第24話 ドS王女様には大人向けの玩具を
なかなか女戦士の必殺技まで話が進まない(^o^;)
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
とんでもない誤字を修正。
ごめんなさいm(__)m
-主人公ケイト視点-
「おほほほほほほっ!」
「おほほほほほほっ!」
「おほほほほほほっ!」
クリス様の高笑いがこだまする。
脇腹をくすぐるのはやめてほしいけど、あまりにクリス様が楽しそうなので、止められない。
自分としてもやめてほしくない。
この密着感をもっと味わっていたい。
あっ
「クリスさまあ…」
限界に達した俺は、はげしく鼻血を吹き出しながら意識が遠のくのを感じた。
-王女クリステラ視点-
「ケイト!しっかりして!」
わたくしはケイトの頬を触ります。
手に付いたのは、間違いなく血ですわ。
小さいころ、わたくしがけがをしたときにも結構血が出ましたけど、これはそんなものではありませんわ。
顔が血まみれですもの。
「これは、お母様に連絡をして…」
でも、いったいどう説明すればいいのかしら?
そもそもケイトがいる理由から説明が必要ですわ。
でも、緊急事態ですから仕方ありませんの!
わたくしは通話用の魔道具を取り出します。
「『内線通話』!お母…」
わたくしの手ががしっと掴まれましたわ。
「ケイト!」
ケイトが目を覚ましましたわ!」
「クリス様、すみません。もう、大丈夫です」
「大丈夫じゃありませんわ!血まみれですのよ!」
「これは、その、のぼせて」
「のぼせて?」
そう言えば小さい頃に、「熱いお風呂に長く入るとのぼせて鼻血を出すから気を付けなさい」って、お母様に言われましたわ。
つまりは、体温が高くなって、頭に血が上って鼻血が出るのですわ。
もしかして、このふかふかの着ぐるみで激しく動いたから?
原因はわたくしですわね。
ケイトがわたくしを起こさなかったことに対するお仕置きとはいえ、そんなこじつけの理由でのぼせるほどにくすぐったのはあきらかにわたくしのミスですわ。
これはケイトにしっかりと謝って…
『一言謝ってくれるだけでいいんです』
ケイトはそう言っていましたわ。
そうですわ。
わたくしはケイトの主人。
間違いは正すべきですけど、ケイトが無事だったのでしたら、一言謝るだけにすべきですわ。
「ケイト、ごめんなさい」
「はい、クリス様。俺は大丈夫です。洗面所で、顔を洗ってきます」
わたくしは『共用扉召喚』で扉を開くと、ケイトを洗面所に送り出しましたわ。
…
…
お風呂に一緒に入って、血を洗ってあげても良かったかしら?
いえいえ、それは特別なことすぎますわ。
ケイトを洗ってあげるのは、すごく特別なご褒美の時にしますのよ。
「戻ります」
扉を少し開けてケイトが声をかけてきましたから、わたくしはいつものように立ち上がって、ケイトを待ちますの。
普段着に戻ったケイトは目をつぶったまま四つん這いで前進してきて、いつもの位置で椅子の状態で待っていますわ。
すとん
わたくしはそこに座りますの。
やっぱり最高のすわり心地ですわね。
あのぬいぐるみの服を着た『布団』もよかったから、たまにしてもらいましょう。
-主人公ケイト視点-
「ケイト。練習用の駒を出すのでしたわね」
俺はクリス様から魔晶石を受け取ると、
「ちょっと待ってください」
まず、教科書の後ろにある召喚魔法のリストを調べることにした。
そこに使えそうなものがあるかどうか…。
『魔道具召喚』
俺が動かせる駒を出すなら、これが一番ふさわしいだろうけど、魔道具は自作しないと、あまり良い性能のが出せないんだよな。
『○ボルタくん』みたいな小さくて高性能ロボットは上級でも出せない気がするし…。
おや、これは?
「クリス様。『玩具召喚』って、おもちゃが出るんですよね?」
「そうですわ。わたくしもぬいぐるみとか出していましたわ」
姉さまと話していた、内臓の出るなまこのぬいぐるみって、この魔法の産物か。
「最近は使っていないんですか?」
「もう、おもちゃで遊ぶ年ではありませんのよ」
クリス様、甘いな。
おもちゃには、子どもも大人もないということを教えないと。
大人のおもちゃだってある…ああっ!
しまった。
変な物を想像してしまった。
ネグリジェが出たのは、雑念が多かったからだと思うんだ。
だから、変なことを考えないようにしないと。
「おもちゃには大人があそんでも楽しい物もありますよ」
「そうですの?」
ここで将棋とかチェスとか言うと、きっとやりたがるだろうけど、俺はそんなに得意じゃないんどよな。
異世界ならリバーシ普及が基本だけどなあ。
この体勢ではつらいな。
フェイントでけん玉とか。
だめだ。
玉が俺に当たる未来が見える。
「また、俺の世界の楽しいおもちゃを教えますよ」
「きっとですのよ」
念押しされたよ。
忘れないようにしないと。
姉さまたちに交換するものを出した時にも、クリス様に何かいいものを渡すって言ってたよな。
あんまり安請け合いして、あと回しにするのは良くないよな。
よし、どっちも今日中に済ませてしまおう。
とりあえずは、『玩具召喚』の初級で、クリス様と遊べるものを出そうかな。
トランプとか…狭いとできないよなあ。
あまり熱中して、勉強をおろそかにしてもいけないよな。
ツイスターゲーム…
『クリス様、右手が赤です』
『こうかしら?ああっ!胸がケイトの顔に!』
いかんいかん、いらんことを考えたら駄目だ。
狭いし、体勢的にできないものばかりだな。
やっぱり一人用かな?
そういえば、結構ダーツを妹たちとやったな。
妹たちが幼くて危ないからマグネットのダーツだったよ。
でもここは狭いからなあ…いや!出来る!
投げ下ろせばいいんだ!
「『玩具召喚』!マグネットタイプのダーツの矢と的!」
1つの魔晶石で両方出るとありがたいな…出た!
「それは何かしら?」
「これはダーツっていう遊具ですよ」
-王女クリステラ視点-
「『玩具召喚』!マグネットタイプのダーツの矢と的!」
まぐねっとたいぷ?
だーつ?
矢と的はわかりますわ。
ケイトの手に握られていたのは、30cmくらいの丸い板と、小さな棒状の物。
「それは何かしら?」
「これはダーツっていう遊具ですよ」
丸い板には数字が書いてありますわ。
あと、棒状のものは3つありますのね。
変わった形をしていますけど、どう使うのかしら?
「クリス様、これがダーツの『矢』です」
「弓兵が持つ矢とは違いますのね」
「え?駒に弓兵も居たんですか?」
弓兵の矢は10本しか矢を背負ってないし、魔法と違って相手に命中させにくいから、弓兵は使わないことにしたのよ。
でも、ケイトなら有効に使えるのかしら?
「なるほど、そんな理由で使わないことに…。もしかして、戦士たちと同じように、下に配置しました?」
「そうですわ」
「城壁とか高い場所に配置すると、相手を狙いやすいし防衛しやすいですよ」
「でも、城壁の向こうを見るのは怖いのよ。もしケイトが潜望鏡を作ってくれて見られるようになっても、城壁の上はきっと相手の魔法攻撃の餌食ですわ」
「城壁の縁に隠れられるスペースがあづたと思うので、そこから射つといいと思います。あと、領地内に背の高い物を置いて、その上から狙わせたらどうでしょうか?」
「それはいいですわ!」
さすがケイトですの。
そんなことより、今はダーツよ。
「それで、これをどうするのかしら?」
「とりあえず、この的を持ってください」
わたくしは丸い的を手渡されて、言われたとおり、ケイトの方に向けて持ちましたの。
ケイトはわたくしの椅子の体勢から、器用に片手を動かして、矢を的めがけて投げてきましたわ。
ぺたん
「くっつきましたわ!」
「はい、矢の先が磁石になっていて、的が金属なのでくっつくんです。これで、ここに書いてある点数が入ります」
真ん中から、100点、50点、40点、30点、20点、10点ですわね。
「20点ですわ」
「あと2回投げます」
ぽい、ぺたん。
ぽい、ぺたん。
なかなかうまいですわね。
「20点、40点、40点ですわ」
「じゃあ、足して100点です。次はクリス様の番ですよ」
わたくしは的から矢を外すと、的だけをケイトに渡しますの。
ケイトは領地の隅のあたりにその的を、上向きに置きましたわ。
「ちょっと、ケイトがやった時より遠くありませんの?」
「投げ下ろすから、このくらいでちょうどいいと思いますよ」
そうかしら?
えっと、とりあえず、矢を
「えいっ!」
あっ!変な方向に行きましたわ!
ひゅん、こん、ぺたん。
矢は白い壁に当たってから、下に落ちて、的に当たりましたわ!
「10点ですね」
壁に当たると、そこから真下に落ちるから的の真ん中に行かないですわね。
それなら、直接真ん中を狙いますの!
「えいっ!」
ひゅん、ぽて。
手前に落ちて、的の前に転がってしまいましたわ。
「む、難しいですわ」
「クリス様、大丈夫です」
そうよ、こんなことで下僕に負けてなんていられませんわ!
「もう少し、力を抜いて」
「こうかしらっ」
ひゅーん、ぺたっ!
あ、当たりましたわっ!
それもほぼ真ん中ですの!
「クリス様、50点です!」
やりましたわ!
でも、惜しかったですわ。
もう少しでど真ん中の100点で、わたくしの勝ちでしたのに。
「ケイト、もう一勝負ですわ」
「わかりました」
-主人公ケイト視点-
それから何回かやって、勝敗はほぼ五分。
クリス様も的を外すことは無くなった。
「楽しいですわね!」
「でも、そろそろ本来の目的のものを出していいですか?」
もう午後4時30分だものな。
「『上級玩具召喚』!リモコン操作できる小さくて丈夫なロボット!」
俺の手の中に、小さなリモコンとロボットが現れる。
ずっとダーツをしていたせいで『大人のおもちゃ』って雑念は消えたのが良かったな。
「変わった駒ですのね。人形と言うべきかしら?でも、固そうですわね」
そう、出てきたのは超合金っぽいロボットだった。
マジ○ガーZみたいだな。
リモコンを見ると、ボタンがいくつかついている。
十字ボタンは方向だな。
とりあえず、置いて動かそう。
「えい」
十字ボタンを押すと、その方向になめらかに動く。
え?すごくないこれ?
こんな見た目で、すごく自然に歩くじゃないか。
青いボタンは…あっ、右手を前に構えた。
赤いボタンは?あっ、左手を前に構えるのか。
ロケッ○パンチかと思ったけど、違ったのかな?
俺は腕を戻そうと思って、もう一度青いボタンを押す。
おや?手首から先がグルグルっと回って…
バシュッ!
出た!ロケッ○パンチ!
手が回転しながら飛ぶんだ。
「手が飛びましたわ!」
おお、クリス様も身を乗り出して興奮している。
せっかくだから、詳細は鑑定で調べておこう。
俺は自分の魔晶石を出して鑑定をすることにした。
「『鑑定』!この玩具の詳細をできるだけ教えて!」
『鋼の巨人ガンガンザーのおもちゃ』
素材は合金。かなり丈夫で、踏んだくらいでは壊れない。
リモコンは十字ボタンを押すと歩かせることが出来て、十字ボタンを連打すると走る。
青いボタンで右手を前に突き出し、もう一度押すと、拳が回転してはずれ、そのまま飛び出す必殺の「ソケットパンチ」を発射する。
赤いボタンは左手に対応しており同様のことが出来る。
黄色いボタンでジャンプが出来るが、着地は苦手である。
倒れている時に十字キーを押すと、自力で立ち上がる。
センサーが無いので、段差や障害物を検知できず、つまずいたりぶつかったりする。
あと、背中を開けると黄色と黒で彩られたボタンがあるけど、押したら駄目なのはわかるよね?
動力は謎。動けば問題ないよねっ!
「最後の自爆スイッチかよ!」
思わずつっこんでしまった。
相変わらず、おかしな言い回しをする鑑定結果だな。
それに「ソケットパンチ」のソケットって、電球はめる部分だよな。
だから回転してから飛んだのか。
じゃあこの拳って電球なの?金属にしか見えないけど?
あと、十字キー連打で走るし、ジャンプするって、何のゲーム?
「ケイト、興奮していないで、わたくしにも鑑定結果を教えなさい」
「はい!」
俺は一言一句間違えずに説明する。
「なるほど、わかりましたわ」
とことこ
タッタッタッタ
ぴょーん、どさっ
むくっ
ソケットパーンチ!
「面白いですわっ!」
クリス様が本来の目的を忘れてる気がする。
それにしても、操縦うまいなあ。
リモコンとかボタンを使うの初めてのはずなのに。
「クリス様、鑑定に丈夫とありましたから、必殺技にも耐えられると思います」
「そうね!でも、あと少しだけ。ケイト、その手を拾ってはめなさい」
ソケットパンチは自分ではめ戻さないといけないんだよなー。
「えいっ!すごい!ケイトの頭に乗れたわ!」
ちょっと痛いです。
でも、クリス様が楽しそうだから、なんだっていいや。
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、12月12日18時更新です。




