第22話 退院の日の朝の出来事
「ん、んーー」
寝起きの伸びをする。腕も指も足も治っている。今日の昼には退院出来そうだ。そうだ。初めて買ったテレビカード使うか。昨日なんとなく目に入ったので買ってみた。カードを入れてボタンをポチッとな。
「えー、それでは一昨日までの出来事を振り返りましょう」
おお、テレビが見れる。いっつも携帯触るぐらいしかできなかったけどテレビが見れるって画期的だね。
「一昨日、東京都砂川町で高校生が逮捕」
…林崎のことだな。
「高校生はナイフで近くにいた同じ学校の生徒を刺そうとした傷害未遂、銃刀法違反で拘束されました。しかし、パトカーに乗っていた警官四人を殺害し逃走。住宅街で同じ生徒を殺害しようとしました。ですがその生徒に倒され、追ってきた警察に逮捕されました。これについてスタジオの皆さん、どう思いますかね」
「そうですね。この生徒は相当な恨みが有ったんでしょうね。でなければこんなこと普通の高校生には出来ませんよ」
「でもすごくないですか?この襲われた生徒。ナイフを持っている人を倒すんですから」
「どうやら柔道等を習っていたみたいです。その高校生に来てもらっています。どうぞ!」
「どうも」
おお、やっぱり玲太だったか。さすがだぜ。
「どうでした?ナイフで襲われた時は」
「あはは、まあ彼は僕を襲いに来たんじゃなくて、一緒にいた女子を襲いに来たんです」
「その女の子は彼女さんなんですか?」
「いえ、僕の親友の彼女なのですがその親友の病院に見舞いに行った帰りに襲われたんです」
「では最初に襲われた時はどういうどういう状況だったんですか?」
「それはですね。彼はその彼女を誘拐したんですよ。それを取り返しに行った親友は彼女を救い出して倒れたんです。その後に出てきた彼に襲われそうになったんですが、どうやらその親友としっちゃかめっちゃかしていたみたいでとても疲れていたんです。だから簡単に倒す事ができました」
「しっちゃかめっちゃか(笑)」
「それで柔道等を習っていたとお聞きしたんですが、具体的には何を習っておられたんですか?」
「そうですね。護身用に柔道、合気道、空手、ボクシングを習っていましたね。まあ、すぐにやめちゃってるんですけど」
「護身用にしては十分過ぎるじゃないですかね」
「いえいえ、彼のような強い人の時の可能性があるかもしれませんし。倒せたことは今でも不思議に思っています」
「なるほど。神山玲太君ありがとうございました」
いやぁ。いいコメントだったよ。さすが玲太だぜ。玲太の話が聞けたんで番組を変えよう。1チャンネル、2チャンネル、3チャンネル、4チャンネル、5チャンネル…。全部玲太の話題じゃねぇか。この時間ニュースしかやってねぇから仕方ないっちゃ、仕方ないけど。あっ、玲太にメールしてやろう。えーっと、『テレビ見たぜ。良いコメントだったな』と。これで良いか。送信っと。そしたら数分後、返信が返ってきた。
『ありがとな。お前使ったんだなテレビカード。いっつも要らねぇ要らねぇって言ったのにな。さっさと学校戻ってこいよな』
『ったりめぇだよ。今日中に退院するから下手すりゃ今日学校行けるからな』
『そうかそうか。楽しみにしてるぜw』
玲太への返信を打っていると、紗愛花からメールが来ていることに気付く。玲太の返信よりこっちの方が優先順位高いのでそっちを見る。最初のメールが来ていたのが4:41だった。
『朝早くにごめん。昨日はごめんね。私、どうかしてた』
『私、昔に戻ってるのかな。零助君に大丈夫って言われてたけど、自分で抑えてたんだけどね』
『怖いよ。感情が高まっておかしな行動をするのが』
『零助君が嫌がることをしないか不安で、不安で仕方ない』
『ねぇ零助君、どうしたら良いの?私、自分で決めれないの』
『零助君、ねぇ、どうしたら良いの?』
『零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君零助君…どうしたら良い?』
最後のメール、ホラー映画で見そうな感じなんだけど。うーん。俺は別に紗愛花がどうしようとそれについていくだけなんだよな。でもそれじゃ多分また心に負荷をかけるだけであって、難しいねぇ。腐るほどの頭脳を持ちながらこんな色恋に惑わされてるなんて、この頭脳腐って使えなくなっちまってるんじゃねぇか?まあ、今は勉強に集中しろとしか言えねぇよな。
『俺は大丈夫だ。どんな紗愛花であろうと絶対に好きでいられる自信がある。だから今は勉強に集中してくれ。まずは関係を認めてもらわないとはじまんねぇからな』
『ありがとう零助君、少し気持ちが楽になったよ。じゃ、今日の学校頑張ります!』
早っ、送って数秒しか経ってねぇよ。女子は超速で返信打つって玲太から聞いてたけどほんとだったんだな。紗愛花と俺の関係を生徒会長に認めさせて、その後で決めよう。まあ、今中途半端に決めて後で狂ったらどうしようも無くなるからな。
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