第50話 ドS王女様は髪型を変える
毎日投稿で50話まで来ました。
これからも頑張って半畳生活書いていきます!
-王女クリステラ視点-
こけこっこー!
んー。
「…さま」
「ん?」
「クリス様、朝ですよ」
「んー、もう少しだけ」
「今朝は寝袋じゃないから、お母様にバレますよ」
「えっ?!」
急に頭が冴えて体を起こすわ。
そうだわ、夕べはケイトの上で寝たのね。
道理でよく眠れたはずだわ。
これからは寝袋をやめてそうしようかしら。
ぶつけたコブは無くなっているし、もう痛くないわ。
腰はどうかしら?
とりあえず立ち上がってみますわ。
すっく
「大丈夫ね。ケイト、夕べは迷惑を掛けましたわ」
「いえ、それが下僕の務めですから」
「ご褒美ですわよ」
なでなでなで
「あっ。ありがとうございます」
ふふっ、嬉しそうね。
こっちまで気分が良くなるわ。
「さあ、今朝は逆にお母様を起こしてあげますの!」
『内線通話』を取り出すと、お母様に掛けますわよ。
トゥルル、トゥルル
トゥルル、トゥルル
トゥルル、トゥルル
あら?
おかしいわね、出ないわ。
トイレかしら?
「とりあえず、ケイトは椅子になりなさい」
「はい」
すとん
ケイトに座るのも久しぶりですわ。
毛糸で編んだクッションを背中と壁の間に挟んで、相変わらずいい座り心地ですわね。
さすが『最高の椅子』ですわ。
「とりあえず着替えますわ。ケイト、これからはわたくしが洗面所に行く間にこちらで着替えなさい。時間は15分で足りるかしら?」
「大丈夫です。全然余裕です。でも、顔を洗いたいので、あとで洗面所に行かせてください」
「寝ぐせも直すといいですわ」
くいくいっと飛んでいる髪の毛を引っ張ってやりますの。
「あっ、すみません。そうします」
「ケイトもわたくしみたいに『髪を整える魔道具』が必要かしら?」
「あの縦ロールって魔道具で整えていたんですか?」
「そうですわ」
「俺は髪が軽いくせっ毛なので手櫛で整うから、そういうのは必要ないです。でも、魔道具であんな綺麗な縦ロールになるんですね」
「お母様からいただいたものなのよ。ケイトは、使うところを見たいかしら?」
「いいんですか?!」
「着替えたら呼びますわ」
わたくしは洗面所に移動して朝の身支度をしますの。
服を脱いで、顔を洗って、うがいして、服を着て。
もう呼んでもいいわね。
「ケイト!来てもよろしいわよ」
「はい!」
ケイトがこっちにやってきましたわ。
「これがその魔道具よ。『頭髪制御櫛』って言いますのよ」
「見た目は普通の櫛ですけど、結構大きいですね」
「使いにくそうに見えますけど、髪に触れられればいいのよ。『髪型調整』!美しい縦ロールにしなさい!」
いつものように櫛から出た光がわたくしの髪をくるくると綺麗に巻き上げていきますわ。
「早い!」
「そうですのよ。洗面所を使える時間は限られていますから、早いほうがいいですのよ」
「それって、言った髪型になるんです?」
「どういうことかしら?」
「いえ、クリス様なら他の髪型でも似合うかなって思って」
そうかしら?
わたくしは美少女ですもの、どんな髪型も似合うに決まっていますわ!
でも、ケイトが思っている髪型ってどんなのかしら?
エメル姉さまは肩までの髪型をウェーブにして、サフィ姉さまはもっと短い髪形をストレートのままですの。
こんな長い髪が綺麗に収まる髪型がそんなにあると思えませんわ。
「ケイトはどんな髪型ならいいと思うかしら?」
「あんまり詳しくないけど、ツインテールとか似合うかなって」
「『ついんてーる』?ポニーテールの親戚かしら?」
「ポニーテールはあるんですね」
「あれは駄目ですわ。領地の壁に髪が当たって鬱陶しいですの」
頭を壁にもたれさせることもできませんのよ。
「それならサイドテールとか」
「『さいどてーる』?」
「右か左に髪を束ねるんです。ポニーテールの横版かな。ツインテールは二つに分けて、左右にやるんです」
「面白そうね。また時間のある時にしようかしら?」
「タブレットに撮影機能付けられると思うので、領地に戻って確認しませんか?」
「そうなの?それならお願いするわ」
-主人公ケイト視点-
クリス様のツインテールが見られる!
そのためにはまずタブレットにカメラ機能を入れないと。
レンズとか付いていないから、まず『カメラ機能』を召喚して、それから『カメラアプリ』を召喚すればいいな。
「『学用品召喚』!タブレットにカメラ機能を付けて!」
おおっ!タブレットの画面の上と裏側にレンズが現れた!
「『学用品召喚』!タブレットにカメラアプリを入れて!」
よし!インストールできた!
「これで使えますの?」
「はい。画面のカメラのボタンを押してください」
「…真っ白ですわ」
「それはたぶん領地の壁です。画面の裏のカメラで映していると思います」
「え?こうかしら?…あっ!ケイトが映りましたわ!」
「それで、鏡代わりにするなら、右上にある…そう、それを押してレンズを切り替えてください」
「わたくしが映りましたわ!でも下を見ていますわ」
「レンズを見ないと正面にならないんです」
「難しいですわね」
「下にある丸いボタンが撮影のスイッチなので、カメラを見てからそれを押してみてください」
「わかりましたわ」
かしゃ
音はするんだな。
俺の内臓スマホは無音なのに。
「それでどうしたら見れますの?」
「横に小さく写真が出ませんか?」
「…出てきましたわ!」
「それを押すと、撮影した写真が見れます」
「……ケイト、変な顔ですの」
「気に入らなければゴミ箱のマークを押してから、『消しますか?』で『はい』を選んで消してください」
「…消しましたの。今度は油断しませんわ!」
かしゃ
「…これは綺麗に映りましたわ!」
「それでは、髪型を変えてみましょうか。ヘアゴムとかあります?」
「ありませんわ。もうずっとこの髪型ですのよ」
「それなら、俺が出していいですか」
「まかせますわ」
サイドテール用のヘアゴムと、あとツインテール用のリボンだな!
ヘアゴムでもいいかもしれないけど、やっぱりツインテールはリボンじゃないと!
待てよ。
漫画やアニメの知識で大丈夫かな?
一応妹たちにも聞いてみよう。
「クリス様、すこし考えをまとめるので待っていてください」
「それなら撮影して待っていますわ」
かしゃ、かしゃ
よし、今のうちに。
ケイト「マリナ、カリナ、おはよう」
マリナ「お兄ちゃん、おはよう!」
カリナ「おにい、おはよう」
ケイト「クリス様の髪型を縦ロール以外にしてみたいけど、ツインテールとかどう思う?リボンをつけたいんだけど」
マリナ「可愛いと思うの!」
カリナ「アニメキャラ?萌え萌えにしたいのですね」
うっ、そうだよ!
マリナ「マリナより長い髪のお友達が、リボンを編み込んだツインテールにしてたよ!こんなの!」
ぴこん
CHAINに上げられた絵はツインテールの少女のイラスト。それもかなりうまい。ツインテールにリボンがクロスするように編み込まれている。
ケイト「なにこれ、今描いたの?」
マリナ「描いたというか、想像したものを転写できるみたい」
ケイト「何それすごい」
マリナ「これなら、長い髪のクリス様にすごく似合うと思うの」
カリナ「似合いすぎる気がしてちょっと嫉妬」
ケイト「ありがとう!助かった!」
マリナ「お礼はツインテールにしたクリス様の写真で」
ケイト「任せろ!」
そのくらいのお礼はしないとな!
「クリス様、お待たせしました!『日用品召喚』!クリス様のツインテールに使える編み込みできる長さの真っ赤なリボンを2本!」
ながっ!
でも、内臓スマホに言うことを下書きするから噛まずに言えるぞ。
よし、出た!
そういえば勝手に赤にしたけど良かったかな?
-王女クリステラ視点-
「クリス様、お待たせしました!『日用品召喚』!クリス様のツインテールに使える編み込みできる長さの真っ赤なリボンを2本!」
編み込み?
どうするのかしら?
ケイトの手に真っ赤なリボンが握られましたわ。
「クリス様、赤にしてしまいましたけど良かったでしょうか?」
「今更聞くのかしら?」
「すみません」
「ケイトがわたくしに似合うと思ったのなら、赤でいいですのよ」
「はい!きっと似合います!」
あとは髪型のことを良く知っているケイトに魔道具を使わせないといけませんわね。
魔道具をケイトに渡して、わたくしは髪をケイトの前に垂らしますのよ。
「じゃあ、行きます。『髪型調整』!この2本のリボンを使った編み込みのツインテール!」
するするする。
リボンが生き物のように動いて、わたくしの髪に巻き付いてきますわ。
縦ロールもまっすぐになって、リボンと交差していきますの。
編み込むって、こういうことですのね。
結構時間かかっていますわ。
…終わったみたいですの。
タブレットを見ると、そこには見たことが無いわたくしがいましたわ。
かしゃ
「どうです?クリス様?」
かしゃ
かしゃ
かしゃ
「クリス様?」
「可愛いですわっ!この髪型、すごく可愛いですの!」
赤いリボンが金色の髪のいいアクセントになっていますの!
それに後ろじゃなくて横から肩にかけて伸ばしているから、邪魔になりませんわ!
縦ロールよりは長いですけど、何だかわたくしが、ん、自分で言うのもなんですけど、その、優しい感じに見えますのよ。
いい写真がいっぱい撮れましたわ!
「この写真を姉さまたちに見せたいですわ!」
「それなら、あちらでもタブレットを出してもらって、やり取りできるようにします?」
「そんなことできますの?」
「できると思いますよ」
-主人公ケイト視点-
椅子モードだと正面からクリス様を見られないや
自撮りモードだと、俺の反対側だから、反対の横からになるんじゃないかな?
…あれ?クリス様の真正面だ。
どうなってるの、この内臓スマホの自撮りモード?
そもそもカメラもレンズもないところから撮影しているし。
まあいいや。
「この写真を姉さまたちに見せたいですわ!」
俺も自慢したい!
さっそく妹たちに送らないと!
「それなら、あちらでもタブレットを出してもらって、やり取りできるようにします?」
「そんなことできますの?」
「できると思いますよ」
俺と妹でも通信できているから、きっと大丈夫だ。
でも、タブレットの召喚のお願いは『内線通話』でしてもらわないとな。
そうじゃないと、こっそりやり取りしているのがバレてしまうよ。
「『内線通話』!エメル姉さまに」
「それって、三者通話できません?」
「ケイト、うるさいですわっ!」
ぺしっ!
「すみません」
「もういいですわ。それで、何ですの?」
「三者通話できるなら、一度に話が終わりますよ」
「『さんしゃつうわ』?」
「二人に同時につなぐって言ってください」
「できるかしら?『内線通話』!姉さまたちにつないで!」
「はーい」
「どうしたの?って、あれ?エメル姉さまの声?」
「『さんしゃつうわ』って言うらしいの」
「エメル姉さま、マリナの世界では大勢で一度に通話することがあるんだよ」
マリナの声も聞こえる。
これ、6者通話になりそうだな。
「実は、タブレットで写真を撮りましたの!」
「タブレットね!マリナから聞いているわ!今から出そうと思っていたの!」
「私もよ!」
「それで、えっと…ケイト、説明して」
「『CHAIN』ってアプリを入れると、会話をしたり、写真が送れるんです」
「すごいわね!」
「準備するから待ってて!」
10分後。
「できたわ!操作はマリナに教わったわよ」
「こちらもよ!」
「じゃあ、送りますわね。えいっ」
ぽふっ
「…クリス、すごいわこれ」
「ちょっと、すごく可愛いわ!カリナさ…カリナ!私の髪型もこんなふうにならないかしら?」
サフィ姉さま、カリナさんって言いかけてるな。
お友達みたいに思ってくれているのかな?
二人きりだと、お互い呼び捨てだったりして。
「サフィ…様のは短いのでそれは無理です。でも、可愛い髪形ならできる」
やっぱり呼び捨てにしかかってるな。
うん、仲がいいのはいいことだよ!
「カリナ!クリスみたいなリボンがいいの!リボンをつけて!」
「マリナ、私はどうかしら?」
「髪の毛の長さがあるので、いろいろできると思うの」
「私もリボンが欲しいわ!緑で!私、緑が好きなの!」
名前がエメラルディだもんな。
「普通の緑はエメル様の栗色の髪にはちょっと地味かも…ううん、パステルグリーンなら…エメラルドグリーンってあったかな?」
「カリナ、私は青で!」
「銀髪に青は似合うと思う。きっとサファイアブルーが似合う」
「そうよね!」
「姉さまたち、相談は通話を切ってからにしてくださいまし」
「あっ」
「ごめんね」
「いいですわ。姉さまたちも髪型変えたら写真を送ってくださいます?」
「ええ!」
「びっくりさせてあげるわ!」
通話終了。
6者通話とかにぎやかすぎるな。
でも、なんか楽しいや。
やっぱり姉妹や兄妹がこうやって仲良くしているのっていいよな。
その後、きれいなリボンを付けたエメル姉さまとサフィ姉さまの写真が送られてきて、クリス様と鑑賞することになった。
姉さまたちがすごく可愛くなってた。
こういう交流できるのって楽しいな。
クリス様も楽しそうに微笑んでいるし。
それにツインテールのクリス様は破壊力ありすぎです。
…あれ?なんか忘れてないかな。
朝ごはんがまだだよな。
…あっ!!
「クリス様!お母様って大丈夫でしょうか?」
「あっ!いけませんわ!すっかり忘れていましたの!」
トゥルル、トゥルル
トゥルル、トゥルル
トゥルル、トゥルル
「で、出ませんわ!」
「姉さまたちに連絡したらどうでしょう?」
「わかりましたわ!」
「どうしたの、クリス?」
「エメル姉さま!お母様に連絡ができませんの!」
「トイレじゃないかしら?洗面所とか?」
「7時にかけて出なくて、今は8時ですのに出ませんの!」
「まさか何かあったのかしら?えっと、緊急時は…クリスも覚えておきなさい。緊急時はこの『内線通話』の青いスイッチを強く押し込むのよ。それで相手の状況がわかるわ」
そんな機能あるんだ。
「お母様の様子を教えて!…いけない!『赤』になったわ!共用扉から緊急接続して見に行くわ!」
「わたくしも行きますわ!」
いったい何があったんだ?
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、1月7日18時更新です。




