第47話 サフィ姉さまと双子の妹カリナ
姉さま編はもうちょっと続くんじゃ。
また時間を戻して、サフィ姉さまとカリナが領地に戻った直後です。
-王女サファイラ視点-
カリナって子、双子だけあってあのマリナって子と瓜二つだけど、表情が違うのよね。
静かと言うか、涼やかって感じかしら。
クリスには最高の椅子って言われたけど、うまくやっていけるかしら?
ううん、私は王女で椅子の主人なのよ。
しっかり言うことを聞かせてみせるわ!
「サファイラ様のテーブルは可動式で便利そう」
「そう!よくわかったわね!」
これはランダム召喚で出たテーブルなのよ。
私の趣味は珍しいものの解析。
それで、色々な知識を得ることが好きなのよ。
そのためにわざと召喚したい物の名前を言わない『ランダム召喚』をしているのよ。
ランダム召喚で出たものは大抵小さなものだけど、たまに大きなものや長いものとかも出てくるの。
だから物を解析するのにテーブルの高さが変えられると何かと便利なのよ。
しかもこのテーブルは折り畳めるから、異次元箱にも入るのよね。
だけど高さの変えられる椅子は無いから、食事の時はテーブルを一番低くして、畳に座って食べていたのよ。
でも高さが変えられるテーブルのお陰で、椅子に座っていてもテーブルが丁度いい高さにできるから良かったわ。
「そうだわ、カリナ。何かランダム召喚で出してごらんなさい。異世界から来たあなたなら、きっと面白いものが出てくるわ!」
そして私はカリナに魔晶石を手渡す。
「たくさん渡しておくから、私が使うように命じたらそこから使いなさい」
「はい」
「では、さっそくランダム召喚するのよ。召喚する物は、日用品でいいわ」
-双子の妹カリナ視点-
椅子の仕事はあとみたいです。
とりあえずランダム召喚します。
「『日用品召喚』!」
カリナの右手に現れたのは『傘』。
この世界は外に出ないから、傘なんて有っても使わないと思うけど。
「あら、傘ね。それなら前に出てきたわ」
「申し訳ありませんでした」
「いいのよ。5回ランダム召喚してそれなりに面白いものを見つけられるのだから」
慰められているけど、すごく悔しい。
この傘が普通のじゃなければ良かったのに…これは?
「サファイラ様、前に出てきた傘は、どうやって広げましたか?」
「持ち手の上にある出っ張りを押し込んでから、こんな感じで開いたわ」
それ、手動の傘です。
「サファイラ様、これ、こう持って、ここを押してください」
危なくないように持たせないと。
「これを押すの?えい」
バシュッ!
傘は自動で開く。
いわゆるジャンプ傘。
「何これっ!どうなってるのっ!」
「カリナが説明した方がいい?それともサファイラ様がまず考えてみる?」
-王女サファイラ視点-
これは面白いわ!
ボタンを押しただけで開くなんて!
「何これっ!どうなってるのっ!」
「カリナが説明した方がいい?それともサファイラ様がまず考えてみる?」
そうか、カリナは知ってるんだ。
じゃあ、これは異世界の物なのね。
いきなり答えを言われなくて良かったわ。
楽しみが無くなるところでしたもの。
「カリナはいい子ね。これからも私が教えてほしいと言うまでは言わないでちょうだい」
「わかりました」
いい子だけど、やっぱり淡々としているのね。
もう少し子供らしく笑ったりしないのかな?
そういえば、以前に見つけたものだけど何かわからないままで保管していた物があったわ。
「カリナ、これが何か知っているかしら?」
異次元箱から出したのは四角い箱。
木製で表面にいろんな模様が描いてある。
でも、それだけ。
振っても叩いても押しても引いても、何も起こらない。
でも、何か有るって私のカンが告げている。
「見せてください」
手に取ってじっと見ているけど、知らないものかしら?
「似た物は見たことありますが、動くか試してもいいですか?」
「いいわよ。私が調べた時は何一つ動かせなかったわ」
模様に合わせて押したり引いたりしているわね。
私と目の付け所が似ているわ。
「動かないですね。てっきり寄せ木細工の秘密箱かと思いました」
「『よせぎ細工の秘密箱』?それは何かしら?」
「実物を出してみていいですか?」
「いいわよ」
「『上級日用品召喚』!寄せ木細工の秘密箱!」
カリナの手のひらに出てきたのは小さな箱。
でも、とても素敵な模様が付いている。
「サファイラ様、どうぞ」
これも箱だけど開けられないのね。
でも、どこかに仕掛けが有るとか…やっぱり!
少し動くところがあるわ!
これがこうで、あっ!こっちも動くようになったわ!
一時間かけて、やっと箱を開けられたわよ!
「サファイラ様、お見事です」
「これよ!私はさっきの箱がこういう仕組みじゃないかって思ったのよ!でも、どこも動かないから、もう半分諦めていたの」
「『鑑定』は使わないのです?」
「答えがわかったら面白くないでしょう?」
「はい。それなら、分析用の魔道具を作ったらいいと思うのです」
分析用の魔道具?!
どういったものなの?
「カリナの世界には物を透視する機械がある。でも、大きすぎるからここには入らない。だけどこの世界には魔法があって魔道具がある。きっと透視できる魔道具があるはず」
「『とうし』?」
「物の中身を、透かすように見えるようにすること」
「何それ凄いわ!」
それなら、この箱がただの木の固まりか、そうじゃないかを調べられるわね!
「魔道具の材料を召喚してもいいです?」
「やってみて。うまくいかないなら、完成品を召喚すればいいわ」
でも魔道具の完成品は、材料から作るよりかなり品質が落ちるのよね。
何とかうまく材料を召喚して作れたらいいのだけど。
「『上級魔道具召喚』!物質を透過する波長を出す物と、それを受けて透過具合で陰影を付けられる感光板を使った魔道具の材料!」
いきなり上級魔道具召喚?!
しかも、たくさんの材料が出てきているわ。
「サファイラ様、魔晶石を3つも使ってしまった」
すまなさそうにしているけど、完成すれば安いものよ!
「座って作りましょう。カリナ、座椅子になりなさい」
「はい」
テーブルの高さを調節してカリナの膝に座るわ。
ああ、いい座り心地だわ。
特にこのネックピローが最高よ。
ううん、それより魔道具の組み立てをしないと。
「これはどういう魔道具なの?」
「物質を透過する波長を出す部分がこれ。波長は物質を透過するとき、密度の高いものを抜けると波長が弱くなる。その違いをこの部分で受け止めて示すようにする。あとのこれはカバーやボタン類」
なるほど、ふんふん、そういう仕組みなのね。
…
…
できたわ!
魔道具は完成したときに鑑定した方がいいのよ。
失敗していると、危険なものになったりするのよね。
「『鑑定』!この魔道具は何?」
『擬似X線撮影機』
物質をすり抜ける光線を出す部分と、受け止めて表示する部分からなる魔道具。
それぞれを調べたい物の両側に置き、 ボタンを押して撮影する。
魔道具であるため、受け止めて表示する部分は何度でも使用可能。
リセットボタンで表示を消せる。
擬似X線は無害。
「…という訳で、うまくできているわ。さっそく試すわよ!」
謎の箱を魔道具で挟み込んで撮影すると…写った!
やっぱり!
中には空洞があって、何か丸いものが入っているのが見えるわ!
「もっと調べたいけど、夕方だからそろそろお風呂に入るわよ」
「はい。サファイラ様の頭や体を洗わせてください」
「え?そうね、してもらおうかしら?」
「それと、さっきの箱をお風呂に持っていきませんか?」
「どうしてかしら?」
「手で動かせないなら、他に動かす方法があるかと。濡らすとか温めるとか」
そうね!
その発想はなかったわ!
この椅子、凄く目の付け所がいいわ!
少し無愛想っぽいけど、機嫌が悪い訳じゃないみたいだし、何だか慣れてきたわ。
「じゃあ、さっそく入りましょう」
カリナって、脱ぐとまるでクリスみたいね。
胸が大きくて、ちょっとツンとしたところとか。
ツンって、胸の先のことじゃないわ。
性格よ、性格。
クリスの胸もこんなふうかしら?
それにクリスの小さい頃は私が頭を洗ってあげたのよねえ。
可愛かったわあ。
クリスは立派な王女になりたいって、言葉遣いも小さいときからお母さまみたいにしっかりしていたのよね。
領地が与えられて離ればなれにならなければ、もっとクリスと一緒に居られて…。
わしゃわしゃ
はあ、髪の毛を洗ってもらうのって気持ちいいわね。
体を洗ってもらうのははちょっと恥ずかしいけど。
「先に湯船にお入りください」
カリナは自分で洗うのよね。
クリスほどじゃなくても、私より長い髪ね。
クリス…。
わしゃ
「サファイラ様?」
「カリナ、あなたの頭を私に洗わせて」
「えっ?!でも」
「主人の命令が聞けないの?」
「はい、よろしくお願いします」
-双子の妹カリナ視点-
わしゃわしゃわしゃ
どういうこと?
何で下女であるカリナの頭をサファイラ様が洗ってくださるの?!
理解不能です。
わしゃわしゃわしゃ
しかも、結構うまいです。
もしかして、クリス様の頭を洗ってあげていたのでしょうか?
わしゃわしゃ
それにしても、ランダム召喚でシャンプーやボディーソープまで手に入れていたなんて。
せっかくカリナの好きなシャンプーを教えて兼用にしようとしたのに。
わしゃわしゃぬるっ
「ひゃっ!」
髪の毛を洗っていた手が、いつの間にかカリナの肩から背中に移動してきました!
手、手で体を洗うなんて、へ、へ、変態?
あ、あう、はう。
こ、声が出そう。
声を出さないようにして耐えないと。
カリナはサファイラ様の椅子なのだから、何をされても大丈夫じゃないと。
「こうしているとクリスとお風呂に入っていたことを思い出すわあ」
やっぱりそうなのですね。
カリナをクリス様だと思ってやっているのなら仕方ないです。
ぬるぬる
にゅるにゅる
いつの間にかちゃんとボディーソープに変えているのです。
王女様に奉仕されるのって不思議な感じ。
でも、あっ。
にゅるん、きゅっ
胸は、ああっ、
むにむにむに
胸は、そんなにしちゃ。
むにむにむに
「ああ、クリスの体を洗っているときを思い出すわあ」
「サファイラ様…何歳までクリス様と入っていらしたのですか?」
「私が9才でクリスが7才よ」
むにむにむに
「ああ、クリスの胸を洗っている時を思い出すわあ」
ぷちーん
「7才にこんなに揉み洗いするような胸はないです!」
ぱこんっ!
「はうっ!」
はっ?!
し、し、しまったです!
サファイラ様の頭を反射的に叩いてしまいました!
これで送還されたらおにいと永遠の別れ。
あ、あ、謝らないと!
「ごめんなさい!」
素早く土下座をして謝った。
…のは、サファイラ様のほうだった。
どういうこと?
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、1月4日18時更新です。




