第123話 魔族の少女たちは理想の夢を見る
夢オチではなく、夢が本題。
-主人公ケイト視点-
ん…朝か。
夕べはすごかったな。
あんな体験は初めてだよ。
それと、スライム娘ってぐったりすると人間型になれないくらいとろけてしまうんだな。
もう元に戻っているけど…あっ、シェリーが抱きついてる。
寝顔可愛いな。
写真撮っておこう。
「うーん、ケイト…」
俺の名前?
何の夢を見てるんだろ?
確か『使徒変身』で『サキュバス』になるためにペルナに会いに行ったんだよな。
もうサキュバスになれるのかな?
「『使徒変身』!サキュバスに!」
う、うおおおっ
俺の胸が巨乳にっ!
クリス様の足元にも及ばないけど、マリナくらいあるな。
マリーやシェリーには勝ったみたいだ。うん。
顔の骨格も変わったみたいだけど、怖くて見られない。
それはさておき、どうやって夢の中に行くのかな?
…って考えたら、なんとなくやり方が分かったぞ。
一番やりやすいのは額同士をくっつけて…
夢の中へGo!
-魔族シェリー視点-
「おかーさん!行ってきます!」
「はい、気を付けてね」
一人娘のチェリーが学校に行って、私と夫は冒険者ギルドに出勤する。
子供が生まれてから冒険者家業は引退して、冒険者ギルドの職員に転職したの。
「あなた。行きましょう」
「出かける前にすることがあるだろ?」
「はい」
ちゅっ
「じゃあ行こうか」
「はい」
冒険者ギルドでの私の仕事は主に新人教育。
経験豊富な私たちが色々教えるの。
「…というふうにするのよ」
「「はい!」」
夫は武芸を教えているわ。
「ゴーレムに出会ったら、弱そうな関節めがけて鈍器で攻撃する」
「教官!鈍器が無い場合は?」
「斧の背でもいいぞ。そもそも鈍器として使えるものは持っているべきだ。そして、こうやって…」
そして一日の仕事が終わって、夕食も済んで、子供は寝て。
『おい、展開早いな』
ん?何か聞こえたような?
二人っきりの夜。
「あなた。2人目の子供がほしいの」
「え?あ、うん」
「どうしたの?いつもならもっと積極的なのに」
いつも激しくて私を狂わせてくれる夫。
今日は珍しく奥手なのね。
ふふっ、若い頃を思い出すわ。
あの頃は『みょぎりんこ』のせいでエッチもできなかったけど、今は体質が治って子作りだってできるのよ。
「あ、駄目だから。シェリー、その、これ以上はまずいから」
「まずくないのよ。さあ、一緒に気持ち良くなりましょう」
「夢ってどうやって出るんだろ?え?本人が望まないと出れないことがある?!」
え?
何そのセリフ?
これが夢なのはわかってるわよ。
だから、こうやって好き放題しているのだから。
でも今のって…ま、まさか?!
「本物のケイト?!」
「あ、うん。ごめん」
「どうして私の夢の中にいるのよ!」
「シェリーが寝言で俺の名前を呼んだからどんな夢か気になって、『使徒変身』を使って」
サキュバスになって私の夢に入り込んだのね!
「ケイト!よくも私の夢を勝手に見たわね!」
「ごめんっ!記憶を消してもらってもいいから!」
「その程度では許さないわ!」
がしっ
「え?」
「サキュバスに変身していても夢の中ではケイトの姿なのね。じゃあ、予行演習をさせてもらうわよ!」
「待って、まさか…」
「記憶を消すなんてしないわ。むしろ、絶対に忘れられなくしてあげるから!」
「あーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
-主人公ケイト視点-
はっ?!
ゆ、夢か。
って、これってシェリーの夢だったのか?
俺自身の夢って可能性は?
シェリーは…じっと俺を見つめている。
「ケイトってすごいのね。まさかあんなふうに反撃されるなんて思わなかったわ」
「あ、やっぱりシェリーの夢の中だった?」
「うん」
やっぱりシェリーの夢の中だったかっ!
いや、まあそのつもりではあったんだけど、まさかあんな展開になるなんて。
「シェリー…」
反対側で俺にくっついて寝ていたマリーがドスの効いた声を出す。
「マリー様?!な、何でしょう?」
「『何でしょう?』ですって?今夜は私の日だったのに、どうしてケイトと楽しんでいるわけ?」
「え、えっと。もう朝ですし、その、」
「ごめん。俺の方からシェリーの夢に入っていったから」
「でも、ケイトといいことしたのよね?」
「マリー様、すみません!」
「まだみんな起きてくるまで時間あるから、私に同じ体験をさせなさい!」
「「え?」」
-元魔王ブラッディマリー視点-
シェリーったらずるいわ!
お風呂から連れてきてもらったことは感謝するけど、まさかケイトと『体験』してしまったなんて!
あんな幸せそうな顔をして…もう!
私も夢でいいから体験したいわよ!
「じゃあ、寝るから夢に入ってきてね。『睡眠』」
朝だから自分に魔法を掛けて眠るわ。
私とケイトが家族になった夢。
可愛い子供が居て、同じ職場で働いて、そして夜。
途中経過なんてどうでもいいのよ。
ケイトと『体験』できれば。
「マリー」
「ケイト…初めてだから、優しくしてね」
ああっ、言ってみたかったのよこのセリフ!
「わかったよ」
にょろん
え?
「シェリーとやったのと同じ体験がいいんだよね?」
「ケイト、そのたくさんの触手はいったい?」
「マリー様、私が説明するわ!」
えっ?シェリー?!
どうしてシェリーまで夢の中に?!
「私が夢に入り込んできたケイトを襲おうとしたら、ケイトが姿を変えて抵抗してきたのよ」
「とりあえず動きを止めないとって思ったらこの姿に…」
それって魔族の男性の触手どころじゃないわ。
何十本あるのよ!
っていうか全身触手じゃないの!
「こうしないと、シェリーに反撃されそうだったからね」
「さあケイト。マリー様に同じ体験をさせてあげて」
「あ、ま、待って」
「マリーは俺に触手を付けてほしかったんだよね?」
「こんなにいっぱいじゃないから!」
「じゃあ、何本くらいまで耐えられるか試したらどう?」
「そうよね。私も手伝うわ」
シェリーまで触手だらけに?!
いや、あっ、ちょ、ちょっと、そんな…
いやあーーーーーーーーーーっ!
はっ?!
「夢ね…ってこの場合は助かったのねって言うべきかしら?」
まさか触手で束縛されてからの『くすぐり地獄』なんて。
夢の中で気を失いそうになったわ!
「あっ、起きました?」
「マリー様。その、やりすぎました。ごめんなさい」
「もういいわよ。それより…」
むにょん
「はうっ!マリー様、な、何を?!」
「シェリーがサキュバスになると私くらいに胸が大きくなるのね!ケイトは私より大きいじゃないの!」
むにょんっ!
「あうっ!『変身解除』!」
「『変身解除』!」
「あら、つまらないわね。せっかく夢のお礼をしようと思っていたのに」
「なあマリー。やっぱり夢の中で○○○○をやるのはしばらくやめないか?」
「どうして?」
「その、なんだ…えっと…」
言いにくそうだけどわかるわよ。
「最初は夢じゃないほうがいいって言うんでしょ?」
「うん。嫌かな?もし夢で体験するのがマリーやシェリーの望みだったらいいけど」
「せっかくサキュバスを使徒にしたのだから、色々楽しいことをするのでどうかしら?ほら、さっきの『結婚生活』みたいなの。シェリーはああいうのが理想なのね?」
「あっ、あれはその…」
「じゃあ、今夜はシェリーがケイトと寝る番だけど、私とも寝させて。それで、私の夢に出てきてね…あっ、まだ時間あるわね」
「え?まだ寝るの?」
「シェリーも来てね」
「え?どうして私も?」
-主人公ケイト視点-
マリーの理想の夢ってどんなのだろう?
またサキュバスに変身して、シェリーと一緒にマリーの夢の中へ。
「ケイト、ついに世界を征服したわよ!」
え?マリーが魔王に戻ってる?!
「これで世界は全てマリー様とケイト様のものです」
「シェリーも大儀だったわ。さあ、これからわたしたちの理想の世界を作るのよ!」
マリーの理想の世界…いったいどんな風だろうか?
やっぱり魔王だから暗黒に満ちた世界に…いや、マリーだから大丈夫じゃないかな。
「わーい!お花畑がいっぱい!」
「きゃっきゃっ」
「たのしーな!」
「魔王め!なんて恐ろしいことを!国中の畑を全てお花畑にされては、食料が作れぬではないか!」
恐ろしいの方向性が違う!
「パンが無ければお花を愛でればいいじゃないの」
それでおなかは膨れないから!
「おお!なぜかお花を見ているだけで満腹感が!」
なんで?!
「これはクリスたちの世界を参考にしたのよ。この世界では『食糧難』は無いの。美しいものを愛でれば、食事をしたのと同じ効果が得られる世界になったのよ!」
何それすごい。
「そして人間たちはみんな強制労働よ!」
そういう魔王らしいことはするんだ。
「さあ、私のためにおいしいお菓子を作りなさい!素敵な服を作りなさい!」
魔王らしく欲望全開?!
だけどちょっと可愛らしい?
「こんなお菓子なんか…結構おいしいわね。あっ、なかなか可愛い服ね。合格だわ!」
それで意外とハードル低め?!
「魔王様、最後まで逆らった勇者を捕まえました」
「くっ、殺せ!」
女勇者がどこぞのエルフみたいなこと言ってる!
「ケイト、やりなさい」
俺って処刑係?!
ぼんっ!
ああっ!俺の全身が触手だらけに!
そうすると、やることって…
「きゃははははははっ!こ、ころして!いっそひとおもいに、ころひてっ!ぎゃはははは!」
これはひどい。
魔王にくすぐり殺されるとか、勇者としてこんな恥ずかしいことないよな。
まあ、死ぬ前にやめるけど。
「ケイト、シェリー!次は異世界を侵略するわ!」
「「はい!」」
-魔族シェリー視点-
「マリー様!あんな夢で良かったんですか?!」
「ふああ。いい夢だったわ」
「良かったならいいですけど」
「あのまま魔王を続けていてもさすがにこんな未来はありえないわ。でも、楽しかったわ」
やっぱりマリー様は優しいから魔王には向かない人だったのね。
ケイトに助けてもらって本当に良かったわ。
「今夜も色々夢で楽しみたいわね」
「マリー様。一応私の日なんですけど」
「夕べは一緒だったから、今夜もいいでしょう?」
「わかりました…え?」
布団から起きると、目の前にエメルとマリナの姿が。
「シェリーさん、胸が大きくなってますけど」
「お兄ちゃんはもっと大きいの。もしかしてそういう種族に変身したの?」
「ど、どうして部屋の中に?」
「だって、ドアの外から呼んでもメールで呼びかけても返事が無くって」
「心配したの!」
あっ、メールが来ていたわ!
サキュバスのスキルを使っている間って、外の声が聞こえなくてメールも見られないの?!
「何があったか教えてくれるわよね?」
「教えなかったら、二人の巨乳化写真はみんなで共有することになるの」
それはやめてーっ!
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次回も明日、3月15日18時更新です。




