第42話 ドS王女様は姉さまたちと椅子の秘密を共有する
妹たちはずっと出てこないはずだったのに、もう出られることに。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-王女エメラルディ視点-
トゥルル、トゥルル
クリスからの通話だわ。
「はい」
「エメル姉さま。お話はお受けしますわ」
「本当?!」
やったわ!
これで私も色々珍しい材料や道具を召喚して、面白いものをいっぱい作れるわ!
「それで、この件は『共用室』で行いたいですの」
「もしかして王族会議?!お母さまやサフィも呼ぶの?!」
「サフィ姉さまだけですわ。エメル姉さま。わたくしの秘密を絶対に守ってくださいます?」
な、何?
これって、もしかして思っていた以上に重大な秘密だったわけ?
それも、私だけじゃなくてサフィまで一緒じゃないといけないくらいの。
それで、お母さまに秘密にするのよね。
これは…長女として妹の信頼にこたえなくてはなりませんわ!
「任せなさい!それなら、サフィには私から言っておくから、先に行ってて!」
いったい何があるのかしら?
さっき鎌をかけたとき、誰かがいる風だった。
でも、お母さまが人員管理をしているから、人がいるわけじゃない。
人ではないけど、誰かいる。
ふふふっ。
いったい何が出てくるのかしら?
-王女サファイラ視点-
トゥルル、トゥルル
「あら?エメル姉さま、何ですの?」
「クリスが秘密を教えてくれるそうよ」
「そうなの。良かったわね。私もそのうち聞き出すから」
「だから『共用室』に来なさい」
「えっ?」
どういうことなの?
私にも教えてくれるの?
それにしても『共用室』使うなんて、王族会議くらいよ。
「お父様さま留守ですし、お母さまは呼ばないわ。これは私たち3人だけの秘密にするの」
「そ、そんなすごいことなの?」
「秘密を守る気がないなら、サフィは来なくていいわ」
「行く!絶対行くわ!」
通話を切り、共用扉を呼び出し、共用室へ向かう。
共用室は小さな机と5つの椅子が置いてあるの。
エメル姉さまはすぐに来たわ。
「サフィの顔を見るのは久しぶりね」
「ええ」
すぐにクリスもやってきた。
「待たせましたわ」
クリス、また胸が大きくなってません?!
もうお母さまくらいあるんじゃじゃないかしら?
「改めて聞きますの。エメル姉さまとサフィ姉さまは、わたくしの秘密を誰にも漏らさないでくれますかしら?」
「長女として、妹に隠してほしいと頼まれた秘密はもらさない」
「私もクリスの姉ですもの。秘密は守りますわ」
「それなら…順に話していきますわ」
それは驚くべき話でしたわ。
クリスが壊れた椅子を替えようと日用品召喚を行ったこと。
出てきた『椅子』が異世界の人間だったこと。
でも、『椅子』として召喚したため、人員管理にはひっかからないこと。
その『椅子』は異世界の様々な知識を持っていて、教えてくれたこと。
魔法の成功率を上げる効果を持っていること。
「嘘じゃないのよね?その『椅子の人』はどこなの?」
エメル姉さまはクリスをじっと見るが、当然持ってきているわけじゃない。
「わたくしの部屋に居ますわ。いきなりでは驚くでしょう?」
それはそうよね。
「じゃあ、呼びますわ。ケイト」
「はい」
共用扉の向こうから来たのは、背の高い男性だった。
男性?!
「クリス、まだ翔学生の教科書終わってないわよね?」
エメル姉さまの疑問はもっともだ。
私だって終わってないのに、クリスが済んでいるはずがないわ。
「ええ。彼はケイトって言うのですけど、わたくしの『椅子』ですから関係ないみたいですの」
人って言われて女性を想像していたわ。
「それはさっき聞いたけど、クリスは異性と一緒に居るわけよね?」
私の聞きたいことは全部エメル姉さまが聞いてくれてますわ。
「そうですわ」
「いつもはどうしていますの?」
「椅子ですもの、ケイト」
「はい」
ケイトって人が床に四つん這いになって、そこにクリスが座ったわ。
「普段はこうですわね」
「え、えっと、もしかして、礼を言いたい下僕って」
「あっ、サフィ姉さま、その話は」
言ってはいけない話だったのね。
「ねえ、エメル姉さま、どうしましょう?秘密は守ってもいいですけど、私たちも彼を利用しますの?」
「わ、私はちょっと男性は…」
ですわよね。
むしろ、クリスはどうしてそんなに平気なのかしら?
きっとクリスは幼いから、まだ恋愛感情とか男女のこととか頭にないのですね。
「ケイトはわたくしの大切な下僕ですから貸せませんわ。でも、他にもいい椅子があるそうですわ」
どういうこと?
「それって、彼みたいに召喚するってこと?」
「そうですの」
「そんなにうまく出るとは思えないわ。これは召喚の大失敗の結果かと思うのよ」
エメル姉さまの言う通りですわ。
「それに、私は男性はちょっと…」
「私も」
「大丈夫ですわ。その椅子は彼の妹ですもの」
「「妹?!」」
彼は一度元の世界に戻って、妹たちが椅子としてこちらに来るという約束をしたらしい。
「本当は1か月後にしてほしいって言ってたそうですわ。でも、一度呼んでから話だけして、もし駄目なら『送還』でまた1か月後に呼ぶといいかと思いますの」
「それなら」
「やってみたいわ!」
それでも、私たちにうまく召喚できるとは思えないわ。
そしたら、彼が召喚魔法を使うって言うのよ。
確かに自分の妹ならうまく呼び出せるかもしれないわね。
-主人公ケイト視点-
いよいよ妹たちを呼び出すときが来た。
俺は妹たちに言われていた『キーワード』を使う。
「やります!『日用品召喚』!『最高に座り心地のいい双子姉妹椅子』!!」
ぼふん!
この狭い部屋に、二人の女性が現れた。
って、あれ?
二人とも大きい?12歳くらい?
マリナとカリナじゃないのか?
「ここが…」
「異世界なのね!」
「お兄ちゃん!」
「おにい!」
抱き着いてくる二人の女性。
顔を見ればわかる。
成長しているけど、マリナとカリナだ!
「マリナ!カリナ!」
「「お兄ちゃん!(おにい!)」」
どうやら、あちらではすでに2年経っているようだ。
時間の進む速さが違ってきたのかな?
「おにい、たぶんカリナたちは未来から来た」
どういうことだ?
「カリナとマリナは『最高に座り心地のいい椅子』になるために2年間ずっとがんばってきたの。お互いに座って、相手を『最高に座り心地のいい椅子』って心から思えるようになるように」
「マリナもカリナも、こんなに胸が大きくなったんだよ。だから、こうやって」
共用室の壁にもたれて座る二人。
「クリス様の姉さまたち、座ってみてください」
「どうぞ」
マリナとカリナに誘われるままに、エメル姉さまとサフィ姉さまはそれぞれの上に座った。
それは俺がクリス様と昼寝をするときの座椅子モードみたいな感じだ。
ただ違うのは、すごく大きくなった胸で、姉さまたちの首を挟んでいること。
あれはネックピローみたいで気持ちよさそうだな。
「サフィ、これはっ!」
「エメル姉さま!素晴らしい座り心地よ!」
はたから見ると、母親が娘を抱いているようにも見えるな。
年齢的には逆だけど。
「クリス、本当にこの椅子ちゃんをもらってもいいの?」
「一度もらったら椅子ちゃんは返しませんわよ?」
「エメル姉さまとサフィ姉さまに謹んで差し上げますわ。その代わり、秘密は守ってくれますわね?」
「当然よ…すごい、眠くなる…」
「私もよ。はあ、ああ、すごい、なにこれ、天国だわ」
こうして、双子の姉マリナはエメル姉さまのもとに、双子の妹カリナはサフィ姉さまのもとに行くことになった。
「ところで、私は対価として指令環の親指の使い方を教えるからいいとして、サフィはどうするのかしら?大きな貸しひとつにしておく?」
「仕方ないわね、とっておきを出すわ。『魔法ノートとメモ用紙よ!』」
サフィ姉さまが異次元箱からノートを取り出すと、そこにサラサラと何かを書き写してクリス様とエメル姉さまに手渡す。
「サフィ、これは?!」
「サフィ姉さま!これはもしかして、教科書に無い魔法ですの?!」
「そうよ。召喚で面白いものを出そうとして、偶然見つけたものよ。他にもいくつかあるのだけど、とりあえず何度もやって大丈夫そうなものだけね」
それは凄いな。
「でも、厨学生の教科書に出てきたりしないかしら?」
「エメル姉さま、もしそうだとしても、今使えるのはありがたいですわよ」
「それもそうね。ありがたくいただくわよ、サフィ」
「気に入ってもらえて良かったわ」
話し合いはこれで終了だ。
でも、別れ際にマリナが俺にメモを渡してくれた。
一体なんだろう?
あと、マリナとカリナのネックピロー、ちょっと体験したいなと思ってしまったのは内緒だ。
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、12月30日18時更新です。




