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第56話 ドS王女様の妹が生まれる

進展早いです。

-主人公ケイト視点-


ぎゅっ。


ぎゅううっ。


「ルビィア、わたしたちの可愛い娘。早く可愛い顔を見せて頂戴」


今、お布団の上で座っているディアナ様が、その大きな胸で卵を挟んで慈しんでいる。


俺はその反対側で卵を抱いている、というか、胸の間に大きな卵がすっぽり入っているので、俺は卵よりもディアナ様を抱いているような感じだ。


「あの、ディアナ様」

「何かしら?」

「いくつか教えてください」

「いいですわ」

「子供ってこうやって作るだけなんですよね?他に方法って?」

「無いはずですわ。超越召喚で直接呼び出せたとしても、それは二人の子供ではないと思いますのよ」


そうなのか。


「あと、その、聞きにくいんですけど、『生理』とかあります?」

「『せいり』?整理整頓のことかしら?」


無いんだ。


「生まれた子はどうやって育てるんです?」

「母乳ですわ」


それは出るのか。


おしっこはでるけど、うん〇は出ないのと同じで、似ていてもできることとできないことがあるんだな。


そして、俺はあることにも気づいていた。


こうやって抱き合って、胸を押し付けられて、さらにディアナ様の足が俺の腰に回るようにされているから、色々柔らかさやいい匂いを全身で感じるのに、俺のへい・・ヘイ!・・・にならないことに。


この世界でどうやら『ふしだらなこと』はできないらしい。

急所として叩かれると死ぬほど痛いだけなんだな。


でもそれがわかれば、今後クリス様の何を見ても、何をされても、最悪の醜態を晒すことだけは無いわけだ。


それだけはありがたいかな。



「それと、この子の戸籍とか」

「『こせき』ってなんですの?」


それも無いのか。


「離婚とかあるんですよね?」

「そうですわ。結婚と離婚は『法王』に報告しますの」

「『法王』?」

「この世界の法律をつかさどる存在ですわ」


そんなのがあるんだ。


「結婚とか離婚をするとどうなるんです?」

「結婚したら、新しい国をもらえますの。翔学生の教科書しか済ませていない夫婦なら4畳半。厨学生の教科書を済ませていると、その済ませた量に応じて、広い国がもらえますわ。だから、いっぱい勉強して、できれば厨学生の勉強も修めてから結婚してほしかったのですわ」

「どうしてそんなに『子宝魔晶石』があるんです?」

「翔学生の教科書を全てマスターしたら女性は4つもらえますわ。男の子か女の子かも選べますのよ。それであれが最後の1個でしたの」


その最後の1つがルビィアになったんだな。


「男性はそういうのをもらえないんですか?」

「男性が翔学生の教科書全てをマスターしたら何か別の『超越召喚』のための魔晶石をもらえるそうですけど、詳しくは知りませんわ」


何がもらえるのかな?

戸籍関係ないなら、俺ももらえるかな?

物扱いの俺が認められればだけど。


「離婚すると、どちらに責任あるかを裁かれて、悪いとされたほうは慰謝料を払いますの。あの人もわたくしに『他に恋人ができたからそちらとも結婚したい』とか言ってくれれば…いえ、その頃のわたくしがそれを認めたかどうかわかりませんけど」

「複数の相手と結婚できるんですね」

「そうですわ。ふふっ、大丈夫よ。クリスと結婚するのに反対はしないし、良ければ娘たち全員をもらってくれてもいいのよ。ケイトなら任せてもよさそうだもの」

「クリス様とは主人と下僕の関係ですから」

「そうね。今はそれでいいわ。でも、ね」


ぐいっと顔を近づけてくるディアナ様。


「わたくしとは、もう夫婦同然ですのよ」

「あ、えっと、そのすみませんディアナ様」

「二人きりの時は、ディアナって呼んでほしいわ。それとも、30過ぎのおばさんは嫌?」


30過ぎに全然見えないし。

綺麗だし、可愛いところもあるし、その、いろいろ魅力的だし。


「ふふ、本心を命令で聞こうかしら?」

「お願いです、やめてください、ディアナ様」

「嘘ですわ。でも、名前を呼んでって言ったはずよ」

「ディ、ディアナ…」

「ケイト。わたくし、あなたに会えてよかったですわ」



-女王ディアナ視点-


ケイトはすごく年下なのに、素直で、優しくて、包容力もあって。

最高ですのよ。


クリスがまだ恋愛感情ないみたいですから、今のうちにケイトを誘惑しておきますわ。


「ディ、ディアナ…」

「ケイト。わたくし、あなたに会えてよかったですわ」


ずっと苦しかったのに、今はすごくすっきりしているの。

みんなケイトのおかげですわ。


「あのね、子作りの魔法の条件を教えたからわかっていると思うけど、わたくし、ケイトが寝ている間にキスしてしまったの」

「あ、その、それはもういいです」

「初めてだった?」

「それは…たぶん違うけど」

「もしかして、妹さんたち?」

「はい。俺になついてくれていて、ほっぺどころか、たまに唇にも。でもそれは挨拶みたいなものだから」

「わたくしがキスしたときは、寝ていましたのね?」

「たぶんそうです」


ずいっ


「そろそろ生まれてくるから、その前に、本当の夫婦になりましょう」

「ディアナ…」

「今は結婚しないわ。でも、この子には本当に愛し合っている両親の姿を見せたいの。ううん、わたくしがケイトの気持ちを無視して勝手に子作りをしてしまったのはわかっているわ。でも」

「俺も、ディアナのことは好きです。でも、愛しているかっていうのはまだわからないです。だけど、きっと、これからもっと好きになります」

「ケイト…」


ちゅっ


「こんなに年上の奥さんでごめんなさい。次からはもっと若い子にしてね」

「次って…」

「大丈夫。ケイトなら浮気とは違って、きちんとわたくしたちを平等に愛してくれるのでしょう?」

「とりあえず、今は一番大事なのはクリス様です。それからディアナとルビィアです。駄目ですか?」

「それでこそ、わたくしが好きになったケイトですわ。そうよ、クリスを大切にしてあげてね」

「はい」


ぴしっ


あらっ?


卵にひびが?



-王女クリステラ視点-


あわわわ。


今日は自由にお母様の領地に出入りができるからって、こっそり様子を見に来たのは失敗でしたわ。


お、お、お、お母様がケイトとキスしていますの!


お、お仕置き…ってこっそりキスを見ていたとか言えませんわっ!


「大丈夫。ケイトなら浮気とは違って、きちんとわたくしたちも平等に愛してくれるのでしょう?」

「とりあえず、今は一番大切なのはクリス様です。それからディアナとルビィアです。駄目ですか?」

「それでこそ、わたくしが好きになったケイトですわ。そうよ、クリスを大切にしてあげてね」

「はい」


え?

わたくしが一番大切ですの?


そうですわよね。

ケイトはわたくしの忠実な下僕いすですもの!


今はお母様にちょっと貸してあげているだけですのよ。


だから…ルビィアが早く生まれてきてくれれば、ケイトと久しぶりに一緒に寝たいですの。


ケイトは最高の椅子で、最高の布団ですのよ!




ぴしっ



ん?何の音かしら?


「卵にひびが!」

「生まれてくるのね!」

「みんなを呼んできます!」


こっちへ来るわ!

えっと、扉を開けて、閉めて。


「あらケイト。わたくしは丁度、様子を見に来たところですのよ」

「クリス様!実は卵にひびが!」

「そうなのね!それならケイトは卵についていなさい。わたくしがみんなを呼んできますわ」

「すみません」



「エメル姉さま!マリナ!」

「どうしたの?」

「なあに?クリス様?」

「生まれそうですのよ!」

「ええっ?!」

「行くーっ!」



「生まれるの?!」

「おにいは?」

「ケイトはもうそばに居ますわ」




-主人公ケイト視点-


ああ。なんてことだ。


異世界に来て、椅子になって、元の世界に戻って、それから女王様の夫になって、子供ができて。


まだこっちに来てから5日目だよ。


本当にいろんなことありすぎるよ。


ぴしぴし。


ヒビが広がっていく。


みんなは卵を見守っている。


ディアナ…様は卵をなでている。

俺も一緒に撫でている。


そろそろかな?


ぴしっ、ぴしぴしぴしっ!


卵の全体に一気にひびが入り、それが飛び散ると、空気に溶け込むように破片が消えた。


そこには、可愛らしい赤ん坊が浮いていた。


全裸だからすぐわかる。

予定通り女の子だ。


こんな産まれ方だから、服を着て産まれてくるかと思った。


それをそっと優しく抱き締めるディアナ様。


「『日用品召喚』!ルビィアのおむつと産着一式!」


ディアナ様、魔晶石をあんなに握って?!


すると、どさどさと複数のおむつと産着がでてきた。


さすが女王様。

片手で持てない量の召喚でも、一気にやれるんだ。


「久しぶりですけど、付け方を覚えているものね」


手際良くおむつをルビィアに付けて、産着を着せていく。


このおむつって、使い捨てじゃないみたいだな。

しかもわりと簡単に付けられる形状になってるっぽい。


そうか、脱衣かごに入れれば綺麗になるから、おしっこくらいならすぐに消えて、新しいのにできるのか。


「ほぎゃほぎゃ」

「あらあ?おなかすいたの?ちょっと待ってね」


え?いきなり胸を…


「ちょっと待って!あれ?誰か知らないけど、目隠しありがとう」

「おにいはこういう『お約束』を知っているべきです」


とっさに後ろに居たカリナが目を隠してくれた。


ふう、助かった。


ちゅうちゅう


お、音だけでもいやらしいな。


いや、授乳はエッチなものじゃないからな。


「わたくしも母乳をあげてみたいですわ。ケイト、先に領地に戻っていなさい」

「それならカリナが連れていく」

「クリスは母乳が出ませんわよ」

「やってみないとわかりませんの」


そんなやり取りを聞きつつ、俺は目隠しのままカリナに従ってクリス様の領地に戻っていった。



「おにい」

「うん」

「おめでとう。おにいの子供、可愛いね」

「ありがとう」

「それで、それで、それで」

「ん?どうした?」

「おにいはもうどこにも行かないよね?」

「もちろんだよ。だって結婚したわけじゃないから、新しい王国にも行かないし、このままずっとここに居るよ」

「でも、もしおにいがどこかに行って誰かと結婚することになったら、カリナも連れて行って」


え?


「サフィ姉さまが困るだろ」

「おにいはわかっているはず。カリナとマリナはおにいと一緒に居たいからここに来た。いくら鈍感系主人公でも、その意味くらいわかるはず」

「でも」

「血のつながった兄妹だから?」

「うん」

「おにい。カリナは1歳の時の記憶がある」

「え?」

「初めて会った時、おにいはカリナたちを見て『かわいい妹ができて嬉しいよ。よろしくね』って頭をなでてくれた」

「え…」


まさか…


「もっとゆっくりおにいとの関係を深めていきたかったけど、まさかの伏兵女王様。だからもう遠慮しない。カリナはおにいが好き。愛してる。ずっとずっと好きだった。だからだからだから!」


ぎゅうっ!


「今すぐでなくていいから、いつかお嫁さんにして!」

「カリナ、でも」

「でもじゃないの!」

「えっ?マリナ?いつの間に?」


ぎゅううっ


いつの間にかマリナまで来ていて、俺に抱き着いてきた。


「お兄ちゃん、大丈夫。夫婦の絆は切れても、兄妹は永遠だから」

「カリナもマリナも、ずっとおにいの妹。ずっと離れない」


俺は返事の代わりに、抱きしめる代わりに、二人の頭をなでた。


「うふふ」

「うふっ」


ああ、なんて可愛い笑顔なんだろう。


二人はそっと離れてくれた。


「じゃあね、お兄ちゃん、おやすみなさい」

「時々ルビィアちゃんの写真も送ってね!」


走り去るマリナとカリナ。


そうだよな。


ここに連れてきた責任くらい、取らないと。



「戻りましたわ」

「クリス様!」

「なっ、何かしら?何をそんな嬉しそうにしていますの?」



-王女クリステラ視点-


ケイトがすごい笑顔でわたくしを出迎えてくれていますわ。


たまりにたまった『お仕置き』をしようと思いましたのに。


「ケイト、時間的にお風呂ですわね」

「その前に、お仕置きを」

「え?」

「クリス様、俺はクリス様の下僕いすです。クリス様の物です。それを、改めてこの身に刻み付けたいんです」


そして四つん這いになるケイト。


「いい心がけですわ。『わたくしのベルトよ出なさい!』」

「え?ベルトはさすがに」

「ふふっ。口答えするのね」


ぴしっ!

ぴしっ!

ぴしっ!


「伝言を忘れていましたわ。これからはお母様がルビィアを育てるそうですの。でも、毎日1回は見に行きなさい。いつかはわたくしが言いますわ。それと、たまにはわたくしにもルビィアの面倒を見させてほしいですわ」

「えっ?クリス様、母乳が出たんですか?」

「出るわけありませんわっ!」


ぴしいっ!


「あと、ルビィアがお風呂に入る時に交代で手伝うことになりましたの。今夜はエメル姉さまたちですわ」

「わかりました」

「それにケイト…」


何を言って叩けばいいか、思いつきませんわ。


とにかくすごくムカムカが溜まっていますのに。


「クリス様、今日は『しまぱん』ですか?」

「違います!水玉ですわっ…って何を言わせますの!」


ピシピシピシピシ!


「あっうっくっあうっ!」


ケイト、ナイスですわ。


今履いている下着を教えてしまいましたけど、おかげで叩きやすくなりましたの。


「本当に」


ピシピシピシピシ!


「エッチな」


ピシピシピシピシ!


「椅子ですわねっ」


ピシピシピシピシ!


ああ、気分が晴れてきましたわ!

お読みいただきありがとうございました。

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次回も明日、1月13日18時更新です。

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