第5話 ドS王女様から初めてのご褒美
ケイトは高校生で家庭教師の経験があるわけではないので、教え方は我流です。
令和元年12月9日。分かりにくいところの修正をしました。
令和2年1月4日
初期でクリステラの言い回しが現在と違っているため修正しました。
-王女クリステラ視点-
ケイトがノートと鉛筆と消しゴムがほしいと言ってきたわ。
正直、わたくしのを貸したくはありませんのよ。
ケチではないですのよ。
その、その、
ちょっとばかり字が曲がっていますの!
王女として、そんなものを見せられませんわ!
ですから魔晶石を渡して召喚してもらうことにしますわ。
でも、魔晶石がもったいない…。
いえいえ。
もし勉強ができて、テストでいい点を取れたら、王から下賜される俸禄が増えますわ。
わり算どころか、もし数学まで覚え始めたら、何倍もの俸禄がいただけますの。
今後の為と思って、ここはケチらず魔晶石を渡しますわ。
「『学用品召喚』!タブレット出てくれ!」
たぶれっと?
いったい何ですの?
「出た!」
足元を覗き込むと、ケイトの手には四角い魔道具の様なものがあります。
「ええっ?!」
表面が光って何やら文字が浮かび上がる魔道具ですわ。
そんなものが学用品召喚で出せますの?
『お絵かきアプリ』
小さくそう書いてあるみたいですわね。
わたくし、目はすごくよろしいんですのよ。
「な、なんですのそれ?!」
ああっ!思わず興奮ぎみに聞いてしまいましたわ!
相手は下僕。
ここは王女らしく振る舞わないと!
「ケイト、それは何かしら?わたくしにわかるように説明なさい」
私の変わりように一瞬きょとんとした表情をしてから我に返ったケイトは、『たぶれっと』をわたくしが見やすい畳の上に置いて説明を始めてくれましたわ。
「これは『タブレット』といって、いろいろなことができる道具です。このアプリを起動すると」
さっきの『お絵かきアプリ』にケイトの指が触れると、何か四角い紙みたいな模様が浮いてきて、いろんな模様が入った四角いものが並んでいます。
「これを押してから、こう指でなぞると、そのとおりに線が引けます」
ケイトは『たぶれっと』の表面を指先ですいっとなぞると、そのとおりに線が引けていきます。
「こうやって、文字を書いたり消したりして、ノート代わりに使えます」
すごい!なんてすごいの!
初級の『学用品召喚』スキルで、こんなすごいものを出せるなんて!
でも、ここは王女の威厳で、平然としてみますわ。
「そう。まあ、便利そうではあるわね。さあ、早くわり算を教えなさい」
でもすごくドキドキしますわ。
早くそれを使ってみなさい!
「というわけで、このりんごをこの子に2つ配って」
ケイトがりんごの絵にふれてそのまま指を動かすと、りんごの絵が指についていって動きますん!
「すごいっ!ケイト、すごいわっ!…あっ」
しまった、つい下僕を絶賛してしまいましたわ。
でも、本当にすごいわ。
本当に彼は最高の椅子ね!
-主人公ケイト視点-
図を使って教えると、クリス様はきちんと理解できるようだった。
「すごいっ!ケイト、すごいわっ!…あっ」
図を動かした時なんか子供みたいにはしゃいで、そのあと恥ずかしくなったのか顔を赤らめて…。
可愛い。
クリス様最高です。
もう先生になっても俺はずっと椅子でいいです。
「では、6わる2は?」
俺が問題を出すと、クリス様は渡したタブレットに指先で数字や絵を書いて計算しています。
「3ですわ」
「正解です!」
「やりましたわ!」
ここまできたら、九九の逆もできるのでは?
「クリス様、九九はおできになるのですよね?」
「もちろんですわ」
「九九を反対に言えますか?」
「反対?」
首をかしげるクリス様。
分かりやすく言わないとだめだな。
「つまりですね、2かける3は6というのを、にさんが6って言いますよね」
「そうですわ」
「2と3をかけると6になるわけです」
「そのくらいわかりますわ」
「じゃあ、2と何を掛け合わせると6になりますか?」
一瞬固まるクリス様。
「今、2と3をかけると6と言ったばかりですわ。だから3ですわね?」
「当たりです。では、2と何をかけると8になりますか?」
「そんなのわかりませんわ」
クリス様はすぐに無理と思ったみたいだ。
「クリス様、九九の呪文で、その答えが見つかりますよ。2の段で、8になるものを探してください」
「にいちが2、ににんが4、にさんが6、にしが8…2・4が8?あっ?!」
「どうです?2といくつをかけると8になりますか?」
「4よ!」
「そうです。そしてこれはわり算の解き方になるんです」
「?」
再び首をかしげるクリス様。
「8わる2をやるときは、8という答えになる九九を2の段で探せばいいんです」
「ちょっと待ちなさい」
クリス様はタブレットに○を書いて8わる2を計算する。
「4になるわね。にしが8。8わる2は4。2に4をかけたものが8…ああっ!」
-王女クリステラ視点-
わたくしはタブレットに○を8こ書いて、それを2人の子どもに均等に配り、4こずつという答えを出しましたわ。
この道具は本当に便利だわ。
「4になるわね。にしが8。8わる2は4。2に4をかけたものが8…ああっ!」
今、ビリッときましたわ。
何か、わたくしの中で閃いて、
つながって、
そして理解しましたの!
かけ算とわり算は姉妹だったのですわ!
九九の呪文があれば、わり算の答えも出せるのですわね!
「ケイト!わり算の問題を出しなさい!」
「では、12わる2は?」
いきなり二桁?
でも、今のわたくしにはできますの。
12がかけ算の答えになる、2の段の九九は、
……にろく12、2・6・12!
「6ですわ!」
「正解です!」
すごい!すごいわ!わり算をこんな短時間でマスターできるなんて!
わたくしは天才ですわ!
それにケイトは素晴らしいですわ!
これは王女として褒美をあげなくてはなりませんわね。
「ケイトよ」
「はい」
「良く教えてくれましたわ。褒美を取らせますの」
わたくしはケイトに魔晶石を2つ手渡しますわ。
貴重なものだけど、ケイトはそれだけの働きをしてくれましたもの。
「ありがとうございます」
そして思わずわたくしはお礼を言うケイトの頭をなでていましたわ。
「クリス様?」
はっ!?しまったわ。
下僕の頭をなでるなんて。
増長させてしまってはいけないわ。
わたくしは王女。ケイトは下僕。
身分の差、立場の違いをはっきりさせないと。
「この『なでなで』もご褒美の一部よ。わたくしに『たぶれっと』を貢いでくれた礼ですわ」
「え?あ、はい。ありがとうございます」
今の『え?』は何かしら?
それより、『たぶれっと』って楽しいわね。ちょっとお絵かきしますわよ。
-主人公ケイト視点-
クリス様は俺に魔晶石を2つくれただけでなく、頭までなでてくれた。
それでちょっとほっこりしていたら、クリス様はとんでもないことをおっしゃった。
「この『なでなで』もご褒美の一部よ。わたくしに『たぶれっと』を貢いでくれた礼ですわ」
「え?」
タブレットを召し上げられた?!
でもまあ俺は下僕だからな。
元々クリス様の魔晶石だし。
「あ、はい。ありがとうございます」
そしたらクリス様は教科書を読むときのように、タブレットを胸の上に載せてお絵かきを始めました。
ああ、俺もタブレットになりたい!
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