第19話 零の誕生 その3
零助は全治1ヶ月半だと言われた。体が完璧にできてない状態で骨折してしまったからな。ちょっと長引くが仕方ない。
「それで?玲太君は僕の人格をどう思ってるの?」
「見た感じだと暴れるのが好きなやつみたいだった。もし不意に出てきたら周りのものを壊したりするかもな。下手すれば人に危害を加えるかも」
「こんな状況の体を動かせるから、休んでても危険があると思うんだ」
「ああそうだな。とりあえずは気を付けろとしか言えない。出てくる条件がわからない以上下手に動いちゃいけないしな」
「僕のことにこれだけつきあってくれてありがとう」
…感謝された。初めて人から感謝された。
「あっ、ああ。どういたしまして。それじゃあな。」
「うん。またね」
俺は家に帰った。6時頃だったので家についたら親にどやされた。事情を説明し、怒りを抑えてもらう。
「はぁ、そう言うことなら仕方ないね。ご飯できてるから食べなさい」
「はーい。それとさお母さん」
「まだ何かあるの?」
「無理を頼みでお願いするけど、俺に合気道を習わせてくれない?」
「うーん…素行が悪くなかったら良いわよ」
「よっし頑張ります」
俺はさっさと飯を食い、部屋に行って勉強を始める。頭が良いだけではダメだけど、ちゃんと勉強しとかないとな。
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俺は毎日零助の見舞いに行った。そして一緒にどういう条件で零が出るのか等を話し合った。ある時零助は「僕が僕自身の何かに絶望したとき」と言った。話を聞くと可能性は高かったものの、確信までにはいけなかった。
そうして零助は退院し、無事歩けるようになった。そして半年ぐらいが経つと、とある騒動が起きて、俺の前で零が出てきた。俺は零が暴れないように騒動を止め、聞いてみた。
「お前の出てくる時は零助はどういう状況なんだ?」
「あー、そうだな。なんか落ち込むって言うか、自虐してるって言うか」
「自分の力に絶望してるってことか?」
「そうそう絶望!そんな感じだよ。にしてもお前俺が暴れるの止めやがったなぁ。おかげで暴れられなかったじゃねぇか」
「そうしないと面倒なことになるんでな」
「へっ、そうかよ。じゃあな、また会えることを楽しみにしてるぜ」
そう言うと零助は倒れる。前と一緒だ。そして零助は目を覚ます。俺は聞いた話を零助にする。
「やっぱりそうだったか」
「じゃあ今度から絶望しないようにしないとな」
「ただ、別の条件で出て来るかもしれない」
「そうなんだよ。警戒が怠れないな」
零の出現は騒動が起きなくてもたまに出てくる。半年、一年とその出てくるまでの間は回数を重ねるごとに長くなっていく。たまに騒動が起きて出てくる。それを頑張って俺が止めるが、暴れてしまうので怪我をする時があった。その度にあの先生にお世話になった。
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「結構雑に説明したけど、理解できた?」
「うん。なんとかね」
まさか零助君にそんな過去があったなんて。
「そ、それで今回零助君は全治までどのくらいかかると玲太君は思ってる?」
「んー、全治2日ぐらいかな」
「ふ、2日!?」
「うん。あいつの体がそのリミッターを外す行為に体が変化してきてな。そのリミッターを外すのになれてきたんだ」
「へ、へぇ。すごいね」
「まっ、先生に聞かないといけないからどうなるかはわからないけどねぇ」
ヘラヘラ笑いながら玲太君は言う。多分玲太君もなれてしまっているのだろう。零助君が入院するのに。私はまだまだなれないな。いやいやいや、なれちゃダメだよ!
「んっ、そろそろ着きそうですよ」
見ると交差点を二つほど行ったところにある。
「零助、テスト前までに治れば良いですけどね」
また、玲太君は笑う。いつもこんな風なのかな?それとも私を元気付けようとしているのかな?そんなことを考えていると病院に着いていた。玲太君は受付に行って部屋を確認する。
「405号室だってさ」
「それじゃあ行こっか」
私たちはエレベーターに乗って上に上がる。二人きりだ(さっきからずっとだけど)。
「いやぁ紗愛花さん。零助は正義感の強い人だからさ、騒動に首突っ込んで怪我したりするから」
「うん。それはわかるよ」
「そうですか。それなら―」
チーンと鳴るとエレベーターの扉が開く。
「着きましたね、行きましょうか」
さっきの話を問い詰めたかったが、あまり大きい声は出せないのでまた今度聞くことにする。
「ここっすね。405号室」
「そう、だね。開けるよ?」
「俺は入らないんで。また今度来ます」
「?そう?なら入るね」
コンコンとノックをして、私は405号室に入る。
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