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第2話 帰宅とその夜

「はい、いいですよ」

「い、良いんですか?」

「いいですよ?」

「俺、いっつも授業とかサボってますよ?」

「知ってますよ。この学校内でその事知らない人の方が少ないですよ?しかも私、実際に見てるもん」


見られてたのか…恥ずかしいな。


「信じれないの?もう一回言いましょうか?私はあなたの告白にOKしました」


俺の体がぷるぷる震えた。やった!初めて彼女ができた!そう思い、喜びを声に出して叫ぼうとしたその時、


「ひゅーひゅー、良いねぇ良いねぇ、青春してるねぇ」

「お前!」


校舎の三階の窓から玲太が見ていた。


「何でいるんだよ!」

「親友の告白の瞬間を見ないわけないだろ」


こいつ、何で知ってんだよ。あのとき廊下には誰も居なかったのに。


「んじゃあ、今からそっち行くわ」


そう言って窓枠を越えて、壁のくぼみを使って玲太は降りて来ようとする。


「危ないよ!」

「大丈夫ですよ、あいつあれが日常茶飯事ですから。最悪落ちてきても俺が受け止めるんで」


玲太は壁をひょいひょい降りて来る。そしていつの間にか地面に降りて来ていた。


「改めましてこんにちは、えーっと…」

「紗愛花です」

「そう!紗愛花さん!いやぁこいつ、結構めんどくさいんですけど大丈夫ですか?」

「おい、何の心配してんだよ」

「もちろん大丈夫です。この人に難があるのはなんとなく察してますから」

「そうですか、なら安心です。それではごゆっくりお楽しみください」


そう言って玲太は一階の窓から中に入った。


「お前大丈夫か?その上履き、土で汚れたままだけど」

「だいじょぶだいじょぶ、どうにかなるさ」

「どうにかなるって……はぁ」

「んじゃあな零助、また明日!」


そう言って玲太は走って行った。しかし、くるっと向きを変えて戻ってきた。


「零助、部活休むって顧問に言っとくな、それじゃあ本当に頑張れよー」

「ちょっと待て何で部活やす……」


全部言う前に颯爽と帰っていった。


「あいつ…」

「いい人じゃない」


そう言って彼女はクスクスと笑う。


「あの、今日部活はあるんですか?」

「あるわ」

「あるのかぁ」

「あるけど休むわ」

「えっ?」

「私、新しい彼氏とおしゃべりしたいもん」


と笑顔で言う。可愛い、とてつもなく可愛い。この笑顔のためなら命を差し出せるぐらい可愛い。


「どうしたの?顔赤いよ?」

「いや、あの、笑顔が可愛くて…」


あっ、しまった!言葉に出てしまった!彼女は一瞬キョトンとして、


「フフフ、面白いことを言う人ね。それじゃ、一緒に帰りましょ。もちろん手を繋いでね?」

「う、うん」


そうして俺は初めて女子と手を繋いで、帰路に就いた。家につくまでずっと喋っていた。趣味とか、小学校や中学校はどこかとかを。同じ中学なのはビックリした。こんな可愛い人を見落とすとは思えない。遠目で見ても俺は惚れてしまったのだから。中学の話になると彼女は少し静かになる。何かあったのかな?俺はその話題には触れないようにした。そうして俺の家に着いた。案外家が近かったらしい。俺の家から4軒ほど先だった。何で会わなかったんだろう。そう思考しつつ、連絡先を交換して彼女と別れ、家に帰った。


案の定、家には誰もいない。俺の親は離婚し、母は俺を女手一つで育ててくれた。母は仕事上家に居るのは年に数日。なのでいないのは当たり前だ。俺は制服を着替え、風呂に入り、部屋着に着替えてベットにダイブする。そして携帯を触る。その中には橋上紗愛花と書いてあるアドレスがある。思わず顔が緩む。嬉しい、嬉しすぎて枕をバシバシと叩いている。


『よう零助、お前今頃風呂入って、部屋着に着替えてベットにダイブして、枕か何かバシバシしてただろ』


と唐突に俺のしてたことを見抜くメールを玲太が送ってくる。ここまで読まれるとキモい。


『お前は占い師か何かかな?』

『いやいや、親友であるお前の行動ぐらい大体予測できるわ。嬉しすぎて枕でも叩いてたんだろ?』


ほんと怖い、俺のする事全部見抜かれてそう。


『もちろん全部は見抜けないぞ?』

『お前怖いよ。寒気するよ、そこまで的確に読まれてるとな』

『よゆーよ、こんなもん』


こんな感じで始まったメールのやり取りを午後7時ぐらいまで続けていた。


『そろそろ飯作らないと』

『俺が作りに行ってやろうか?』

『一人で作れるわ!』


そう送って、部屋着のポケットに携帯を入れて、俺は料理を作るためにキッチンに向かった。すると、


「ピロン!」


とメールの音がする。また玲太かと思い携帯を見ると、そこには「橋上紗愛花」と書いてある。俺は慌ててメールを見た。それには


『今、電話してもよろしいですか?』


と書いてあった。俺はすぐさま『はい、大丈夫です』と送った。すると、10秒も経たずに電話がかかってきた。


「はい、もしもし」

「あっ、紗愛花です」

「な、ななな何でしょう?」

「今度の土曜日、空いてますか?」

「はい!空いてます!」

「あの、一緒にショッピングに行きませんか?」

「?!そりゃもちろん、行きますとも!」

「そう言うと思ってました。詳しいことはまた明日お伝えします」

「は、はい。それじゃ、バイバイ」

「フフフ、バイバイ」


プープープーと電話が切れる。これってデートの誘いじゃないか!?ああああ、嬉しい!嬉しい!!と俺は壁に頭をぶつけている。そんなとき、「ピロン!」とまたメールが来た。


『お前、大丈夫か?なんで壁に頭ぶつけてるんだよ』


と玲太から送られている。


「お前は俺のことなら何でもお見通しなのか?!」


つい声に出してしまった。でも、こいつのメールのお陰で正気に戻れた。さて、そろそろ飯作りますか。そうして俺は料理に取り掛かった。


――――――――――――――――――


はあああああ!格好いいよぉ!零助君!気が狂いそう!声めちゃめちゃイケボじゃない!電話越しでも格好いいのがつたわってくるぅ!だめだめ、正気にならないと。そんな中でも頭の中で告白の言葉がよぎる。ダメダメ、正気に戻れない!私は足をバタバタさせる。


『あんたは好きな人のことで頭一杯になるんだから、正気に戻ってさっさと勉強しなさい』


と大親友、島坂(しまざか)華樹(はなき)ちゃんからのメールだ。さすが、私のことをよくわかってるぅ!


「『わかってる、今からやります。』、送信っと。無理だよ華樹ちゃん、零助君かっこよすぎるんだもん」


また私は足をバタバタさせる。ずっとバタバタしてそうだなぁ。


『こんなの言わなくてもわかってると思うけど、前の彼氏みたいにならないようにしなよ?』


そう送られてきたメールを見ると私は正気に戻る。忘れていた訳じゃない、ただ今度はそうならないと思い込んでいた。だけどいざ考えてみると、同じになる可能性はあるんだ。そう思うとさっきまでのテンションはだだ下がりになる。


「『わかってるよ、忠告ありがとう』っと。私もわかってるよ?今度はあんなことにはなっちゃダメだって」


そうして私は勉強机に向かい、勉強を始めた。

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