第31話 ドS王女様は愛…しています
次の妹たちの出番はいつになるやら。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-王女クリステラ視点-
眠れませんわ。
まだ真っ暗ですの。
ケイト…もう召喚してもいいかしら?
夜の11時。
さすがに早すぎますわね。
…
…
…
ケイトと一緒に寝たのは一晩だけですのに。
いいえ、お昼寝も入れれば2回ですわ。
こんなにもさみしくなるのかしら?
…
…
…
朝の5時ですわね。
こんなに早く起きたことなんてありませんわ。
もう、呼んでもいいかしら?
ケイトを送還したのが夜の9時でしたから、8時間経っていますわ。
少しだけ早い気がしますけど、召喚しますわ。
わたくしは寝袋から降りると、魔晶石を取り出しますの。
「どちらで呼ぶべきかしら?初級?上級?」
最初は初級の召喚で呼んだのよね。
上級で呼ぶと、確実に出てくるとかあるかしら?
それとも、ケイトは初級限定かもしれませんの。
まず、初級で試して、駄目なら上級で。
あとはケイトが召喚されるまで交互にしますわ。
「『日用品召喚』!わたくしの最高の椅子ケイト!出てきなさい!」
…
…
…
…
出てきませんわ。
それなら、
「『上級日用品召喚』!わたくしの最高の椅子ケイト!出てきなさい!」
…
…
…
…
出てきませんの。
もう何度やったかしら?
今日は水曜日ですから、9日分の魔晶石は残さないと。
食事だけできれば十分ですの。
ケイトさえいればいいですわ。
だから、ありったけの魔晶石で、
ケイトを呼び戻して見せますわ!!
こけこっこー
あら、もう7時ですのね。
「クリス!朝よ!」
「お母様、もう起きていますわ」
「ええっ!?(どすん!)」
何か大きな物音がしましたわね。
そんなに驚くなんて失礼ですわ。
「今日は早起きなのね」
「ええ、なんとなく目が覚めましたの」
「それじゃあ、今日も一日頑張ってね!できればこれからも自分で起きなさいよ。お姉さんたちは自分で起きているのよ」
「はい」
「元気ないわね?寝ぼけているのかしら?」
「何でもないですわ。それでは」
こちらの権限で声を切りましたわ。
さて、ケイトを呼ばないと。
決してあきらめませんわ!
-女王様視点-
クリスの様子がおかしいですわ。
母親のカンで、あれは何かを隠していますの。
ここは『母親権限』を使って、こっそり様子を見ましょう。
たった5分しか使えませんし、月に1度が限界ですけど、ここは使いどころですわ!
『…出てきなさい!…また駄目ですわ』
何かを召喚しているようですわね。
あら?足元にあんなに魔晶石が?
まさか、あれを全部使う気?
『ケイト、戻って!帰ってくるって言ったのに!』
えっ?!ケイトって誰?
帰ってくる?
すると、すでにクリスはケイトって人と一緒に住んでいた?
おかしいですわ。
領地ごとの人員は常に表示が出ますの。
増えたことは無いはずですわ。
それとも、ケイトっていう名前を付けた大切なぬいぐるみが紛失してしまったとか?
半畳で無くなるわけありませんわね。
うっかり捨ててしまったとか。
ゴミ箱に消えたものは戻らないって聞きますわ。
もし捨てたものなら、あきらめなさいって言うべきかしら?
いいえ、もしかすると、クリスの想いが、不可能を可能にするかもしれませんわ。
『きっと言い方が悪いのね。もっと気持ちを込めて』
試行錯誤しているようですわね。
トゥルルトゥルルトゥルル
こんな時にサフィからの『内線通話』?
今いいところですのに!
『『(トゥルル)召喚』!わたくしの愛(トゥルル)している(トゥルル)ケイト』
愛してるですって?!
『ああっ?!』
今度は何かに驚いていますわ。
すると、クリスの足元に人の姿が見えますわ。
召喚に成功しましたのね!
人員は「1」のままですから、やっぱりあれは人ではありませんわね。
それにしてもあんな大きなぬいぐるみを、いえ、あれは人形ですわね。そんなものを持っていましたの?
しかも『わたくしの愛しているケイト』って…。
きっと一人でさびしいのね。
でも、あなたも翔学生の勉強を全て終わらせれば、結婚相手を探すことができますわ。
領地の広い相手が見つかるよう、色々なことをがんばりなさい。
「クリス、がんばって」
そう呟いて、わたくしはそっと『母親権限』を解除しましたの。
-王女クリステラ視点-
駄目ですわ。
何がいけないのかしら?
そうですわ。
きっと、ケイトに対する想いが足りませんの。
ケイトと出会ってからのことを色々思い出して…
…
…
…
エッチなことばかり思い出すのは、どうしてですの!
やり直しですの。
…
…
…
そうですわ!ケイトはわたくしの最高の下僕でしたの!
「『日用品召喚』!わたくしの愛用している椅子のケイト!」
ぴしっ
突然わたくしのはめていた、わたくしとケイトを繋ぐ指輪が、砕けましたの。
「ああっ?!」
指輪が砕けて下に落ちて、それを追った目線の先には…
それは、それは見間違えるはずもない、
わたくしの椅子!
「ただいま、クリス様。どうぞお座りください」
ケイトはわたくしのほうを見もしないで、そう言いましたわ。
「もちろんですわ!」
わたくしはすぐに座りましたの。
だって、だって、ケイトに今の顔を見られたくありませんもの。
主人であるわたくしの、泣き顔なんて。
-主人公ケイト視点-
空間を渡る感覚。
その間に、俺は椅子の体勢を取る。
うっかり、クリス様のスカートを覗くとだめだからな。
顔は下向きで。
出た!
帰ってきた!
見なくても分かる。
この部屋はクリス様のいい匂いがするから。
「ただいま、クリス様。どうぞお座りください」
「もちろんですわ!」
クリス様は、すぐ俺の背に座ってくれた。
ああ、久しぶりの感触。
「クリス様。向こうでの別れは済ませました。これから、ずっとここに居てもいいですか?」
「当然ですわ。わたくしのものですもの。ずっと、ずっと、(ぐすっ)ここに、いな、(ぐすっ)、いなさいっ!」
クリス様、泣いてくれているんだ。
俺も顔を上げられないよ。
俺だって、泣くほど嬉しいから。
お土産は…もっとあとでいいよね。
ただいま、クリス様。
-王女クリステラ視点-
やっと落ち着きましたわ。
「ケイト、あなたの指輪は?」
「あっ?!無い!」
どうやら、ケイトの指輪も壊れたようですわね。
きっと、ここへ戻る為の力を使い果たしたのですわ。
「気にしなくていいですわ。わたくしも先程壊れて消えましたの」
「クリス様も?」
「きっと、ここに戻る為に力を貸してくれたのですわ」
「そうですね!」
ケイトも元気そうでよかったですわ。
さあ、さっそく朝ごはんにしましょう!
魔晶石は使いすぎて貴重になってしまったけど、食事を抜いてはいけませんわ。
「ケイト、魔晶石を渡しますから、朝食を」
「それなら、まずこれを返します」
ケイトはわたくしに魔晶石を返してくれましたわ。
10個も余ったのですわね。
全部使ってきても良かったですのに。
「それと、朝ごはんをもってきました」
持ってきた?
もしかして、向こうの世界から?
「異次元箱の中身が向こうの世界とこちらの世界で行き来できるってわかったんです!だから、これを」
ケイトが差し出してくれたのは、おにぎり。
「おにぎりですわね」
「おにぎりもこちらにはあるんですね。これは『ツナマヨ』のおにぎりです」
「『つなまよ』?」
不思議な響きの名前ですわね。
「ツナはマグロという魚。マヨはマヨネーズです」
唐揚げにかかっていた、あれですわね!
ぱくり
「ん?ん?んーーーーっ!」
おにぎりの具は「梅干し」と「たくあん」しか知りませんわ。
これは、なんていううまさですの!
まさに『おにぎりの革命』ですわ!
また何かおかしなフレーズが飛び出してしまいましたわ。
おいしいですけど、ここはいつものようにしますわ。
「ケイト、わたくしの残りを食べて、新しいものを出しなさい」
「はい!」
-主人公ケイト視点-
クリス様、とってもおいしそうに食べているな。
よかった、持ってきて。
でも、この世界におにぎりってあるんだな。
なんの具が入っているんだろ?
おや?クリス様がこっちを見たぞ。
「ケイト、わたくしの残りを食べて、新しいものを出しなさい」
また、クリス様の食べ残しをいただける!
なんて幸せ!
「はい!」
俺は喜んでそれを受け取ると、次のおにぎりを取り出す。
「『しゃけ』のおにぎりです」
「しゃけ?」
クリス様は不思議そうな顔をしていますが、嫌がる様子もなく口にしてくれます。
信用してくれているんだ。
嬉しいよ。
戻ってきて良かった。
「これもおいしいですわ!しょっぱさがほどよくて、ごはんとすごく合いますの!かみしめると、具から美味しい味が染み出てとても食欲が出てきますわ!」
クリス様、グルメタレント並みのコメントしてません?
「思わず食べ過ぎて、具が無くなってしまいましたわ」
「クリス様、俺はクリス様の下僕ですから」
「そうですわね!具が無いけどこれを食べなさい!」
「はい!クリス様の食べたものなら、なんでも嬉しいです!」
-王女クリステラ視点-
ああ、すごくおいしいわ。
でも、あんまり食べると体に良くないですわ。
あっ!
「思わず食べ過ぎて、具が無くなってしまいましたわ」
「クリス様、俺はクリス様の下僕ですから」
つまり、気にするなって言うのね。
偉いわよ、ケイト!
「そうですわね!具が無いけどこれを食べなさい!」
「はい!クリス様の食べたものなら、なんでも嬉しいです!」
ふふふ。わたくしの食べ残しがご褒美になっているのかしら。
わたくしとケイトの相性ってきっと最高ですわ。
最高の主従関係ですわね。
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークとか感想とかいただけると嬉しいです(^ー^)♪
次回も明日、12月19日18時更新です。




