第118話 魔族の少女は自覚する
おもらし枠
-主人公ケイト視点-
朝。
クリス様がまだ寝ているけど、こちらに抱きつくような体勢だ。
キスして起こして…じゃなかった。
乾いた唇を俺の唇で舐めるようにご奉仕して起こしてって言われたから、やろうと思ったけど…、俺の胸のところに顔を埋められたらご奉仕できないです!
「ん、ふあ」
あっ、クリス様が起きそう!
このままだと『どうして言ったとおりにできませんでしたの?!』って怒られる!
俺は体をひねって、クリス様を左腕で受け止めるように少し転がすと、その唇に『ご奉仕接吻』をした。
うん。
これからこれは『ご奉仕接吻』って名前にするから。
キスじゃないってことを忘れないためにね。
ちゅ、ちゅっ
ああ、クリス様の唇って誰のよりもすごく柔らかくて心地よくて、そして甘いです!
にゅ
え?舌が出てきた?
そうか。心地よく目覚めたいんですね。
ちゅぱ、ちゅく、ぺちょ
ご奉仕ご奉仕。
「…んっ。おはようですわ、ケイト。いい朝ですわね」
いい朝になったならご奉仕したかいがありました!
「朝ごはんを食べたら、今日はエメル姉さまと冒険に行くのですわね?」
「はい」
「姉さまを頼みますわ」
「はい!」
-王女エメラルディ視点-
今日はいよいよ異世界で冒険する日ですわ!
コンコンコン
「お待たせしました」
ケイト?
何かいつもと雰囲気が違うわね。
「ケイト、何かありましたの?」
「え?いえ、別に」
「お兄ちゃんどうかしたの?」
「エメル姉さまとマリナは初めて冒険だから、ちょっと俺もドキドキしてるんだよ」
「そうなの?!マリナも!」
どうもそうじゃないみたいに思えるわ。
ケイトにメールで聞きましょう。
ぴろん
エメル『ねえ、クリスと関係が進んだ?もしかして、すごいことされたりして?』
ケイト『どうしてわかるんですか?』
エメル『ケイトのお姉ちゃんだからよ。何があったか教えなさい』
ケイト『実は…』
クリスが自分の唇を舐めさせる奉仕をさせてるの?!
しかもそのやり方って、普通にキスだし、舌を絡めるキスだし。
クリスって、それがキスって気づかない馬鹿なの?
実は主従関係を壊さないようにケイトを弄ぶ策士なの?
それとも欲望に忠実なだけなの?
だいたい、黒魔術に適性があったクリスはケイトの唾液を舐めてもそんなに気持ち良くならないはずなのよ。
それが心地よく感じるのって、完全にケイトに好意があるのよ。
どこでどう間違って、これが恋愛感情じゃないって思っているのよ。
一押ししたら完全な恋人同士になると思うけど、それは私がするべきじゃないのよね。
もう、いっそこれからそんな『横着』がどこまで通じるか見てみたいわね。
-双子の妹マリナ視点-
異世界に着いたの!
マリナはこの前の40日の準備期間の時に色魔法の適性を見てもらったら、どの色にも適性が無かったの。
その場合は『無』の色魔法が使えるって。
椅子であるマリナはマリーさんたちから伝授してもらうのは難しいけど、おにいから簡単に伝授してもらえたの。
優しいキスで。
無色の魔法って10色に該当しない『その他の色魔法』って意味らしくて、
白=生命
黒=死
青=水
赤=火
緑=植物
黄=動物
紫=状態異常
橙=抵抗
金=光
銀=聖
以外の性質全てなの。
だから無色の色魔法って意外とたくさんの魔法があって、重力魔法使えるようになったらマリナの体重も自在なの!
そんなわけないけど。
それでマリナは家具職人だけど、冒険の時は最初に考えていた通り『回復』の担当にしたの。
冒険で回復役をするには『神聖魔術』を使えるようになるのが1番おすすめってマリーさんに言われて、『神様』と神殿で契約することになったの。
契約するのがどの神様になるかは人それぞれらしくて、マリナは『女神メイロン』って女神様と契約したの。
まだ大した回復魔法は使えないけど、これからがんばってお兄ちゃんたちを癒すの!
それに無色魔法には『原状回復』という魔法があって、物理的に元の状態に戻すこともできるから治療の役にも立つの。
でも、服装は神官っぽくなくてブレスとプレートと皮鎧を組み合わせて、腕に付けた小さな楯で身を守るようにしてる。
攻撃は無色魔法でできるから、メインの武器は無し。
異次元箱にショートソード入れてるけど。
エメル様も服装はマリナとそっくり。
だけど、体のあちこちに銃をセットするホルスターが付いていて、色々な銃がすぐに撃てるようになってる。
すごく格好いいの!
-王女エメラルディ視点-
「ケイト、これを使ってみて」
ケイトに渡したのは『防御に特化した銃』の試作品よ。
「どう使うの?」
「これは魔法の銃で、純粋なエネルギー弾が撃てるのよ。威力はその横のダイヤルで決められるけど、威力が強すぎると次弾のチャージに時間がかかるわ。チャージはケイトの魔力ね」
「うん」
「それで相手の攻撃を撃ってそらしたり、撃ち落としたりできるわ」
「主に飛び道具から守るって感じだな」
「そうよ。あとはまた様子を見て改良するわ」
「ありがとうエメル」
「お礼を言うのは使ってからにしてね」
でも、ケイトにお礼を言われると嬉しいわね。
ケイト、マリーさん、シェリーさん、私、マリナの5人で初心者ダンジョンへ。
なるべく私とマリナを鍛えること優先で冒険するのよ。
出たわね、スライム!
「マリナに任せてほしいの!『圧殺』!」
ぐぐぐぐ
重力魔法でスライムがつぶれて…意外と耐えているわね。
慣れていない色魔法ってこんな敵にも通じないのね。
「私がフォローするわ」
普通のリボルバーを取り出して構える。
普通のと言っても、口径は小さくして反動が少なくしてあるのよ。
ばすっ
ぶしゃっ!
弾がスライムを貫通したら、重力に耐えきれなくなったのかはじけ飛んだわ。
「エメル、マリナ。いいコンビネーションだぞ!」
このままどんどん進みたいわね。
しばらく進むと、ケイトが手で止まれって合図を出してる。
「待ってて」
ビッ
ケイトの魔導銃がこの先の地面を撃ち抜いて罠を作動させ、飛んできた矢を楯で受け止めたわ。
「これって罠解除にもってこいだな」
「それは良かったわ」
「でも、できればこれで矢を撃ち落とすくらいになりたいな」
「練習あるのみよね」
「そうだな」
ケイトならきっとすぐにできると思うわ。
-魔族シェリー視点-
ゴブリンの部隊が来たわ。
「マリナは『減速』で前衛の動きを鈍くさせて!エメルは後ろの魔術師を先に狙って!」
二人とも私の指示通りいい動きができるわね。
この調子ならすぐ上のレベルのダンジョンに行けるわ。
まあ、ここの『リポップするゴブリン』は生物じゃなくてダンジョンモンスターだから知能が低いのだけど。
ビッ
ビッ
それよりあの銃すごいわね。
ケイトの魔力のせいかもしれないけど、結構な威力で連射できるみたい。
それに、ケイトの射撃の腕がどんどん上がっているのよ。
ビッ
ほら、近づいてくるゴブリンの剣を弾き飛ばしたわ。
うまいことエメルやマリナのフォローをしているわね。
…たまにはケイトと二人っきりで冒険したいかも。
前みたいに罠ではぐれて、ケイトとふたりっきりになれたらいいのにな。
ぴろん
マリー『考え事?』
シェリー『いえ』
マリー『ケイトをぼうっとみてるから、エッチなこと考えているかと思った』
「そんなこと考えてません!あっ!」
つい声に出しちゃったわ。
みんなが振り向いて、その隙にゴブリンの剣がマリナに!
すかっ
え?
振り下ろしたゴブリンの剣が無くなった?
「ケイト、さっきのゴブリンの剣が消えたのってケイトがやったのよね?」
「シェリーは気づいたんだ。これだよ」
ケイトは異次元箱からさっきの剣を取り出す
「まさか『武具召喚』で異次元箱の中に相手の武器を召喚したの?」
「そう。相手が強い意志で武器を持っているなら抵抗されるかもしれないけど、ダンジョンモンスターなら簡単にできるみたいだね」
「それって強すぎない?」
「そうかな?異世界チートよりはマシじゃないかな?」
「だって、それ『円形召喚』もできるのよね」
「あ、気づいた?」
気づくわよ。
その気になれば、相手の体の一部だって引っこ抜けるんだから。
「あんまり強い相手には効かないと思うけど」
「それでも十分よ」
だぶん大きなゴーレムとかも一撃。
ううん、もしかするとゴミ箱に放り込んでおしまい。
私のゴミ箱はそんなに大きな物は捨てられないけど。
ゴゴゴゴ
とか言ってたら、本当にゴーレムが出てきたわ。
しかもこのダンジョンでは滅多に出ないミスリルゴーレムじゃないの。
魔法は効かないし硬いし速いし、全身が刃になっていて、そのくせある程度ダメージを受けると消えてしまうのよ。
一撃で倒せば素材がゲットできるけど、腕とかを切り落としてもその腕ごと消えるのよね。
面倒なだけの最悪なものに出会ったわ。
「シェリー、あれって一撃で倒さないといけない奴だよな?」
「ええ。でも強すぎる攻撃や急所を狙う攻撃も察知して消滅するのよ」
「でもゴーレムだよね」
「そうよ」
何をするつもりかしら?
「『特級円形召喚』!ミスリルゴーレムの核!」
ぽんっ!
がしゃあっ!
ケイトの手の中にゴーレムの核が召喚されて、ゴーレムが力無く崩れ落ちたわ!
「やっぱり核って大抵丸いんだよな」
もう即死のチートスキル並だわ。
「じゃあこれを半分仕舞って、半分は『通信売買』で魔晶石にしよう」
この調子で魔晶石を稼いでいたら、実戦で使う分くらい余裕で稼げるわね。
バシュッ!バシュッ!
エメルの銃の命中率も上がってきたし、同じ敵は急所を撃てるようになったわね。
「回復するの!」
マリナもいいタイミングで回復してるわ。
私やマリー様が居なくてもいいくらいになってきたわね。
それでも罠とかは全然わからないから二人でダンジョン潜るなんて無理だろうけど。
「エメル、このくらいで帰ろうか?」
「そうね。その銃の調整をしたいから、食事が済んだら私の所に来て」
ふうん、銃の調整ね。
二人っきりで銃の調整だけで済むかしら?
きっとお互いの『体の調整』とかするんだわ。
「それで、どうして私の部屋にケイトが居るの?」
「エメルが銃の調整を始めたらすごく集中してるから、邪魔しないように抜け出してきた」
「だからって、どうして私の部屋に来るの?マリー様は?マリナは?」
「え?もしかして4人でエッチしたかったの?」
「違うわよ!って、ケイトは私の所にエッチしに来たの?あいにくそんな気分じゃないのよ」
嘘だけど。
本当はすごく嬉しいけど。
でも何かドキッとすることを言ってほしいの。
『俺はシェリーが良かったんだ』みたいに。
「どこに行こうか決められなくて、サイコロ振ったらシェリーになったから」
コロン
そう言ってテーブルにサイコロを置くケイト。
私の名前が書いてあるわね。
何よ、そんな選び方なの?
最低だわ。
最低…え?
「ちょっと!このサイコロ、全部私の名前じゃないの!」
「あれー?おかしいなー?」
「なに回りくどいことしてるのよ!」
「だって、そうやって怒ってるシェリーが見たくて」
「何よそれ!」
「そういうところがすごく可愛いから」
「な、何よ馬鹿っ!じゃあ怒ってない私はどうなのよ?!」
「もちろん普段も可愛いよ。でも、これからは素直に『シェリーがあまりに魅力的だから選んだ』って言うね」
ぼんっ!
あ、だめ。
鏡を見なくてもわかるくらい顔が真っ赤になったわ。
そっか、私って二人っきりでも憎まれ口叩いてないと照れてしまって駄目なのね。
ケイトのほうが私の事わかってるってどうなのよ?!
「ケイトの馬鹿。もう好きにして」
「そう?じゃあその角を」
え?
「待って、お風呂がまだだから」
「恋人同士だからそのくらいいいよね?」
確かに恋人になったけどっ!
ぺろ
「あう」
「音は聞こえないようにしてるからもっと大きな声を出してもいいよ」
「馬鹿!変態!」
「そういう声って意味じゃなかったけど、それはそれでいいかも」
ぺろぺろ
「馬鹿っ!ひゃん!ケイトなんか!あうっ!ひゃう!ああんっ!」
「ケイトなんか何?」
「どうしてやめるのよっ!あうんっ!急にずるいっ!ひゃん、ひどいっ!もう、何でこんな人好きになっちゃったのよっ!ああんっ」
あっ
だめっ
それ以上されると、また漏れちゃう。
でも…
ぐいっ
ケイトをベッドに押し倒して足でしっかり胴に抱きつく。
「それ以上すると、ケイトに粗相するわよ」
「えっ?」
また角を舐めようとしていたケイトが止まる。
やめるの?
やめちゃうの?
「じゃあ、もっと舐めるね」
「いやあっ!どうなっても知らないからっ!」
やっぱりケイトは私の事わかってくれてる。
ごめんね、こんな変態な私で。
しゃああああああ…
「ああっ!ケイトの馬鹿っ!だいっきらいっ!」
ちゅうっ
ぎゅうっ
大嫌いって言いながらキスして、ケイトをもっと汚すように抱きついて股を擦り付けて。
どうしよう。
こんな性癖になって、もうお嫁に行けないわ。
ケイトがもらってくれなかったら許さないから!
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