第137話 ドS王女様は椅子と永遠を誓い合う
最終話っぽいですが続きます。
新作の準備で更新頻度は減らさせていただきます。
-主人公ケイト視点-
夜。
夜になるまで言い出せなかった。
クリス様に『内蔵型スマホ』のことを。
きっとすごく怒るだろうな。
「ケイト、どうしましたの?」
「え?」
「何か浮かない顔をしていますわ」
表情に出ているんだな。
「クリス様、ごめんなさいっ!」
土下座して…ってクリス様が異世界なのに四つん這いの俺の上に座ってるから、そのまま詫びる。
「どうしましたの?」
「実は、クリス様に隠し事をしていました!」
ゆらり、とクリス様は立ち上がり、ぼそりとつぶやいてその手に『ベルト』が握られる。
こ、怖いっ!
-王女クリステラ視点-
隠し事ですって?!
一体何なの?!
それよりも、わたくしの忠実な下僕であるケイトが隠し事をしていたなんて!
ものすごいショックですわ。
これはお仕置き100倍ですわ!
…100倍のお仕置きで済むならいいですの。
でも、でも、もし、この関係が壊れるようなことなら、それは…
ぽろ
ぽろ
「クリス様?涙が…」
「ケイト…その隠し事はわたくしたちの関係を壊すことですの?」
「それは…わからないです」
「それなら、言わなくてもいいですわ!だって、わたくしはケイトを手放したくありませんの!」
「クリス様…」
「あいえ、やっぱり言いなさい。わたくしたちの関係はそのくらいで壊れたりしませんわ!」
「はい!」
え?内蔵品はメールだけできるものじゃなくて、もっと便利なものがありましたの?
思うだけで写真とか動画が撮れて送ることができる?
しかも、わたくしのエッチな写真をこっそり撮ってましたの?!
「ケイト!」
「は、はいっ!」
「その程度の事で関係が壊れるわけがありませんの!」
びしっ!びしっ!
「本当にケイトは、スケベで、エッチですわ!」
びしっ!びしっ!
「でもそういうケイトの事が大好きですの!」
-主人公ケイト視点-
クリス様、泣いてくれてる…泣きながら鞭打ってくれてる。
「ケイト…」
「は、はいっ!」
「その程度の事で関係が壊れるわけがありませんの!」
びしっ!びしっ!
「本当にケイトは、スケベで、エッチですわ!」
びしっ!びしっ!
「でもそういうケイトの事が大好きですの!」
びしっ!びしっ!
え?
「ケイトのような最高の下僕で椅子で、便利な道具は他にありませんわ!」
びしっ!びしっ!
あ、椅子や道具として好きなんだ。
だよね。
それでも、大好きって言われると嬉しいけど。
「ケイトが居ればもう結婚とかしなくていいですもの!」
びしっ!びしっ!
道具なのにそんなに気に入ってくれているんだ。
前に夫より尽くせって言ってたもんな。
「翔学生の教科書が終わったらケイトと子供を作ったりもしたいですの!」
びしっ!びしっ!
え?ええっ?!
それって?!
「子供が作れる『道具』があれば、夫なんて要りませんわ!」
びしっ!びしっ!
やっぱり道具なんだ…でも、夫替わり?
「大好きなケイトとなら、きっと可愛い子供が生まれますわ!」
びしっ!びしっ!
それって…えっと…もうわけわからないや。
『結論』
人としての愛じゃないけど大好き。
二人の子供を作りたい。
でも、下僕で椅子で道具。
うん、いいじゃないか。
最高じゃないか!
「俺もクリス様の事、大好きですから!」
「はふんっ?!」
ぴたっ
…あれ?
クリス様、固まってる?
-王女クリステラ視点-
びしっ!びしっ!
叩きながら、いっぱい本音が漏れますの!
ケイトは大切ですわ!
絶対離れたくありませんの!
でも、ケイトは、下僕で、椅子で、道具ですの!
ケイトの事は大好きですけど、それだけですわ!
恋人になりたいとか、結婚したいとか、『物』相手にはありえませんの!
お母様みたいにケイトと子供を作ってみたいとも思いますの!
でも、子供を作ることに興味があるだけですわ!
ケイトとなら作ってもいいって思えるだけですの!
ああっ、もうっ、わからなくなってきましたわ!
わたくしはケイトの事を…
「俺もクリス様の事、大好きですから!」
「はふんっ?!」
え?
今、ケイトがわたくしのことを『大好き』って?
こんな目に遭わせているわたくしの事を?
下僕で、椅子で、道具の扱いをされているケイトがわたくしの事を?
『大好き』ですって?
「俺はクリス様の事が大好きです!だから、絶対に離れません!一生傍に居ます!だから、これからもクリス様の好きに俺を使ってください!」
使ってください…
そうですわね。
ケイトは、わたくしにとって最高の…。
「ケイト」
「はい」
「今、絶対に離れないと言いましたわね」
「はい」
「わたくしがケイトを捨てるとしても?」
「捨てられないようにします!」
「それなら誓いなさい!」
「はい!俺は一生クリス様に尽くします!決して離れません!」
「違いますわ。立って、わたくしの目の前で誓うのですわ」
-主人公ケイト視点-
俺は立ち上がって、クリス様の前に立つ。
「俺は一生クリス様に尽くします!決して離れないことを誓います!」
「わたくしも、ケイトを決して離さないことを誓いますわ!」
え?
ぐいっ
ちゅっ
うそ…。
「…ケイト、これは『誓いのキス』ですわ。これでわたくしたちは永遠に一緒ですの」
「は、はいっ!」
結婚式なんて無い世界のクリス様が、自分の思い付きだけで『誓いのキス』をするなんて。
…ってキスだよね?
『遊び』とか『奉仕』じゃなくて、普通に口同士でやって、『キス』って言われたけど。
…あっ、クリス様、真っ赤になってる。
「キスですけど、永遠に主従として一緒に居る誓いのキスですわ!だからもうキスなんてしませんわ!…だけどもし『誓い』が破れそうなときは、またこうやって気持ちを確かめるかもしれませんの!」
ツンデレみたいなんですけど。
もうどんな関係でもいいから。
言えることは、最高の関係だってことだけ。
本当に最高だよ。
「それでケイト」
「はい」
「こっそり撮影したわたくしの写真、全て見せなさい」
本当に最低だな…。
ぷすぷすぷす…
激怒したクリス様にさんざん打たれて蹴られてくすぐられて、このありさま。
「すみません。もうしません。うっかり撮ったら消します」
「それは駄目ですわ」
「え?」
「せっかく便利な機能がありますもの。写真や動画を撮ったらわたくしにも見せなさい」
「はい」
「でも、エッチな写真ならお仕置きですわ」
つまり、時々エッチな写真を撮って見せて、お仕置きされろってことなんだな。
うん、いつも通りじゃないか。
秘密を打ち明けてよかった。
むしろ、もっと関係が深まって…深まりすぎて。
クリス様、ありがとうございます。
「じゃあ次ですわ」
「え?」
「ケイトはお母様と夫婦で、姉さまたちや色んな相手と恋人ですわね?」
「あ…はい」
「もしかして気づいてないとでも思ってましたの?わたくしはケイトがきちんとわたくしの下僕をしているから、そういう『プライベート』には口を挟みませんのよ」
「はい」
「だけど、どういうことをしているか、主人として知っておきたいですわ」
「はい」
「いい返事ですわ…ふふふ。こんなことをしていましたのね。何だかものすごく叩きたくなってきましたわ」
え?これ以上されるの?
「夜はまだこれからですわ!」
ピシッ!ピシッ!
クリス様!
夜更かしは駄目ですっ!
-王女クリステラ視点-
異世界のベッドで寝るのにも慣れてきましたわ。
こうやって、ケイトと二人でベッドで…。
いつも平気ですのに、なぜか今夜はすごくドキドキしますの。
きっと、色々あったからですわね。
『大好き』
『誓いのキス』
これでもうケイトと離れられなくなりましすの。
誓いの写真や動画を撮っておいて、母様や姉さまたちに自慢すれば良かったですわ。
…思い立ったら即実行ですの!
「ケイト!」
「はいっ?!」
「起きなさい!そしてもう一度やりますわ!」
「何をです?まさかお仕置き?」
「誓いの儀式ですわ!それを撮影してお母様や姉さまたちに見せますの!」
「いいんですか?」
「当然ですわ!こんな素敵なことを自慢しなくてどうしますの?!」
「クリス様、それなら場所を変えません?」
場所?
「ここは『職業』を調べた教会みたいですわね。どうしてわざわざ異世界の教会に来ましたの?」
「あちらは夜で、教会を借りられないので」
「それでこの衣装を着ますの?」
「それが誓いの儀式のための衣装です」
「そうですの?」
「もう隠し事はしないのではっきり言いますけど、これは俺の世界の『結婚式』での衣装です」
結婚式?!
「一生添い遂げる誓いをする結婚式を行う場所や衣装が、主従の誓いをするにも相応しいかと思いましたので」
「全然駄目ですわ」
「そうですか…」
「この程度では駄目ですの!わたくしたちの関係は結婚するよりはるかに強いのですわ!」
「そうですね!じゃあ、もっとすごくしましょう!すごく大きな教会とか、山の頂上とか」
「わたくしは広いところは駄目ですの!だからわたくしたちの原点に戻りますわ!」
「わかりました!じゃあさっそく…」
「待ちなさい。せっかくですからここでも撮影しますわ」
「はい」
純白の衣装を着て、ケイトと並びますの。
「一生クリス様に尽くします。決して離れないことを誓います!」
「わたくしも、決してケイトを離さないと誓うわ」
ちゅっ
「綺麗に撮れていますわ。ケイトも撮影できましたの?」
「はい。動画も写真も」
「それなら領地に戻りますわ。でも、あちらではあまり時間をかけないようにしないと、起きる時間になってしまいますわ」
異世界を超えて、超えて、わたくしの領地に戻りましたわ。
「ケイト。わたくしたちが絶対に離れないと示すために、お互いを紐で結びますわ」
「手を結ぶんですか?」
「全身ですわ。ぐるぐる巻きにしますのよ」
ケイトが準備した、金色の糸。
それでわたくしたちをぐるぐると巻いて、しぼって、引き寄せあって。
「これでいいですわ!」
「それでは…俺は一生クリス様に尽くします。決して離れないことを誓います!」
「わたくしも、決してケイトを離さないと誓うわ。ずっと一緒ですの!」
ちゅっ…ちゅう…
ああ、駄目ですわ。
誓いのキスのつもりが、いつもの『遊び』みたいになってますの。
こ、こんなの姉さまたちに見られたら…ああ、でも、見せたい気もしますわ。
「ケイト、もっと…」
ちゅっ、ちゅう…
-主人公ケイト視点-
半畳に二人が立って、金色の紐で全身を押し付け合うように結びつけて。
そして誓いの言葉と誓いのキス。
ちゅ、ちゅぱ、れろ
ちゅっ、ちゅうっ
駄目だ、これ、終われない。
遊びじゃない誓いのキスなのに。
ずっとこうしていたい。
あと…紐で体を押し付けあっているせいで、クリス様の胸とかぎゅうぎゅうに押し付けられて、すごく柔らかくて、暖かくて、いい匂いで、良すぎるからすごく『みょぎりんこ』なんだけどまったく平気。
「クリス様、例のクリスタル出せますか?」
「『ケイトにもらった最高のプレゼントを!』」
『完全透明水晶』がクリス様の手に握られる。
これ、『最高のプレゼント』って思ってくれているんだ。
嬉しいな。
「これでクリス様が握って光らせれば、この領地内が輝いて、もっと素敵な誓いの式になりますよ」
「ケイトも一緒に握りなさい」
「え?あ、はい」
恋人繋ぎをして、その中にクリスタルを入れる。
すると手の隙間から…いや、手そのものが強い光を発して、星が飛び始めた。
その色は何色もの数えきれない様々な色。
これって、二人の子供の色だよな。
虹色の暗示を持つ子供が生まれるのかな?
「ケイト、異世界に居るときも勉強をしないといけませんわ。だって、こんなにたくさんの色…何人の子供を作れば全部揃うのかしら?」
これってそういう意味?!
「クリス様、頑張って教えます!」
「当然ですわ!」
-王女エメラルディ視点-
朝だわ。
主人より寝坊のマリナの寝顔を『内蔵品スマホ』で撮ってあげるわ。
この『内蔵品スマホ』って本当にすごいのね。
教えられなかった事情は分かったけど、私にくらい教えてくれても良かったのに。
それより、ケイトはクリスに怒られなかったかしら?
あら、さっそくクリスからCHAINが来てるわ。
写真と動画?
…
…
な、何これ?!
クリスとケイトが一生一緒に居るって誓いあってますわ!
『主従永遠の誓いの儀式』ってタイトル付いてますけど、これはケイトの世界の結婚式よ!
マリナに教えてもらった時から、いつかケイトと『結婚式ごっこ』とかやろうと思っていたのに、本当にしちゃうの?!
それにしても、二人とも何て幸せそうなのかしら。
これで恋人でも夫婦でもないとか、クリスの頭ってどうなってるの?
でも、それがあの二人にはいいのよね。
ちょっと妬けるけど、可愛い妹と弟をお姉ちゃんとして祝福してあげるわ。
…私も何か似たことをさせてらもいたいわね。
「マリナ、起きたかしら?ねえ、何かいいアイディアない?」
「お兄ちゃんが、お兄ちゃんがクリス様とっ!うわああああんっ!」
あっ、クリスったらマリナにも送ったのね。
ものすごいショックを受けてるわ。
これはアイディアを考える前にマリナを慰めるところからになりそうね。
お読みいただきありがとうございます。
次回からは最低週1回くらいの更新になります。
次回は4月4日土曜日18時更新です。




