愛している。
皆様こんばんは、こうじです。
異世界に転生して王子やってます。
気安くこうじ様って呼んでね!
王子のこうじって、名前付けた奴は絶対に語呂で付けたと思う今日この頃ですが、兼ねてより待ちわびてた婚約者との顔合わせの日。
前世で全くモテなかったし、今世も顔も頭も体型も悪いから王子の特権で恋人が出来るとか正直に言って最高だと思う。
ま、会って早々に言われた言葉がこれですけどね。
「とても醜いわね。尊き血が流れているとは思えないわ。」
控えめに言って好みのタイプだ!!
え?何これ美人と高貴さがあわさると最強かよ?最強だなおいおいおいどうすんだよ一目惚れしたぞ
アニメや漫画でしか恋した事無かったけれども、この胸の高鳴りは間違いなく『愛』だ!!
「ねぇ、何とか言ったらどうなの?」
よっしゃ言ってやるぜ!!
「好きだ!!!!!結婚してくれ!!!!!」
「ふぁ!?」
後で聞いた事だが、あまりにも顔面のインパクトが凄くて、不敬罪とか頭から抜け落ちて無礼な事言えば婚約者にはならんだろうと口を滑らせたらしい。
そう言うお茶目な所好きよ?
こうしてなんやかんやで婚約者になった俺たちはなんやかんやで仲良くなった。
一緒に親の金で食事に行ったり、民の血税でドレスをプレゼントしてたりしたらこんな提案をされた。
「ところでこうじ様」
「なんだ?」
「痩せろデブ」
俺は痩せる事になった。
惚れた弱みって奴だな愛おしいぜ。
痩せるって言われても何すれば良いかさっぱりわからんからとりあえず格闘技でも習えば痩せるし護身術にもなって便利だからやってみた結果ですけど…
物の見事にゴリマッチョの完成だ。
ま、デブが痩せてイケメンになるって創作の話でしか無いわな。
という事で俺の嫁(婚約者)に見せるとこにした。どうよこれ?
「あら、豚からゴリラになったのね。」
「嗚呼。」
「あら、否定しないのね?それとも嫌味すらわからないのかしら?」
「そうかもな。」
「学のない男は嫌いよ。」
学がねえ!やるしかねえ!!
と言う訳でこの国の言語しかわかってなかった状態から脱出する事になった。
色々と勉強してると、自分の名前の由来が皇太子だから皇子、そこからこうじになったらしい。
語呂じゃなかったのか…
でも適当な名付けに変わりはない気が…いや、気のせいだうん。
後、身分制度がそろそろ終わるらしい。俺の父ちゃんもとい王様が色々とやらかした所為だってよ。
どうりで放任主義にも程があると思ったよ。
最後の王族、民に差し出す人柱。
そりゃ、学も見目もいらんわな。
まぁ、どうせ一度死んでるんだから
ああでも、もう少し生きていたら、王になれたのかな。
「ねえ、こうじ様。」
「なんだ?」
「何故、逃げないの?」
「…愛しているから。」
王の居ない玉座の前でただ二人が佇んでいた。
「俺が愛しているのはお前だが、お前が好いているのは俺では無いのだろう。」
外が騒がしい。
言わなければ。
「俺には、お前の言う尊き血が流れている。出会った時の俺ならばきっと誰も信じなかったが、今ならば代わりになるだろう。」
だが、言葉にするには時間が足りない。
「お前が愛しているのは王だろう?この世で最も尊く、学があり、見目麗しき人だ。生まれた時から死ぬまで王子であると決められた俺とは違うのだろう。」
せめて、行動で示そう。
「王は逃げた。お前も逃げろ。」
俺が一番愛した人。
「こうじ様。」
「お願いだから早く、逃げてくれ!!」
何で、ここに来たんだよ。
期待、しちゃうだろう?
この期に及んで、まだ愛を望んでるんだ。
早く、早く逃げてくれよ。
「ならせめて、私の名前を呼んで下さい。」
「嫌だ。」
名前を呼べば、きっと恋しくなる。
彼女と一緒に死にたくなる。
だから、呼ばない。
その代わりにそっと彼女を突き飛ばす。
「さよならだ。」
玉座の間の扉が開く。
俺の首を取りに、英雄になるだろう男が駆け抜ける。
彼女に目を向けると、悲痛な顔をしていた。死ぬのは怖くないが、最後の最後に彼女にあんな顔をさせるなんて、参ったな。
男は俺の前まで来ると首に剣先を向けてこう言う。
「最後の言葉を聞いてやる。」
それを聞いて俺はただ笑い、何も言わずに剣を掴み、自分の首に刺した。
最後の会話は、彼女との言葉で充分だ。
血が流れて行く。
男が何か言っている。
彼女は何かを叫んでいる。
聞こえはしないが、俺も少しは、彼女に愛されていたと思い目を閉じた。
シャーロット、愛している。
こうじぃ…