第44話 ドS王女様は一緒に入る
クリス様はこういう環境なので、価値観が色々違います。
そして恥ずかしさはあっても、それが恋愛感情にはなりません。
あくまでも王女と下僕(椅子)の関係です。
でも、お互いをとても大切に思い合えます。
そういうスタンスで今後も進む予定です。
-王女クリステラ視点-
ケイトという素晴らしい下僕が居るお陰で、柔軟をしてもらえて、お風呂にも入れてもらえるなんて、すごく楽ですわ!
腰が抜けているから移動と髪の毛を洗うのはお願いしても、服を脱ぐのと体を洗うのは自分でしますから、問題ありませんのよ。
わたくしがしっかり目隠しすればケイトに見られているって感じなくて、ちっとも恥ずかしくありませんもの。
やっと脱げましたわ。
腰が持ち上がらないと結構大変ですけど、さすがに服を脱がしてもらうわけにはいきませんもの。
「ケイト、わたくしを運びなさい」
「はい」
ケイトが脱衣場に入って来るのが気配でわかりますわ。
目隠しって、何か見えないものを感じる練習みたいで楽しいですわね!
-主人公ケイト視点-
無味乾燥
人畜無害
覚悟完了
俺は椅子だ!下僕だ!
だから、何も恥ずかしくない!
「ケイト、わたくしを運びなさい」
「はい」
そう、俺が戸惑うそぶりを見せたら駄目だ。
さも当たり前のようにしていないと。
俺は脱衣室の床に座っているクリス様の背中と膝に手を通して、お姫様抱っこで連れていく。
本当は体にあんまりくっつけたくないけど、転んだら危ないからな。
それより、目をつぶりたいくらいだけど、危ないからそういうわけにもいかない。
もう開き直る。
これからずっとこういう毎日なんだ。
いちいち恥ずかしがっていられない。
いや、恥ずかしいけど、それを圧し殺せるような強い椅子にならないと。
無意識かどうかわからないけど、クリス様が手で胸を隠してくれているのがせめてもの救い。
大きすぎて、先っぽ以外全然隠れてないけど。
クリス様を湯船の前に降ろして、俺は急いで脱衣室に戻って着替える。
「ケイト、まだ脱いでいませんでしたの?」
「はい」
「寒いから、早くしなさい」
「はい!」
俺は急いで風呂場に戻ると、クリス様の頭を洗い始める。
3日目だけど、慣れてきた感じがするな。
クリス様の髪は長くてすごく綺麗だ。
これ、洗わせてもらっているだけで幸せだな。
「はい、終わりました」
「早いですわね」
「慣れてきましたので」
「もう少し、頭を洗ってほしいですの。ケイトに洗ってもらうと気持ちいいですわ」
「わかりました」
わしゃわしゃわしゃ
これから頭は念入りに洗うことにしよう。
「じゃあ、体を洗うから待っていなさい」
「はい」
…
「ケイト、わたくしを湯船に入れなさい」
「はい」
「湯船は大きいから、ケイトも入れますわね」
はっ?!
「湯船の外からわたくしだけ入れられたら怖いですわ」
それもそうだけどな。
「わかりました。急いで体を洗います」
もう俺は全てを超越した。
そう『超椅子』なんだ。
だから、ちっともはずかしくなんかない。
ざばっ
ざぶん
「ああ、いい気持ちですわ。ケイトの肩にもたれて入るのもいいものですわね。でも、どうしてケイトの上にのせてくれませんの?」
「そうするとお風呂が浅いから、クリス様の肩が出てしまいますよ」
嘘です!
上に乗せるなんて絶対に無理です!
-王女クリステラ視点-
この湯船は二人でも入れますのね。
わたくしが足を伸ばせなくなりますけど、これはこれでいいですわ。
今まではケイトに湯船の外で待たせていましたけど、これなら二人で温まってから出られますわね。
椅子であり布団であるケイトが風邪をひいてはいけませんもの。
こうしていると、結構時間がありますわね。
40分ぎりぎりまで入っていたいですわ。
「ケイト、あなたの妹たちのことが聞きたいですわ」
「どういった話がいいですか?」
「わたくしには妹や弟がいませんから聞きたいのですけど、妹たちが生まれてきたとき、どう思ったのかしら?」
「それは知らないんです」
えっ?どういうことかしら?
「クリス様、あの二人には内緒にしていだけますか?」
「ケイトが内緒にしてほしいということなら、わたくしは絶対にもらしませんわ」
「実は、俺たちは本当の兄妹じゃないんです」
ケイトたちの両親は、それぞれの妻と夫を亡くして、子連れで再婚したそうですの。
その時妹たちは1歳だったから、本当の兄妹と思っているそうですわ。
「妹ってどんな感じですの?可愛いですの?わがままですの?」
「可愛いですよ。そして、わがままです」
わがままなのね。
わたくしのことも、姉さまたちはそう思っているのかしら?
わがままな妹って思っているのでしょうね。
「わがままだけど、そういうところもまた可愛いんです」
「そうなの」
「ええ、きっとクリス様も姉さまたちにそう思われていますよ」
えっ、どうしてそんなことを?
きっとわたくしの考えていることがわかったのね!
「ケイト、そう言ってくれて嬉しいですわ」
「はい」
「でも、それ以上に頭に来ましたわ」
「え?」
「ケイトはわたくしがわがままと思っていますのね」
「あ」
ふふっ。
失礼な下僕ですわ。
「えいっ!」
ざばっ!
ケイトの顔があると思われる場所にお湯をかけますの。
「わあっ!」
どうやら、命中ですわね。
「えいえいえい!」
わたくしは振り返って両手でざばざばとお湯をかけますの。
見えなくてもケイトの困っている様子が伝わってきますわ。
「クリス様、お湯が減ります!」
「かまいませんわ!お湯を足しておきなさい!」
-主人公ケイト視点-
ざばっ!
うわっ!
うかつなことを言ったから、お湯をかけられた!
「えいえいえい!」
クリス様!
振り返ってまでやらないで!
胸って浮くんですねっ!
なんて観察している場合じゃないけど!
「クリス様、お湯が減ります!」
「かまいませんわ!お湯を足しておきなさい!」
それ以前の問題ですっ!
ああ、もう。
つるぺったんとはいえ、妹たちとは普通に風呂に入っていたのだから、クリス様も妹だと思って兄の心になろう。
俺が恥ずかしがったら、クリス様がそもそも『自分が目隠ししているから、俺に見られているってわからなくて平気』っていうのがおかしいってことに気づいてしまうからな。
下僕として、クリス様の心の平穏を守らねば。
それに何だか、無邪気に水をかけているすごくクリス様ってすごくいい表情だな。
あっ
しまった。
つい、撮影してしまった。
えっと、胸から上だよね。
確認して、
上半身ほぼ写ってた。
でも水しぶきでうまいこと先端は見えないな。
ある意味奇跡的なショットかも。
二度と無いものかもしれないから保存しておこう。
ごめんなさい、クリス様。
フォルダ深くに沈めておきます。
妹たちにも絶対見せられないな。
-王女クリステラ視点-
ああ、楽しかったですわ。
お風呂って、こんなに楽しくて気持ちのいいものですのね。
「ケイト、そろそろ出ますわ」
「はい」
また脇の下と両膝に手を通されて持ち上げられますわ。
本当に軽々と持ち上げてくれて頼もしい下僕ですわね。
姉さまたちの椅子は女の子ですから、こんなことできるのかしら?
いえ、姉さまたちはわたくしより胸の分軽いでしょうから大丈夫そうですわね。
脱衣場でケイトに降ろしてもらうと、そこは冷たい床の上ではなくてふんわりとしたタオルが敷いてありましたわ。
そういうところが、さすがケイトですわ。
さあ、風邪を引かないように早く体を拭いて着替えますわよ。
ケイトに体を拭いてもらうと楽でしょうけど、全身を触られるのは駄目ですから自分で何とかしますわ。
そういえば時間ギリギリまで入っていたから、ケイトの着替える時間が無くなってしまいますわね。
「クリス様、着替えたら呼んでください」
「ケイト、わたくしは着替え終わるまで目隠しをはずしませんから、ケイトも早く着替えなさい」
「はい」
そうですわ。
これからもこれでゆっくりとお風呂に入れますの。
-主人公ケイト視点-
しまった。
40分入れるからって、俺の着替えはクリス様が終わってからだったのを忘れてた!
「クリス様、着替えたら呼んでください」
パジャマなら急げば1分かからないからな。
「ケイト、わたくしは着替え終わるまで目隠しをはずしませんから、ケイトも早く着替えなさい」
「はい」
もう反射的に『はい』って言ってる俺。
とりあえず後ろを向いて着替えればいいや。
「『ケイトにもらった寝巻きと夜用のブラと…」
まずい!
「やっぱり先に向こうで着替えてきます!着替えたら呼んでください!」
俺は慌てて領地内に戻る。
今、クリス様、どんな下着出すか言うところだったよな。
絶対に恥ずかしいって思わせないようにしないと。
-王女クリステラ視点-
今夜は何の下着にしようかしら?
そうね、リボンの付いたシンプルなものがいいですわ。
「『ケイトにもらった寝巻きと夜用のブラと…」
「やっぱり先に向こうで着替えてきます!着替えたら呼んでください!」
わたくしの声を遮って、ケイトが領地に戻っていきましたわ。
何を慌てていたのかしら?
「ケイト!着替えましたわ」
「はい、ただいま!」
わたくしは着替え終えて、目隠しを外してケイトを待ちますわ。
「失礼します」
ケイトは再びわたくしを抱き上げて領地に戻りますの。
なぜかしら?
こうやって抱き上げてもらうのって、すごく気分がいいですわ。
でも、どうしてかしら。
いつも凄くケイトが良くしてくれると、つい何かケイトに意地悪をしたくなりますわね。
「ケイト、さっきはどうして先に戻りましたの?」
その返事次第ではお仕置きですわよ。
ぺしぺしとしてあげますわ。
「実は夕食の準備をしていました」
夕食の準備?
領地の畳の上を見ると小さなテーブルがありますわ!
でも、エメル姉さまが使っているちゃぶ台より足が高いですわね。
奥行きが短くて半畳でも邪魔になりませんけど、わたくしが使うには少し使いにくそうですわ。
「これはこうします」
ケお昼寝の時や先程の勉強の時と同じ、ケイトの膝の上にわたくしが座るという体勢になり、そのテーブルが丁度わたくしの使いやすい高さに来ましたわ。
こんなテーブルを準備して、いったいどんな夕食が出るのかしら?
わくわくが止まりませんわ!
「それではクリス様、国語の勉強の時に言っていた『定食』をお出ししますね」
「『定食』!聞いたときから食べたかったですの!」
もうわたくしの頭からケイトに意地悪やお仕置きをしたいって気持ちは綺麗に消え失せましたわ。
-主人公ケイト視点-
ふう、何とかこっちに来た理由をごまかせたな。
しかし一発で都合のいい大きさのテーブルが出てくれてよかったよ。
それにこれは俺の異次元箱に仕舞えるから邪魔にならないよな。
さて問題は…クリス様を喜ばせる定食って何がいいんだろ?
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、元日の18時更新です。




