第11話 ドS王女様の家族構成
やっと家族の説明が入れられます。
令和元年12月9日。分かりにくいところの修正をしました。
令和2年1月4日
初期でクリステラの言い回しが現在と違っているため修正しました。
サファイラのソファを無くしました。
-主人公ケイト視点-
そろそろ寝る時間らしい。
時計は無い。
ただ、自然と暗くなる。
そう言えば、ここは部屋みたいなのに、上に電灯とか無いな。
上を見ても、天井しか見えない。
それが自然に暗くなっていくことで、時間を現すみたいだ。
「寝るときはどうされるんですか?」
「『寝袋よ!』」
クリス様が寝袋を呼び出した。
これは召喚ではなく、異次元の入れ物に入っているんだな。
クリス様は、それを壁にぺたりとくっつけた。
というか、この壁、物がくっつくの?
「この寝袋は王であるお父様が『特級日用品召喚』で召喚した特別なもので、わたくしでも出すことはできませんの」
なるほど、だから半分透き通ったような壁にも設置できるのか。
クリス様は寝袋のチャックを縦に開け、中に入ってチャックを締める。
まるでミノムシだ。
「これで眠りますのよ」
「なるほど。ところで、俺はどうしたらいいでしょうか?」
「そうね…畳の上で眠れるかしら?」
寒くも暑くもないので寝れないことは無いけど、俺の体格だと半畳に丸まって眠るのはちょっときついな。
いや、出来ないこともない。
そもそも貧乏暮らしで、せんべい布団一枚、枕無しなんて当たり前の日々だったからな。
「じゃあ、寝ます。クリス様、おやすみなさい」
「おやすみ、ケイト」
今回は何のトラブルも無かったな。
それにしてもすごい濃密な1日、いや半日だったな。
クリス様に召喚されて、いろいろなことが有って…。
父さん、母さん、妹たちはどうしてるかな?
俺がここに来てしまって、探してるだろうか?
無事な事だけでも知らせられるといいな。
やっぱり魔法を覚えて、手紙を送るとかできないかな。
…眠い。
おやすみ。
こけこっこー!
「は?ニワトリの声?」
俺が目を覚ますと、部屋は明るくなっていた。
どうやら朝が来たらしい。
ニワトリの声はどこからしたか謎だけど。
「すー、すー」
可愛い寝息が聞こえる。
クリス様はまだ眠っていられる様だ。
起こしてとか言われてないけど、どうしよう?
「クリス、起きなさーい!」
突然部屋に女の子の声が響く。
クリス様の声と似ているが、もう少し年上の感じ。
もしかして、クリス様の姉様?
「すーすー」
クリス様は起きる様子が無い。
「まだ起きないみたいね。じゃあ」
空中に黒い穴が開いて、手が出てきた。
手?!
その手はクリス様の寝袋のチャックを掴むと、黒い穴ごと下方向に移動した。
「きゃん!」
寝袋が開いて、中からクリス様が降ってくる。
危ない!
-王女クリステラ視点-
うにゃ?
なんか、呼ばれたようなきがするー。
するー。
スルーするーですわー。
「まだ起きないみたいね。じゃあ」
ん?
待って、いつものパターンだと…
わたくしはチャックが開いた寝袋から転げ落ちましたの。
「きゃん!」
そしていつものように椅子に激突する。
ああ、また椅子を悪くしてしまいますわ。
え?何だかこの椅子、柔らかいですわ。
その時、わたくしの『ぐんじょ色の脳細胞』が目覚めましたの。
「今の私の椅子はケイトだわ!」
「はい、そうです」
わたくしの胸がしゃべりましたわ。
違うわ。
わたくしが、胸でケイトを押しつぶしていますの。
これは事故かしら?故意かしら?
事故ならお仕置きね。
故意なら死刑ね。
「すみません、クリス様が急に倒れてきたから、うまく受け止められなくって」
故意による事故ですわね。
どうしましょうかしら?
「というか、いつまでわたくしの胸に顔をうずめているつもりですの?」
「は、はいっ!申し訳ありません!」
ケイトは素早く動いて、いつもの『椅子の体勢』になりましたの。
わたくしはそこに座らずに、あえて片足を背中にどんっと置きましたわ。
「うっ!」
ふふ、いい声ですわ。
「うまく受け止められなかったから、お仕置きですわよ」
そしてわたくしは教科書を召喚して、ふりかぶりましたの。
「クリス!起きたの?!返事をしないと、今週の魔晶石半分にするわよ!」
「あっ?!起きてます!おはようございます、お母様!」
-主人公ケイト視点-
クリス様を受け止めたはいいけど、その大きな胸が俺の顔の前に。
前というか、両側というか、めり込んでいる状態。
ここは天国か。
「というか、いつまでわたくしの胸に顔をうずめているつもりですの?」
「は、はいっ!申し訳ありません!」
しまった地獄だった。
俺は素早く動いて、椅子の体勢を取る。
すると、クリス様は俺に座らず、片足を背中にどんっと置いてきた。
「うっ!」
おもわず声が漏れる。
「うまく受け止められなかったから、お仕置きですわ」
楽しそうにも感じるクリス様の声。
そして、教科書が召喚され、とうとう叩かれると覚悟した時。
先程クリス様を起こしていた声が再びした。
「クリス!起きたの?!返事をしないと、今週の魔晶石半分にするわよ!」
「あっ?!起きていますわ!おはようございます、お母様!」
クリス様のお母様?!声若いな!
「ところで、クリス。お仕置きですって、誰と話してますの?もしかして、誰かいるの?」
「いえ、ここには椅子しかおりませんわ」
「椅子相手にお仕置きしているって、変わった子ね。確かに…人員は『1』のままですわね」
え、何それ?
この半畳に居る人数が分かるの?
そういえば、話が出来たり手が入ってきたりしていたらから、クリス様の両親にはこの半畳の侵入権とかチェック機能があるの?
だとして、俺、人の扱いじゃないんだ…。
いや、もし人扱いだったら、クリス様の両親に怒られるかもしれないよな。
とりあえず、椅子扱いで納得しておこう。
「じゃあ、今週分の魔晶石よ」
再び空中に黒い穴が開いて、そこから小さな袋を握った手が出てくる。
クリス様はそれを大事そうに受け取った。
「あと、次の週末のテストがんばりなさいよ。お小遣い減っちゃうわよ」
「おほほほほ。お母様、週末には驚くものを見ることになりますわ」
「もしかして、まったく勉強してないとか言わないわよね?」
「違います!すごく良い成績を取りますの!」
「あらあら、そうなの。がんばってねー」
何だか信じてないような口ぶりだな。
まあ、今までが不出来だったのだろうから、仕方ないよな。
「まったく、お母様ったら」
「今のお母様なのか。ここに自由に入ったり、会話したりできるんだな」
「そうでもないわよ。わたくしが起きている時は拒否できますのよ」
なるほど、そういう仕組みなのか。
この半畳はクリス様が支配している空間。
ご両親はおそらくマスターキー的な能力を持っているのだけど、クリス様が目覚めている時は自由には出来ないと。
そういえば、俺はこの半畳ではクリス様に逆らえないんだよな。
逆らう気もないけど。
-王女クリステラ視点-
待望の魔晶石下賜ですわ!
今週もいつもと同じ数ですわね。
「いくつ魔晶石を頂いているんですか?」
「1週間分で100個よ。1日あたり10個ですわね」
「え?」
ケイトが首をかしげていますわね。
この角度ではいつもかしげているように見えますけど、すごく不思議がっている気配がしますの。
「何かおかしいですの?」
「1日あたり10個で、1週間で70個じゃないんですか?」
わかったわ。
ケイトは九九でできない計算が苦手なのね。
「ふふふ。ケイト。いいこと?10のかけ算は『0』を後ろに書くだけでいいのよ」
「それなら、7かける10で、70ですよね?」
「いえ、10かける10ですのよ」
どこから7が出てきたのかしら?
「クリス様、もしかして、一週間って10日あります?」
え?何その質問?
「当然ですわよ。日、月、火、水、木、金、土、天、海、冥曜日ですわ」
「冥まではいるのかー」
驚いていますわ。もしかして
「ケイトのいた世界は7日でしたの?」
「はい。日から土曜日までは同じで、それだけです」
「1ヶ月は何日?」
「28から31日です。12ヶ月で1年です。1年は365日か366日で」
月と年は同じですわね。
「1日10個で過ごせるんですか?」
「3食に1つずつ。あとは日用品とかに使って、余ったら貯めておくのよ」
あら?ケイトの顔色が悪いわ。
「俺が来たから、食事の分が…俺は1日1食でもいいです。前の世界でもそうでしたから」
前の世界では1日1食が普通なのかしら?
でも、この世界に来たからにはこの世界のルールに従ってもらうわ!
「許しませんわ。ケイトも3食きちんと食べますのよ。ケイトが食べないのに、わたくしだけ食べるとか、さびし…退屈ですの!」
「でも…」
「わたくしは余った魔晶石を貯めてありますの。それを使うから問題ありませんの!それより!」
わたくしはケイトに顔を近づけて言い放ちます。
「わたくしにしっかり勉強を教えて、冥曜日のテストでいい点を取らせなさい!」
「わかりました!」
初めて良い表情になりましたわね。
ふふ、それでこそ、わたくしの自慢の下僕ですのよ。
-主人公ケイト視点-
クリス様が真剣な表情で俺に顔を近づけてくる。
クリス様、顔が近いです!胸が近いです!というか、少し当たってます!
「わたくしにしっかり勉強を教えて、冥曜日のテストでいい点を取らせなさい!」
そうだ。テストでいい点数を取れれば、魔晶石がたくさんもらえるんだ。
それなら、がんばって教えよう。
クリス様は独学だったから、きっと伸び代はすごくあるはずだ。
俺は意を決して頷く。
「わかりました!」
俺の返事にクリス様は微笑んでくださっている。
それにしても、1週間が10日間で、しかも惑星から降格した冥王星まで曜日になっているなんて。
セーラープル○トが草葉の陰で喜んでいるに違いない(死んでいません)。
待てよ、今日は何曜日だ?
「クリス様、今日は何曜日ですか?」
「今日は火曜日ですわよ。いつも火曜日に1週間分の魔晶石をいただきますの」
俺が居た世界でも、昨日は月曜日だった。
今日が火曜日ってことは同じなのかな?
いやいやいや。
それでは海曜日とか冥曜日とかどうなるんだよ。
たぶん、偶然だな。
「1週間分の魔晶石なのに、どうして火曜日にもらうんです?」
「それはわたくしが初めて領地を持ったのが火曜日だからですわ」
なるほど。
それと、もう一つ聞きたいことがあった。
「王様はどうやって稼がれているんですか?税金とか?」
「税金って何かしら?」
え?
税金無いの?
そもそも、領民は居ないもんな。
「王であるお父様は、国外に仕事に出ておりますの」
「毎日?」
週10日なら、休みとかどうなってるんだろ?
「ええ、あと3ヶ月は帰りませんわ」
毎日ってそういう意味じゃないよ。
それ、出稼ぎか単身赴任じゃないか。
「あと、お母様はこの大陸の管理をしていますの」
「大家さん?!」
なんと、家主か。
「この大陸の持ち主は別に居て、依頼されて管理をしているのですわ」
持ち主とか言われると、ますます普通のアパートっぽいよな。
いったいこの世界って、どういう構成になっているんだ?
もしかすると、社会の教科書に書いてあるかも。
「クリス様のお姉さまたちは?」
「1番上の姉はエメラルディ。エメル姉さまと呼んでいますの。18歳で、わたくしと同じように教科書で勉強をしてはいますけど、普段はもっぱら物作りをしていますわね」
「物作り?」
「細工物とかを作って『通信売買』の魔法で売って魔晶石をもらっていますわ」
どこかで聞いたような魔法だな。
「魔法で売って魔晶石をもらうって、魔晶石が増えるの?」
「『通信売買』の魔法を使うのに魔晶石を1つ使いますの。そして良い物であれば、たくさんの魔晶石になりますわ」
おお、何だかそれはいいな。
「それって、不用品とかも変換できるんじゃないの?」
「よっぽど価値がないと無理ですわね」
そんなに甘くないのか。
-王女クリステラ視点-
「それから2番目の姉はサファイラ。サフィ姉さまと呼んでいますの。16歳で勉強が大好きな人ですわ。それに研究家ですの」
サフィ姉さまは変わった人で、珍しい物にしか興味を持たない。
「ですから召喚呪文では、あえて何も言わずにランダムに物を召喚して、それを研究しているそうですわ」
「失敗して変なものが出たらどうするんですか?」
「むしろ喜びますわね」
「えーっ?!」
ケイトも驚きますわよね。
わたくしでも、サフィ姉さまの考えていることはわかりませんもの。
「またそのうち、紹介しますわ。わたくしの素敵な下僕として」
「はい、よろしくお願いします」
でも、もし姉さまたちがケイトのことを欲しがったらどうしようかしら?
エメル姉さまもサフィ姉さまも、わたくしのものを結構欲しがりますもの。
でも、ちゃぶ台暮らしのエメル姉さまは椅子を使いませんし、研究のために立ったり座ったりしているサフィ姉さまでは、ケイトのような椅子は役に立たないですわね。
万が一欲しいと言われても、ケイトを賭けるわけにはいきませんの。
ケイトはわたくしが初めて失いたくないって思った「もの」なのですから。
お読みいただきありがとうございました!
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次回も明日、11月29日18時更新です。




