第108話 ドS王女様は和装の刀術士となる
いつかさせたい巨大物斬り
-主人公ケイト視点-
クリス様に手合わせをしてほしいと言われた。
マリーとは訓練で戦ったことがあるけど、俺に強力な防御魔法を掛けてくれていた。
今回もマリーにお願いいしようかな。
コンコンコン
「マリー、ちょっといい?」
部屋の中にはシェリーだけが居る。
「マリーは?」
「マリー様は夜の食材を獲りに行ってるわ」
「一人でダンジョンまで?」
「今日はフィールドの方よ」
「一人でも大丈夫だろうけど、万が一ってこともあるからシェリーが付いて行ってくれた方が良かったけど」
「でも、マリー様にケイトたちを頼むって言われたから」
それなら仕方ないかな。
マリーは空間移動もできるし、最悪内蔵品メールで連絡できるだろうからな。
とりあえずシェリーに事情を話してみる。
「私はマリー様みたいな絶対安全な防御魔法は使えないけど、ここの冒険者ギルドには有料の『訓練場』があって、そこなら死ぬようなことがあっても復活できる設備になっているそうよ」
異世界によくある、死なない闘技場みたいなものだな。
「じゃあ、そこに行こうかな。シェリー、付いてきてくれる?」
「もちろんいいわよ。でも、ほら。お駄賃くらいよこしなさいよ」
眼を閉じて唇を突き出すシェリー。
こっそり内蔵品スマホで撮影して、フォルダに保管してと。
ちゅっ
「今夜は泊まっていけるの?」
「向こうで1時間はこっちで1日だから泊まれると思うけど、クリス様次第かな」
「そうよね。クリスさんと一緒に寝るのよね」
「クリス様って広すぎるのが苦手だから、もし泊まることになったら一緒に寝て、クリス様を挟んでもらおうか」
「それって、私、クリスさん、ケイト?」
「マリー、クリス様、俺、シェリーでどう?」
「!」
ぎゅっ、ちゅっ
返事の代わりに抱き着いてきてキスされた。
「マリー様は別の日にちゃんとしてあげてね」
「もちろん」
-王女クリステラ視点-
『着きましたよ』
異次元リュックの外からケイトの声が聞こえたからリュックから出ますわ。
出た時にお店の人や他のお客さんが不思議そうに見て来るけど、気にしませんわよ。
「ここが武具店ですのね」
「はい。今のクリス様なら好きなものを選べると思います。と言っても、あまり高いものは選べませんけど」
「そういうものは稼いでからですわ。まあ!素敵な刀ですわ!」
「それはシャムシールっていう俺の国の刀とは違うものですね」
「これかしら!『日本刀』って書いてありますの!」
「それです」
「すごく種類がありますわ!お店の方!」
「はい、お嬢ちゃん。何をお探しですかな?」
「居合ができる日本刀を探しているのですわ!」
「居合?!それなら…長さ的にはこれかな」
一本の刀を渡されましたわ。
…え?
今、何だか『一振り』って数えろって誰かに言われたような気がしましたの。
「これは一振りでおいくらですの?」
「おお!その単位を知っているとは珍しい!異世界の日本から来られたのかな?」
「違いますわ」
「そうかい。実は刀はそう数えるのが正しいんだが、知っている人は少なくてな。よし、おまけして…でどうだ?」
「ケイト、これでいいかしら?」
「予算的には問題ないですよ。でも、試し振りとかできます?」
「もちろんだとも。そこに専用の部屋があるからな」
姿見が置いてあって試着室みたいですの。
「はっ!」
チン
一瞬で抜けて、一瞬で納刀できましたわ!
「君はあの方の従者かい?どこかのお嬢様みたいだけど、見事な腕前だな」
「そうですか?さすがクリス様です!あっ、俺は従者じゃなくて下僕ですから」
「下僕…。ところで服装はやはり和装か?」
「そうです」
「おお!和装美女の刀使いとか、写真を撮らせてもらってここに飾っておきたいくらいだ」
何だかわたくしの話で盛り上がっているようですわ。
「とても使いやすいから買いますわ」
「毎度あり!和装にするって聞いたけど、ちょっと待ってくれ!」
店の奥に入っっていった店主が何やら箱を持って出てきましたわ。
「これだ!これをぜひ身に着けてくれ!」
薄いピンク色の花びらの模様が美しい着物ですわ。
「これは桜?!」
「おう。って、もしかして下僕のあんたが日本の人かい?」
「はい」
「おお!これは異世界の日本から取り寄せた反物を使った逸品でな、刀を使う動きでも布が邪魔をせず、物理的な防御加工と魔法による防御加工もされているんだ」
「着てみてもよろしいかしら?」
「もちろん!」
着物は初めてなのに、どうしてこんなにうまく着られるのかしら?
まるで誰かに指導されているみたいですわ。
「どうかしら?」
「「「「「「!!」」」」」」
試着室から出ると、店中の人が一斉にわたくしを見ましたわ。
「なんだあれ…」
「どこのお嬢様だ?」
「ヤマトナデシコってああいうのを言うらしいぞ」
「すごいな。誰のパーティメンバーだよ」
「さっき、刀の試し振りをしていたけど、すごい腕前だったぞ」
「私、同性だけど見とれちゃうわ」
「本当ね!」
大勢の人に見られるのって慣れていないから恥ずかしいですわ。
「クリス様!最高です!」
「本当に最高だ!どうだ、これが欲しくはないか?」
「ほしいですけど、おいくらですの?」
…!
「それは高すぎますわ」
「その写真を撮って飾らせてくれて、着物と刀にうちの店のロゴを入れていいなら、うんと安くしよう」
「ロゴって何ですの?」
「うちの店の印をこうやって付けてだな」
「そんなところに付けたら着物の綺麗な模様が台なしですわ!」
「そ、そうかな?」
-主人公ケイト視点-
クリス様正直すぎです。
でも、ここはフォローをしておかないと。
「この店の商品ってわかればいいんだよね?鑑定とかされたときにわからないの?」
「鑑定スキルでは一般的な名称しか出ないからな。この店の職人が作った銘品なら表示されることもあるけど」
「じゃあ、表示できるようにしてみるよ」
「え?」
俺は買う予定の刀を手に取ると、魔法を唱える。
「『特級特性召喚』!この刀は『メルカル武具店で買ったもの』という特性を付けて!」
できたかな?
「ちょっと見せてくれ」
俺から刀を取ってじっと見る店主。
口に出さなくても見るだけで鑑定できるスキルがあるんだな。
「すごいぞ!刀の特性を示す所に『メルカル武具店で買ったもの』と出てるぞ!」
「これを着物のほうにも付ければ、この着物が気になった人が鑑定したときに見えませんか?」
「いや、この着物はその特性とかを見破られないための隠匿魔法も掛けてあるからな」
「でも、最低限の情報は出るんじゃないです?」
「いや、まったく見えないようにしてあるぞ」
そうか。
…そういえば無色の色魔法でいいものがあったな。
「シェリー、『偽装』の魔法って好きに情報変えられるかな?」
「『偽装』は鑑定されたときに違う情報を見せるものだけど、自在に変えるにはかなり熟達しないと駄目だわ」
「シェリーなら、この着物に『偽装』をかけて、見た人に『メルカル武具店で買ったもの』って表示するようにできるんじゃない?」
「そんなことできるのか?!」
「やってもいいなら試してみるわよ」
「ぜひやってくれ!」
「『偽装』!」
結果、魔法はうまくいき、俺たちはその着物を格安で手に入れることができた。
ただ、そのせいでクリス様の魅力度がさらに300%アップしてしまったが。
「今度は冒険者ギルドですわ!」
リュックに入っていくクリス様。
「おい、普段はそこに入ってるのか?」
「外の移動の時だけで、ダンジョンとか屋内は外に出てますよ」
「それならいいが」
そりゃあ、ずっとリュックの中なら広告役になれないもんね。
-王女クリステラ視点-
冒険者ギルドに付きましたわ!
「もう登録もしてしまいましょう」
初心者はFランクだそうですの。
目指せAランクですわ!
「練習場を貸してください」
「はい。1時間で…になります」
さあ、やりますわよ!
「クリス様、痛みを無くすモードもあるようですから、最初はそれにしませんか?」
「舞闘会では痛みも感じるから問題ありませんわ!」
「じゃあ、行きますよ」
いよいよケイトとの試合ですわ!
胸が踊りますの!
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次回も明日、2月29日18時更新です。




