第28話 零助の寝不足
「起立、礼」
SHRが終わり、クラスメートは次の授業の用意をしながらお喋りをする。今日は初めての授業全てが休む日だ。ずっと木の上で寝てれる。昨日頑張ったから神様が俺に恵みをくれたんだ。
「うーわ、お前今日ずっといねぇのか」
「そうだ。ふいー、睡眠不足で眠りたかったんだ。マジで神様感謝」
「さっさと寝ろよ?お前寝不足になると豹変するときがあったし」
「寝みいわ、行ってくる」
玲太とハイタッチして教室から出る。
「行ってらー。あ、部活はどうする気だ?」
「ん?とりあえず寝て決める」
「了解」
教室の扉を閉めて、俺は階段に向かう。今日は紗愛花は来ない。登校途中に「今日は寝不足だから来ないでくれ、SHR終わったらすぐに寝るだろうから」と言っておいた。あー、眠い眠い眠い。足がふらつく。ふらふらしながらも手すりを掴み、頑張って階段を降り、中庭の木に登る。そして瞼を閉じる。眠りにつくのにはそう時間はかからなかった。
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「零助君大丈夫かな…」
朝と、登校途中の零助君は体調がとても悪そうだった。いつも数時間寝ているところを寝なかっただけで体調が悪くなるものなのか。
「大丈夫でしょ。奇跡的に今日は全部寝に行く授業だし」
「華樹ちゃん。確かにそうなんだけどさ」
「何が心配なの?」
「なんか私に勉強教えてることが負担なってるのかなと思ったりするんだ」
「そんなのなってないでしょ。あの面倒くさがりの事だし、単に昨日ちゃんと授業を受けて睡眠取らなかっただけだよ。ほら行くよ」
次の授業は音楽。教室を移動するのでさっさと行かないと。零助君、なにもないといいけど。
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「………!……だ!」
ん、誰の声だ?聞いたことないな。俺は瞼を開け、起き上がる。そして木を降り、声の方向へ向かう。よくよく見たら俺が今日寝てた場所、いつもと違うじゃねぇか。中庭でも、俺がいつも寝てる方向と逆、体育館よりだ。すたすたと声の方へ俺は歩いていく。
「ふあぁぁぁあ」
まだ眠気は収まらない。歩きながら寝そうなぐらいだ。声の聞こえるところは、体育館の裏側だった。そこには体操着で金髪の女子が三人と、制服で、三人に囲まれている女子が1人いた。ねむてぇのにめんどくさいことを見ちゃったなぁ。
「なあ、お前最近ちょっとイキってんな」
「イキってない。ただ私は本当のことを言っただけ」
「空気読むってことをしらねぇのかぁ?!」
「ねぇ、日和ちゃん。あれ」
そう言って囲まれている女子に色々怒鳴っていた女子に俺の存在を教える。あーああ。見つかっちゃった。無害アピールで手を振っておこう。よく見ると女子三人、ネイルにピアス、そして化粧までしてる。ヤンキーっぽいな。ヤンキーだったらあの金髪は染髪か。
「なんだてめぇ。先生にでもチクるのか?」
「いやぁ、僕はいじめっていけないって思うなぁ」
!?口が勝手に!
「いじめじゃねぇよ教えてやってんだよ。空気を読めないお馬鹿さんにな」
「空気が読めないなんて、良いことじゃないか。色んな意見を周りに合わせず何でも言い合える。それは空気をよく読むやつよりはいいと思うな」
「ああ!?ごちゃごちゃうるせえな、殺すぞ」
殺す、殺すなんて簡単に使うべきじゃない。何故だか笑えてきた。
「アハハハハハ、ハハハハ、ハハハハハハハハ」
「笑ってんじゃねぇよ!」
「いやぁ、殺すなんて簡単に言うんじゃないなぁって。簡単に殺すとか言うやつは大抵人を殺す勇気なんてないんだから、殺すという言葉が安っぽく見えちゃうよ」
「お前、私がお前を殺せないとでも?」
「やってみろよ」
くいくいと指で挑発する。まあもちろん食いついてくる。ポケットからハサミを取り出し(何で持ち歩いているんだろうと疑問に思った)、俺にはさみを刃を向ける。宣戦布告でもしたいのかな?
「何してんの?」
「何でもない。良いの?殺しちゃうよ?」
「あっそ。どうぞご勝手に」
そうやってまた挑発すると、「チッ、いちいち癇に障るんだよ」と言い、はさみを向けて俺に突進してきた。だが、俺はそれを軽く避ける。こんなのに比べたら林崎の方が絶対手強かった。
「どうした?殺すんじゃないのか?」
そう煽りつつ、ヒラリとはさみを避けていく。
「ちっ、お前ら、はさみ持ってこいつ刺せ」
「え、でもこの女子…」
「先にこっちだよ!二人とも来い」
二人とも、囲まれている女子からマークをはずれ、俺の方へ来る。すかさず俺は女子にウィンク。女子は理解したようでコクンと頷いた。
「やれ!」
そう言って三人ともかかってきた。そして俺はまたウィンク。そうすると女子は走ってどこかへ行った。そして三人のはさみを全部避ける。
「あれあれ?女子はどこかへ行ったぞぉ?」
バッと女子達は後ろを振り返る。すると、何故か怒りをあらわにして、
「お前逃がしたな!!」
と合ってるけど合ってないことを言われて少し黙る。少しして俺は口を開き、
「さっさと殺すんじゃなかったのか?」
と煽る。また女子はキレ始め、俺に突進してくる。女子もいなくなったし、反撃しますか。
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