第139話 ドS王女様は恋バナをする
週一更新になりましたが、たくさんのアクセスがありびっくりしております。
ありがとうございます!
-女王ディアナ視点-
ケイトは一刻も早くアルハーダ王国を救おうと思っていた。
でも、王国の王女たちと次々と関係を持ってしまい、7日も経ってしまった。
それはケイトが『今までの恋人たち』にも一通り愛を配って回ったため。
そしてようやく皆が落ち着き、アルハーダ王国の悪魔を倒す手段を考えることになった。
「…これでいいかしら?」
「これでお兄ちゃんが悪魔を倒しに行くのをさぼっていたわけでないってわかるの」
「でも、誰を相手に話しているのかしら?」
「『大人の事情』だから気にしなくていいの」
そして今、侍女以外の全員が広間に集まって話をしているわ。
「第4王妃の兄である悪魔はおそらく私と同等の実力と思います。もちろん『全力で攻撃していい』なら負ける気はしませんけど」
「シェリー、それは相手も同じよ。だからあなたと戦いたくないって言ってたのよ」
「でも、マリー様が行くなら余裕です」
「その油断がいけないのよ」
確かに、物事は慎重にしないといけないですわ。
「いつまで経っても『悪魔テトラ』だった『リーナ』が両親を呼ばないから、死んだか捕まったと思われているでしょうね」
「エメル姉さま、それならリーナに親を呼び出させたらどうかしら?」
「クリス、それは危険よ。逆に罠に掛けられるかもしれないわ」
「それならやっぱり正面突破で」
クリスってそういう真正面から行くのが好きなのね。
エメルが慎重派だから丁度いいわ。
ビーッ
「え?何の音かしら?」
「これは冒険者ギルドのから預かっている『通信機』の呼び出し音よ」
そんなものが家に置いてあったのね。
マリーさんが元魔王ってこともあって、有事に連絡が取れるようにしてあるのですわ。
「マリーですわ。何の用かしら?」
『アルハーダ王国の国王が倒された』
「え?倒れたとかじゃなくて?」
『つまり、城内における国王殺しだ。そして、そのまま国は奪われた』
「誰に?」
『第4王妃の兄、シュバルツ・ゲルムバオダーだ』
「それで私たちに連絡があるってことは、攻めて来るかもってこと?」
『詳しい事は冒険者ギルドで話したい』
「わかりました」
プッ
「ということで、冒険者ギルドで話を聞くわ。行くのは私とエメル、クリス、ケイト。それからフラン」
「え?私も?」
「呼ばれた理由の一つは前に王国の追手を私たちが叩きのめしたせいね。それに王女たちがこっちの国に逃げて行方不明になっているから、私たちが匿っていると思ってるかもしれないわ」
ギルドに教えなかったのは、国同士の問題になるより、異世界から来た冒険者がさらった扱いのほうがいいってなったからですわ。
でも、今更王女や王妃たちを返すことはできませんわ。
「フランはクリスとケイトのリュックに入っていて」
「あの広いリュックは駄目ですわよ」
「まだあの程度の広さに慣れないのね」
-王女クリステラ視点-
冒険者ギルドまでの移動中に、異次元リュックの中でフランと話しますの。
「これがクリスの領地と同じ広さですの?」
「そうですわ」
「それでケイトと一緒に住んでいますのね」
「ええ」
「絶対にくっつく広さですわね」
「ケイトは椅子ですから、その上に座ってますの」
「そうなのね…うらやましいわ」
「そうですの!自慢の椅子ですわ!」
「恋愛関係とかにならないんです?」
「どうしてですの?」
「だって、男女二人きり…」
「主人と下僕ですのよ」
「そうよね」
わたくしはタブレットを取り出しますの。
そこには誓いの儀式の写真と動画が転送してありますわ。
「これを見てもらえるかしら?」
「これは映像を映す魔道具?…え?これって?」
「わたくしとケイトの『永遠の主従関係』を誓った儀式ですわ」
「…」
「ですからわたくしたち、絶対に離れませんわ」
「…そ、そうなのね。すごいわ」
-逃亡王女フランソワーズ視点-
なななな
何を見せられてるの?!
これって絶対結婚式だわ!
こんなキス、主従関係じゃありえないから!
そもそもこういうものって人に見せるものなの?!
「それでケイトったら…」
のろけられてるし…。
えっと、一応私ってケイトの恋人よね?
内緒なのかしら?
「それで、フランはケイトとどういうことしてるのかしら?」
「ぶっ!」
き、来たっ!
そうやって私を非難して、ケイトを取り返す気かしら?!
「わたくしはケイトをお仕置きしたりして楽しみますのよ。フランとケイトは恋人でしょう?どういうことをしていますの?」
え?えっと、何これ?
非難されてるわけじゃないのね?
すごく純粋な目で見られてるけど。
「あ、あの、まだキスくらいです」
あそこにスライムを入れてもらったとかとても言えないわ!
「そうですのね!わたくしは儀式でしかキスはしてませんけど、ケイトのキスって本当に上手で心地よくなりますわ」
「え、あ、うん。そうね」
クリスとどう話をしたらいいかわからないわ。
アンリ、助けて!
きっと淫乱なあなたなら太刀打ちできるわ。
『なんだ…呼んだか?』
淫乱な『獣の意識』は出てこなくていいですわ!
…もしかして少し『獣の意識』っぽくふるまえば話がしやすくなるかしら?
「ケイトのキスってすごくって、溶けてしまいそうなの!」
「でしょう?わたくしも、儀式以外では『遊び』でケイトの口を吸ったり吸わせたりして奉仕させますのよ」
ナニソレ
駄目駄目。
獣の意識で!
「口だけじゃなくて、他の所にもキスされて、そのまま意識を失ったりもしましたわ」
「それはすごいですわ!わたくしの世界は『エッチができない体質』ですから口でしか楽しめませんのよ。これが改善されたらそういうことをしてみたいですわ!」
「それは大変ですわね。ヴィヴィに憑りついている悪魔だったリーナみたいに、私にクリスが憑りつけたら一緒に楽しめますのに」
「…」
「クリス?」
何かまずいこと言ったかしら?
「それですわっ!」
「え?何がです?」
「フラン!一度あなたに憑りつかせて!」
「え?え?」
「黒魔術に『憑依』って魔術がありますの!それならフランの体を借りられますわ!」
「え、えっと…」
「ケイトを大切に思っている者同士、一緒に楽しみたいですわ」
「あ、うん。はい。わかりましたわ」
「嬉しいですわ!」
な、何だかすごいことを引き受けてしまいましたわ。
だって、断りづらかったんですもの。
でも、これでクリス公認だから、むしろケイトとの関係が増えると思えばいいのかしら?
-主人公ケイト視点-
…あのお。
この異次元リュックって、入り口に布がかぶせてあるだけだから、普通に使っている分には音が筒抜けなんだけど。
他の人には聞こえてないだろうけど、俺には丸聞こえで…。
音消しの魔法とか使うと聞いていたのを気づかれそうだったから…うそです、興味があるので聞いていただけです。
ぴろん
マリー『クリスったらいいこと思いついたわね!それなら私も誰かの体を借りるわ!』
マリーにも聞こえてたっ!
マリー『アンリに憑依すればクリス&フランと同時にできるわよね。さっさと今回の話を片付けて、今夜にも楽しみましょう!あっ、今夜はディアナ女王と寝る日なのね。じゃあ…もういっそ全員でやる?』
死にますから!
いや、体質的に絞りつくされないけど、精神的に死ぬから!
死ぬかな?
ちょっと試してみたい気もする。
うう、駄目な俺。
「お兄ちゃん、着いたよ」
「あっ、マリナ。ありがとう」
「何か考えていたの?」
「ちょっと色々なことをね」
「いつも色々なことに気を使って、お兄ちゃんってすごいね」
そんな澄んだ瞳で穢れた俺を見ないでっ!
-元魔王ブラッディマリー視点-
通されたのは防音完備のギルド長室。
「来たな。まあ、座ってくれ」
ギルド長に言われて私たちが席に着くと、見かけない人が居ますわ。
年齢と雰囲気からして、たぶんこの王国の偉い人ね。
「こちらは我が王国の第4騎士団長のエルド殿だ」
「エルドだ。あなた方冒険者には、日頃から王国のために尽くしていただき感謝している」
あら、騎士団長なのに上から目線じゃないのね。
ちょっと意外だわ。
「説明は俺からしよう」
そう言ってギルドマスターは話し始めたわ。
「通信でも言ったとおり、アルハーダ王国は第4王妃の兄が国を奪った。逆らった重臣は殺されたが、ほとんどが服従したそうだ」
服従…洗脳かもしれないわね。
「それでアルハーダ王国は声明を出した。『王女と王妃たちが国外に逃亡した。生かして返せば礼金を払う。隠し通すならその国を滅ぼす』と」
どこに行ったか想像がついているはずだけど…。
「それで確認をしておきたい。あの時、お前たちは国境を越えてきたアルハーダ王国軍と交戦して、追われていた『旅人』を助けたそうだな」
「ええ、そうよ」
「それは、王女や王妃ではなかったのか?もしそうだとしても、我々冒険者ギルドや王国に迷惑が掛からないように報告をしなかったのだと推測するが」
あら、わかってるのね。
良く頭の回るギルドマスターさんだわ。
「その通りですわ。それで、差し出せと?」
「いや、その必要はない。だが『把握』は必要だ」
「我が国としても、王を殺して国を奪うような奴らの言いなりになる気はない。だが…ひとつだけ聞いてもいいだろうか?」
「なんでしょうか?」
「王女たちは元気にしているのか?」
まるで孫娘を想うような目をしているわね。
「もしかして、あちらの王女たちとご面識が?」
「私の娘とジャンヌ王妃が同じ学び舎で、我が屋敷にも時々遊びに来ておった。それで行方不明になったことを娘がいたく心配しているのでな」
「それでしたら問題ありませんわ。全員無事で、元気にしておりますわ」
「全員?!」
「ええ、そうですわ」
「こ、これは驚いた。さすがは異世界の元魔王だ」
すごくほっとしているみたいね。
それなら、教えてあげないといけないかしら。
「国王を殺した第4王妃の兄の情報はあるかしら?」
「アルハーダ王国の侯爵と聞いているが」
「それだけですの?」
「…何か知ってるのか?」
「相手は『悪魔』よ」
「まさか…」
「この情報を嘘と思っても構わないわ。でも、どの世界においても、ほとんどの悪魔は人間を餌か道具くらいにしか思っていない。だからあの国を完全に掌握したら、じわじわと悪魔の仲間を増やし、いずれはこの国にも来るかもしれないわ」
「これは…」
「由々しき問題だな」
「では、特使を派遣してみる。『我が国はそちらと争う気はない』とすれば、挨拶くらいはできるだろう」
それで悪魔か見極めれる人を特使にするのね。
「上級の悪魔は人間の中に潜んで、その気配を漏らさないこともあるわ」
「それでもわかる者もいるのだよ」
それはなかなかすごいわね。
「もし悪魔だとわかったらどうされます?」
「アルハーダ王国に住んでいるのは悪魔ではなく人間だ。ヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族が居て、我が国と民同士のつながりもある。それが悪魔に侵されていくのを見逃すわけにはいかない。だが、国同士の戦いとなると難しい」
「では、もし『その気』があるなら、私どもに声をかけてください」
「いいのか?」
「この国がちょっと気に入ってるだけですわ」
私のその言葉を聞いてギルドマスターと騎士団長は笑みをこぼす。
「ありがとう。それでは、用事は済んだ。これは情報料だ」
ギルドマスターは革袋をどんと机に置く。
音でそれがかなりの額だとわかる。
「そんなにもらえるなら、ちょっと顔くらい出させますわ」
「え?」
別にお金の多寡でそういう気になったわけでもないけど、そう言った方がやりやすいのよ。
ケイトがリュックを開けて、中からフランを引っ張り出す。
「第1王女フランソワーズです」
「おお、ジャンヌ王妃の若い頃にそっくりではないか!」
嬉しそうに微笑みながら語りかける騎士団長。
「元気にしているようだが、王城とは違って色々不便もあろう?」
「いえ、大変よくしていただいています」
「そうかそうか。それで、アルハーダ王国に戻りたいと思うか?」
「民が悪魔の手にかかるなら、民のために何かしたいと考えます」
「そうか…。マリー殿、王女たちの事、よろしく頼む」
「わかりましたわ」
-主人公ケイト視点-
えっと…まったく出番が無かったよ。
マリーさんだけで終わっちゃった。
まあ、元魔王だから相手もそういう気持ちで期待して話すんだろうけどな。
「ケイトも何か話したかったかしら?」
「いいや、魔王様のおかげで楽をさせてもらいました」
「そう?でもこれからはケイトも話すといいわ」
「俺にはネームバリューが無いから」
「『魔王や王女たちをハーレム要員にしている男』が良く言うわ」
「男というより、椅子ですけどね」
「ふふっ。久しぶりにあなたに座ってみたいわ」
「いつも『神託の王座』で座ってるじゃないですか」
「そうじゃなくて、座椅子状態のあなたによ。最初に会ったころを思い出すわね。」
「…」
「な、何か変なことを思い出そうとしてない?」
「『あたちは何も思い出してないでしゅ』」
「!」
ふっふっふ
マリーが6歳児になっていた時の口癖だよ。
「ケイト…」
「あ、怒った?」
「ケイトはやっぱり幼い子供が好きなのね!」
「うん。だから今度は6歳児になって」
「いいわよ。早速今夜いいでしゅか?」
「ぷっ」
「ふふっ」
「だ、駄目だおかしすぎる。俺の負け」
「このまま強がりの応酬が続いたらどうしようかと思ったわ」
確かにね。
でも、エッチなしで6歳児のマリーを久しぶりにみたいなとも思うけど。
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークとか感想とかいただけると励みになります(*^^*)
次回は4月18日土曜日18時更新です。
新連載始めました!
『前世で勇者に10億年苦しめられた女魔王は勇者の双子の妹に転生して復讐する…それは『ふくしゅう』違い?!』
下記のアドレスか上の作者名から辿ってお越しください。
https://ncode.syosetu.com/n1366gd/1/




