謝りなんてしませんわ。
ただ、心の中でケイトの気遣いに感謝しておくだけですの。
お読みいただきありがとうございました!
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次回も明日、11月24日18時更新です。