第23話 ドS王女様のお昼寝タイムは座椅子形態で
クリス様もくすぐりたいけど、そうなる過程が思い付かない。
でも、きっと自然にそうなる気がする。
キャラが勝手に動いているもんなあ。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-主人公ケイト視点-
さあ、いよいよ「疾風の女戦士スピカ」の必殺技を見るぞ!
的になる「何か」が必要だな。
どんな技かわからないから、人間型の的がいいな。
まさかの「関節技」かもしれないものな。
ん?
俺は部屋の隅に転がっている「駒」に気が付いた。
「あれ?食事の時に全部片づけませんでした?」
「1体増えたのを忘れて全部仕舞おうとしたから、駒箱からはみ出したのですわ」
どうやら、異次元箱や駒箱は、容量オーバーになるとその物を放り出すらしい。
「捨てるんですか?」
「レアでもない駒は売れないから捨てるしかありませんわ」
「俺の異次元箱に入れておきます」
「駒は異次元箱に入りませんのよ」
え?そうなの?
本当だ。入らない。
「俺も駒箱持てませんか?」
「それは舞闘会の参加者のみが持てるから無理ですわ。ケイトには参加資格はありませんもの」
「参加資格?」
「もちろん、この王国の王族ですわ」
それは無理だ。
俺は駒箱が持てないだけでなく、指令環も使えないらしい。
『舞闘会用駒召喚』は使えるのになあ。
しかし、捨てるのもったいないなあ。
貧乏生活をしていたせいか、使える物は捨てたくないんだよな。
「クリス様、これを訓練用の駒にしたらどうでしょうか?攻撃を受けても壊れないようなものを取り付けますから」
「駒ごと異次元箱にしまえるならいいわよ。でも、領地の中にはなるべく物を出したままにしないようにするのが常識よ」
そうだよな。
捨てられないからってどんどん物を溜めていくと、汚部屋、もとい、ごみ屋敷、いやいや、廃棄物領地になってしまう。
訓練用の防具を付けた駒が、仕舞い込めるかどうか…。
それなら、最初から俺が動かせる駒というか人形のほうがいいよな。
ん?
俺がそっくりな駒を動かしたら、それで相手をかく乱できないか?
「クリス様。動く人形を舞闘会で戦わせてもいいんですか?」
「問題ないわ。おそらく、姉さまたちも自作の魔道具で防衛している可能性が有るのよ。でも、駒じゃない物は『撤去』ができてしまうから、絶対的な有利にはならないわね」
「それが駒そっくりの動く人形なら、相手を混乱させることができませんか?」
「そうね。撤去は駒のすぐそばの物をどけることが出来るけど、離れているものはできないから、そういうこともできるかもしれませんわ」
あれ?
いつもなら「すごいですわ!」とか言ってくれるのに、何だか反応が薄いなあ。
「ふあぁ」
クリス様が小さくあくびをする。
美少女はあくびも可愛いんだな。
もしかして、眠いから反応が鈍かったのか。
「昼食のあとは眠くなることがあるから、はあぁ、いつもでは、ありません、のよ」
あれあれ、目が閉じてきた。
「たまに、むしょうに、ねむくて」
「寝袋出して、昼寝したらどうです?」
「ひるね?」
えっ?昼寝って無いの?!
「寝るのは、夜だけですからぁ、寝袋は出せても、壁には付けられません…」
クリス様の頭がぐらんぐらんし始めた。
これはまずい。
ぐらあっ
がしっ!
俺はぐるんと反転して、クリス様を抱きかかえるようにキャッチした。
クリス様のお尻が俺の腹部に当たったが、クリス様が無事なら問題ない。
「クリス様、大丈夫ですか?」
「くー」
可愛らしい寝顔だ。
しかし、ずっとこの体勢でいいのだろうか?
今の俺はいうなれば「座椅子」みたいな状態。
クリス様を抱きしめて、体の上に載せているけど、固い畳に下ろすわけにいかないよな。
どうしようか?
このまま目が覚めて、クリス様はどう反応するかな?
褒めてくれるかな?
無礼者ってお仕置きかな?
どっちでも嬉しいけど…ん?
それより、クリス様の寝やすさを優先しよう。
うーーーーーーーーーーん。
俺はひたすら知恵を絞り、ある考えを思いついた。
「『日用品召喚』!…」
-王女クリステラ視点-
ん?
…あら、もう午後3時ですわ。
うっかり寝てしまいましたのね。
畳に落ちて寝てしまっていたのは久しぶりですわ。
畳?
いえ、この寝心地は畳ではありませんわ。
お尻の下にも足の下にも、ふわっとしたものがありますの。
固い壁にもたれているはずなのに、そこもやわらかいですわ。
わたくしが振り向くと、後ろに居たのは大きなぬいぐるみですの。
いいえ、良く見ると、ケイトですわ。
ケイトがぬいぐるみを着ているんですわ。
ケイトの世界にはこんな服がありますのね。
わたくしはその胸の所に頭を乗せて、座った状態で眠っていたのですわ。
それだけではありませんわ。
ケイトはわたくしがそこから落ちないように、肩とお腹の所に腕を回して、わたくしを支えてくれていますの。
褒めようかと思いましたけど、肝心のケイトも寝ていますのよ。
これは起こすべきかしら?
わたくしより先に起きるのが、下僕としては当然ですわよ。
でも、そうね。
わたくしも、もう少し眠りますわ。
そっと、ケイトの腕に手を添えますの。
「ケイト。わたくしの所にきてくれて、ありがとうですわ」
そのまま、わたくしは眠りに落ち…
-主人公ケイト視点-
ん?
あ、しまった。
召喚した「猫のふかふか着ぐるみパジャマ」を、クリス様が起きないように頑張って着たせいで、疲れて眠っちゃったのか。
クリス様、まだ寝てるな。
それにしても、ふかふかもこもこの着ぐるみパジャマ越しとはいえ、クリス様との密着感がすごいよな。
よくこんなんで寝れたものだ。
意識したら、もう眠れないよ。
身長差があるから、顔の下がクリス様の頭のてっぺん。
そこからものすごくいい香りがする。
これ、シャンプーやリンスだけの匂いじゃないよな。
きっと、高貴な香りっていうか、美少女の香りってのがあるんだ。
肩に回した手の先が、クリス様の縦ロールに触れている。
髪の毛なのに、触れているだけでこんなに気持ちいいんだ。
うん、髪の毛すごい。
金髪できれいだし。
…なんでこんなに髪の毛を絶賛しているかと言うと、
クリス様の体勢が少し下がってきていた。
最初はこうじゃなかったんだよ。
下がってきたせいで、クリス様のお腹に回していた腕が、手が、
その上に、アレが乗っかってきているんだ。
うん、クリス様の爆弾が。
あかん、これはいかん。
顔をめり込ませた時に怒られたばかりだ。
そうだ!クリス様を上に持ち上げれば!
-王女クリステラ視点-
んー。
じかんはー?
え?もうこんな時間?
そろそろ起きないといけないわね。
あら?目線がさっきより下ですわ。
…わたくしの胸に、ケイトの腕がめり込んでいますわね。
これ、事故かしら、故意かしら?
事故なら仕方ないわね。
きっとわたくしが下にずれてしまったせいよ。
故意なら、死刑ね。
死ぬくらいのお仕置きですわ。
「よいしょ」
あら?ケイトも起きていますのね。
胸の下の腕を抜いて…両手をわたくしの脇の下に入れてきましたわ。
ま、まさかっ!
さっきのくすぐった仕返しをするつもりなの?!
わたくし、脇とかくすぐられたら、とっても恥ずかしい姿を見せてしまいますわ!
すぐに辞めさせ(ぐいっ)あら?
わたくしが上に持ち上げられましたわ。
「これでいいかな」
ケイトはそういうと、元の位置になったわたくしの肩とお腹の位置に腕をまわし直しましたわ。
…事故だったようですわね。
それで、元に戻したと。
良い下僕ですわね。
でも、何だか、単に褒めるのも癪ですの。
何か文句を言って、ちょっとお仕置きをしてみたい気分ですのよ。
そうですわ!
「…ケイト?」
「あっ、クリス様。起きられました?」
「今、何時かしら?」
「午後3時45分です」
「そう。すごくゆっくり寝てしまったわね。どうしてわたくしを起こさなかったのかしら?」
ビクッ!とケイトの体が震えたのがわかりましたわ。
「クリス様が、気持ちよさそうに寝ていましたので」
「わたくしは『寝る』とは言っていませんのよ。『寝るのは夜だけ』とも言ったはずですわ」
「あっ」
ふふふ。顔は見えませんけど、きっとあせっていますわね。
「これからは、わたくしが『寝る』と言った時以外は、一度起こして、どうするか尋ねなさい」
「はい」
「それはそれとして、おしおきは必要ですわね」
さて、せっかくですから、この体勢でできるお仕置きを考えますわよ。
そうですわ!
さっき、やっていなかったことがありますわ!
-主人公ケイト視点-
そうだな。
俺の勝手な判断で、貴重な時間を潰してしまって。
この世界、夜になるとすぐ寝るから、時間が勿体ないんだよな。
「これからは、わたくしが『寝る』と言った時以外は、一度起こして、どうするか尋ねなさい」
「はい」
「それはそれとして、おしおきは必要ですわね」
ど、どんな怖いお仕置きがあるんだろうか?
「ネコ」だけに、踏みまくられるとか。
駒の必殺技の実験台とか?
とりあえず、急所は守ろう。
ぐるん
え?
クリス様が半回転して、俺の方に体を向ける。
「ふふっ。ケイト、何をされるか分かるかしら?」
「わ、わかりません」
「こうよ!」
クリス様は両手で俺の脇腹を掴むと、揉むようにしてくすぐり始めた。
「ぎゃははははっ!お、おやめくらさいっ!」
「そう簡単には、やめませんわっ!」
くすぐったさで体を左右に揺さぶる俺から落ちないように、ぎゅっと抱きつくようにしながらくすぐってくるクリス様。
いかん、苦しい、死ぬ。
くすぐったい、苦しい、それに、これはダメすぎる。
「おほほほほほほっ!」
クリス様が楽しそうに高笑いしている。
って、クリス様の高笑い聞いたの初めてじゃないかな。
そんなことより
クリス様の胸が、俺に押し付けられて、脇腹を必死にくすぐろうとして、胸が俺に押し付けられてぐいぐいとされて、形を変えて、
死ぬほどくすぐったいのに、そっちも気持ちよすぎて死ぬ。
-王女クリステラ視点-
「おほほほほほほっ!」
じたばたしているケイトから落ちないようにくすぐるのが、こんなに楽しいとは思いませんでしたわ!
もっと、もっとやりますのよ!
「おほほほほほほっ!」
「おほほほほほほっ!」
「おほほほほほほっ!」
「クリスさまあ…」
がっくりとして、ケイトが動かなくなりましたわ。
わたくしの勝ちのようですわね。
「さあ、ケイト。先程の続きをしますわよ」
駒の的を出すとか、必技を見るのをしないといけませんわね。
「…」
「ケイト?」
ケイトが無反応ですの。
まさか、また気絶を?
ケイトの顔を見ると、ケイトの顔が血で真っ赤に染まっていましたの!
「ケイトっ!」
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次回も明日、12月11日18時更新です。




