第43話 ドS王女様は柔軟をしてもらう
このスマホツールの『CHAIN』はいわゆる『L◯NE』と同じものです。
-王女クリステラ視点-
ケイトの秘密が受け入れてもらえて本当に良かったですわ。
さあ、今から体育の時間ですわ。
今の時間に運動したら、汗をお風呂で流して、気持ちよく夕食をいただけますのよ。
「クリス様、今日は何をしましょう?」
「そうですわね。足の指に指輪をはめようとしてできないくらい体が固いのを何とかしたいですわ」
「それなら柔軟ですね」
「ケイトの知識で、何か画期的な柔軟とかありませんの?」
「画期的ですか…」
-主人公ケイト視点-
体育の授業や運動部でやる柔軟なら知ってるけど…そういえばマリナたちが体操をさせるのがウリの保育園に通っていたな。
それから体操教室にも通って、椅子とか使って柔軟していたっけ。
貧乏になってから体操教室にはいかなくなったけど、かなり体とか柔らかかったよな。
詳しくマリナたちに聞いてみたいけど、話をするには『内線通話』とか使わないといけないからなあ。
そういえば、さっきこっそりとマリナから手紙渡されていたな。
こっそり渡したってことは、一人で見てほしいってことかな?
「クリス様、トイレ行っていいですか?」
「構いませんわよ。その間にわたくしは体操着に着替えておきますわ」
俺はトイレに移動すると、マリナからもらった手紙を開く。
お兄ちゃんへ。
やっと異世界に呼んでくれたね。
ありがとう。
なんて手紙を書いてからすぐ呼んでもらえるといいのだけど。
大事なことだから、手紙にしていつでも渡せるようにしたんだよ。
マリナたちね、あれからいっぱい魔法の研究したんだよ。
勝手に魔法の教科書を撮影してごめんね。
それで、すごくいい魔法見つけたの。
『内蔵品召喚』
これで時計とか体内に設置できるの。
それでね、スマホも設置できるんだよ!
だから、心の中でお話やメールのやり取りができるの!
だからすぐに試してね!
上級内蔵品召喚だからね!
それと、この事はクリス様たちには内緒にしてね。
だって、ライバル関係のクリス様たちの椅子であるお兄ちゃんとマリナとカリナがいつも好きに話しているって、おかしいかなって思うから。
ううん、本当はお兄ちゃんとマリナたちだけの秘密がほしいの。
ね、お願い。
そんなに頻繁に使わないから。
たぶん。
基本的には困ったときの相談に使おうね。
あと、朝と夜の挨拶くらいはさせてね。
大好きなお兄ちゃんへ。
マリナ
…
マリナたち、いつの間にそんなことを。
魔晶石とかどうやって増やしたか気になるけど、今となってはもういいかな。
その内蔵品召喚する前に、一緒に入っていたカリナからの手紙も読もう。
おにいへ。
内蔵品召喚でスマホ入れてね!
詳しくはマリナの手紙を読んで。
色々勝手な事してごめんね。
でも、人に迷惑はかけてないから。
色々発見したことあるんだけど、必要なときだけ教えるね。
だって、その方がおにいと話す機会増えるから。
じゃあ、また内蔵品のスマホで連絡してね。
会話とかは『CHAIN』でしてね。
大好きなおにいへ。
カリナ
人に迷惑をかけてないならいいかな。
でも、何で人の上に『・』が打ってあるんだろ?
トイレが遅すぎるとクリス様が心配するから、とりあえずやるか!
「『上級内蔵品召喚』!マリナとカリナと通信できるスマホ!」
出た!
子供用の小さなスマホみたいだな。
時計と一緒で柔らかくて飲み込めそうだ。
んぐ、ごくっ
あ、わかる。
俺の体の中にスマホの画面が出てるよ。
時間無いから、戻りつつマリナに柔軟のことを聞こう。
そういえば『CHAIN』が使えるんだ。
おお、家族CHAINが作ってあって、招待されているぞ。
ケイト『体操教室ではどんな柔軟してた?半畳でもできるのある?』
-双子の妹マリナ視点-
あっ!お兄ちゃんからのCHAINだ!
『体操教室ではどんな柔軟してた?半畳でもできるのある?』
お兄ちゃん、マリナたちが通っていたのは体操教室じゃなくて新体操教室なんだけどな。
それにこの2年間、マリナとカリナはまた新体操教室に通ったんだよ。
体を柔らかくして、お兄ちゃんと一緒の半畳でも居られるようにってね。
それで、お兄ちゃんはクリス様と柔軟運動をするのかな。
クリス様はいいなあ。
お兄ちゃんといっぱい密着できて。
でもここは異世界だし、マリナは椅子になったから、お兄ちゃんに恋をしても許されるかな?
やっぱり駄目かな?
そんなことより、椅子に座ってできる柔軟から教えてあげようっと。
…
…
これでよしと。
あれ?
カリナからの個人CHAINだ。
『もう教えてもいいと思うから教えるね。絶対に驚かないで。急に声を上げたら、エメルさまがビックリするからね』
な、何?
メールがそこで終わってるよ。
『カリナ、いったい何?驚かないから教えて』
『おにいとカリナたち、連れ子同士なんだよ。お父さんとお母さんは、カリナたちが1歳の時に再婚したの。だから、血がつながってないからね』
う、う、うそっ!
『そんな大切なこと、どうして今まで黙っていたの?!』
『あっちの世界で教えても、カリナたちはおにいと兄妹だし、おにいがロリコン扱いされるから』
なにそれ。
カリナひどい。
でも、嬉しい。
マリナ、お兄ちゃんに恋してもいいんだね!
-王女クリステラ視点-
ケイトの教えてくれた柔軟は、椅子の上で足を持ち上げたり捻ったりするものでしたけど、そんなに難しくありませんわ。
もっときつい柔軟でもいいのに。
「クリス様、最初はこのくらいにしないと、関節や筋を痛めますよ」
そう言われると無理はできないですわ。
うーーーーん
えーーーーい
そーーーーれ
少しだけ股の関節が柔らかくなった気がしますわ。
「どうかしら、ケイト?って、何を見ているんですの?!」
ケイトは柔軟しているわたくしをほうっておいて、何かメモを見ていますわ。
「先ほどクリス様から預かった、サフィ姉さまの『魔法のメモ』です。
「何か使えそうなのあるのかしら?」
「ええ、それなんですが」
「ちょっとお待ちなさい」
わたくしは立ち上がり、片足をケイトの背中に置きますわ。
「確かに読んでもいいとは言いましたけど、わたくしが柔軟している時はわたくしに集中なさい」
「はい!」
そしてじっと、わたくしを見つめてきますわ。
わたくしの胸を。
ぐりっ!
「どこを見ているのっ?!」
「この位置からクリス様を見ると、どうしても顔の前に胸が見えてしまうんです」
「言い訳は聞かないわっ!」
ちょうどいいわ。
このまま、柔軟もしてしまいましょう。
ケイトの背を右足で踏んで、左足が膝立ちになるようにすれば股関節を伸ばせられるわね…ちょ、ちょっと無理かしら?
「クリス様、その体勢はあぶな」
「きゃあっ!」
どすんっ!
バランスを崩して倒れてしまいましたわ。
でも、いつの間にかケイトがわたくしの下になって受け止めていてくれましたの。
「クリス様、大丈夫ですか?」
「ちょっと怖かったですわ。ケイト、ありがとう」
思わずぎゅっとケイトに抱きついてしまっていましたわ。
ああ、このまま…お昼寝したいわ。
さっきお昼寝したのに、どうしてケイトの上に乗ると眠くなるのかしら?
何だか、安心感があるりますわ。
それより、柔軟をしないといけませんわね。
んっ!
あら?
あらら?
おかしいわ、立てませんの。
椅子が壊れた時に畳で腰を打った時と似ていますわ。
ケイトが抱き留めてくれたおかげで痛くありませんけど、これではしばらく立てそうにありませんわね。
そうですわ!
わたくしががんばらなくても、下僕にさせればいいんですわ!
「ケイト」
「はい」
「わたくしの足を開きなさい」
「へっ?」
-主人公ケイト視点-
危なかったな。
関節固いのに、あんな体勢で柔軟しようとするから。
でも、抱き留めるのが間に合ってよかった。
俺、バレーのレシーブの才能とかあったかも。
部活はバドミントン部だったけど。
あれも似たようなものかな。
離れたところに落ちるシャトルを拾うのは結構得意なんだよ。
「ケイト」
「はい」
何だろう?
「わたくしの足を開きなさい」
「へっ?」
クリス様は真顔だ。
だから、これは変な意味じゃない。
つまり、俺に柔軟をさせたいというわけだな。
普通なら座っているクリス様の背を俺が押すとかだろうけど、今日は股関節の柔軟やってるからな。
ピピッ
ん?
なんだ?
あっ、マリナからのCHAINだ。
『半畳では狭いので、お兄ちゃんが補助をして壁に足を上げていく柔軟はどう?こんな感じ』
そこに手書きの絵が貼ってある。
なるほど、こんな感じか。
体内のスマホにお絵描きアプリとかも入っているのかな?
ふんふん、クリス様に壁にもたれるように立ってもらって、俺が壁にあるのと反対側の足をゆっくり持ち上げていくんだ。
狭ければ上げる足の膝は曲げてもいいんだな。
よし、これならできそうだ。
クリス様が言うように普通に開脚させると何だか恥ずかしいし、これならいいかな。
「クリス様、それでは立ってやりますので」
「立てませんの」
「え?」
「さっき落ちたショックで、腰が抜けましたの!」
それで俺に足を開いてって言ったのか。
仕方ないなあ。
部活でやった股関節の柔軟をやるか。
ちょっと恥ずかしいけど、俺の上に載っているクリス様を俺から見て後ろ向きにして、胡坐をかかせるような格好にしてと。
「これでいいですの?」
「はい、それで、両膝を下に押しますね」
両手で胡坐をかいているクリス様の膝をゆっくり下に押す。
「あっ、やっ」
「痛いですか?」
「大丈夫ですわ。でも、ちょっと開きすぎると怖いですの。ゆっくりしてほしいですわ」
「はい」
そおっと、ゆっくりと
「あ、ああ、はう、いいい、大丈夫ですわよ、あんっ、はうっ」
ちょっと声が色っぽいんですが。
心頭滅却
一心不乱
柔軟体操
筋肉体操
よし、邪念は去ったぞ。
「はあああーっ!」
邪念が戻るからやめてくださいっ!
いや、クリス様の下僕として、このくらいで邪念が入っては駄目だ!
よし、次のステップだ。
「今度は少し小刻みにゆすりますね」
「わかりましたわ」
両膝を持って、上下に上下に。
小刻みに動かして、少しずつ関節を柔らかく。
「これ、いいですわっ!何だか、効いている気がしますのっ!」
おお、それは良かった。
「ちょっとやめなさい」
「はい?」
「体が不安定で、前に倒れそうですの。向きを反対にしますわ」
クリス様は器用に俺の上で半回転すると、俺の体に抱きついてきた。
こ、この体勢で膝を上下に揺らすんですか?!
せっせっせっせ
せっせっせっせ
上下上下
上下上下
ゆっさゆっさゆっさ
ゆっさゆっさゆっさ
だよねー!
さっきは背中側からやっていたから見えなかったけど、向かい合わせだと胸が上下に揺れて、俺の体に当たるんですがっ!
-王女クリステラ視点-
これならバランスを崩さずに膝を上下に動かしてもらって、股関節を柔らかくできますわ。
もしかして、これって普段からずっとやれるんじゃないかしら?
だって、わたくしはちっとも疲れませんのよ。
あら?
ケイトの顔がどんどん赤くなっていますわ。
もしかして、くっつきすぎて熱いのかしら?
「ケイト、大丈夫かしら?」
「はい、大丈夫です」
「それなら、試したいことがありますのよ」
「なんでしょうか?」
「さっきの向きに戻りますわね」
くるん
ケイトの上で回るのってなんだかちょっと楽しいですわ。
「さっきはこれで不安定でしたから…ケイト、もう少しわたくしがもたれられる感じにしたいですわ」
「こうですか?」
ケイトが腰を前に出して、わたくしはケイトにもたれるような体勢になりますの。
「それなら、膝をゆすっても大丈夫ですわね?」
「そうですね。どうにか手が届くからやれます」
「そこで、『教科書召喚!』。これで勉強しながら柔軟もできますの!」
「おお!クリス様、ナイスアイディアです!」
ふふっ、ケイトが感心してくれていますわ。
「算数ですわね!割り算の復習をしますわ!」
これならケイトに教わらなくても、ほとんど自分でできますの!
-主人公ケイト視点-
ふう助かった。
背中がぴったりくっついているから密着度は増した気がするけど、胸よりはマシだな。
「クリス様、15割る3は?」
「さんし12、さんご15、5ですわ!」
勉強もできていているし、順調だな。
ピピッ
またCHAINかな。
あっ、今度はカリナからだ。
『おにい、スマホに写真機能あるから、撮影するって念じたら、見たものが撮影できるよ。そっちがどんな様子か送って』
そんな機能もあるの?!
えっと、撮影。
…
…
撮影音しないんだ。
これ、盗撮じゃないの?
いいのかな?
いや、下着とか撮るわけじゃないし。
本当だ、意識の隅にあるスマホの画面に勉強しているクリス様の後ろ姿が映ってる。
このくらいなら、問題ないから送ろうかな。
CHAINに送信と。
『おにいのえっち』
どこがっ?!
『うそうそ。柔軟と勉強一度にやるんだ。がんばれ、おにい』
可愛いスタンプついてる!
そんなこともできるのか!
「ケイト、次の問題は何かしら?」
いかん、意識をカリナたちとのやり取りに持っていかれないようにしないと。
「81割る…」
「9ですわね!81は九九だけですもの!」
「その通りです!」
うん、やっぱり教える人がいるとどんどん伸びるな。
「よしっ!完璧だわ」
振り向いて微笑むクリス様。
俺は無意識に撮影してしまった。
うわ…なにこれ最高に可愛い。
CHAINに貼って自慢しよう。
ケイト『クリス様可愛い』
ぺた。
マリナ『本当だね!マリナもいい写真取れたら貼るね!』
カリナ『おにいのすけべ…うそ。でも、可愛い。年上でもそう思う』
やった!好評だ!
「そろそろ勉強終わりますわよ」
「関節のほうはどうですか?」
結構動かしたと思うけど。
「何だか、すごく柔らかくなった気がしますの。お風呂で試しますわ!」
…
…
クリス様、何をされているんですか?
立とうとして、俺の上で何度も弾んでますけど。
「ケイト、まだ立てませんの」
「ええっ?!じゃあ、このまま少しゆっくりしていましょう」
「汗をかいたから、すぐお風呂に入りたいですわ」
「え?」
「自分で動かなくても、動かしてもらうだけで汗をかくのですわね」
「いやそうじゃなくて」
立てないのに風呂に入る気?
「今日は髪の毛を洗うだけでなく、わたくしの移動もしてもらいますわよ」
ええええっ!!!
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次回も明日、12月31日18時更新です。




