表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/147

第130話 ドS王女様は強敵と渡り合う

強そうな男の敵は初めてかな?

-王女クリステラ視点-


ゆっさゆっさ


ん?何事かしら?


…ケイトが揺すって起こしてくれましたのね。


ケイト『そろそろ行きますので支度を』

クリス『わかりましたわ』


いよいよ突入ですわね。

こんな時に言うべきことではありませんけど、ワクワクしますわ。


フランソワーズ王女の妹たちを見事救い出してみせますわよ!



みんな寝静まっている時間でも、廊下には薄暗い明りがありますのね。


…ここがシャルロット王女の私室ですわ。


ガタガタ


扉が開きませんわ?


ローラ『いつもなら開いているはずです。もしかすると第4王妃が怖くて中から施錠しているのかもしれません』

クリス『それならわたくしが開けますわ』

ケイト『ドアを斬るんですか?姿を隠す魔法が解けてしまいますよ』

クリス『違いますわ』


わたくしは髪の毛を操ってドアの隙間に入れて、向こう側を探りますわ。


…こういう鍵ですのね。それならこうして…


かちゃん


開きましたわ!


キイ


素早く中に入って、シェリーが音を外に漏らさない魔法を掛けていますわ。


「シャルロット様、シャルロット様」

「…ん?ローラ?!お姉さまたちは無事なの?!」

「お静かに。お二人とも無事ですわ。私たちはシャルロット様を救いに来ましたの」

「私を救いに?」



-第3王女シャルロット視点-


まさか王城に侵入してくるなんて。


でも、ここまで誰にも気づかれないということは、この人たちは相当の手練れですのね。


この人たちが誰か知りませんけどローラが連れてきたのなら信頼しましょう。


え?ヴィヴィ(ヴィクトリーヌ)が人体実験をされているって?!

すぐに助けに行かないと!


でも、私は非力だから『異次元リュック』という袋の中でローラと一緒に居ることになりましたわ。


お願い、ヴィヴィを早く助けてください!



-第4王女ステファニー視点-


う、ううっ、うえええん。


今日もお母様が冷たかった。


夜も一緒に寝てくれない。


シャルお姉さまはドアに鍵をかけているから一緒に寝てもらえない。

侍女も全員お母様みたいに無表情になってしまった。


やだよう。怖いよう。

誰か助けて!


キイ


え?扉がひとりでに開いた?…閉じたわ。


だ、誰か入ってきたの?!

まさか私を殺そうと?!


でも、そこに姿を現したのはシャルお姉さまだった。


「お姉さま!」

「ステフ、静かにして。あのね、この人たちに助けてもらったの」


その言葉を待っていたかのように姿を見せる4人。

うち一人はフランお姉さまの侍女のローラだわ。


「お母様も助けてほしいの。だって、あんなの本当のお母様じゃない。きっと悪い呪いにかかっているの」

「操られているかもしれない王妃たちを連れ出すのか」

「難しいわね…と言ってもケイトはもう方法を考えてあるのでしょう?」


シェリーさんって人はすごくケイトって人を信頼しているみたいだね。


「とりあえず抵抗されないようにして『聖女の椅子ホーリーエンブレイス』で元に戻せないか試すよ」

「でも、元に戻した瞬間に操っている相手に気づかれるかもしれないわ」

「じゃあ、無力化してあとで元に戻すしかないかな」


お母様も助けてくれるんだ。

それなら私は何だってするから!



-主人公ケイト視点-


ここがシャルロット王女たちの母親の私室か。


大人の女性の私室に入るのは気が咎めるけど…。


カチリ


クリス様の髪の毛が便利すぎるよ。


「誰?あぅ…」


起き上がった第2王妃にすばやく『睡眠』の魔法をかけてリュックに入れる。


さあ、次だ。





第1王妃と第3王妃は私室に居ない。


あまり探し回っているわけにはいかないから、もう第4王妃の私室に突入してヴィクトリーヌ王女を助け出さないと。


これで居なかったら困るな。


…気配は無いな。


え?ドアの鍵が開いてる?


そうか、自分にとって怖いものが無いからだな。


キイ


「何者だ?!ローストグリフ!曲者よ!」


呼ばれたやつがうまそうな名前なんだが。

でも名前のわりに強そうな騎士だな。


「はっ」

「こんなところまで侵入を許すとは何事です!」

「…あいつは高位の魔族ですな。王妃、お下がりください」

「任せるわ」


向こうの部屋に逃げて行こうとするけど、そうは行かないんだな。


ぴろん


ケイト『シェリーこっちは頼む。俺はクリス様と王妃を追う』

シェリー『任せて』

クリス『わかったわ』


言葉に出さなくて打ち合わせできるのってすごく便利だよな。


王妃を追いかけて奥の部屋に行くと、そこはものすごく広い部屋だった。


いや、普通の部屋じゃない。

ここは異次元空間を利用した実験場だ。


目の前に大きなカプセルがいくつかあって、そのうちの一つには4歳くらいの女の子が入っている。

おそらくあれがヴィクトリーヌ王女だな。


あとのカプセルには色々な魔物が入っている。

それを使ってキメラを作るつもりだったのだろう。


ぴろん


クリス『容器を壊して助け出しても大丈夫かしら?』

ケイト『あの容器は独立しているみたいだから、容器を固定している部分を切り離してください。入れ物ごと持ち帰ります』


「わかったわ!」


そこは声に出すんですね。


シュパパパッ!


クリス様の刀が閃き、カプセルを固定している部分をたやすく切り落とす。


金属なんだけど、あんなにあっさり斬るなんてすごいな。


俺はすばやくそれをリュックで受け止めて、中に吸い込ませる。


あっ、中の人大丈夫かな?

…確か中にゆっくり降りていくはずだから大丈夫だよな。


「お前たち、ヴィクトリーヌが目的だったのね!」

「第1王妃と第3王妃はどこだ?」

「もしかして全員を助けて回っているの?それならとんだ無駄足ね。二人ともここにいるわ!」


ガコン

ガコン


王妃が壁のレバーを操作すると、二つのカプセルが解放される。


そこから解き放たれたのはラミアっぽい蛇女のキメラとスフィンクスみたいな獅子女のキメラだ。


まさかこれが行方不明の王妃たち?!


「さあ、侵入者を殺しなさい!」


ぴろん


ケイト『手前のキメラを抑え込んでおいてください。その間に捕らえます』

クリス『抑え込むのですわね』


俺はラミアっぽいキメラに立ち向かうと、その攻撃をかわしつつその背中に取りついた。


「『石化』!」


無力化するにはこれが一番だ。

自爆も自殺もされにくくなるからな。


クリス様、そちらのキメラも…って髪の毛で手足をぐるぐる巻きにして抑え込んでる?!

抑え込んでってそういう意味じゃなかったけど。


「『石化』」


楽だからまあいいか。


「させないわっ!」


俺たちの目的に気づいたのか、王妃が手の平をこちらに向けてきた。

魔術か?!


ガシッ


それを突然現れた何者かが押しとどめた。


「勝手にお前の能力を使うな!」

「兄さま!」

「ケイト!」


シェリー?

もう終わったのか?


あっ、向こうでローストグリルみたいな名前だったやつが伸びてる。


「そいつはやばいわ。さっさと逃げるわよ」

「ほう、わかるのか。俺とて貴様とやり合う気はない。この城が壊れてしまうからな。逃げたいなら逃がしてやろう」

「でも兄さま!あいつらは王女と王妃たちを!」

「いずれ処分するつもりだったのだから、居なくなっても構わんだろう。実験材料ならここの侍女でも住民でも連れてこればいい」


ヒュン


ガッ!


クリス様が突然居合であの男を攻撃して、その刃を弾かれた?!


「貴様ごときが俺とやり合う気か?」

「このまま逃げたらもっと大勢の人が実験材料にされるのですわね。それは許せませんの!」


クリス様!


ここはひとまず逃げるべきだったと思うけど、クリス様がその気なら俺もお供します!


「仕方ないわね。私も付き合うわ」

「やめろ。貴様とでは城が壊れる。この女だけ相手してやる」


男は禍々しい雰囲気の剣を空間からズズズと引きずり出す。


「すごい…」


思わず心の声が漏れてしまった。


「貴様でもわかるか。この『撃鼓砕剣グラムスター』のが!」

「いや、その剣の出し方が格好いいなって。だってほら、こうやって瞬間的に出すのが普通じゃない?」


俺は適当な剣を異次元箱から取り出す。


「貴様、この状況でそんなことを考えていたのか?ふっふっふ。これはこの女にも期待できるか?」


期待くらいで済めばいいけどね。


「たああっ!」


クリス様が裂帛の気合を発して斬りかかる。


え?居合じゃないのか?


キンキンガッキンガッ!


十何合にも及ぶ打ち合い。


しかしあの禍々しい剣にはきっと何か特殊な能力があるはず。


俺はそれを見極めて、クリス様に害が及ぼされないようにしないと!


と考えつつも速やかに石化した王妃たちも異次元箱に回収する。

石化しているから生物扱いじゃなくなって異次元箱に入れられるんだよな。


「中々の腕前だが、その刀では俺は傷つけれぬぞ!」

「やってみなければわかりませんわ!『十文字斬り(クロススラッシュ)』!」


クリス様が横に一閃するとその攻撃を剣で受けたはずの相手が壁際まで吹き飛ばされた。


でも吹き飛ばされただけで、刀傷一つない。


「まさか一閃で十字型の攻撃が出るとは。ならばこの剣の力を少しだけ見せてやろう」


あの剣に何らかの力が溜まっていく?!

まずい!


「やっぱり帰りますわ」

「何っ?」

「えええっ?!」


クリス様の撤退宣言に思わず攻撃をやめてしまう相手とコケる俺。


「じゃあ、そういうことで!」


ボムッ!


キンッ!


俺は煙幕玉を叩きつけると、クリス様とシェリーと一緒に王妃の部屋の窓を破って外に出る。


「でも、さっきの煙幕を出したときの『キンッ!』って音はなんだろ?」

「それはわたくしの『納刀』の音ですわ」


納刀の音?


「居合を使わなかったのは、あの部屋の実験道具を切り裂いておいたのを気づかれないようにするためですわ」


え?


「対象を切り離さないギリギリまで斬り裂いておいて、納刀の音で一気に破壊できますのよ」


なにそれ、どこの石川○右衛門。



-第4王妃視点-


何てこと!

わたくしの部屋の窓は壊されるし、王妃たちのキメラや王女は全員連れ去られましたわ!


しかも、しかも!


どうして実験室の器具が残らず壊れていますの!

さっきまでなんともありませんでしたのに!


「どうやらある程度切り裂いておいたのを『納刀』の音で一気に崩壊させたのだな」

「兄さま!何を感心しているんですの?!」

「俺と戦いながら部屋中の物を切り裂いていたのだぞ。そんな余裕があったとか、もう面白すぎるじゃないか」


兄さまは戦闘を楽しみすぎですわ!

やっぱりわたくしが『力』を使えば早かったのに。


おかげでしばらくは実験ができませんわよ!


「これが直ることにはまた来るだろうな。楽しみだ。あの女…今度は逃がさないぞ」

「兄さま!わたくしというものがありながら、他の女のことなど!」

「何を言う?奴とは戦うだけだ。お前との愛とは別だ」

「ああ、兄さま…」


わたくしは兄さまに身を任せて目を閉じますの…。



-魔族シェリー視点-


色々危なかったけど、どうにか逃げられたわ。


それにしてもクリスってすごいわね。

まさかあの立ち回りの間にあの部屋の器具を切り裂く余裕があったなんて。


それにあの男、魔族ではないわ。

もしかするとデーモンかもしれない。


すると、あの王妃もデーモンの可能性がある。


これは戻ってから対策の練り直しね。


それと一番気になったことは…第4王妃の王子はどこにいたのかしら?

第4王妃の部屋に居るんじゃなかったの?


何か嫌な予感がするから、これはマリー様とケイトに話してみましょう。


嫌な予感がしたら何でも相談しないと、きっとあとで後悔するものね。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマークとか感想とかいただけると励みになります(*^^*)

次回も明日、3月22日18時更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ