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第29話 ドS王女様との繋がりは

新キャラの双子妹たちは、狭い半畳には行けないですね。

今のところは。


令和2年1月5日

言い回し等の微修正。

-主人公ケイト視点-


「お兄ちゃん!」

「おにい!」


双子の妹、マリナとカリナは俺の両側から抱きついてくる。


泣いている…まあ、そうだよな。

10歳だし、あれだけ俺になついていたんだから。




どうやら、俺が居なくなってから、事件扱いを恐れた豚王Pの父親が、

「うちの子は何もしていない!その証拠に、借金も全部無しにしてやる!新しいマンションもくれてやる!だから、さっさと引っ越してくれ!」


そして俺の板学校には「実は引っ越し先に一足先に行っていた」って噂を流して事態の鎮静化を図ったそうだ。


警察はもこういった行方不明の案件は多すぎて、手がかりがないとどうしようもないって言ってた。


スマホとか持ち物一式置いて行ったからな。



俺は、とりあえず二人に事情を話し始めた。


「とある国の王女様に仕えることになったから、もう帰らないですって?さすがお兄ちゃん!」

「おにい、誘拐されて頭の中をいじられた?」


素直なマリナは俺の言葉をうのみにしてくれるが、常識的なカリナは信じる様子が無い。


「おまえたち、俺のよく読んでいた異世界物の漫画読んだことあるだろ」

「うん!あれ、マリナ大好き!」

「所詮、フィクションなのです。まさか異世界に行ったなどというのではありませんよね?」


明るいマリナに比べて、冷たい口調のカリナ。

でも、そんなカリナは頭の回転がいいからそうませた物言いをするだけなんだけどな。


「実は俺、異世界行ってた」

「すごい!」

「おにい、やっぱり頭を輪切りにして検査を」


CTは輪切りにするわけじゃない。

死ぬから。


「これ、何か分かるか?」

俺は魔晶石を取り出す。


「きれいな宝石!」

「おにい、もしかして、ギャングになったの?それなら、カリナが引導を渡すから」


カリナ、怖いよ。

可愛いけど、怖いって。

マリナはいい子だな。


「これは魔晶石で、こう使う」

「『昼食召喚』!サタデーバーガー!」


俺の手にハンバーガーが現れる。


「すごい!魔法だ!」

「手品師に弟子入りを始めたのですか?」


カリナ…。


「ん?待ってください。これは、まさか?」

カリナは俺の手からハンバーガーをひったくる。


「わかったか?」

「サタデーバーガーはこの近くにない。でも、これは出来たての暖かさ」

「わかってくれたか!つまり、」

「電子レンジの無いこの家で、いつの間に『チン』したのか?おにいのマジックはすごい」


あかーん!


このままだと、召喚呪文はみんな「マジックで取り出した」って言われるな。


だいたいの召喚魔法が手品と言われればそれまでだ。


恐るべし、手品の世界!



「それで、おにいは異世界に帰るの?」


え?カリナ?


「カリナ、俺の言うことを信じていないんじゃなかったのか?」

「手品かもしれない。でも、おにいのことは信じている」


カリナ…


おれはカリナをぎゅっと抱きしめる。


「ずるい!マリナも!」


ぎゅっとマリナも抱きしめてやる。





「向こうの1日が、こっちの1ヶ月?面白いね!」


無邪気にはしゃぐマリナ。


「なるほど、それならああいうことも可能…それでおにいはどうやって帰るのつもりなのです?」

「それはクリス様の『日用品召喚』で、あっ!」


しまった、それを言うつもりは無かった!


「まさかとは思いますが、おにいは『物』と間違われて召喚されたのですか?」


す、するどすぎるぞ。

さすが学校の成績はいまいちなのに、謎解きが大得意のカリナだ。


「実はな」


俺はエッチいことを除いて、向こうの生活を白状した。


「お兄ちゃんの椅子…マリナも座ってみたいの!」

「あの豚野郎が『最高の椅子』って言ったせいですわね。やはり屠殺しておくべきでした」


マリナ、あとで座らせてやるな。

カリナ、屠殺はやめような。


「引越は昨日終わりましたが、このアパートは解約のタイミングが合わなくて、あと25日間借りていられます。おにいはここに住んでいたらいいと思う」

「そうね!マリナたちが食べ物とか運んであげるから」


いや、引っ越し先から遠いんだろ?

って言うか、そういえばどうやって二人だけでここに?

もしかして、お父さんたちと忘れ物を取りに来て、外で待たせているのか?


「パパとママは先に遠くに引っ越したけど、マリナたちは学校が始まったばかりだから、ヤスヨおばさんの所に居るの」


超近所じゃないか。


あと、ヤスヨおばさん(・・・・)って言うな。

俺より1つ下だ。


母さんの妹だから、血筋的にはおばさんだけどな。


「忘れ物があるからって、ヤスヨおばさんが預かっているここのカギを借りてきたけど、今度からは『お兄ちゃんのことを考えるとさびしいから、前の家を覗いてきたい』って言って借りてくるね!」


うん、それはいい考えだ。


「こんな安物のキー。500円で複製できる」


カリナ、子どもがそれを頼んでも引き受けてくれないと思うぞ。


「おにい、じゃあ複製魔法使って」

「え?」


そんなのあったかな?


魔法の教科書をリュックから出して、呪文のリストを見る。


「それっぽいのは無いな」

「何これ!魔法の教科書?!」


はしゃぐマリナ。


「すごい、これは本物みたいに見える」


信じていてもまだ疑うのかカリナ。


「じゃあ、召喚魔法で増やそう」

「そんなことできるの?お兄ちゃん、やってやって!

「ああ。召喚魔法はその領地内に無い物だった時は、新しい物を作り出すんだ」

「おにい、領地って日本の場合はどうなるの?」

「あ…」


しまった。

この家の持ち主って考えるのか、もしかすると、日本国内の物はみんなこっちに現れるかもしれない。


「確かめる方法があります。魔晶石を出してください」

「カリナは魔法を使えないだろ?」

「カリナは、おにいが魔法に関わったからそれを使えるようになったと推測する。魔法を実際に見たカリナもできるはずです。『日用品召喚』!ヤスヨおばさんの今はいているパンティ!」

「おいっ!」


ぽんっ!


カリナの右手には純白レースのパンティが現れた。


「出ました」


なんでだよっ!

そんなあっさり魔法を修得するなよ!


「電話で確認します…あ、おばさん?今、下半身スース―しない?え?いつの間にか下着が無くなったって?おばさん、それは老化で履き忘れていたのよ。じゃあね」

「老化って…」

「これで、最低でも地域内の物は領地内扱いと考えられます。でも町内とか中途半端ではなく、おそらく国内かと」


じゃあ、うかつに食べ物召喚とかやると、誰かのが消えるわけか。


さっきのハンバーガー。

元の持ち主さん、ごめんなさい。


「それではこのパンティはおにいに進呈します。1人の夜の寂しさを紛らわせてください」


おい。


「不服そうですね。まさかカリナの脱ぎ立てがほしいのですか?あげませんよ」

「マリナのをあげる!」


純真そうな笑顔で脱がないでっ!


「それならそれなら!毎晩マリナとカリナが泊まりに来るの!マリナたちはおにいの大切なぬいぐるみだから!」


そう言えば、そんな話もあったな。




去年のクリスマス。


プレゼントを買うなんてとてもできなかった。


俺は古いセーターをほどいて、小さなぬいぐるみを二人に作ってやった。


「プレゼントだぞ!」

「わあ!お兄ちゃん、ありがとう!」

「この年でぬいぐるみ…でも、おにい、ありがと」

「おにいちゃんにも何かプレゼントするね!」

「いいよ、俺には、ほら、マリナとカリナが居るからさ」

「じゃあ、マリナとカリナが、お兄ちゃんのぬいぐるみになるね!」

「カリナは人間。だけど、おにいがさびしいなら、ちょっとくらいなら、ぬいぐるみをしてもいい」

「ああ、それならずっと大切にするよ。お前たちは俺の大切なぬいぐるみだからな」

「えへへー」

「…うん」



二人とも優しかったよなあ。



「それなら、お兄ちゃんが向こうの世界で『俺の大切なぬいぐるみたち』としてマリナたちを召喚できるよね!」


あっ、そういうこともできるのか。


でも、半畳に呼ぶには狭すぎるぞ。


「向こうから呼んでもらう気ではいましたが、その方法がありましたか。でも、領地内の…だから、複製が…」


カリナは元々俺に向こうから呼んでもらう気だったのか!

でも、何を考え込んでいるんだ?


「おにい、カリナはすごく重要なことに気が付きました」

「何だ?」

「もしかすると、おにいは元の世界に戻れません」


え?なんで?


「もし、おにいが向こうの世界でカリナたちを召喚しようとしたら、どうなります?」

「それはできるかもしれないな。ぬいぐるみ扱いなら、玩具召喚』ってあるから」

「それで、向こうの世界に現れたカリナたちは、本当のカリナたちでしょうか?」

「え?」

「本来なら、領地外の『物』は複製されるはずでは?だから、複製されたカリナたちが召喚される可能性が有ります。おにい本人・・が異世界に召喚されたのは、おそらく」


ぐっと言葉を溜めるカリナ。


「生きているから複製できないか、召喚魔法に失敗したからではないかと」

「それでどうして元の世界に戻れないってことに?」

「生きているから複製できないのであれば何度か召喚してもらううちに戻れますが、召喚魔法が生きている人を複製できるのであれば、クリス様が召喚魔法に失敗(・・)しなかったら?」


あああっ!!


もしも、クリス様が召喚魔法に失敗したから複製されずに俺自身が召喚されていたのだとすると、


「そのクリス様が召喚魔法に成功したら、おにいの複製が現れるはずです」


そんなっ!


「それでも、おにいそのものですから、向こうは気づかないと思います」


クリス様が偽物の俺に気づかない?

そうだろうか?


たった2日だけだったけど、俺とクリス様の関係は…。


「そうだ、指輪!」


俺は自分の左指の指輪を見る。


「これはクリス様と『繋がる魔道具』だ!これを付けていれば、きっと戻れる!」

「おにい、指輪ごと複製されるかもしれません」


なんて恐ろしいことを言うんだ!

でも、確かにそうだよな。

うう、どうしたらいいんだ?


「と、おにいを困らせてもいけないのでカリナが答えを言うと、たぶん大丈夫です」

「ええっ?!」


あれだけ怖がらせておいてそれ?


「初級の召喚魔法で人間の魂までコピーできるとは思えません。そして、万が一失敗して、魂の無いおにいが出たとしても、椅子として働くことはできないと思われます。つまり、最高の椅子になれるのは、魂を持ったおにいだけなのです」


おお!


「まあ、クリス様がおにいを呼び戻すのに上級の魔法を使って魂までコピーできたら、アウトですけど」


カリナ!天国と地獄を行ったり来たりさせないで!

お読みいただきありがとうございました。

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次回も明日、12月17日18時更新です。

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