第20話 ドS王女様はレア召喚でレオパル○ンをひく
このペースだと、舞闘会までにどれだけ時間(話数)がかかるのやら?
でも、スロー(エロー)ライフなので、のんびり進めていきます。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-王女クリステラ視点-
「単調な行動しかできない戦士なんて敵ではありませんのよ」
この女戦士の駒になって一撃で姉さまの戦士を葬るのは快感ですのよ。
「きゃあっ!」
この声は、映像の中のわたくしの声ですわ。
それにしても、自分の声って思っていたのとちょっと違いますのね。
城壁の上から飛んできた魔法が、わたくしに命中して動けなくなりましたわ。
『束縛』の魔法ですわね。わたくしが戦士に気を取られているうちに、エメル姉さまがこちらを覗き込んで、具体的な指示を魔法使いに出したのですわ。
わたくしが何とか魔法を解除しようとしている間に、わたくしの戦士たちは打ち倒され、紋章は奪われてしまいましたの。
紋章の所にたどり着いた戦士はそれを『取得』により体の中に所持できますの。
そして戦士は素早く城壁に走っていきますの。
「紋章を奪った戦士が城壁を超えました!」
「これで終わりですわ」
ああ、初めて自分の戦いを見ましたけど、とてもくやしいですわね。
色々準備をしていたつもりでしたのに、ほとんど活かせませんでしたの。
でも、こうやって改めて見ると、色々反省すべき所がわかりますわね。
「クリス様…」
わたくしに何かを言うつもりなのか、ケイトの顔が近づいてきます。
ちょ、ちょっと待ちなさい。
わたくしはケイトの膝の上に座っていますのに、どうして顔がこんなに近いんですの?
違いますわ。
膝の上だから近いのですわ。
今考えたら、これって、とんでもなく恥ずかしい体勢ですわね。
でも背中に回された腕が、何か安心感を与えてくれているような…。
だめっ!だめですわ!
下僕相手に何を言っているのかしら?
「さあ!対策を立てますわよ!」
わたくしは拳を握りしめ、すっくと立ち上がりましたの。
「あっ」
え?ケイトの今の声はなんですの?
ケイトを見ると、赤くなって顔をそむけていますわ。
私が立ち上がった時、ケイトの顔が私のスカートのすそ辺りにあって。
まさか…。
「見えていませんっ!スカートのすそが顔に当たったので、慌てて目をつぶりました!」
まあそれならいいかしら。
それに、今回はわたくしが軽率でしたもの。
「では、ケイト、いつものように」
「はい」
ケイトは素直にいつもの椅子の状態に戻ります。
さあ、ここから作戦会議ですわ。
-主人公ケイト視点-
さて、色々聞こうかな。
『下着はしまぱんとみずたま以外に何がありますか?』
違う違う。
そんな事聞いたら凄いお仕置きされるぞ。
聞くべきことはもちろん舞闘会のことだ。
「いくつか気になる点がありました。まず、相手の領地の中が見えないから具体的な指示を出せないんですよね?」
「そうですわ。立ち上がって見ることもできますけど、そうするとわたくしを指し示して、『あれを攻撃しろ』って命令が出せるようになりますのよ。見えていなければ妨害をしたり攻撃を仕掛けない限り、領主であるわたくしが攻撃をされることはありませんの」
なるほど。それなら潜望鏡は本当に有効だな。
まあ、物がわかっていれば俺が呼び出せるだろうし、むしろあれを逆手に取る戦略もありそうだ。
「クリス様が駒になっていた時がありましたよね?あれは欠点とかあるんですか?」
「駒の状態では指令環が使えませんの。元の大きさに戻ることもできませんし、わたくしが倒されても負けになりますわ。でも、目の前の駒に直接命令ができますわ」
これは使い所が結構重要だな。
「駒は戦士と魔法使いしか見えませんでしたが、他にも駒はありますか?」
「ありましてよ」
まず駒を召喚するときに、何が出てくるか指定しないランダム召喚を使う。
それにより、出てきた駒には名前が書いてあるので、2回目からはそれを召喚できるようになるとのこと。
ランダムで出るとか、なんだかガチャっぽいよな。
クリス様が持っているのは以下の通り。
戦士
魔法使い
女戦士スピカ
魔法戦士
え?
「4種類だけなんですか?」
「よくわからないものは処分してしまいましたの。今のわたくしの駒箱には50体までしか入れられませんもの」
「よくわからないって?」
「たしか『せっこう』とか『こーへー』とか言うのがあったわね」
『斥候』と『工兵』か!
それって魔法世界っぽくないな。
いや、魔法の世界でもあって不思議はないか。
「クリス様、斥候は探索をする兵です。工兵は道を作ったり障害物を取り除いたりできます」
戦略シュミレーションゲームの知識も役に立つもんだな。
「使えそうですわね。一度出したものですから、今からでも召喚できますわ」
「クリス様、慌てなくていいですよ。それに、もしかすると俺の知識でクリス様の知らない兵を出せるかもしれません」
「ケイトはそういうことに詳しいのですわね。頼もしいですわ」
クリス様が熱い視線を投げかけてくれている。
これは期待に答えねば!
「さっそくやってみていいですか?」
「慌てなくていいって言ったのはケイトじゃなかったかしら?でも、まあいいわ。どういったのを出すつもりですの?」
おそらく単純な性能の物が初級召喚、複合型が上級召喚。特級はまだ考えないとして…。
今のを見ていて思ったのは、守り専門の駒があるといいなってこと。
強力な壁役がほしいよな。
「クリス様。守りに特化した、楯となり壁となるとなる駒を出しましょう」
「いいわね!やってちょうだい!」
俺は魔晶石を受け取って、魔法を唱える。
「『上級舞踏会用駒召喚』!タンク出てこい!」
あっ!
うっかり上級で呼んでしまった。
しかも、壁役とルビを意識して言わずに、純粋にタンクって言ってしまった。
手の中に出てきたのは何だろう?まさか戦車?
それはそれで当たりだろうけど…。
手を開いたら、そこにあったのは見覚えのある姿。
戦車の砲塔を背負って左腕が銃身になっている半裸の戦士。
これは…
と、クリス様がささっと俺の手から駒を持っていき、背中を見ている。
「レアですわっ!このマークはレアですのよっ!」
あっ、やっぱりあるのか。レア召喚。
駒の背中に名前と『R』と書いてある。
ノーマルなレアかな。
そしてその駒の名前はおそらく…
「この駒は『レオパルドタンクマン』と言いますのね。強そうですわ」
名前が少し違うっ!
これ、見た目はほとんどキン肉○ンに出てきた伝説の秒殺戦士『レオパル○ン』だよな。
まさか異世界でお目にかかるとは。
「レアも名前がわかれば何度でも召喚できるんですか?」
「レアの場合はその名前を言っても召喚できませんわ。でも、ランダム召喚している時にグレードが上がる時が有りますの」
詳しいけどクリス様もレア召喚したことあるのかな?
駒の中にレアものって…女戦士か!
「ごらんなさい。これは初級の召喚で出てきたレアの駒ですのよ」
手渡してくれたのは女戦士の駒。
映像で見たのはクリス様そのものだったけど、これはクリス様と似ても似つかない。
顔も体型も違う。
服装だけが同じだ。
多分、自分の駒に設定するとそれと合体して、クリス様が女戦士にコスプレしたみたいになるんだな。
この背中部分には『疾風の女戦士スピカ』と書いてあり、『SR』と書いてある。
そうか。最初は『R』で、2回目が出て『SR』になったんだな。
「この駒の名前は、最初は『女戦士スピカ』でしたのよ。SRになって名前に『疾風の』って付いて、スピードがアップしましたの」
レオパル○ンじゃなかった、レオパルドタンクマンがSRになったらどうなるのやら。
それにしても、この駒はたまたま俺がキン肉○ンに詳しいから出てきたのかな?
俺は漫画やアニメのマイナーキャラが好きで、ウィキとか良く読んでいたなあ。
確か『地○の砲弾』って作中で使われなかった必殺技があったような。
「クリス様。駒の必殺技って出せます?」
「ひっさつわざ?」
え?この世界にその言葉無いの?
「相手を必ず殺すぞという意気込みで出す、すごい技です」
「殺すって物騒ね。でも、命令すればできるかしら?」
クリス様は指令環を取り出して、レオパルドタンクマン…長いな。
レオパル君にしよう…レオパル君に触れさせて登録する。
「『起動』!『指令』!必殺技を使って!」
レオパル君の眼が光って起動したものの、そのまま動かない。
「できないのかしら?『指令』!そこの壁を攻撃なさい!」
そうするとレオパル君は、領地の境目にある白い壁に右手でパンチ、左足でキック、肩からのぶちかましをしたあと距離を取り、左腕の銃を発射した。
銃から出た弾丸は壁に当たるとはじけて消える。
すごいな、攻撃するレオパル君見たのって、俺が史上初?
「すごくいい動きですわ!これでも十分強いですわよ!」
クリス様が喜んでくれるのはいいけど、必殺技が出せないのは残念だなあ。
そして人差し指から指令環をはずすクリス様を見た時、俺の脳裏に閃いたものがあった。
「クリス様」
「何かしら?」
「親指か中指がもしかして必殺技では?」
「え?そうかしら?」
クリス様は指令環を中指に付ける。
「『…』ちょっと待ちなさい。どう言えばいいのか分からないわ?」
「『起動』とか『指令』ってどうやって知ったんです?」
「色々試したのよ。『動け』とか『注文』とか」
それはすごく気の長い話だな。
「これはきっと『必殺技』かと思います」
クリス様は改めて中指に指令環をはめ、レオパル君を見つめる。
「『必殺技』!…とにかくやりなさい!」
あっ、必殺技名教えるの忘れてた。
『ブオオオ!』
おおっ?!レオパル君が腕を振り上げて雄叫びを上げたぞ!
っていうか、しゃべるの?!
『地獄の砲撃!』
レオパル君が自ら技名を叫び、背負った砲塔の先端から真っ赤に焼けたような弾丸が飛び出し、壁に当たる直前に分裂して、10数発の弾丸となって壁に降り注いだ。
キャラ名が少し違うだけあって、技名も少し違うんだな。
「これが『必殺技』ですのね…すごいですわ」
感動のあまり呆然としているクリス様。
最初の必殺技だから、もう少しすごいキャラがよかったな。
いや、レオパル君が嫌ななわけじゃないよ。
むしろこれから活躍してくれるなら、マイナーキャラ好きの俺としては嬉しいよ。
そうだ!疾風の女戦士スピカだ!あれにも必殺技があるはずだぞ!
「クリス様」
「これはどうかしら。『必殺技』よ!」
クリス様はいつのまにか起動していた戦士3体の必殺技を使っていた。
『『『やー』』』
あっ、戦士もしゃべれるのか。
ブンッ!
3体の戦士が同時に、全力で剣を振り下ろした。
「なかなか鋭い攻撃ですわ。でも、そんなに強いとも思えませんけど」
「レア以外にはたいした必殺技がないのかもしれませんよ」
「そうかもしれませんわね」
「それで、クリス様。スピカの必殺技を見ませんか?」
「それがありましたわ!きっとすごい技ですわ!」
しかし壁相手に出していい技なのかな?
「クリス様。もしかすると、壁相手には使えない技かもしれませんから、駒のどれかを的にしてはどうです? 」
「駒が壊れてしまいますわ。駒箱に入れておけば直りますけど、自分の部下をあまり壊したくはありませんの」
クリス様は優しいんだな。
下僕は足蹴にするけどな。
いや、それはそれでいいんだけど。
「じゃあ、練習用の的を作ったらどうでしょうか?」
「練習用の的?」
そう、ここから舞闘会の為の本格的な準備が始まるんだ…ってちょっと待て。
テスト勉強いいのかな?
よし、これが終わったらやろう。
絶対にやろう。
ね、クリス様!
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、12月8日18時更新です。




