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第126話 第1王女は他国の第1王女を叱咤する

王国救済編…かも。

-主人公ケイト視点-


この世界に来て7日目。

クリス様たちの世界では7時間経つことになるから、そろそろ戻らないといけない。


ダーン!

ダーン!

ダーン!


エメル姉さまの銃が火を噴き、オーガの脳天を次々と撃ち抜いていく。


「すごい腕前ね。さすがディアナ王女の娘だわ」


マリーさんの言う通り、エメル様もディアナ様同様に戦闘能力は高かった。

やっぱり舞闘会で常に戦っているせいなのか。


それでも今の俺ならエメル姉さまを守るだけの強さを持っていると自負しているけど。


「ガアア!」


ビッ!


撃たれずにエメル姉さまのところまでたどり着いたオーガの目をエネルギー銃で打ち抜く。


「ケイトもうまくなったわね」

「これは狙いやすいんですよ。エメル姉さまの調整のおかげですね」


俺の手の動きのクセに合わせて調整してあるからすごく使いやすい。

さすがは銃鍛冶師ガンスミスだ。


それに万が一今の攻撃を外してからでも防御魔法が間に合う。

それくらい速く魔法を使えるようになったのだから。


「最終日だから、依頼を済ませたら街で買い物してから帰りたいわね」


とか言っている間に、最後のオーガが倒れて『村を襲うオーガ討伐』の依頼が達成される。



だが、思わぬ事件が冒険者ギルドに帰る途中で起こった。




街道のずっと向こうに砂煙が見える。


「ねえ、ケイト。あれ、誰かの馬車が追いかけられているみたいよ」

「エメル姉さま、見えるんです?!」


はるか先に拳くらいの大きさの砂煙しかみえないけど。


「視力には自信があるのよ。山賊?いえ、騎馬隊みたいね?」

「軍隊か?」


山賊なら追われている人を助けてもいいけど、もし軍隊なら話が違う。

どちらが正しいかわからない相手を不用意に助けられないからだ。


「ケイト、どうする?」

「俺の意見で良ければ、襲われている人が誰か見て、軍隊であればひとまず双方の動きを止めます。軍隊に襲われている側に非があるとわかったならそのまま撤収しますが、もしそうでないなら助けたいですね」

「軍隊はどうするの?」

「説得を聞かないなら力ずくになるでしょうね」

「異世界のケイトらしいというか、普段のケイトらしくないというか…」

「でもお兄ちゃんはいつも優しいの!」

「マリナの言うとおりね。マリーさん、シェリー、ケイトのフォローを頼むわね」

「フォローも何も、もう私にも見えているわ。あれは隣国の軍隊よ」


マリーもエメル姉さまに負けないくらい視力が良くてこの世界の知識もある。


隣国の軍隊が国境を越えたところに居るとかありえないな。


「旗とか紋章は隠しているが、あのプレートメイルは隣国のアルハーダ王国のものだ」


この距離でそこまでわかるのか。


「紋章や旗を隠して国境を越えている時点で軍隊側にも非があるから、とりあえず止めるか。マリーは転移で冒険者ギルドに伝えてきて。メールで情報は追加するから」

「わかったわ」


これであの軍隊が万が一にもこの国の許可を得ているかどうかはわかるはずだ。


「よし、いくぞ」

「いいわよ」

「うん、お兄ちゃん」

「任せて」


エメル姉さまとマリナとシェリーと俺の4人で向こうに向けて駆けだす。


俺とシェリーが突出して、エメル姉さまとマリナはフォローに回ってもらう。



-逃亡王女フランソワーズ視点-


せっかく国境を超えたのにこんな早く追い付かれるなんて!


あの女ギツネめっ!

どうあっても私たち姉妹を殺す気ね!


「姫!この馬車ではもう逃げきれません!」

「それなら…もう最後の手段を使います」

「駄目です!それを使っては姫様の身が!」

「アンリを頼みます!」


私は宝剣を取り出し、それに封じられた大精霊の解放を試みる。


「ガノン・イフリートよ!我が命を対価に…」


ゴゴンッ!


「きゃあっ!…あっ!」


馬車の車輪が壊されて急停止した衝撃で剣を外に放り投げてしまった。

早く拾わないと!


「探し物はこれですかね?王女」


馬車から出ようとすると、私の宝剣を持った男がニヤニヤと問いかけてくる。


「ゲディオン将軍っ!」


まさか将軍自ら追ってきたというの?!


「いやあ、これを使われなくて良かった。何しろ死なれては『楽しみ』が無くなってしまう」


そして下品に舌なめずりをする将軍。


「国民のアイドル的存在の王女姉妹を自由(・・)にできるなんて幸運、二度とありますまい」

「将軍!侍女たちは我々に」

「姫に飽きたら侍女だ。だからお前らは俺が飽きた姫をくれてやる。そして死ぬまでやれ」


なんておぞましいことを!


でも、宝剣がなくてはもはや勝ち目はないわ。

こうなったらもう自刃するしかない!


ビシッ


「あ」


か、体が動かない?!

金縛りの魔法?!


「死ぬ気でしたね?そうは行きませんよ」

「や…やめ…」


もう声も自由に出せない…。


誰か…助けて…。


ビッ


「くっ!」


え?今、将軍が何かを避けた?


「あれを避けれるのか」

「ケイト、いきなり親玉を殺そうとするなよ」

「いや、あんなこと言うやつは例え誰でも許せないんだが」

「そうね。同感だわ」


誰?あの二人は?


普通の冒険者にしか見えないけど。


まさか助けてくれるの?!

でも、たった二人なんて!


相手は将軍率いる30名を越える精鋭なのよ!


「マリーから不法入国らしいからどう扱ってもいいって連絡が来てるから」

「捕らえるの?」

「殲滅する」

「そうよね」


殲滅?!

どうしてそんな自信があるの?!



-将軍視点-


何だこいつらは?

この国の冒険者か。


後ろからも2人来ていて合計4人か。

しかも3人はすごい美人じゃないか。


「男を殺せ!女は捕らえろ!」

「そんな余裕あるの?」


ふわりと女が宙に浮く。


「『重力嵐グラビティストーム


ぐんっ!


重力魔法だと?!

それもなんて広範囲に!


魔法耐性の無い20人の騎士はプレートメイルのせいで地面に押しつぶされてしまった。


だが、わしのように魔法のプレートメイルを着ている奴らはそれに耐えられる!

ほとんどの魔導士も耐えられたようだな。


「撃ち落とせ!」

「はっ!」


魔法を唱えようとする魔導士に男が銃を向けてきた。


「貴様はわしが相手だ!」


あの男が持っている銃は厄介だが、先ほどわしぎかわした時にえぐった地面を見るからに、殺傷力は低いようだ。


急所に当たらなければわしの鎧や楯ではじき返せる程度だろう。


ビッ!ガ!

ビッ!ガ!


やはりな。わしの鎧も楯も貫けぬわ。


もし威力を上げられるとしても、何らかの操作かチャージが必要なはず!

その隙に首を叩き落としてくれるわ!


ビッ!ジュッ!


「は?」


どうしてわしの鎧の『胸当て部分』だけが消えた?!

しかも『致命傷の護符』が効かないだと?!


奴の足元にわしの胸当てと護符がっ?!


こいつは悪魔か…



-主人公ケイト視点-


ビッ!ガ!

ビッ!ガ!


楯や鎧で攻撃を弾けるからあんなスピードで真っ直ぐに突進してくるのか。


威力を上げても『致命傷封じ』とかのアイテムで助かるかもしれないしな。


「『武具召喚』!あの武将の胸当て部分!『魔道具召喚』!あの武将の持つ護符!」


ビッ!ジュッ!


「は?」


何が起きたかわからないという顔をして将軍が地面に倒れる。


「将軍がやられたぞ!」

「くそっ!逃げろ!」

「逃がさないわよ!『闇の刃』!」


シェリーが上空から兵士を次々と打ち倒していく。

そしてエメル姉さまは遠くから確実に一人ずつ仕留めている。


「ただいま。あら?もう終わり?」


マリーが最後の一人の前に出現する。


「た、助けてくれ!」

「最後の一人で良かったわね」


がしっ!


マリーはその男の頭を鷲掴みにする。


「『洗脳ブレインウオッシュ』!」

「ぎゃあああああああっ!」


男は力なく膝をついて放心している。


「情報を取るんだな」

「ええ。というか、ケイト全滅させる気だった?」

「メールでも言ったように、あんなことを言うやつらを生かしておくつもりはなかったからさ」

「まあ、私があんなこと言われたら全員瞬殺だったわね」



-逃亡王女フランソワーズ視点-


何て強さ。


瞬く間に殲滅してしまった。


「大丈夫?」

「え…ええ…」


まだ金縛りの魔法のせいでうまく話せないわ。


「マリナ、治してあげて」

「はい。『状態異常回復バッドステータスリカバリー』!」

「…動けるわ!みなさん、ありがとうございます!」


お礼は言ったものの、味方とは限らないのよね。


それにさっきから聞いている限りではあの将軍の言動に腹を立てて殲滅したみたいだから、少なくとも悪い人たちではないはず。


「あなたはアルハーダ王国の人ですか?」

「私は第1王女フランソワーズ。そして馬車の中には妹の第2王女アンリエッタが居ます」

「私は冒険者のケイト。こちらは仲間のマリー、シェリー、エメル、マリナ」


女性ばかりね。

これがうわさに聞く勇者とハーレムパーティってものかしら?


「冒険者ギルドに確認したところ、アルハーダ王国の軍や王族が国境を超える許可はもらっていないとのことだったけど、このまま行くと結局は捕まえられると思いますよ。良くて『保護』されるかと」

「アンリのためにも遠くへ逃げたかったのです!このままあそこに居たら殺されていましたから!」


私は事情を話すことにしました。




アルハーダ王国は私の父王の善政により栄えていました。

そして、その跡継ぎは第一王女である私だった。


だけど、王である父が4人目の王妃を迎えてから全てが狂った。


王は王妃の言うがままに政治を歪めていったのです。


そして第4王妃は王子を生み、跡継ぎは私や妹たちを差し置いてその王子になった。


「跡継ぎにならない王女たちは残らず他国へ嫁にやるべきです」


王は第4王妃の意見を聞き、私たちの嫁ぎ先である政略結婚の相手を探した。


仕方ないことと思っていた。

しかし、私は第4王妃と将軍たちの密談を聞いてしまった。


「わたくしの息子が王になる邪魔は絶対にさせない。だから嫁ぎに行った王女たちは残らず暗殺しなさい。手段があるなら今からでもいいわ」

「御意に」


そんな恐ろしいたくらみを聞いては、とても王城に居られなかった。


信頼できる侍女たちとこっそり王城を抜け出し国境を越えた。


途中まですごくうまくいっていたのに、こんなにあっさりと脱出したことに気づかれて追い付かれるなんて。




「それは第4王妃がわざとあなたの危機感をあおったのよ。だから国外に逃げる途中で邪魔が入らなかったのはそのせいね」


エメルという女性がそう推理する。


でも、そう言われればそうかもしれないわ。


それにしても…このエメルって人は何か貴族のような高貴さを感じるわね。

貴族出身の冒険者かしら?


「それでどうされます?頼る相手は居るんですか?」

「誰も居ないわ。だって女王になる予定だったからどこの国にも婚約者が居ないもの」

「アンリエッタ王女は?」

「生まれつき病弱で婚約者はいないのよ」


そんな妹すら将軍たちの毒牙にかかるところだったから、この人たちには本当に感謝しないといけないわ。


「後先を考えさせずに他国に飛び出させれば、万が一撃ち漏らしても他国で捕まるか、殺されるかってそこまで考えていたかもしれないわね」

「そんな!今更王城にも戻れないしどうしたら!」

「何を言ってるの?どうしたらって、あなたがどうしたいのかは無いの?」


エメルって厳しいことを言うのね。


「もう王族を捨ててもいいわ。だから、どこかで平和に暮らしたいの」

「そう。それだけ・・・・でいいのね」


それだけって…他に何があるのよ。


「ケイトも言いたいことがあるでしょう?」

「まあね。でも、本人にその気がないのにあおってもね」


何?この人たちは私に何が言いたいの?


「お姉さま」

「アンリ?!」


馬車から寝間着姿のアンリが顔を出す。


「わ、私は自分の平和なんていらないの。このままだと私たちの国はおかしくなる。だから、それを救いたい。そして、まだ逃げてない妹たちも助けたい」

「なんだ、妹の方がよっぽどしっかりしているわね」


まさかアンリがそんなことを言うなんて。


そうよ。私だって考えていたわよ。

でも、アンリの幸せのことを考えたら、あきらめるしかないから。


「あなたは妹の幸せのためとか思い込んで、楽な道を選ぼうとしたわね」


エメルって私の心が読めるの?!


「でも、あなたたちに言ったところで何とかなるわけでもないのよ」


バチッ!


エメルに頬をぶたれた?!


「だらしないわね!今聞いているのはあなたが何をしたいかよ!私たちが何かをしてやれるとかは関係ないの!自分が何をしたいかもわからないのに、これから先どうするか決められるの?!」

「無礼なっ!」


侍女がエメルに詰め寄るけどちっとも動じていないわ。


「言っておくけど、彼女は異世界にあるとある王国の第1王女だからな。別に無礼じゃないと思うぞ」

「ええっ?!」


どうして第1王女が冒険者なんてやっているの?


今教えてくれたマリーって人もすごい美人だけど何かすごい『圧』を感じるわ。


この人たち、全員只者じゃない?!


「お願いします!私にできるお礼ならなんだってします!だから我が国と残された妹たちを救ってください!」

「最初からそう言えばいいのよ。じゃあ、場所を変えましょう」

「アンリエッタ王女の治療もしたいから、冒険者ギルドへの報告はマリーに頼める?」

「オーガの件なら行ったついでにしておいたわよ。まさか王族を保護した件を報告するの?」

「報告すべきかは詳しい話を聞いてからだな。よし、移動しようか」


今、『アンリの治療』って言ったわね。

でも、これは生まれつきの不治の病なのよ。






…なんて思っていたのに。


「お姉さま!」

「アンリ!」


ああっ!そんな簡単に元気になるなんて!


それに回復職の少女がやったのではなくて、あの男の膝に座っただけで治るとか、何て奇跡なの?


「お兄ちゃんの膝は神に祝福されていて、どんな病や呪いでも治せるの」


この男性、やっぱり只者じゃなかったのね。


「じゃあ、話を聞こうか」


彼らの家に入って、帽子を外した女性二人は魔族だったわ。

それも見たことのない角の形状ね。


「私の角が気になるかしら?」

「いえ、王国内の魔族でもそんな角の形の人は見ないですから」

「とある異世界で魔王特有の形なのよ」


魔王?!


さっき感じた『圧』はそれだったのね。


王女に魔王に神に祝福された男性?

いったいどういうパーティなの?!


でも、それなら私たちの国を、妹たちを救ってくれるかもしれない。

そのためなら、私の全てを投げ出してもいいわ!

お読みいただきありがとうございます。

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次回も明日、3月18日18時更新です。

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