第18話 ドS王女様と舞闘会の準備を始めました。
わずか半畳の城での攻防戦!
弱小領主であるクリス様を救えるか?!
令和2年1月5日
言い回し等の微修正。
令和2年1月23日
誤字修正
-主人公ケイト視点-
俺は空いている時間で魔法の教科書を読み進める。
おっ、ここは魔法の成功と失敗について具体的に書いてあるな。
『召喚魔法の難易度について』
召喚魔法の難易度は、召喚対象を良く知っていると下がる。
そのため、何度も召喚しているうちに難易度が下がる傾向がある。
関連する複数の物を一度に召喚する魔法は難易度が高い。
初級及び上級魔法で召喚するものは片手で持てる物が基本だが、入れ物を使用することで量のあるものや大きな物を召喚できる。
ただし、難易度もそれに比例して増える。
…
なるほど、普通は複数の物を同時に出すのは難しいのか。
俺は上級召喚魔法も成功していたし、もしかして魔法がうまいのかな?
それとも、これこそが異世界チートなんだろうか?
地味なチートだけど。
そういえば、ステータスってあるのかな?
「クリス様、ステータスとか、パラメーターってあります?」
「ステータスですって!」
「わあっ!」
うわっ、クリス様が大きな声出すから驚いちゃったよ。
-王女クリステラ視点-
そろそろ休憩を終わりにして、次の勉強を始めましょう。
「クリス様、ステータスとか、パラメーターってあります?」
「ステータスですって!」
「わあっ!」
『ステータス』って言葉を聞いて、思わず大きな声を出してケイトを驚かせてしまいましたわ。
どうしてまだ魔法の教科書の3下しか読んでいないケイトが『禁呪』のことを知っていますの?
「ケイト、『翔学生の魔法4下』の目次を見なさい。そこに禁呪の項目があるわ」
「禁呪?!やっぱりあるんだ!」
あら、ケイトは禁呪があることに気づいていたのかしら?
「禁呪はこの世界で認められない魔法ですわ。召喚対象としてはいけない『禁呪物』と、使ってはいけない『禁呪文』がありますの」
「使うとどうなるんです?あっ、教科書に書いてあります。えっと、『魔法は失敗して何も起こらないか小さな爆発が起こり、魔晶石は消費される』」
そうなのよ。
だから禁呪はそもそも使えないのよね。
それにそこにあるのは禁呪の一部で、本当はもっとたくさんあるらしいですわ。
「そうだ、クリス様!『鑑定』って魔法はありますか?!」
「きゃっ!急に大きな声あげないで!」
いきなり大声出してびっくりしますわ。
わたくしが驚かせるなんていけない下僕ですわね。
ふみふみぐっぐっ
わたくしも驚かせましたから、軽いお仕置きにしておきますわ。
でも『鑑定』ってたしか…。
-主人公ケイト視点-
禁呪リストに『ステータスオープン』ってある。
なるほど、これを使っても失敗して魔晶石を失うだけなのか。
見たかったなあ、俺のステータス。
俺がこの領地の人員の数に入ってないのは、きっと特殊なステータスのせいと思うんだよな。
種族が『椅子族』とか、実はアイテム扱いとか。
アイテム扱い?もしかしてそれって?!
「そうだ、クリス様!『鑑定』って魔法はありますか?!」
「きゃっ!急に大きな声あげないで!」
しまった!
興奮しすぎた。
ふみふみぐっぐっ
怒ってるよお。
あれ?ちょっといつもより軽い?
とにかく謝ろう。
「クリス様すみません!実はあることに気づいたので」
「『鑑定』の魔法ならありますわよ。『翔学生の魔法5上』をごらんなさい」
ステータスは見られないけど鑑定はできる。
おそらくこの世界は平和と平等を重視しているから人の能力を示すステータスだけが見られないんだ。
『物』の鑑定はできるなら、物扱いっぽい俺のステータスか見られるかもしれない。
俺は『鑑定』の魔法が記されたところを熟読する。
魔法で何を行うかをしっかり把握すれば、成功しやすくなるそうだからな。
「失敗すると間違った表示がされることはなく、一部が見えなくなるだけなのか。それなら間違った結果は出ないってことだな。クリス様、ちょっとやってみますね」
「何を思い付いたかわからないけど、やってごらんなさい」
よし、やるぞ!
魔晶石を握って、
「『鑑定』!俺は何?」
「えっ?」
クリス様、案の定驚いているな。
おっ、これは頭の中に出てくるのか。
『ケイトの鑑定結果』
大種別 日用品
中種別 机椅子類
小種別 椅子
詳細 異世界で『最高』と言われた椅子。人間を素材にしてできている。魔法の成功率を上げる効果がある。●☆
…
あっ、やっぱり椅子なんだ。
『人間を素材にして』ってなんだよ。
人間そのものなんだけど。
あれ?
『魔法の成功率を上げる効果がある』ってあるぞ。
それで難しい魔法でもうまくいったのか。
あと、最後の●☆ってなんだ?
「鑑定できましたの?」
「はい、一応」
「それで、どんな風でしたの?」
俺は鑑定内容を隠さずにクリス様に教える。
別に隠すような内容じゃないからね。
「すごいですわっ!」
クリス様がすごい興奮している。
どうしたんだろう?
-王女クリステラ視点-
鑑定の魔法は使った本人にしか結果がわかりませんわ。
どうだったのかしら?
「鑑定できましたの?」
「はい、一応」
「それで、どんな風でしたの?」
ケイトは自分の鑑定結果を教えてくれましたの。
やっぱり物扱いでしたから、お母様の人員探知でも、ここには1人しかいないってされたのですわね。
それよりももっとすごいことがありましてよ。
『魔法の成功率を上げる効果がある』
効果付きのアイテムですって?!
上級召喚でもなかなか出せませんのよ!
「ケイトを所持している限り、わたくしの魔法の成功率が上がるみたいですわ」
「えっ?俺の魔法だけじゃないの?!」
ふふっ、驚いていますわね。
わたくしもですわ。
さっそく実証実験ですわよ。
まずはわたくしが成功したことのない魔法を試してみますわ。
「『上級舞闘会用駒召喚』!」
すると、わたくしの手の平が光って、何かが召喚されたのがわかりましたの。
-主人公ケイト視点-
俺の能力でクリス様の魔法の成功率が上がる?
それが本当ならすごいぞ。
「『上級舞闘会用駒召喚』!」
クリス様の手の平が光って、何かが召喚されたみたいだ。
「…できましたわっ!初めてできましたわっ!」
嬉しそうに上下に体をはずませるクリス様。
俺の上で体を上下に揺すって、胸も恐ろしいほど上下に揺れて。
見ちゃだめだ見ちゃだめだ。
ちょっとくらいなら…。
「ケイト」
はっ、揺れる胸を盗み見したのがバレたっ!
「ケイトのおかげで、初めて『上級舞闘会用駒召喚』の魔法が成功しましたわ!これで、ますます舞闘会の初勝利が近づきましたわ!」
なんだそっちか。
ほっとしたよ。
え?初勝利?
-王女クリステラ視点-
ついに出せましたわ!
これでわたくしも上級の駒を使えますのね!
魔法戦士の駒ですわ。
姉さまたちが使っているのはこれでしたのね。
ケイトが目を合わさないようにそっと、わたくしのほうを見ていますわ。
きっと、失敗したかもしれないって思っているのですわね。
「ケイトのおかげで、初めて『上級舞闘会用駒召喚』の魔法が成功しましたわ!これで、ますます舞闘会の初勝利が近づきましたわ!」
それを聞いて安心したのかしら。ほっとした顔をしていますわ。
ご主人想いのいい椅子ですわ。
「クリス様、舞闘会って具体的にどんなことをするんですか?教科書にも書いてなかったようですけど?」
「これはイベントですから書いてありませんのよ。『舞闘会の説明書よ!』」
わたくしは異次元箱にしまってある舞闘会の説明書を取り出して、ケイトに渡しましたの。
「………舞闘会専用の駒を召喚して、それで紋章を奪い合う戦いですか」
「そうよ。それで、わたくしはまだ1度も姉さまたちに勝てませんの」
「どうしてですか?」
「それは」
言いたくないけど、言わないといけませんわね。
「ここが半畳の領地だからですわ!狭いとすぐに征服されてしまいますの!」
こんな狭い領地なんて情けないってケイトは思うかしら。
「クリス様!一緒に戦って、勝ちましょう!」
そうでしたわ。ケイトはわたくし自慢の下僕でしたのよ!
「それなら、その説明書をよく読みなさい。それからわたくしはいつものように準備をするから、何か思いついたことや気になることが有ったら教えるのよ」
ケイトと一緒なら、きっと勝てますわ!
主催者であるお母様からの指示で、今回使える駒は18個。
いつもと同じくらいの数で慣れているけど、今回は上級の駒が使えますの。
上級の駒は3つまでで、特級の駒は1つまで、という指示ですの。
特級の駒なんて姉さまたちでも出せませんわよ。
今までに使った駒は「駒箱」という専用の異次元箱に入れてますのよ。
「これがわたくしの駒ですわ」
ケイトが見やすいように、足元に50体くらいの駒を出現させますの。
駒は身長10cmくらいの人形ですけど、50体もあるとさすがに狭く感じますわ。
「これ、動くんですか?」
ふふっ、ケイトもこれがどうやって動くかはわからないようですわ。
わたくしは駒箱から指令環の入ったケースを取り出して、中を見せますわ。
「この指輪が指令環ですの。指輪ひとつで複数の駒に命令が出来ますのよ」
わたくしは登録済みの指令環をひとつ小指にはめると、指令環がきゅっと小指の大きさに締まりますの。
ですから、どの指にでもはめられますのよ。
「『起動』!」
わたくしの指令が足元に置かれた3体の戦士に伝わり、体をぶるっと震わして、目に光が灯りますの。
「おおっ!」
ケイトも興奮しているようですわ。
わたくしが小指の指令環にふれると、指令環は自然に大きくなり、指から抜けやすくなりますわ。
そして今度はそれを人差し指にはめますの。
「『指令』!前進して、ケイトの顔の前まで行きなさい!」
3体の戦士は歩いて、ケイトの顔の前まで歩いていきますわ。
-主人公ケイト視点-
すごいすごい!
駒は指令環っていう指輪で操作するんだ!
「『指令』!前進して、ケイトの顔の前まで行きなさい!」
3体の戦士が歩いて、俺の顔の方にやってくる。
そして、顔の前でピタッととまる。
「クリス様。はめる指ごとにできる事が違うんですか?」
舞闘会の説明書に、指輪の操作方法までは書いてなかった。
どこに書いてあるんだろう?
「たぶんそうですわ」
「たぶん?」
「この指令環の使い方は、教科書にも説明書にもありませんのよ」
え?じゃあどうやって覚えるんだ?
「だから、わたくしは長い間あれこれ試して、やっと動かせるようになりましたの」
それ自体も勉強みたいなものなんだな。
ここが狭い世界だから、そういう課題を多く与えて、退屈しないようにしているのかもしれないけど。
「小指は駒の起動。人差し指は命令ですの。薬指はゆっくりですけど駒が修復しますわ。そのかわり動けなくなりますのよ。親指と中指はよくわかりませんの」
なるほど。
もしかして勝てなかったのは、親指と中指が使えないせいもあるのかな?
「クリス様。舞闘会の記録ってありますか?」
何かヒントになるものがあればな。
「舞闘会は主催者であるお母様が記録していますわ」
「記録って文字ですか?」
「『魔導撮影機』とかいう空飛ぶ水晶玉で、舞闘会の映像を撮っていますの。『魔導撮影機』で撮影したものを見るための『魔導映像機』は特級の召喚魔法だから、わたくしでは出せませんの。
「俺が居るから試してみませんか?」
「そうね。一度くらい、特級魔法も試してみるべきですわね」
クリス様は魔晶石を取り出した。
「『魔導映像機』は『魔道具召喚』ですのよ。これは初級のものでも結構難しいですの。その原理とかがわかっていないから、失敗しやすいのですわ」
「それなら、俺がやります!」
-王女クリステラ視点-
そうですわ。
ケイトが居るなら、魔法の成功率があがりますのよ。
特級魔法だって、試す価値はありますわ。
「『魔導映像機』は『魔道具召喚』ですのよ。これは初級のものでも結構難しいですの。その原理とかがわかっていないから、失敗しやすいのですわ」
まだ教科書に出てこないから、そもそもどんな形状かもわかりませんけど、やってみせますわ!
「それなら、俺がやります!」
そう言うケイトはすごく自信ありげな表情をしている。
「もしかして、ケイトは『魔導映像機』のことを知っていますの?」
「はい。俺の世界にも似たようなものが有りますから、どんなものかはだいたいわかります」
それはいいですわ!
「ではケイト、魔晶石を渡すから試しなさい。でも、いきなり特級魔法を使うのはあぶないかもしれませんわ。まず初級の『魔道具召喚』をやりなさいな」
「それなら、気になっていた魔道具があるんです!」
ケイトはわたくしが渡した魔晶石を握りしめて、魔法を唱えましたわ。
「『魔道具召喚』!」
お読みいただきありがとうございました。
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次回も明日、12月6日18時更新です。




