第146話 ドS王女様は下僕を両親から譲り受ける
最終話で続いてエピローグです!
-王女クリステラ視点-
この方たちがケイトのご両親ですのね。
確かにお父様ともお母様とも少しずつ似ていますわ。
本来でしたらこの世界とわたくしたちの居た世界は進む時間が違うから、こうやって会うことは叶わないはずでしたけど、あの悪魔のせいとはいえ会えたことは喜ばしいことですわ。
「それで、カリナやマリナが言っていた通り、異世界に行っていたのだな?」
「そうですけど…よく信じますね?」
「息子や娘たちの言うことは信じるとも。それに『魔法』まで見せられてはな」
マリナとカリナは召喚されるまで自力で魔法の勉強をしていたのでしたわね。
「それで、こちらのお嬢様…いや、王女様がケイトのご主人様なんだな?」
「はい、お父さん。俺はこれからも一生クリス様のために尽くします」
「そうか。だが、王女様が結婚するときはどうするんだ?嫁ぎ先についていくのか?」
「それは…」
「それはありえませんわ」
わたくしはきっぱりと否定しましたわ。
「わたくしとケイトの関係は恋人や夫婦など以上に強い絆で結ばれていますの。ですからわたくしはケイトが居る限り、結婚する必要などありませんわ」
「恋人や夫婦以上の関係?」
「主人と下僕の関係ですわ。そして、それはどんなことがあっても壊れず、誰にも邪魔されませんわ。例えケイトがわたくしから離れたくても、わたくしは絶対にケイトを手放したりしませんわ」
「クリス様!それは俺も同じです!クリス様が俺を捨てるまでついていきます!」
「わたくしがケイトを捨てるとかありえませんわ!」
わたくしたちは、最高の主従ですのよ!
ケイトを捨てるなんて、絶対にありえませんわ!
「おい、お母さん」
「ええ、これは…」
ケイトのご両親が顔を見合わせて苦笑されていますわ。
「よし、わかった。王女様、息子をよろしくお願いします。ケイト、頑張れよ」
お父様がケイトの背中をばしっと叩かれましたわ。
「はい!」
「それで、二人ともいつ帰るの?」
「お母さん、申し訳ないけどしばらく置いてもらっていいかな?実はいつ戻れるかわからないんだ」
「本当?!それなら大歓迎よ!さあさあ、部屋に案内するわ!」
案内されたのは10畳くらいある部屋ですわ。
「王女様はこちらで、ケイトはお隣ね」
ケイトの部屋は四畳半ですわね。
「わたくしはケイトと一緒にこちらの部屋がいいですわ」
「え?一緒の部屋に?それならこっちの広い方が…」
「こちらは広すぎますわ」
「お母さん、クリス様の世界の話はマリナ達から聞いてないの?」
「たしか四畳半の王国でしたわね」
「だからこっちで十分なんだ」
「わかったわ。でも、隣も自由に使っていいわよ。それと、王女様にちょっとお話があるの」
わたくしはお母様の部屋の中に案内されましたわ。
「主従関係とかは置いておいて、ケイトの事を男性としてどう思っているの?」
「男性として?」
男性としてとはどういう意味ですの?
「よくわかりませんわ」
「ケイトの事が好きかしら?」
「とても大切ですわよ」
「恋とかとかじゃなくて?」
「そういうのはよくわかりませんわ。わたくしはケイトの事を失いたくないだけですわ」
「それは『愛』と思うのだけど?」
「『哀』ならわかりますわ。喪失する悲しみのことですの」
「何だか違う気がするけど…まあいいわ。それで、王女様はケイトとこれからも主従関係なのね?」
「そうですわ!そのための『誓いの儀式』もしましたの!」
「誓いの儀式?」
わたくしはタブレットを取り出して、ケイトとの誓いの儀式の映像を出しますの。
「これは!」
-ケイトの母親視点-
教会で純白の衣装を着てキスしているって…もう結婚式じゃないの!
それにしても二人ともすごく幸せそうだわ…。
「お母様、泣いていますの?」
「ケイトはいいご主人様に巡り合えたのね」
「わたくしにとっても最高の椅子ですわ」
「椅子?!」
え?
ケイトを椅子として召喚したの?
それで…
え?
ええっ?!
半畳でケイトに腰かけてずっと暮らしていたって…。
異世界って異文化どころじゃないのね。
まさか『嫁の尻に敷かれる』を実践している世界があるなんて。
「それにケイトはもう娘が居ますのよ」
「ええっ?!」
何それ?!
王女様は胸が大きいけどこんなに小柄だから産めないわよね?
「わたくしのお母様との子供ですわ」
「ええええっ?!」
何それ?どういうこと?
え?卵で産むの?
え?王女様のお姉さんとも恋人で?
魔王たちとも恋人で?
他にも?!
ケイト、それはやりすぎよっ!
ハーレムとか王女様に悪すぎますわ!
「わたくしはケイトの交友関係とかどうでも困りませんわ。だってケイトはいつでもわたくしを一番に考えてくれますの」
すごく信頼しきっているのね。
異世界の異文化にこれ以上ツッコミを入れるべきではないわね。
「ところで、ケイトの娘って私たちの孫になるのよね」
「写真がありますわ」
授乳中の写真ね。
何この美女?!
王女様にそっくりだけど、完全に大人の美しさだわ。
まさかこの人が王女様のお母さん?!
こんな女神みたいな人と子作りしたの?!
「ルビィアはすごく可愛いですのよ。みんなで交代で母乳をあげますの」
「母乳?ミルクじゃなくて?」
「母乳しか与えられないから交代で…このようにするのですわ」
写真や動画を見るといろんな人が交代で授乳しているけど、みんなケイトの恋人なの?
ってマリナとカリナまで!
ま、まさか、ケイトって妹たちにも手を出したの?!
で、でもエッチしなくて卵で子供を産めるのよね。
それはセーフなのかしら?
異世界の異文化ショックが止まらないわ!
これ、絶対にお父さんには言えないわ。
「王女様」
「クリスでいいですわ」
「クリスさん、このことは絶対お父さんには内緒で」
「どうしてですの?」
「どうしてもです」
「わかりましたわ」
ああ、マリナとカリナがお兄ちゃん大好きだってわかっていたけど…まさかこんなことになるなんて。
-主人公ケイト視点-
クリス様遅いなあ。
まさか色々な写真や動画を見せて自慢していたりして…ありえるなあ。
お母さん、気絶してなければいいけど。
そう言えば『あれ』を出さないと。
俺は異次元箱からタブレットを取り出す。
『ちょっと!早くここから出しなさい!』
そこには第4王妃の意識が封じ込めてある。
「出したら消えるかもしれませんよ」
『どういうこと?』
「マナのすごく薄い世界に来てしまったから、悪魔の精神は維持できないかもしれないけど」
『どうしてそんなことになってるのよ?!』
「あなたのお兄さんに飛ばされたんですよ。それも異世界転移どころか時間までさかのぼって」
『それってわたくしが使うなって言われていた禁呪ですわよ!兄さまは何をしてますの?!あれを使うと多くの仲間の精神を消費しますのよ!』
そうだったのか。
「すると仲間が居ないってことは、あなたをここから出しても元の世界には戻せないってことだな」
『そ、それはそうですけど…でも!きっと兄さまが探し出してくれますわ!』
「俺もマリーが探してくれるのを待つしかなさそうだな」
いや、まず『神託の王座』を使えば元の世界に戻る方法がわかるかもしれないぞ。
「ケイト、今戻りましたわ」
「クリス様、ちょうど良かった。元の世界に戻る方法を『神託の王座』で聞こうと思っていたんです」
「そうですの?それならさっそく聞きましょう」
俺が椅子に座り、クリス様が俺の膝の上に座る。
どうやったら元の世界に戻れるか…。
「…ええっ?!」
「クリス様?」
「元の世界に戻る方法はこの世界には無いそうですわ!」
「ええっ?!」
『ええっ?!』
一緒に第4王妃も驚いてるな。
「あっ、でも『向こうから来る』と言っていますわ」
『きっと兄さまが迎えに来てくれるのですわ!』
ぴろん
ん?体内のCHAIN?
マリー『届いた?届いたなら返信をして!』
「来た!マリーからの連絡だ!」
「本当ですの?!」
ケイト『届いた。今は俺が生まれた世界の過去に居る』
マリー『今、第4王妃の兄と一時休戦して手伝ってもらって、そちらの世界とコンタクトが取れるようになったわ。でも、こちらに呼び出すには遠すぎるからひとまず迎えに行くわね』
ケイト『マナが無くて魔法が使えないからここに来てもそっちには戻れないぞ』
マリー『戻る必要なんてないわ。だって、私たちはケイトの傍に居たいのよ』
マリー…みんな…。
マリー『全員連れて行くには魔力が足りないけど、第4王妃の兄が仲間の精神をほとんど消費してアシストしてもらえば届くと思うわ』
「…って言ってるけど、いいの?」
『悪魔は仲間以外から消されるのは嫌でも、仲間の目的のために『消費』されるのは問題ないのよ』
そういう考え方の種族なわけか。
「クリス様。第4王妃に体を返してあげてもいいですか?」
「どうしてですの?」
「根本的な種族格差でお互いの理解はできないけど…愛する人のために尽くそうとするのは一緒だと思うので」
『そんな情けはいらないわ!』
「向こうの世界から第4王妃の体を持ってきてもらうよう頼むつもりだったけど、お兄さんが来てもずっとこの中でいいの?」
『…おねがいするわ』
3日後にマリーたちがやってきて、俺たちは無事に再会できたのだった。
≪エピローグへ続く≫
今夜中にエピローグをあげます。




