第35話 ドS王女様はおもちゃと情報を交換する
お話上の時間は午前10時30分くらいですね。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-王女クリステラ視点-
忘れないうちに、サフィ姉さまから借りていた教科書を返さないといけませんわね。
まだ借りてからたった1日ですけど、読みもしないで持っているのは邪魔ですし、ケイトの異次元箱に入れておくと忘れてしまいそうですの。
「『内線通話』!サフィ姉さまと話したいですわ!」
「はい、クリス?どうしたの?」
出るのが早いですわっ!
どうやら昨日渡した消せるペンと貼ってはがせる紙を調べていて退屈していないのですわね。
「昨日借りた教科書、もう返しますわ」
「え?全部読んだの?さすがにそれは無理よね」
「調べたい部分がすぐに見つかりましたの」
「了解。そうそう、これってどうやって手に入れたの?」
これって、ペンと紙の件ですわね。
でも、簡単には教えませんわ。
というか、教えられませんわよ。
「内緒ですわ」
「えーっ?これ、絶対普通では出せないわよ。召喚に失敗したものだとしても、こんなに使えるものってなかなか無いわよ。つまり狙って出さないと出せないものなのよね」
鋭いですわね。
でも、あてずっぽうの鎌かけなんかに引っ掛かりませんわよ。
「それでは切りますわね」
「待って待って!じゃあ、クリスが知りたそうな情報と交換するわ」
「わたくしが知りたいこと?」
何かあったかしら?
すると、ケイトが手で合図をしてくれましたの。
ええ、タブレットを渡せばいいのね。
それでサフィ姉さまにばれないように筆談をするつもりですわ。
でも、タブレットを出すって言わないと出せませんから、ひとまず通話を切りますの。
「じゃあ、考えたら連絡しますわ」
そう言って、教科書を内線通話の箱に押し込めて返却してから、通話を切りましたの。
-主人公ケイト視点-
サフィ姉さまから何か情報を教えてもらえて、その代わりにあのペンとかの出し方を教えるのか。
でも、それを教えるのは俺のことを教えるのと同じだよなあ。
できれば舞闘会終わるまではバレないようにしたいし。
うーん、それなら…そうだ!
俺は手で四角を描いて、クリス様にタブレットを貸してほしいと伝える。
「じゃあ、考えたら連絡しますわ」
そう言って通話を切るクリス様。
あれ?通じなかったのかな?
「タブレットを出すには『タブレット出なさい!』ってやらないといけないから、通話を切ったのですわ」
おお、さすがクリス様!
そして出てきたタブレットを預かる。
「これから通話中は、これでわたくしに助言しなさい」
「はい!」
「それで何かいい考えがありますの?」
「クリス様。例のペンとかの出し方を教えようとすると、俺のことを知らせることになりますけど、それは早くても舞闘会終わったくらいがいいと思うんですが」
「そうですわね。わたくしも舞闘会で初勝利をして、ケイトのおかげですわって自慢したいですもの」
えっ?
クリス様はそんなこと考えていてくださったんですか?!
これはますます期待に応えないと!
「それで、今回は教えない代わりに、面白いものをまた差し上げてはどうでしょう?」
「その代わりに、何か情報を教えてもらうのね?」
「そうです」
「それで、何か聞きたいことがありますの?」
俺は聞きたいことを説明する。
「それはいい考えですわ。ケイト、さっそくサフィ姉さまに渡すものを出しなさい」
俺は受け取った魔晶石でプレゼント用の物を召喚してクリス様に手渡し、クリス様は再び内線通話を使う。
-王女サファイラ視点-
おかしいわ。
あの子がこんな面白いものを続けて召喚できるなんて。
きっと、何かコツを見つけたに違いないわ。
トゥルル、トゥルル、トゥルル
連絡がきたわ!
「はいはーい!」
「サフィ姉さま。この召喚のコツは簡単には教えられませんの」
やっぱり何か見つけたのね!
それなら、ちょっとした情報くらいでは教えてくれるわけありませんわね。
「でも、ちょうど聞きたいことがあったので、教えていただけません?」
「その代わり、また何かいただけるのかしら?」
「ええ」
コトン
『内線通話』の箱に何かが入った音がしたわ。
開けてみると、ねじった針金のようなものが3つ出てきましたの。
「クリス、これは何かしら?」
「それは『知恵の輪』っていうおもちゃですのよ」
「これがおもちゃ?壊れているようにしか見えませんわよ」
「それは2つのパーツからできていますのよ」
「そうね」
「それをひねったり、穴に通したりすると、えっとえっと」
あら?何を言いにくそうにしているのかしら?
「こうですわね!」
ちょっと、何をやってますの?!
-王女クリステラ視点-
ケイトが気を聞かせて、まったく同じ知恵の輪を3つ、わたくしの分も出してくれましたのよ。
それで、ケイトの説明通りに色々動かしていたら、あっさり外れましたの!
「知恵の輪って面白いですわね!」
『クリス様、あとにして、とにかく説明を』
わたくしの足をぽんぽんと叩いて、ケイトがタブレットの文字を指さしていますの。
「ごめんなさい。つい、先にやってしまいましたわ」
「それで、いったい何をしてたのよ?」
「知恵の輪っていうおもちゃは、それを2つにはずす遊びをするものですのよ」
「え?えっと、……まさか、…ちょ、これって、ええっ?!あっ?!」
ふふふ、苦戦していますわね。
「サフィ姉さま、苦戦してらっしゃるの?」
「え、えっと、このくらい…」
「わたくしは2つ目ですわ。……すると、ここがこうかしら?」
わたくし、知恵の輪の才能があるかもしれませんわ。
「取れましたの!」
「ええっ?!うそ、嘘よね?」
そこでわたくしは『内線通話』の箱に外したものを入れますの。
「…クリス、この2つって、たった今はずしたのかしら?」
「そうですわよ。サフィ姉さまのところに送ってから始めましたの」
「くくくく、くやしいっ!絶対負けないからっ!」
「やりながらでいいから、答えていただけるかしら?わたくし、舞闘会のことで聞きたいことがありますの」
「何かしら?」
「指令環をはめる指のことですの」
-王女サファイラ視点-
今外したって本当かしら?
あの様子だと、クリスが嘘を言っているとは思えないし、うーっ!くやしいですわ!
「やりながらでいいから、答えていただけるかしら?わたくし、舞闘会のことで聞きたいことがありますの」
「何かしら?」
「指令環をはめる指のことですの」
あら、いい質問ね。
私は徹底的に調べたから、小指が起動、薬指が修繕、中指が必殺技、人差し指が指令はわかっているのよ。
ただ、親指だけは全然わからないのよね。
「それで、何がしりたいの?」
「親指の役割ですの」
あら、残念ね。
私も知らないわ。
でも、知らないって言うのも情報になってしまうから、ここはごまかしますわ。
「それは簡単に教えられないわね」
「そうですの?それならサフィ姉さまの知っている舞闘会の常識を教えてほしいですわ」
えっ、舞闘会の常識を教えてですって?
「どういう意味かしら?」
「わたくしが今まで舞闘会で勝てなかったのは、当たり前のことすら知らないせいと思いますのよ。サフィ姉さまがわたくしの教えても構わないと思えるようなことを教えてほしいのですわ」
あら、なかなかいい心がけですわ。
そのくらいなら教えてもいいわね。
「クリスは指令環の登録を駒の種類ごとにしていますわよね」
「そうですの。違う種類では命令しにくいですのよ」
つまり、戦士と魔法使いを1つの指令環に登録するということですわね。
「私は攻めていく時に使う駒は同じ種類で固めていますけど、守備は違うのよ」
「えっ?」
「守備は『攻めてきた駒を倒せ』とか『ここを守れ』って命令である程度対応できるから、種類が違ってもいいのよ」
もう少しクリスが強くならないと勝負になりませんから、基礎中の基礎は教えてもいいわよね。
「それと、指令環は同じ指に複数はめて実行できるのは知っているかしら?」
「違う種類の駒の指令環ですと最後にはめたものしか有効にならないですわね。同じ種類の駒だけならまとめて命令できますの」
さすがにそれは知っていますわね。
でも、その先はどうかしら?
「中指が何か分かっていないと意味ありませんけど、指令環に登録した駒の数で、中指の効果が変わりますのよ」
「ええっ?!それって、必殺技が変わるってことですの?!ああっ!つい言ってしまいましたわ!」
やっぱり中指が必殺技って知っていたのね。
前回の舞闘会では必殺技を使ってなかったから、きっと最近見つけたのね。
だから今度こそ勝ちたいって気になっているのだわ。
ふふ、我が妹ながら可愛らしいわ。
「それから、私が攻めて行く時の戦士や魔法使いのグループ、あれを見てどう思っているかしら?」
「どうと言われても…」
「あれは1つのグループとは限りませんのよ」
「5体1グループに見えても3体と2体の2グループに同時命令を出したものってことですの?それなら最初から1つのグループにしておいたほうが楽な気がしますの」
「必殺技との関係を考えてごらんなさい」
「……うーん」
悩んでいるわね。
もう少し考えても駄目なら教えてあげるわ。
「えっ?あ、そ、そうね!」
え?今の私に言ったの?誰かと話してるの?
「サフィ姉さま。つまり状況を見て、攻略に有効な必殺技を使える組み合わせで行動させていますのね!」
クリス、良くできました!
でも、その編成のために何人ずつにしておくかはトップシークレットなのよ。
クリスに最適解が見つけられるかしら?
-王女クリステラ視点-
ケイトの助言のお陰で、舞闘会のことについて色々聞き出せましたわ!
「クリス、このくらいでいいかしら?」
「サフィ姉さま、ありがとうございました。もう十分ですわ」
「次の舞闘会は期待しているわよ。…ああっ、はずれたっ!やったわっ!」
あら、すごくうれしそうな声がしますわね。
わたくしも3つ目があと一歩ですの。
でも、これは結構難しいですわね。
「コツさえつかめば、え?あれ?えーっ?!」
「もう、通話を切りますわよ」
「クリス、ありがとうね!これ、すごく面白いわ!またいいのがあったら分けて頂戴!あと、さっきの外れている知恵の輪返すわね!」
通話が切れましたわ。
まだこの知恵の輪は解けていませんけど、一度に全部やるともったいないからしまっておきますわ。
-主人公ケイト視点-
クリス様、すごいな。
知恵の輪って、あんなに簡単なじゃないと思うんだけど。
「さっき聞いたことをさっそく試しますわよ!」
さっそくクリス様が駒箱から駒を取り出して並べ始めた。
おお!クリス様のテンションが上がってる!
俺も戦士の人数が変わると必殺技が変わるとか興味あるしな!
目の前に並ぶ戦士は23体。魔法使いが24体。魔法戦士が1体。女戦士が1体。レオパル君が1体。
全部で50体だ。
舞闘会で勝つと駒箱が大きくしてもらえるらしいから、それまでは50体でやりくりしないといけない。
その辺においておけばいいとも思うけど、この世界では意味もなく領地内に使っていないものを置かないんだよな。
そりゃあ、ごみ屋敷みたいになったら大変だろうからな。
「さっそく、必殺技を調べますわ!まず戦士からですの。数を変えて登録するなら、1体、2体、3体、いくつまでいけるかしら?」
「23体なので、1体から6体までで21体ですよ」
「ケイトは計算が早いのね。では、あっ」
クリス様が手を滑らせて、クリス様の足の上に指令環が落ちる。
クリス様は生足で、素足だ。
きっと冬は靴下とかストッキング的なものを履くのだろうけど。
「素足…クリス様、足の指に指令環ってはめられます?」
「何を言っているのかしら?足に指輪なんてはめないわよ」
「クリス様、俺の世界では足用の指輪もあるんです」
「面白いわね。でも、この指輪は足には…試したことがなかったわね」
「やってみましょうか」
「そうですわね」
ふいに胡坐を組むように片足をあげて、指輪をはめようとするクリス様。
あっ、下着見えそう!
っていうか、見えた。
回避が間に合わなかった。
不可抗力だよね?
あっ
クリス様と目が合って、顔面に蹴りが来ました。
うぼっ
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、12月23日18時更新です。




