第19話 ドS王女様は膝の上に座ってみる
この更新ペース、守りたい!
令和元年12月9日。誤字と分かりにくいところの修正をしました。
令和元年12月13日。日用品を学用品に訂正しました。
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
-主人公ケイト視点-
「『魔道具召喚』!置き型の照明具!」
俺が召喚したかったのは、ライトだ。
クリス様に編み物をしてあげるのに、どうしても夜の時間を利用したかったからだ。
そして、出てきたのは電気スタンドの様な魔道具だった。
「できました!」
見た目はほとんど電気スタンド。
違いは電気コードが無いこと。
スイッチがあるから、これを押せば明かりがつくはず。
俺はさっそくスイッチを入れる。
「ついた!あれ?でも思ったより暗い?」
本を読んだり編み物をするにはもっと明るさが欲しい。
「魔道具は本来自分で作るものですの。召喚で出したものは品質が落ちるって言いますわ」
え?そうなの?
「姉さまたちが自作の照明具を持っていますわ。見せてもらったことが有りますけど、すごく明るかったですわ」
そうなんだ。
魔道具召喚の説明のところにも、材料を出すこともできるってあったな。
また今度、魔晶石に余裕があったら試してみよう。
「さすがに『魔導映像機』は自作しませんよね?」
「どうかしら?厨学生の魔法の教科書なら作り方があるかもしれませんわ」
中学生、いや厨学生スゲー!
高校生でもテレビとか作れないよ。
いや、自作パソコンとかあるからできるかな?
いやいや、あれって、ディスプレイは市販品じゃないか。
ん?パソコン?
そう言えば…最初にタブレット出していたぞ。
あれ、学用品扱いだったけど、動力源なんなんだ?
「クリス様。タブレットを鑑定するので貸していただけます?」
「いいわよ」
クリス様は異次元箱からタブレットを取り出して、魔晶石と一緒に手渡してくれます。
「『鑑定』!このタブレットの詳細を!動力ってどうなってるの?」
魔晶石が消費され、俺の頭の中に鑑定結果が現れる。
『タブレットの鑑定結果』
大種別 学用品
中種別 家電品
小種別 演算機器
詳細 異世界の産物だが、その機能は大きく制限されている。アプリを追加することで機能が増やせる。動力についてはよくわからないけど、動くからいいんじゃないの?
ちょい待ち。
最後の部分なんなの?
どうして会話口調なの?
「クリス様!なんだかおかしな鑑定が出ました!」
「おかしいって何がかしら?」
俺は詳しく説明をする。
「鑑定ってすごいですわね。教科書にはそんなふうになるって書いてありませんでしたわよ」
「ですよね。もしかして、鑑定って特に知りたいことを言うと、そこを具体的に教えてくれたりするのかもしれませんよ」
「新発見ですわね!」
新しい発見らしいとわかって、クリス様はにこにこしている。
怒って踏みつけてくるクリス様もいいけど、笑っているクリス様がやっぱり一番だな。
「それで、このタブレットの機能を増やせば、『魔導映像機』の代わりになるかもしれないんです」
「本当なの?!じゃあ、さっそくやってみなさい」
よーし、クリス様の期待に応えるぞ。
えっと、ビデオ再生のアプリだよな。
ビデオプレイヤー?
メディアプレイヤー?
AVプレイヤー?
いや、最後のは何かおかしなものが出てきたらえらいことだ。
雑念があったら、絶対それが出るぞ。
でも、アプリをどうやって召喚するんだ?
USBメモリーとかSDカード?
いや、このタブレット、のっぺりして接続端子が無いよ。
そうだ!
入れ物が有ればそこに出てくるんだよな。
つまり、タブレットと魔晶石を一緒に右手に持って魔法を唱えれば!
「『学用品召喚』!タブレットのアプリ『ビデオプレイヤー』!」
右手に持った魔晶石が消えて、タブレットの画面が光り輝く。
『ビデオプレイヤーがインストールされました』
よっしゃ!大成功!
-王女クリステラ視点-
「それで、このタブレットの機能を増やせば、『魔導映像機』の代わりになるかもしれないんです」
このタブレットって言うのは、絵とか文字を書くだけではないんですの?
初級魔法で出てきた物にそんなことができたらすごいですわよ。
「本当なの?!じゃあ、さっそくやってみなさい」
ケイトがわたくしが渡した魔晶石とタブレットを一緒に右手に持ちましたわ。
「『学用品召喚』!タブレットのアプリ『ビデオプレイヤー』!」
右手に持った魔晶石が消えて、タブレットの画面が光り輝き、
『ビデオプレイヤーがインストールされました』
という文字が出てきましたの。
「ケイト」
「はい」
「このタブレットの、文字とか出るところ、なんて言うのかしら?」
「それは『画面』です」
「わかりましたわ。それで、画面に出た文字の意味が分かりませんの」
「映像を見るための準備が整いましたってことです」
成功しましたのね!
すばらしいですわ!
「じゃあ、あとは映像そのものを入れないと」
あら、まだ見られないのね。
「でも、これって何の召喚になるのかな?学用品ってことでアプリも入ったから、いけるかな?」
「試せばいいだけですわ」
再びケイトに魔晶石を渡しますの。
こういうことに魔晶石をケチってはいけませんのよ。
「『学用品召喚』!前回の舞闘会の映像!」
するとタブレットの画面が光って、文字が表示されましたわ。
『シュガーレイク王国舞闘会映像記録20019-3-2』
出てきましたわ!
「クリス様、さっそく見ましょう!あ、クリス様が先に見て下さい」
「そうね…ねえ、ケイト」
「はい、なんでしょうか?」
「特別に許可するわ。そこに座りなさい」
「えっ?!」
-主人公ケイト視点-
タブレットに映像が入ったみたいだ。
なんだか、20019-3とか西暦と月っぽい?
西暦の桁が1つ多いけどな。
「クリス様、さっそく見ましょう!あ、クリス様が先に見て下さい」
いかんいかん。
このタブレットを二人で見るのは無理だ。
俺は椅子だもんな。
「そうね…ねえ、ケイト」
「はい、なんでしょうか?」
「特別に許可するわ。そこに座りなさい」
「えっ?!」
どういうこと?
クリス様が立ったので、俺はスカートの中を見ないように目をつぶって、壁にもたれるようにして座る。
狭いし俺は下僕だから、ここは正座だ。
すとん
俺の膝の上にクリス様が載ったのが分かり、目を開ける。
俺から見てクリス様は左を向いていて、俺の膝の上に座っている。
うわ、いい匂い。
近い、近すぎるよ。
「これなら一緒に見られますわ。でも、座りにくいから、わたくしの背中を支えなさい」
それなら俺がもっと右に移動すれば壁際になってもたれられるだろうけど、そこはクリス様に言われたとおりにしないと。
俺は右手でクリス様の背中に手を回すようにして支える。
これ、なんとなく恋人同士みたいな…。
俺はタブレットを左手で持って、クリス様の前に差し出す。
「クリス様、そこの『再生』をタップしてください」
「タップ?」
「触るってことです」
「わかりましたわ」
すると、ビデオの再生が始まった。
おお、クリス様だ。
姉さんのどちらと戦うのかな?
同時なのかな?
「これは2戦目、わたくしとエメル姉さまの対戦ですわ」
なるほど。1人ずつ対戦するのか。
クリス様が駒の配置を終えると、周りの白い壁が消えていき、代わりに高さ1mくらいの城壁が現れる。
その城壁には二つの門があり、木製の扉が付いている。
また、通路や階段が壁沿いや壁の上に設置してある。
扉を抜けるか、城壁を超えて攻めていくんだな。
『開始!』
あっ、これクリス様のお母様の声だ。
クリス様がさっそく小指に指令環をはめている。
「『起動』!」
そしてはめた指令環を人差し指にずらし、新しい指令環を小指にはめ、はずした指令環は人差し指にはめている。
「『指令!壁を越えて侵攻しなさい!『起動』!」
戦士3体が城壁の階段を駆け上っていく。
そして魔法使い2体も起動した。
なるほど、同時に指令環をはめてもいいんだ。
待てよ、両手にはめるとどうなるんだ?
疑問点は覚えておいて、あとで聞こう。
-王女クリステラ視点-
わたくしの命令に従って、戦士たちが城壁を乗り越えていきましたわ。
城壁の向こう側、姉さまの領地は立ち上がらないと見えませんの。
でも、うかつに立ち上がると目標になってしまいますのよ。
だから、わたくしの駒たちに任すしかありませんの。
いえ、それはわたくしだけ。
エメル姉さまは変わった道具で、こちらを覗いてきますのよ。
「見なさい。あれがエメルお姉さまの使う、こちらを見る道具ですわ」
「あっ!あれは潜望鏡です!」
さすがケイトね。知っているみたいですわ。
「知っていますの、ケイト?」
「あれば潜望鏡で、たぶん鏡を2枚張り合わせて作られた、こちらを覗く道具です」
ケイトによれば、鏡の反射を利用して目線を高くすることが出来るそうですわ。
それなら顔を出さなくて済みますものね。
でも、原理さえわかれば、わたくしにも作れ…ケイトに作らせますわ!
見ていると、映像の中のわたくしの指令環が色を失いましたの。
「クリス様、これはいったい?」
「向こうに送った戦士が全滅したのですわ。こうなるともう回復も間に合いませんわね」
怪我をした程度なら、コマンドリングの色がちょっと薄まるだけで済みますの。
でも、これは一気に全滅させられたのですわ。
どうやったのか、まったくわかりせんけど。
「向こう側、映像では見えないんですね」
「わたくし向けの映像は、きっとわたくししか見えないのですわ。相手のやっていることを自分で考え、知ろうとしなければいけませんの」
「あっ!向こうから戦士が来ました!」
城壁を乗り越えてきたのは5体の戦士。
わたくしの戦士は白で、エメル姉さまの戦士は緑だから区別しやすいですわ。
「あそこに映っているのがわたくしの陣の紋章ですの」
「城壁のすぐ近くじゃないですか!」
「だから半畳は不利ですのよ!」
『せんぼうきょう』っていう道具でこちらを確認しているから、紋章の位置もバレていますわ。
でも、わたくしもみすみすやられはしませんでしたのよ。
「あっ!クリス様の魔法使いたちが魔法を撃ってる!」
向こうから見えない物陰を作っておいて、そこに魔法使いを隠しておきましたの。
物陰と言っても、積み上げた教科書ですのよ。
エメル姉さまの戦士たちは魔法使いに向かってきますの。
そして、城壁からさらに5体の戦士が来ましたわ。
わたくしはそれを迎え撃つために、新たに5体の戦士を2組起動していますの。
「この位置なら、クリス様が直接相手を蹴飛ばしてもいいんじゃないです?」
「命令が無ければ、戦士は攻撃した相手に向かってきますのよ。舞闘会は怪我をしないようになっていますわ。でも、痛いし、動けなくなったりもしますのよ」
本当ではないとはいえ剣に切られる痛さですから、普通に戦いたくはありませんのよ。
「でも、ここから逆襲しましたのよ。あれが特級の指令環ですの」
「特級?!」
「ええ。お母様からわたくしたちに1つずつ渡された特別な物ですのよ」
わたくしが特級の指令環を小指にはめ、起動をしましたの。
そう、わたくし自身の起動を。
「クリス様が消えた?!」
「いいえ、そこをごらんなさい」
「これは…小さいクリス様!?」
-主人公ケイト視点-
すごい戦いだ。
でも、その場にクリス様がいるのが非常に不思議な光景だ。
クリス様が手を振り回したら終わってしまいそうにも見える。
でも、ダメージを受けるから、簡単に参戦するわけにいかないのか。
クリス様はここで特級の指令環を小指にはめて、起動を宣言する。
すると、クリス様の姿が消えてしまった。
「クリス様が消えた?!」
「いいえ、そこをごらんなさい」
「これは…小さいクリス様!?」
画面がアップになっていき、女戦士風の鎧を身にまとったクリス様が居た。
駒と同じ10cmくらいになっている。
それにしても、大きな胸がこぼれそうな鎧だなあ。
そしてクリス様は剣を握って…あっ、逃げた。
「逃げたんじゃありませんのよ!見つかると総攻撃されますから、物陰に隠れて、指示を出しますの!」
あれ、心の声が聞こえたかな?
でも、その物陰、カップで作った障害物の近くに戦士が来て、そのカップに触れて…あっ!カップが消えた?!
「あれが『撤去』ですの。領主と駒以外の『物』は障害物として『撤去』できますのよ。主催者が設置したものは別ですわよ」
どの駒でもいいので、『物』に触れると撤去が出来るらしい。
そして撤去されたものは舞闘会終了後に領地に戻されるそうだ。
「撤去した戦士はわたくしを見つけたつもりでしょうけど、甘かったですわ」
クリス様はカップが消えると同時に戦士に突撃し、ひと薙ぎで戦士を葬り去っていた。
あんな速い動きができるなんて!
「すごいです!クリス様!」
「このくらい当然ですわ。この女戦士の駒は少し特別ですのよ」
クリス様は、他の戦士の攻撃もかわしてさらに倒していく。
「単調な行動しかできない戦士なんて敵ではありませんのよ」
じゃあ、どうして負けたんだろう?
「きゃあっ!」
その声は、映像の中のクリス様の声だった。
お読みいただきありがとうございました!
感想とかブックマークとかいただけるとすごく嬉しいです(^ー^)♪
次回も明日、12月7日18時更新です。




