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第25話 事情聴取と発明品

「はぁぁぁあ。ねみぃ」

「おいおい、お前の大好きな彼女に勉強教えるのにそれで良いのか?」

「だけどよぉ、いっつもとってる睡眠がなくなるんだぜ?」

「そりゃ眠くなるのもわかるけどさ、勉強してる途中に寝るなよ?」

「わかってるよ。ふああああ」


そう言いながら、大きな欠伸をする。どれだけ俺の体は睡眠を欲しがってんだよ。理由はわかってるけど。


「零助君、大丈夫?顔が眠そうだよ?」

「うおっ、ほんとだ。歩きながら寝るんじゃねぇだろうなぁ」

「寝てたら紗愛花起こしてくれよ?」

「わかってる。それじゃ帰ろっか」

「私を置いていくな」


華樹さんが後ろから紗愛花の頭をノートで叩く。


「ひぁっ」

「これ、机の上に置きっぱだったよ」

「あっ、ありがとう華樹ちゃん」

「優しいねぇ」

「うるさい、さっさと帰るよ」

「へーい」


俺たち四人は階段を降り、各々靴を履き替えて、帰路に着く。


「へぇ、そんなことがあったんだ」

「そうなんだよ。それで何故か俺が注目浴びてもう大変なことになってるんだ」

「そうね、それはお気の毒だわ」

「え?」

「可哀想ねって」

「え?なんかもっとこう、いっつもみたいに罵倒とか無いの?」

「え、ドMじゃんキモッ」

「ああ、これだよ。これが欲しかったんだ」

「なにしてんだ玲太」

「せっかく人が優しくしてあげたのに酷いやつだよ」


やれやれと華樹さんはジェスチャーをする。


「いやさ、いっつも罵倒しかしてない人から優しくされてもねぇ」

「罵倒だけじゃないから。あんたには99.9%ムチで0.1%はアメにしてるから」

「ほぼ100%ムチじゃん!」

「そうだけど何か?」

「しかも開き直ったよ!」

「そういえば華樹ちゃん、テストの勉強はかどってる?」

「あー、まあ前と同じぐらいはとれると思うよ。私も紗愛花みたいに頭の良いやつに教えてもらえたらなぁ」


すかさず玲太が華樹さんの前に出て、自分を指さす。しかし、華樹さん無言のスルー。玲太に会心の一撃だ!


「大丈夫か?玲太」

「あ、ああ。精神的に大ダメージを食らったぐらいだ」

「…大丈夫そうだな」

「おっと俺はこっちだから」


そう言って玲太は交差点を左に曲がる。


「じゃあなぁ玲太、今度は腹壊すようなもの食うなよ?」

「わかってるって」

「私もこっちだから」


華樹さんはそう言って右を指さし、そっちに方向を変え歩き出す。


「じゃあね華樹ちゃん。テスト勉強頑張ってねー」

「ちゃんとわからないとこ聞くんだよー」

「わかってるよー」

「まるでお母さんだな」

「そう?」

「やってることがお母さんっぽい」

「華樹ちゃん優しいからね」


笑顔でそう言う紗愛花の目には悲しさがあるように思えた。しかし、どうすればいいかわからないし、そもそも勘違いかもしれないということになり、聞かなかった。


「2度目だが、今日は勉強を教えている途中に寝てしまうかもしれないから起こしてくれよな」

「わかってます。今日は科学と世界史を教えてほしいな」

「了解」


そんな他愛もない話をしていると家に着いた。それと同時にポツポツと雨が降ってきた。


「雨か、洗濯物干しとこうと思ったんだけどな」

「天気予報だと夜には止むらしいよ」

「なら大丈夫だな。けど濡れたら嫌だしさっさと入ろう」


家の扉の鍵を開け、扉を開く。俺と紗愛花二人とも入る。


「先に風呂に入っとけよ。そっちの方が良いだろ?」

「うん。さっさと入ってくるね」


紗愛花は靴を脱ぎ、ドタドタと自分の着替えの入った箪笥の方に向かう。俺は靴を脱ぎ、2階の自分の部屋に荷物を置きに行く。


「ピンポーン」


誰だろうこんな時間に。荷物を置いた俺は素早く階段を降り、インターホンのカメラを見る。そこには警察官が二人ほどいた。


「だれ?」


風呂に入る用意の整った紗愛花が怖い顔で聞いてくる。何を考えているんだろう。


「警察だよ。事情聴取かもしれないから風呂に入るの止めといてくれ」

「わかった」


その返答を聞いて、俺は玄関の扉を少し開ける。そこには、やはり警察がいた。見知った警官が一人と、全然知らない警官が一人。


「あっ、中川(なかがわ)さん。お久し振りです。今日は事情聴取ですか?」

「正解だよ零助君。最近は特に音沙汰なかったのにまた君は問題を起こしてくれて」

「ははは、面目ないです」

「とりあえずそう言うことだから署まで来てもらえるかい?」

「良いですよ。橋上紗愛花さんもいるんで一緒に行った方が良いですか?」

「そうだね。連れてきてもらえるかい?」

「わかりました。少々待ってもらえますか?」

「ああ、そのくらい待つとも」


俺は一度扉を閉め、紗愛花を呼びに行く。


「紗愛花~、やっぱり事情聴取だったから来てくれ」

「わかった~。制服のままで良いかな?」

「良いだろ」

「はーい。用意できました」


靴を履いただけだけどな。俺は扉を完全に開ける。


「痛っ」

「あっ、すいません不注意でした」

「良いよ良いよ。それじゃあ行こうか」


家の前に止まっていたパトカーの後部座席乗り、シートベルトをする。運転席にもう一人の警察官さん、助手席に中川さん。


「それじゃあ行きます」


そう言ってパトカーは出発する。ある程度走ったところで中川さんが話しかけてきた。


「零助君、橋上さんとは付き合ってるのかい?」

「はい。そうですけど」

「そうか、あんなに問題ばっかり起こしていた零助君に彼女ができたのか。お兄さん嬉しいよ」

「何ですかその反応。あっ、玲太の事情聴取は終わったんですか?」

「玲太君かい?ああ、林崎君の2度目に拘束したときにさせてもらったよ」

「そうですか。今日は何時間ぐらいありますかね」

「そうだね…。早くて30分、遅くて2時間かな。署の方も零助君のことは知っているからそこまで遅くはならないと思うよ。ただ二人だからね。どうなるかわからない」

「そうですか。ありがとうございます」

「そうこう言っているうちに着いたよ」


パトカーは砂川警察署で止まる。


「さあ、降りてくれ」

「はい」


ガチャっと扉を開け、シートベルトを外して外に出る。


「いつもの場所だから、さっさと行こう。テスト前で勉強したいだろうしね」

「ありがとうございます」


警察署に入るのは何回目だろうか。10回以上は入っている。みんな俺を見ると「こんにちわ」と挨拶してくれる。良い人たちばかりだ。そう思い出しながらある部屋に向かう。それは取り調べ室だ。


「ここで話を聞かせてくれ」

「これ、テレビとかで見たことある。カツ丼とか出してたところだ」

「あはは、今じゃカツ丼はでないけど、その代わり玲太君と零助君の発明品を使っている最新式の取り調べ室だよ」


まず俺が入る。そうすると頭に電極をつける。これは俺と玲太がいつもお世話になっているこの警察署に発明し寄贈した嘘発見機だ。その精度は99.99%。脳の少しの電気信号も逃さないように発明してみた。これをつけているとほぼ100%本音を引き出される。


俺と紗愛花、二人とも真実を話した。それがわかるように嘘発見機は全く反応しなかった。紗愛花の時間は俺より少し長かったが、それでも45分で終わった。


「捜査に協力していただき感謝する。送っていくね」

「いや、良いです。歩いて帰ります」

「そうか、それじゃあね零助君」

「はい、ありがとうございました」


そう言って俺達は警察署を出て、帰路に着く。歩いて大体15分ぐらいかな。


「良い人だったね」

「ああ、中川さんは最初に零が出たときからの知り合いだ」

「そんな前から?!」

「ああ、最初は誰も信じなかった俺の二重人格を中川さんだけは信じてくれた。それ以降も俺が零に切り替わって問題を起こしたときは中川さんが出てきてくれた」

「だから玲太君と一緒にあんなの作ったのね」

「それもあるけど、やっぱり取り調べの時間が長いから短縮できないかと玲太と相談したら、嘘発見機を作るということになって作ったんだ」

「ふふふ、そんな簡単に作っちゃうんだもんな。玲太君と零助君だと」


そうして話しながら帰路に着いた。途中に野良猫を見つけて可愛いなぁって話をして10分ぐらい帰るのが遅れたが、無事に帰れた。


「ただいま」

「おかえり、風呂入ってこいよ。俺は勉強の用意してくるから」

「わかった」


家を出る前に用意していた物を持って紗愛花は風呂場に向かう。俺は勉強する机を用意し、今日教える科目の勉強をしていた。するととんでもない眠気に誘われた。必死に抵抗したが寝てない俺が勝てるわけがなく、そのまま机に突っ伏して寝てしまった。

誤字脱字、文章でおかしなところがあればご報告よろしくお願いします

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