第4話 家庭教師でもドS王女様の尻に敷かれて教えます
王女は簡単にはデレないスタンスです。
令和元年12月9日。分かりにくいところの修正をしました。
令和2年1月4日
初期でクリステラの言い回しが現在と違っているため修正しました。
―主人公ケイト視点―
俺のお尻を叩かれるお仕置きが終わり、ようやくクリス様の勉強が始まった。
「4わる2は?ええと…」
クリス様が悩んでいるようだ。
簡単なのだけどなあ。
「そもそも『わる』って何ですの?4で2をわるのかしら?」
違う、逆だ。
「そうだわ。応用問題よ。こっちなら文章でわかりやすいわ」
そういってぱらぱらとページをめくるクリス様。
いやいや、基本出来なくって、応用とか無理だよ。
「『りんごが4つありました。2人のこどもにわけたら、いくつずつですか?』ですわね。これなら…」
なるほど、意外とどんな状態かわかりやすい。
「りんごが4つ、それを2人にわけるから。まず、1人目に、いっこ、にーこ、さんこ、あれ?」
おいおいおい。
「どうやって指を使ったらいいのかしら?」
あかん、これは重傷だ。
「クリス様」
たまらず俺は声をかける。
「何かしら?」
「俺が教えましょうか?」
「ケイトにはこれがわかりますの?」
「算数とか数学は得意なので」
「数学!」
クリス様は驚きの声を上げた。
-王女クリステラ視点-
わり算って、どうなってるの?
かけ算はわかったわ。
物が同じだけ増えていくのよ。
4かける2なら、4が2つで、4たす4だから8。
4かける3なら、4が3つで、4たす4たす4だから12。
それに私はかけ算の呪文『九九』を覚えているのよ。
「しにが8 しさん12」
ほら一瞬。
なのに今度のわり算って何ですの?
意味がわからないわ。
「クリス様」
ふいにケイトが声をかけてきましたわ。
「何かしら?」
「俺が教えましょうか?」
教える?わたくしに?わり算を?
そんなに頭が良さそうに見えなかったのに、わり算ができるというのかしら?
「ケイトにはこれがわかりますの?」
「算数とか数学は得意なので」
「数学!」
思わず叫んでしまいましたわ。
数学と言えば「翔学生の算数」の上位にあたる「厨学生の数学」のことよね。
そんなものができるって、ケイトはものすごい天才?伝説の『博士』かしら?
いいえ、きっとわたくしの気を引こうと嘘をついているのですわ。
「ケイト、それなら、6わる3はいくつかしら?」
「2ですね」
即答?!答えは…合っていますわ。
「8わる2は?」
「4です」
「12わる3は?」
「それも4です」
なんてこと?2ケタのわり算まで即答なんて。
これは考えを改めなければなりませんわ。
何としても教えを請わないと!
教えを請う?
いいえ、わたくしは王女よ。
平民に頭をさげてどうするのかしら?
「ケイト、わたくしの勉強の邪魔をする気なの?」
「邪魔じゃありません。クリス様のお手伝いが出来ればと」
殊勝な心がけですわ。
「そこまで言うのなら手伝ってもいいですわよ。ただし…『教科書よ!』」
わたくしは新たな教科書『翔学生の理科2下』を取り出しましたの。
「受け取りなさい」
わたくしはケイトに『翔学生の算数3上』を渡してこう言いますの。
「いいこと?わたくしにわり算を理解させなさい。勉強が終わって、わたくしがそこにある『基礎問題』を答えられないたびに、ケイトのお尻をこれで叩きますわ」
「えっ?!」
「できないのかしら?」
「いえ、大丈夫です!やらせていただきます!」
―主人公ケイト視点―
わり算を教えるのなんかそんなに難しくない。
それにこれは今の環境を変えるチャンスだ。
俺が先生になれば、尊敬してもらえるし、こうやって椅子にならなくても済む。
椅子になるのはやめなくてもいいかな?
ともかく、クリス様の先生という立ち位置を確保しよう。
「いいこと?わたくしにわり算を理解させなさい。勉強が終わって、わたくしがそこにある『基礎問題』を答えられないたびに、ケイトのお尻をこれで叩きますわ」
「えっ?!」
何それ?
クリス様が間違ったら、俺が叩かれるの?
これが王家の教育なのか…甘く見ていた。
そうだよな。役に立たない家庭教師ならクビ、いや、首を切られてもおかしくない。
王族ってそんな感じがする。
(※ケイトの個人的感想です)
「できないのかしら?」
「いえ、大丈夫です!やらせていただきます!」
覚悟を決めた。
俺はやるぞ!
…
…
「というわけで、わり算は物を同じ数ずつ分け合う時に使うのです」
「うう…」
悩んでいるようだ。
困ったな。この体勢で教えているだけでも大変なのに、黒板とか無いし。
「クリス様、黒板とか、ノートとか、ありませんか?」
「黒板?聞いたことないわね。ノートは書き取りの時に使いますの」
「国語だけ?」
「そうですわ」
今まで算数はずっと一人で教科書を見ただけでやってたの?
それはそれですごいかもしれない。
でも、それじゃあ駄目だ。
書いて教えないと。
「クリス様、ノートをいただきたのですが。あと鉛筆と消しゴムも」
「それなら自分で呼び出しなさい。『学用品召喚』の呪文よ」
そう言って、俺の手の平に魔晶石を3つ握らせてきた。
よしこれで呪文を…待てよ。
あれなら1つで済むんじゃないか?
「『学用品召喚』!タブレット出てくれ!」
俺の手の中に現れたのは20センチくらいのタブレット。
「出た!」
電源も入る!
「ええっ?!」
クリス様が驚きの声をあげている。
まあ、見たことないだろうから当然だよな。
起動した画面を見たら、機能は「お絵かきアプリ」だけだった。
もしかして、魔晶石が小さいとかレベルが低いとかのせいで、最低限の機能のしか出ない?
まあ、ノート代わりにするにはいいだろうけど。
「な、なんですのそれ?!」
それでもクリス様は初めて見るタブレットに目を丸くするのだった。
お読みいただきありがとうございました!
次回は11月22日18時に更新します。