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第20話 零助の状態

ガラガラと扉が開き、紗愛花が入ってきた。良かった、無事だったんだな。


「零助君、彼女さんが来たみたいなんで私はこれで」

「いつもありがとうございます」


ペコリと一礼して、先生は出ていく。入れ変わりで紗愛花が入ってきた。開いた扉の奥では玲太が手を振っている。あいつ、煽ってんのか?まあいいや。パタンと扉が閉まると俺は椅子に座った紗愛花に喋りかける。


「玲太から大体聞いた?」

「うん、聞いたよ。零の話でしょ?」

「そうだ。だけどとりあえず零が出るまでの状況を説明してくれないか?」

「良いけど、もしかして思い出せないの?」

「零が出る時、その原因となったものとそれに関連のあるものが思い出せなくなる」

「そうなんだ。じゃあ説明するね」


紗愛花は零が出るまでの状況から、それから俺が気絶したあとまで教えてくれた。なるほどね。そういう事だったんだな。


「多分俺は良い体を持っているのに、それを使いこなせない自分に絶望でもしたんじゃないかな」

「そうなんだ」

「確証は無いけどね」


しばし沈黙する。んー、何か話題話題。


「あっ、林崎どうなったんだ?」

「知らない。さっき言ったように警察に連れていかれたところまでしか知らないの」

「そっか」


また沈黙が続く。ふぇぇえ。どうしようこの空気に耐えられないんだけど。


「ねぇ零助君」

「どうした?」

「全治までどのくらいかかるの?」

「2日ぐらいだと」

「玲太君の言った通りだ」

「あいつの予想は九割ぐらい当たると評判なんだぜ」

「凄いね」


そう言いながら笑ってくれた。よし、このペースこのペース。


「だからテストに間に合うんだ。良かったよ。勉強の成果はなるべく早く見たいからね」

「そう?私は先伸ばししたかったなぁ」

「えー、早く見たいよ」

「…零助君」

「なんだ?」


そう聞くと紗愛花は俺にキスをした。


「好きだよ。大好きだよ。狂っちゃうぐらい大好きだよ」

「俺も好きだ。その気持ちは紗愛花よりも上だぜ」

「私の方が上だよ」

「俺の方が上だぜ」

「私」

「俺」

「私」

「俺」

「わた…」

「すいません。バカップルぶりを見せつけられるのに耐えられなくなって出てきました。玲太でございます」


バカップルって言われるとなんか恥ずかしくなってきた。


「おう玲太、どうした?」

「お前そろそろ紗愛花さん返さないと。外見てみろよ、真っ暗だぜ?」

「それもそうだな。送ってくれるか?」

「もちだぜ、大事な親友の彼女に何かあったら困るからな」

「もうそんなことは無いと思うんだけど」

「わかんないぜ?林崎が逃げてきて紗愛花さんを探してるかもしれないじゃないか」

「すごい執念だな。だが、危険なのは変わりないな。紗愛花はかわいいから、誰かに連れ去られたりするかもしれないしな」

「もう、零助君たら」

「…まっ、とりあえず送ってくから。さっさと帰った方が良いぜ。不審者とかいるらしいし」

「そうだね。またね零助君」

「ああ、またな」


紗愛花と玲太は病院から出ていった。俺も一緒に帰りたいなぁ。


――――――――――――――――――


こちらでも沈黙が続く。玲太君は一言も発しない。私は話しかけてみる。


「あの、玲太君」

「ん?どした?」

「えっと、零助君ってなんであんなに頭良いのかなぁって」

「んー、何でなんだろうな。多分零助が持つずば抜けた映像記憶力と計算能力、あと異常な思考をしていることだと思うぜ」

「はぇえ。私たちじゃ追い付けないだろうね」

「いや?頑張って努力すれば追い付けるかもね」

「そうかな」

「そうだよ、だって俺、あいつに勝ったことあるもん」

「え?!」

「あいつにクイズで勝負を挑んで僅差で勝ったんだ。最後の方になると負けれなくなってきてヒヤヒヤしたが、何とか勝てたぜ。凡人が天才に勝つ瞬間だ」

「うおぉ。凄いね」

「ああ、そんときは歓喜のあまり外まで飛びだ…」

「やっと見つけた。ハァハァハァ。紗愛花、やっと見つけたよ」


私たちの目の前に林崎君が現れた。警察に拘束されてたんじゃなかったの?


「っ!林崎か、下がってくれ紗愛花さん!」

「う、うん」

「てめぇ、邪魔なんだよ!さっさと退け!じゃねぇとお前もぶっ刺すぞ!!」


林崎君は血のついたナイフを取り出す。隠し持っていたのかな。林崎君の服をよく見ると、血がついている。ひょっとして警官の人達を刺し殺してきたんじゃ…。その想像をすると私は気分が悪くなって、よろめいた。


「どうしたんだぁ?紗愛花ぁ。俺が来てくれて嬉しくなって意識が遠退いたのかぁ?今すぐ迎えに行くよ。その邪魔なやつを殺してなぁ!」


林崎君はナイフを握りしめ、玲太君に向かっていく。


「危ない!玲太君!!」

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「…こいつ気がおかしくなって記憶飛んだのか?」


そう言うと玲太君はすっと林崎君のナイフを避け、ナイフを持つ腕を掴み、


「せいやっと」


軽々と一本背負いをした。体格からして60kgはあるだろう林崎君を玲太君は軽々と投げた。


「玲太君凄いね」

「あんがとな。とりあえずこいつをどうするか…」


すると警察がライトを照らして向かってきた。林崎君を追いかけてきたんだろう。


「ちょうど来たな。おーい、おまわりさーん。こっちでーす」


警察が来て、林崎君をさっきよりもっときつく拘束して連れていった。もう二度と来ないでほしい。さすがにもう無理。生理的に無理とか言うやつかな。


「そんじゃ行きましょうかって、もうすぐそこだね」


玲太君が指差す方向には私の家があった。


「そうだね。ありがとう、玲太君」

「良いって、それじゃあまた明日」

「バイバーイ」


私は玲太君に手を振ると、すぐに家に入る。さっきみたいな事があったらダメだからね。扉を開けて入って、すぐさま鍵を閉める。靴を脱いで自分の部屋に入りベッドにダイブする。零助君大丈夫そうで良かったなぁ。

誤字脱字、文章でおかしな所があれば報告を御願いします。

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