第122話 元魔王様はスライム娘に変身する
やっとスライム娘が出せる!
-サキュバスの女学生ペルナ視点-
「お姉さま!」
「おねえさま!」
「ペルナ姉様!」
100人の男性を篭絡したレポートを提出したら成績がトップになって、こうやってサキュバス学園じゅうの女生徒からあこがれるようになったわ。
男性は汚らしいけど、女の子は何人寄ってきても可愛いからいいわよね。
ぴろん
マリー『近くまで来たけど、どこで会える?』
マリーさんたちが来てくれたわ!
元魔王がアタシの知り合いとか、みんな驚くかしら?
でも、先生がパニックになるといけないから学園の外で会うべきね。
ペルナ『放課後に学園近くのカフェ『水蜜桃』で』
マリー『わかったわ』
「お姉さま。ぼうっとして、お昼御飯がお口に会いませんの?」
「それでしたら、夜ご飯は一緒に学園の外で食べません?いいお店を知っていますの!」
メールに気を取られたのを勘違いされたみたいね。
「ちょっと考え事しただけだよ。それより今夜は用事が出来たから外出する。それで寮に戻るのは遅くなるかもしれないからな」
「ええっ?」
「急にですの?!」
-ペルナ大好き女生徒ミルク視点-
お姉さまがお出かけされるって。
もう100人の男性を篭絡したから、これ以上はそういうことをやらないと思うけど。
もしかして、そのうちの一人がどうしても会いたいって、復縁を迫っているとか?
「というわけで、ペルナお姉さま親衛隊の私たちは、秘密裏に尾行して、もしお姉さまに害を成す者がいたならば成敗しますわよ!」
「「「はい!」」」
カフェ『水蜜桃』にて
「マリーさん、シェリーさん、お久しぶりです」
「ペルナ、お久しぶりね」
「お久しぶり。学園生活はどう?」
とりあえず相手は男性ではなかったわね。
女性二人とも美人だけど、特に一人は見たことないくらいの超美人だわ。
お姉さまにはあんな知り合いが居るのね。
「…」
「…」
「…」
着いた席が遠くて声が聞こえなくなりましたけど、あちこちの席に仲間を配置しているから、自然に移動できるのよ。
「あら、偶然ね。あなたも来ていたのね?」
「一緒に座りません?」
「悪いわね。そうするわ」
ほら、こうやって無理なく移動できるの。
もちろんペルナお姉さまに気づかれないように変装はしているわよ。
「…」
「…」
「…」
…どうして真後ろの席なのに何も聞こえないの?
まさか話をしていないとか?
待ち合わせまでしてそれは無いわよね。
「じゃあ、付き合ってもらおうか」
え?
「わかったわ。じゃあ、行くわ」
え?え?
席を立って店を出て行くわ!
どこへ行くつもりなの?
私たち4人も急いで店を出て追いかけるわ。
…町の中心から外れていく?
ここって人目が無くて、何だか怪しい雰囲気の所だわ。
まさかお姉さま、ここで誘拐されるとか?
あっ、建物の中に!
どう見ても人が住んでなさそうな古びた家なんだけど。
ここに連れ込まれたってこと?
『あ、やっ、いやん、あああっ』
壁越しにお姉さまの声が!
何かされているわ!
「みんな!助けるわよ」
「「「はい!」」」
どーん!
「お姉さま!助けに来ました!」
ドアを開け放って中に飛び込むと、誰も居ない。
え?お姉さまは?
「『超結界』」
魔法を唱える声がする。
「ドアが開かない?!」
「まさか罠?!」
すると向こう側の扉が開いて出てきたのはさっきのものすごい美女。
「カフェの時から気づいていたから、おびき出させてもらったわ」
くっ!なんてこと!
「『魅了』を全開にして、操ってやるわ!」
「その程度では効かないわ」
「それなら、火炎魔術で!」
「それは『キャンセル』よ」
もう一人の女性が私の魔法を打ち消してしまう。
何、この人たち戦い慣れてる?!
「お姉さまを返して!」
「返すも何も、アタシは捕まってなんかいないぞ」
「お姉さま?!」
いったいどういうことですの?!
「つまり、そちらの方が元大魔王様とその幹部様で、サキュバスの使徒を探しに来たってことですのね」
「そうよ。でも、女王候補のアタシは使徒になれないから、誰か紹介しようと思ったのだけどな。都合よくお前らが居たから頼もうと思ったのよ」
「私はペルナ姉さまの使徒ならなりますけど、いくら元魔王でも知らない方の使徒にはなれません」
「そうね」
「うん」
「えっと、私はいいかな」
「「「ええっ?!」」」
コレット?!
-サキュバス女学生コレット視点-
私はペルナお姉さま一筋だったけど、あの女の人を見て衝撃が駆け抜けたの。
私の仕えるべき人はこの人、元魔王のブラッディマリー様だって。
「私はコレット・マドリードと言います。どうかあなた様の使徒にしてください」
「わかったわ。でもあなたは学生なのよね?使徒になってもいつも近くに居る必要は無いから、卒業してから迎えに来るわ」
「いえ!サキュバス学園は『己の欲望を第一』としています。だから在籍したままでも己の欲望を満たすために活動できます!私にとってブラッディマリー様にお仕えすることこそ、自らが望んだ道ですから」
そして私は学園への連絡をミルクにお願いして、すぐ旅立つことにしたの。
旅立つって言っても、馬車に揺られたり馬やドラゴンに乗るわけじゃないのね。
まさかの転移で一瞬。
さすが元魔王様だわ。
ここがブラッディマリー様のお屋敷なのね。
すごく大きい屋敷だわ。
「使徒であるあなたには、この屋敷でメイドをしてもらうわ」
「はい!」
「それと、私は時々出かけるけど、留守中は『メイド長』の言うことを聞きなさい」
「はい」
「本当の使徒になる儀式は新月に執り行うわ。明日の夜を楽しみにしていなさい」
「はいっ!」
こんな広くて素敵なお屋敷で使徒としてお仕えできるなんて最高だわ!
-元魔王ブラッディマリー視点-
ここはケイトにも内緒の、私の本当の住まい。
この世界に拠点を作って準備している時に買ったお屋敷なのよ。
ケイトがあの借家よりももっと立派な家に住みたいとか、急にあそこを立ち退くことになってもいいように準備していたの。
魔族だけを使徒にしていたけど、いい機会だから使徒を魔族以外にも色々増やすことにするわ。
そうすれば色んな使徒に変身出来て、ケイトと色々楽しめるかもしれないもの。
というわけで、この国随一の奴隷市場に来たわ。
ここでは犯罪奴隷や職業奴隷など号砲など例の取引が行われているわ。
「変わった種族は居ないのね」
「いえ、それでしたらこちらへ。その代わり、お値段は張りますが」
「かまわないわ」
お金には全然困ってないのよ。
「こちらになります」
すごいわね。
まさかケンタウロスとかラミアまでいるとは思わなかったわ。
ラミアになったら、ケイトに蛇の体を巻き付けるのよね。
…これは保留ね。
「この水槽は水生生物かしら?」
「いえ、それはスライム娘です」
スライム娘?
「珍しい亜人で、女の子しかいない種族です。しかも分裂して増えます」
「それで亜人なの?」
亜人って魔物っぽいけど人間に近い種族の事よね。
ちなみに魔族は人間の範疇なんだけど、世界によっては亜人にされるのよね。
「増えるためには人間か亜人の男性が必要になります」
そういう種族なのね。
「それで、どうして水槽の中にいるの?地面に降りられないとか?」
「いえ、すごい人見知りで、気に入った人しか見たくないらしいので」
「それで売り物になるの?」
「ここは国営なので、売れなくてもつぶれたりしませんから」
捨てられないだけマシってことね。
「気に入った人って、どうやってわかるのかしら?」
「においです。近づいて、そこの空気穴に息を吹きかけてください」
「いいのかしら?」
「どうぞどうぞ」
ふーっ
『ひゃうんっ!』
水槽の中から変な声がしたわ!
『で、出ますぅ!』
水槽の蓋が開いて、中からにゅるんとスライムが出てきたわ。
そして私の目の前で人型になって、顔がすうっと浮かぶように出てきた。
面白いわね。
「あたすを買ってもらえるっす?」
「そうね。足元を濡らさないようにできるかしら?」
「濡らすこともぬらさないこともできるっす!拭き掃除から体洗いまで任せてほしいっす」
体洗い…これはいいわね。
「わかったわ。店主、買いますわ」
「ありがとうございます」
「他にも見せてもらうわよ」
「はい。ごゆっくりお選びください」
-主人公ケイト視点-
今日もマリーとシェリーは用事で居ないから、俺とマリナとエメル姉さまだけでダンジョンへ。
何もなくて無事に帰ってこれてるけど、やっぱりマリーたちが居ないと緊張するなあ。
「ケイト」
「あっ、マリー」
「今夜は私と一緒に居てくれるのよね」
「うん」
「汗かいたでしょ?お風呂に入らない?」
「今、エメル姉さまとマリナが入ってるから」
「じゃあ、そのあとで入りましょう」
かぽーん
何だかマリーが意味ありげな笑みを浮かべていたから、きっと何かするつもりってわかるんだけどな。
お風呂で待ちながらドキドキしてる。
「ケイト。お待たせ」
「マリー?え?体が透き通ってない?」
マリーは全裸だけど、体が透き通って水晶みたい、いやスライムみたいにぷよぷよテカテカしてる。
「前に言っていた『使徒変身』で『スライム娘』って種族に変身したの。どうかしら?」
「どうって…可愛らしいっていうのかな?うーん、元々すごく綺麗だからな」
「まあ!それでね、これでケイトの体を洗えるのよ!」
「そうなの?」
「ふふっ、こんなふうに」
石鹸とか使わないの?
え?あ、ああっ、体がマリーに包まれていく!
上半身がマリーの体に包まれてしまった。
「動くわよ」
ぷよぷよぷにぷに
ぷよぷよぷにぷに
ぷよぷよぷにぷに
おうおおう。
これはすごいな。
結構気持ちいい。
しかも『みょぎりんこ』にならない?
「このくらいの洗い方なら『みょぎりんこ』にならないけど、こうすると…」
きゅっ、きゅきゅっ
あっ、待って、そこはっ!
『みょぎりんこ』!
「洗われて気持ちいいっていうのを超えてしまうと『みょぎりんこ』になるのよ」
「まさか研究してきたの?」
「もちろんよ」
「すごいな」
「それでね、ケイト。お願いがあるの」
何だろう?
「私をケイトの使徒にしてほしいの」
「え?!」
マリーを使徒にすれば、その使徒も俺の使徒になる。
そもそもシェリーが色々な種族を使徒にして、その主人であるマリーが変身できるようになっていたみたい。
だから俺もマリーを使徒にすればスライム娘にもなれるらしい
娘?
「男の俺が女性しかいない種族になれるの?」
「なれるわよ。見た目も女性になるけど」
それはどうなのかと思うけど。
「ねえ、お願い。きっとクリスさんに奉仕するのにも役立つわよ」
「どうして?」
「あちらの世界ではこれから暖かくなっていくのよね?それでひんやりしたスライムの椅子とかいいと思わない?」
ああっ!
すごい!それはきっと喜ばれるぞ!
「ふふっ、その顔だと気に入ってもらえたようね」
「マリーさえよければ、お願いします」
「もちろんいいわよ。じゃあ、さっそく儀式をするわね」
「どういう儀式をするの?」
「普通は新月にやるんだけど、新月は過ぎちゃったからとりあえず移動するわよ」
え?移動?
待って、今お風呂だよ。
まだ裸だよ。
しゅいん
異動した先は見覚えのあるお風呂。
ここって『変化の魔道具』を取りに来た世界だ!
「スライム娘になっていても転移はできるんだな」
「能力はそのままで、変化した種族の性質が上乗せされるのよ」
便利だな、それ。
「じゃあ、やるわね。儀式のやり方は、ケイトの指先に傷を付けて、出した血で私の体に紋章を描くの」
「どういう紋章?」
「こうよ」
ふよん
マリーの体の上にうっすらと線が現れる。
「これって?」
「スライム娘は体の色とかを変えられるのよ。紋章の下書きはできないけど、自分自身の体色なら問題ないのよ」
「じゃあ、描くね」
す、すすすっ、すすすっ
「あ、…あう、はう」
ちょっと待って。
どうして気持ちよさそうな声なの?
すすすすっ
「はああぁ、ああんっ、ああ、ああっ」
すすす、すすすっ、すいっ
「はう、ああう、はあんっ!」
「マリー」
「儀式中だから聞きたいことは後で」
仕方ないな。
そして儀式が終わってピクピクぷよぷよしているマリーに聞いてみる。
「これって気持ちいいの?」
「この儀式は快感を伴うし、スライムになると『みょぎりんこ』が無くなるの」
それでか。
「じゃあ、さっそく試して」
「試すって?」
「決まっているわよ。ケイトもスライム娘になるの。それで私を洗って」
「ん、わかった」
とりあえずスライム娘に変身して、マリーの体に覆いかぶさる…ってあれ?
「マリーもスライム娘のままだよね?」
「うん。だから、ほら。これで本当にお互いが気持ち良くなれるわよ」
あっ。
「いっそ子作りもしちゃう?」
「いや、俺も『娘』なんだけど」
「冗談よ。私がリードしてあげるわ」
「え?もしかして女性とした経験があるの?」
「内緒よ。ほら、ほら、えいえいえい」
「あ、待って、うわ」
負けてたまるか!
「マリー!覚悟!」
「ああんっ!」
-魔族シェリー視点-
ぴろん
あれ?マリー様?
今頃はケイトと寝ている時間のはずだよな?
マリー『たすけて』
マリー様?!
まだお風呂ですって?!
どたどたどた
ぎいっ!
「マリー様!ケイト!」
「ああ」
「あうあう」
目の前にぷるぷる震えるスライムが二匹。
声でわかるけど、これってマリー様とケイトだわ。
「どうしてこうなったのよ?」
「や、わ」
「は、う」
わかんないわよ!
ぴろん
マリー『二人ともスライム娘になって、思いっきりしてしまったの』
ケイト『これは駄目。良かったけど、こんなにすごいと思わなかった』
ちょ、ちょっと何よそれ。
私も試したくなるじゃないの。
「あうう」
「はうう」
これは駄目だわ。
試すのはまた今度ね。
二人くらい楽勝で担いで帰れるけど…にゅるにゅるして持ちにくいわ。
ベッドに二人を寝かせてと。
連れ帰ってきたお駄賃に、私も一緒に寝ていいわよね?
あっ、ケイトの体がひんやりして気持ちいいわ…。
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次回も明日、3月14日18時更新です。




