第21話 ドS王女様と初めての痛み
ようやくこの世界らしさが出てきました。
令和元年12月9日。分かりにくいところの修正をしました。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-主人公ケイト視点-
「そろそろお昼ですわね。『駒たち、駒箱に戻りなさい!』」
クリス様はひとまず駒を片づける。
異次元箱である駒箱に入れるのは領地内であれば一瞬で入れられて、一瞬で配置できるらしい。
それにしてもどうしてお昼ってわかったんだ?
「クリス様、もう12時ですか?」
「体内時計よ。あと少しで12時ね」
すごい!クリス様、すごいよ!
俺の体内時計なんてそんなに正確じゃないよ!
「わたくしのは針時計だから少し見づらいのですけど、姉さまは文字時計で見やすいらしいですわね」
ん?
んん?
ちょっと待ち。
針時計?
体内時計だよね?
「クリス様、体内時計ってどんなのですか?」
「え?どんなのって、普通の時計ですわ」
-王女クリステラ視点-
わたくしの体内時計はお母様からいただいたものですの。
針時計だから、時間が見づらいのですわよ。
「クリス様、体内時計って、どんなのですか?」
「え?どんなのって、普通の時計ですわ」
もしかして、ケイトって体内時計って無いのかしら。
そういえば、わたくしに時間を聞いていましたわね。
「体内時計は『内蔵品召喚』で出てきますの。それを飲み込んでから」
「時計を飲むんですかっ?!」
そんなに驚くことかしら?
「飲み込んでから、しばらくすると、体内時計として機能しますのよ」
「クリス様、もしかして、体が機械だったりします?アンドロイドとか?」
あんどろいど?
何かしらそれ?
「体が機械なわけありませんわ。アンドロイドってもしかして、ロボットのことかしら?」
「そんなものです」
「わたくしはれっきとした人間ですわよ。それに内蔵品を飲んで体と一体化させるのは珍しいことではありませんのよ」
ケイトにはできないのかしらね。
いえ、もしかすると異次元箱みたいにできるようになっているのかもしれませんわ。
「丁度いい機会ですの。わたくし、文字表示の時計がほしかったのですわ。今から召喚してみせますわね」
「クリス様、文字表示ってデジタル時計のことですよね?」
「でじたる時計?」
-主人公ケイト視点-
内臓じゃなくて内蔵品?
でもクリス様がロボットやアンドロイドじゃなくて良かった。
いや、例えそうでも嫌いにならないよ。
大好きだもんな。
「丁度いい機会ですの。わたくし、文字表示の時計がほしかったのですわ。召喚してみせますわね」
文字表示ってアレだよな?
「クリス様、文字表示ってデジタル時計のことですよね?」
「でじたる時計?」
デジタルって言い回しもないのか。
「タブレット借りますのね。…こんなのです」
俺はタブレットに昔ながらのデジタル表示の『8』を書いてみせる。
「そうですわ。そんな表示になっていますの」
それなら、もっと見やすい物出せるんじゃないかな?
「俺に任せてもらえませんか?前の世界にあったいい時計を出して見せます」
「そうなの?じゃあ、お願いするわ」
よし、やるぞ。
きちんと、どんなものか考えて、イメージを固めないと。
俺が前に使っていたのは、アウトドア用の耐衝撃対塵耐水圧の腕時計だったな。
まてよ、腕時計とか置時計とかどっち?
いや、きっと言えばそれらしいのが出てくるはず。
いやいや、適当なことをして魔晶石を無くしたらもったいないよ。
「クリス様、時計ってこんなのです?」
俺はタブレットに掛け時計のようなシンプルな時計の絵を書く。
「そうですわよ」
よし。それなら!
ここはやっぱり上級召喚だよな!
もし失敗したら、俺が使うことにして、やり直させてもらおう。
「『上級内蔵品召喚』!俺が前の世界で使っていたような多機能でたいしょうげき、たいじん、たいすいあつの時計っ!」
ふう、言い切った。
一息に言わないとだめって教科書にも書いてあったからな。
そして俺の右手に何かが握られていた。
-王女クリステラ視点-
「『上級内蔵品召喚』!俺が前の世界で使っていたような多機能でたいしょうげき、たいじん、たいすいあつの時計っ!」
上級でやりますのね。
めったに変えないものですから、いい判断ですわ。
「出たみたいですわね。ケイト、さっそく見せてみなさい」
「はい…あれ?」
なぜ首をかしげていますのかしら?
受け取った時計は、タブレットの画面のようになっていますわ。
さすがケイトの世界の時計ね。
素晴らしいデザインですの。
文字も読みやすいですけど…ちょっと周りがごつごつして飲みにくそうですわね。
「クリス様、それ、周りが柔らかいんですけど」
「当たり前ですわ。固いと飲み込めませんわよ」
「耐衝撃は意味なかったかな?」
耐衝撃?衝撃に強い時計って何の役に立ちますの?
とりあえず、飲みますわ。
それにしても、5センチくらいとはいえ、こんなものを飲み込むのはあまり好きではありませんわね。
ん、んく、ごくん。
ふう、飲めましたわ。
んっ?!
お、おなかが痛いですの!
「ううっ、ケイトっ!お腹が、お腹が痛いですわ!」
「ええっ?!」
-主人公ケイト視点-
すごいな。
小さくて柔らかいとはいえ、5cmくらいのものを飲み込んじゃうんだ。
のど詰まったりしないのかな?
するとクリス様が急にお腹をおさえて苦しみだした。
「ううっ、ケイトっ!お腹が、お腹が痛いですわ!」
「ええっ?!」
のどじゃなくて、お腹?
まさか俺の呼び出したものが失敗だったせい?
どうしよう…。
「クリス様、吐き出しますか?トイレ行きますか?」
「どうしてトイレなのよ!」
そういえば、う○ちとかしない世界だったな。
しかし俺が椅子の体勢で、その上でクリス様が身をよじって苦しまれてて…。
できれば横でお腹とかさすってあげたいのに。
「うっ、あ、あああっ!で、でるっ!でちゃうっ!だめええええええっ!」
え?何が?
すると、俺の背中にボコンと何かが当たった。
厳密にいうと、クリス様のお尻から硬い物が出てきた感じだ。
-王女クリステラ視点-
お腹が、すごく痛いですの!
ケイトったら、なんてものを出してくれましたの!?
こ、これはお仕置きではすまされないですわっ!
あ、ああああっ!なに?
痛いのが下に行って、何か、何かが
「うっ、あ、あああっ!で、でるっ!でちゃうっ!だめええええええっ!」
気が付くと、わたくしのお尻の下に何かが有りますわ。
立って見ると、それは下着の中にあるようですの。
恐る恐る下着の中に手を入れると…なにかしらこれ?
「これって…」
「クリス様、それはおそらく『卵』です」
卵?
そう言えば、保健の教科書に書いてありましたわ。
『体に合わないものや不要となった物は『卵』となって排出されることがある』
すると『体に合わないもの』だったってこと?!
これは失態ですわね!
「ケイト、ここを見なさい」
わたくしは、保健の教科書の該当部分を開いて、ケイトに見せましたの。
-主人公ケイト視点-
まさか卵を産むなんて!
ロボットかと思ったら、今度は卵産むとか、どうなってるんだ?
「ケイト、ここを見なさい」
あれ?クリス様、口調は静かだけど、怒ってる?
クリス様の開いた保健の教科書のページを読む。
『体に合わないものや不要となった物は『卵』となって排出されることがある』
え?これって?
「体に合わないものは内蔵品として使えないのですわ。ケイト、どうやら失敗だったようですわね」
ああっ!俺はなんてことを!
普通に、シンプルな時計にしておけばよかったのに!
「すみません!どのようなお仕置きでも受けます!」
「良く言ったわ」
どんっ!
俺の背中にクリス様の両足が載ります。
そのままかかとで背中をグリグリグリグリとしてくる。
クリス様は軽いけど、さすがに両足攻撃は効くなあ。
効くけど、ちょっと痛いけど、それ以上になんだろ。
痛気持ちいい?
「ふう、このくらいにしてあげますわ!あんまりやると、お昼の時間が終わってしま…」
あれ?クリス様がフリーズしているぞ。
あ、背中から降りた。
いつものように背中に座って、教科書読んでる?
卵を見てる。
あ、立った。
なでなでなで。
俺の背中をなではじめた?!
なんで?!
-王女クリステラ視点-
命じたのはわたくしですけど、ケイトが自分の判断で出したものがダメでしたから、お仕置きしないといけませんわ。
下僕としてのしつけをしっかりしておきますのよ。
グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ
グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ
このくらいでいいかしらね?
「ふう、このくらいにしてあげますわ!あんまりやると、お昼の時間が終わってしま…」
わたくしが時計を見たいと思うと、いつものように意識の片隅に時間が表示されますの。
そこには文字表示の時計が、表示されていますわ。
わたくしは慌ててケイトの上から降りて、保健の本を読みますの。
『体に合わないものや不要となった物は『卵』となって排出されることがある』
『生まれて初めての排出は腹部に痛みを伴うことがある』
『合わないものは排出された卵の殻に『使用条件』が書かれていることがあり、条件を満たすと中身を取り出して使用することが出来るようになる』
『同じ役割をするものを取り込んだ場合は、古い方が排出される』
『排出された卵の殻に『再利用可能』と書かれたものは、中身を取り出して再利用することが出来る』
わたくしはじっと卵を見ましたわ。
『再利用可能』
ああああああああああああああっ!!!
これ、古い方の時計ですわ!
ケイトが召喚した新しい時計はちゃんと使えていますわ。
ごめんなさい!ごめんなさい!
わたくしはすぐにケイトの背から降りて、その背中をなでますの。
ああ、こんなことで許してもらえるとも思えませんわ。
でも、ああ、どうやって謝ればいいんですの?
-主人公ケイト視点-
背中をなでまわしながら、クリス様は何だか泣いているようだった。
「ケイト、ごめんなさい。わたくしが間違っていましたわ」
そう言って、先程見せてくれた部分の先を指差します。
…これって?
そして見せてくれた卵には『再利用可能』と書かれていました。
「わたくし、ケイトが失敗したって決めつけてしまいましたわ!ああ、なんてこと!」
「クリス様、早く俺の上に座ってください」
「え?」
呆然とするクリス様。
「俺は、クリス様の椅子です。クリス様が何をしたって大丈夫ですよ。それに」
「それに?」
「そうやって素直に謝ってくれるご主人様で嬉しいです。でも、これからは、一言謝ってくれるだけでいいんです。だって俺は…」
「そう、ですわね。ケイトは、わたくしの、最高の、椅子ですもの」
そう言って、クリス様は俺の背中に座られました。
「ケイト、わたくしのお古ですけど、差し上げますわ」
俺はクリス様から卵を手渡された。
まだ温かい。
クリス様の体から出てきたんだよな。
どこから出てきたって?
口から飲んだものだよね。
出てくるのって二択だよな。
本当の卵なら前からで、でも、これはたぶん…。
う○ちやお○らが出ない代わりに、こういったのが出るんだ。
俺は卵を軽く叩くと、割れて中からすごく小さな時計が出てきた。
軟らかくて、2、3センチくらいで、飲みやすそうだ。
割れた殻は消えてしまった。
「クリス様、いただきます」
ごくん
…
…
時間は何時?
そう意識したら、視界の片隅にアナログ時計が表示される。
「クリス様!時間が分かります!」
「そう、良かったわ…」
あれ?クリス様、まだ落ち込んでいるのかな?
-王女クリステラ視点-
ケイトはなんて優しい椅子なのかしら。
でも、今回はさすがに反省しないといけませんわ。
そして、もっとケイトを信じてあげないといけませんわね。
「クリス様、お昼ご飯は何がよろしいですか?」
そうでしたわ。昼食の予定でしたわね。
「お昼ですけど、昨日の夕食に食べた唐揚を食べたいですわ。あと、何かもう一つ出しなさい。それで」
このくらい、してもいいですわね。
「それぞれ半分ずつ食べますわよ」
同じものを同じだけ食べる。
それは下僕には過ぎたることだと思いますの。
でも、わたくしは…
わたくしは、ケイトと楽しく暮らしていきたいですわ。
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、12月9日18時更新です。




