第21話 零助がいない日の紗愛花
はっ。いけないいけない、寝ちゃってた。えっと今は…11時か。どうしよう。お腹空いてるけど、今から作ってたら食べ終わるの12時ぐらいになりそうだなぁ。それでもご飯は食べないとね。私はキッチンへ行き、料理を始めた。
「♪~」
鼻歌を歌いながら料理をする。しかし、頭の中では零助君のことしかなかった。調味料も入れすぎたり、少なすぎたり、野菜を細かく刻みすぎたり。そんなことをしていても、零助君のことを考えていてしまう。
「はぁ、ダメだなぁ。零助君、大丈夫かなぁ」
零助君は2日と言っていたけど、零助君はテスト大丈夫かなぁ。ああ、零助君、零助君、零助君。大好きだよ。壊しちゃいたいぐらい。零助君がいないと私、壊れそうだよ。早く、早く戻ってきてね。
案の定思考が乱れて料理を作れそうになかったので、家に有ったインスタントラーメンを食べた。お湯の量も入れすぎたりと中々大変だったけど、零助君のことしか頭になかったからなんとも思わなかった。食べ終えてごみを片付け、部屋に戻り、テスト勉強をする。しかし、やはり集中はできなかった。なので私はベッドにダイブし、そのまま就寝した。
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時間が過ぎるのが早かった。華樹ちゃん曰くずっとぼーっとしていたらしい。昼御飯もまともに食べず、昼からの授業を迎え、そして終わる。部活を休み、病院へ向かう。もちろん行くのは405号室。零助君に会いに行くのだ。この時は意識がしっかりしていた。
「零助君、こんにちわ」
「ん、ああ紗愛花か、見舞いに来てくれたのか?」
「うん。でも」
そう言って零助君の指と腕を見る。普通に携帯を触っている。
「大丈夫そうだね」
「まあな。明日の昼頃には退院できると思う」
「そっか、じゃあ」
「迎えに来るとは言わないでくれ」
「何でわかったの?!」
「わかるよ。でもとりあえずは一人で帰るから、授業をちゃんと聞いといてくれ」
「でも」
「でもじゃない。これは俺たちの交際を生徒会長に認めさせるためでもあるんだ。だから頑張らないといけないんだ」
「うん。わかってるよ」
「多分今日俺のことを考えていて授業全く聞いてなかったりして」
「アハハ、やっぱりバレてるか」
「ちゃんと集中してくれよ?生徒会長に認めさせるにはテストで点を落とすどころか上げとかないといけないし」
肝に命じよう。そう思った。しかし、生徒会長も零助君と関わろうとしている女子の一人だし、早めに消しておいた方がいいかな。
「そうそう、制服のままだけど家に帰らなかったのか?」
「うん。そうだけど?」
「こんな時間から来てるんだから部活休んだんだろ?一回帰ってから来いよな」
「今度からそうします」
「今度がないと良いんだけどな」
あっ、零助君と話す内容がなくなった。どうしよう。そう思っていると
「よーう零助、見舞いに来たぞ…って彼女がもうきてんじゃねぇか。くーうらやましいねぇ」
「渡邉、ここが個室でも扉開いてるんだから静かにしろよな」
「そうよ。しかも彼女と二人っきりなんだから邪魔しちゃ悪いでしょ?」
「そう言うわけでもないんだけどな。んでどうした?お前らも見舞いか?」
「一応明日の連絡を届けに来たけど。元気そうだね」
「ありがとう高実さん」
高実!?あのなかむつまじそうなメールを送っていた人じゃない!以外と綺麗じゃない!そう思うと高実は私に近づいてきて耳もとでこう囁いた。
「零助君は今あなたに夢中だけど、少しでも零助君の心が揺らいだら私が取るからね」
と。背筋がぞくっとした。そして同時に怖くなった。零助君が私を想う心が揺らいだらとられてしまうと。
「それじゃ私たちはこれで。行くよ海人!」
「へい!姉貴!」
「あんたどうにかした方が良いわよ、その性格」
「わかりましたぜ姉貴!」
「だまっとれ、じゃあな」
「ありがとな、高実さん。渡邉」
ガラガラと扉が閉じられ二人が居なくなり、また二人になる。すると私の不安が爆発する。
「零助君、私を見捨てないよね」
「見捨てるわけないじゃねぇか。どうした?」
「でもそれは今の話でしょ?一年後、二年後、三年後はどうなるの?」
そう言ってベッドに寝ている零助君にのしかかるようにして問いただす。
「そんなもん見捨てるわけないじゃないか」
「そんな上っ面の言葉だけじゃダメ。もっと、もっと何か残してくれないと」
そう言うと零助君はキスをしてくる。
「これじゃダメか?」
「ダメだよ。私、零助君に何回もキスされてるもん」
「じゃあどうすれば良い?」
「じゃあ、私の指を舐めて?」
「お安いご用だ」
零助君は私の手をとり、指を舐める。私はそれに感じてしまった。
「ん、もうこれでいいか?」
「まだ、まだだよ。もっと!もっともっと!!」
「失礼しま………すいません部屋間違えました」
「いや華樹君合ってるよ?!いや合ってないのかもしれないけど零助君のお見舞いに来たならここであってるから!!」
「…なにやってんの?」
「愛の確認」
「すいません、とりあえずキモいんでやめてもらって良いですか?」
「はーい。紗愛花」
「う、うん」
私は正常になり、自分のしていたことに恥じらいを覚える。
「はぁ、状況の説明を」
「はぁーーい!みんなの玲太君ただいま参上!」
「…あんた、病院では静かにしなさい」
「はい。すいませんでした」
さすが華樹ちゃん。玲太君のボケを正論で黙らせた。
「もういいや。紗愛花、テストの自信は?」
「んもうバッチリだよ」
「そうか、それじゃあ安心して寝れるわ」
「華樹ちゃん心配してくれてたの?」
「当たり前じゃん。今日の紗愛花、魂抜けた人形みたいだったわよ」
「なんだって?それはヤバイな。授業を俺は受けてないから授業で出てくる言葉は自分で書いてきてもらわないといけないんだけどな」
「そんなこともあろうかと私もやってきたわよ」
「さすが華樹ちゃん」
「誰のせいだと思ってるのよ」
そんな感じで会話が進む。私達は面接時間ギリギリまで喋っていた。
「あー、元気でた」
「玲太、あんたこっちでしょ」
「んあ、そうだぜ。じゃあな」
「またね玲太君」
玲太君と別れて数分後、
「んで?何であんなことしてたわけ?」
「うっ、それは」
私はあれをするまでの経緯を話した。
「へぇ、高実がねぇ」
「うん。私、怖くなってついあんなことを」
「その癖、直した方がいいよ。零助君は気に止めてないみたいただけど」
「うん。私、頑張る!」
「その意気だよ。じゃ、私はここで」
「うん。バイバイ」
そう言って華樹ちゃんとも別れる。私は自分の家に帰り、自分の部屋に行き、そのままベッドにダイブ。そして私は今日したことを振り返っていた。
「ふふっ、零助君の口の中、暖かかったなぁ」
はっ、いけないいけない。この癖を直さないといけないの!そう思っていると睡魔との格闘が始まった。疲労がたまっている私の体は睡魔に勝てるわけがなく、そのまま眠りに落ちてしまう。
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