第125話 椅子は夢に取り残される
エメル姉さまの性癖が…
-主人公ケイト視点-
おかしい。
夢から出られないぞ?
これってエメル姉さまの夢だったよな?
急に牛人間が普通の牛になったから俺の夢なのか?
エメル姉さまはいないのかな?
「エメル姉さま!エメル姉さま!」
駄目だ、反応が無い。
夢の中に取り残されることとかあるんだな。
どうしたものか…。
「モーウ」
完全に牛になったな。
これって俺の知識が反映してるっぽい。
もしかして、この夢なら俺が操れたりするのかな?
-魔族シェリー視点-
ケイトがエメルの夢の中に取り残されたみたいだわ。
本来のサキュバスはそんな失敗はしないけど、やっぱり元が人間だからそういうことがあるのね。
「私の夢なら、私が連れ戻せるんじゃないの?」
「マリナも助けに行きたいの!」
「エメルの夢だからエメルを連れて行くのは確定よ。でも誰か外に居たほうがいいわよね」
「マリー様。まず先に夢の状態を調べる方法があります。ケイトをこうやってベッドのふちに座らせて、マリナは後ろを支えて」
「こう?」
「それで私がケイトの膝に座るわ。『神託の王座』は寝ていても発動するはず。だからこうやって座ればケイトが夢の中であれこれ考えていることに対する神託が聞けるわ」
私はケイトの膝に座る。
『この夢は誰の夢なのかについては、エメルの夢だがケイトしか居ないため、ケイトが操作できるようになっている』
「やっぱりエメルの夢に入ってるわ!でも、ケイトが夢を操作できるみたい」
「とりあえず無事そうね。それから?」
『牛を人間に戻せるかについては、精神集中すればできる』
「牛?牛って何?」
「え、えっと、その。私が牛と遊んでいる夢を見てたから」
どういう夢なの?
『人間を全員シェリーにすることについては、問題ない』
え?
わ、私?
「牛を全部人間に変えて、それが全部私になるようにしてるそうよ」
「何それ?」
私もわけわかんないわよ。
『たくさんのシェリーにされたいのであれば、自分の記憶により再現が可能』
ちょっ!
夢の中のたくさんの私に何をさせる気なのよ?!
それって本当の私じゃないんだから!
「このスケベケイト!」
私はサキュバスに変身して、ケイトの夢の中に飛び込んだ。
-元魔王ブラッディマリー視点-
「今の何?」
「きっとお兄ちゃんが何かエッチなことを考えて、それでシェリーさんが怒ったの」
「たくさんのシェリーさんになにかさせようってこと?まさか搾乳?」
「エメル、どうして搾乳なの?」
「元が牛だからてっきりそういうことかと思ったのよ」
「とにかく、みんなで行くの!」
そうね。
私もサキュバスに変身して、エメルとマリナを眠らせてから二人の精神を捕まえてケイトが見ている夢に入っていくわ。
-魔族シェリー視点-
そろそろ夢の中にたどり着くわ。
ケイトったら大勢の私にどんなエッチなことをさせているのかしら。
ケイトの事だからおもらしははずせないわよね。
大勢の私に馬乗りにされて、いっきにおもらしされるとか。
それから全員を全裸にして埋もれたりとか。
私にいろんな奉仕をさせたりしてるかもしれないわ。
ああっ、いったい何をしているの?
…ここがケイトの居る夢の中ね。
すごい!100人くらいの私がケイトを取り囲んでる!
今の私はそのうちのひとりになってるのね。
ケイトはいったい何をしているの?
「そうじゃないわよ!もっと素早く!」
「馬鹿っ!違うのよ!こっちよ!」
「そんなことでクリス様を守れるの?!」
「ほらほらっ!動きが甘いわよ!」
え?あれって…大勢の私がケイトを鍛えてる?
まさか、夢の中に取り残されたのを利用して訓練してるってこと?
大勢の私にスケベなことをさせているって考えていたなんて恥ずかしすぎるわ!
ぽんっ!
え?ケイトの目の前の『私』の服が無くなった?!
ケイト!何をしてるの!
「え?どうして脱げるんだ?!」
ケイトもわかってない?
「ケイト…」
「ケイト…」
「ケイト…」
「わっ、やめろ!」
『私』の何人かがケイトを地面に押し倒して馬乗りになった。
しゃあああああああ
しゃあああああああ
しゃあああああああ
「わあああっ!やめろ!シェリー!やめてくれ!」
これって私が想像していたことと同じ?
まさか、エッチなことを考えながら来たせいで、夢が私の考えの影響を受けてる?!
「ケイト!こっちへ来て!早く逃げましょう!」
慌ててケイトに駆け寄る。
とにかく夢から出ればいいわ。
「わああっ!来るなっ!」
え?
「きゃああああっ!」
いつの間にか私が全裸になってる!
服!服出て!
ぽんっ!
って、どうしてこんな色っぽい下着なのよ!
肝心な部分が丸見えよ!
「だめっ!俺は本物のシェリーがいいんだ!俺の勝手な夢でシェリーを穢したくなんかないんだ!」
どきん
ケイト…そんなこと考えてくれてるんだ。
「嬉しいっ!」
ぎゅっ!
抱きついて、押し倒して、そのままキスするの。
「まさか、本物のシェリー?」
「うんっ!」
「助けに来てくれたのか」
「うん。それと、ケイトありがとう!大好き!本物だから、もう何してもいいわよ!」
「え、えっと…」
「何がいい?○○とか、○○○なんてどう?ケイトの○○○○を○○○○してもいいわよ」
「シェリー…」
「偽物はみんな消して二人きりにしたから、ね、しよっ」
「みんないるけど」
え?
「シェリー、さすがに今のは無いわ」
「私の知らない用語ですけど、マリナは知ってるの?」
「エメル姉さまは知らない方がいいと思うの」
いやああああああああっ!
-主人公ケイト視点-
すごく迷惑をかけちゃったな。
あと、自室に閉じこもったシェリーはあとで慰めに行こう。
そもそも今夜はシェリーと一緒に寝る日だからな。
「『従者変身』はなるべく注意して能力を使わないといけないわね」
「スライム椅子でクリス様をひんやりさせたいんだけどな」
「何かあったら内蔵品のメールで教えてくれればいいけど、さっきみたいに連絡できないこともあるから、使う時は事前に誰かに言っておいた方がいいわ」
なるほど。
「それにしても、ケイトがあんなに訓練好きとは思わなかったわ」
「時や空間を超越した所に閉じ込められたら修業すべきっていうイメージがあるものだから」
「お兄ちゃんは漫画やラノベの読みすぎなの」
アニメにもあるけどな。
精神と何との部屋とか。
-元魔王ブラッディマリー視点-
「『まんが』とか『らのべ』って何かしら?」
「マリーさん、小説ってわかります?」
「ええ」
「それの気軽に読めるような文体にしてあるのがラノベで、小説をさし絵だけにしてそれにセリフを付けてあるのが漫画ってのだけど…わかりにくいかな?」
挿絵だけにセリフ?
そういえばこの前召喚した『コミックイエロー』がそんなのだったわ。
「『コミック』の事かしら?」
「知ってるんですか?!そうですよ」
とてもあのエッチな本で知ったとは言えないわね。
「ケイト、漫画とかラノベを召喚できるかしら?」
「エメル様も興味あるんですか?じゃあ、どんなジャンルがいいです?」
「えっと…面白いものがいいわ」
「わかりました。『日用品召喚』!エメル様向けの面白い漫画とラノベ!」
ぽんぽんっ!
魔晶石2個で2冊出るのね。
「ちょっと待ってくださいね。中をチェックしますから」
「あっ、駄目!」
エメルがケイトから本を取り上げたわ。
「私が先に読みたいからいいのよ」
「でも、変な内容だったら…」
「大丈夫。私向けって言ってくれたでしょう?ケイトを信じるから」
「はい」
私も出してもらおうかしら?
「ケイト、私のも頼めるかしら?」
「どういうのにします?」
「そうね。ケイトの世界の歴史が元になっているものがいいわ」
「じゃあ、『日用品召喚』!マリーさんが興味を持ちそうな歴史ものの漫画とラノベ!」
ぽんぽんっ!
「あっ!」
私は猛スピードでケイトの手から本を回収したわ。
「え?マリーさん?」
「すごい!可愛い表紙ね!すぐ読んでくるわ!」
タタタタタッ!
パタン。
危なかったわ。
ケイトたちに見える前に回収できてよかったわ。
『性行為の歴史(マンガ版)』
歴史ってそういう意味じゃないわよ!
って私が興味あるものとして召喚されたのよね。
そ、そりゃあそういうことにも興味あるけど…リアルすぎるのはちょっとひくわ。
こっちの小説は…(パラパラ)…実在の歴史人物を元にした異世界転移の小説ね。
これなら普通に読めそうだわ。
マンガは異次元箱に仕舞って…ちょっとだけ見ようかしら。
ペラ
あっ…えっと…うわあ…あわわ…ううっ…いやああ…どきどきどき…うそぅ…
…
…
ああっ、読み進んでるっ!
マンガって読みやすくて止められないわっ!
-王女エメラルディ視点-
私向けって出して、変なものだと困るのよね。
『変身仮面』
表紙は文字と主人公らしい女性の立ち姿ね。
まあ、この人も王女だわ。
ずっと閉じこもっていてストレスが溜まっているのね。
外に出ても王女だから出られない…だから変装しようと。
それで仮面を付けるのね。
ああっ!高貴な服装でバレてしまいまったわ!
でも、あきらめませんのね。
召使いの服で…ああっ、それでも駄目ですのね。
王女のプロポーションが良すぎるせいなのね。
『それなら、みんなに見られないようにすればいいわ』
そして王女は『全裸』になり、大切な部分だけ隠すため『体に縄を巻き付けて』外に出た…ええっ?!
みんなはとても直視できず、王女は正体を悟られなかった…ってまさか王女がそんなことするとか思わないわよ!
『まあ、なんて解放感かしら。チラチラと見られる度にゾクゾクするわ。でも仮面で顔を隠しているから少しも恥ずかしくありませんの』
十分恥ずかしいわよっ!
『それに、動くたびに縄が体に喰いこんで、気分が高まりますわ!』
そういうものなの?
あっ、話と話の間に『幕間:初心者向けの自縛』ってあるわ。
ちょっと試してみようかしら。
できたわ。意外と何とかなるものね。
でも、特に何も感じないわ。
コンコンコン
「エメル姉さま。いいですか?」
ケイト?!
ああっ!ほどくのが間に合わないわ!
急いで上から服を着るわ。
ギイ
「ケイト、どうしたの?」
「お昼ご飯、持ってきました」
「ありがとう」
ケイトが差し出すお盆に手を伸ばそうとして
ピキッ
「ひゃうっ!」
「エメル姉さま?!」
「な、何でもないわ」
「それならいいけど」
腕を伸ばしたら縄が胸の先に食い込んだわ。
「じゃあ、ここに置いておきますね。あっ」
お盆からみかんが落ちて、とっさに足を踏み出して手を伸ばす。
ぐいっ!ぎゅいんっ!
「あきゃあん!」
「エメル姉さま?!」
「みかんが落ちたので驚いちゃったのよ」
「そ、そうですか。じゃあ、俺はこれで」
…これはすごいわね。
『みょぎりんこ』にならないけど、普通に気持ちいのとも違うわ。
痛いから来る気持ちいかしら?
やりすぎると『みょぎりんこ』になりそうだけど。
あと…この縄だけの姿をケイトに見せたらどうなるのかしら?
ドキドキドキ
ゾクゾクゾク
今夜はこれを付けてケイトに見せるって夢が見られるように、このまま寝ようかしら?
お読みいただきありがとうございます。
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次回も明日、3月17日18時更新です。




