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第18話 零の誕生その2

ここは病院。俺は軽傷であったため、零助のように運ばれたりはしなかった。ガキ大将三人組も俺と同じだった。


「お、おい」

「…」

「お前だよお前」

「んぁ、俺か。どうした?」

「零助、どうなるんだろう。入院かな。俺たち取り返しのつかないことしちゃったのかな」

「あのなぁ、お前らいじめてたやつが怪我したりしたからって怯えてんじゃねぇよ。いじめるんならそれぐらい気にかけないぐらいの心がないと」

「うっ、でもよぉ。俺たち怪我しないようにやってたぜ?だから怯えてるんだよ。ああ、母ちゃん父ちゃんに怒られる」

「てめーらはいじめられてるやつの気持ち、考えたことあるか?」

「それは…ないけど」

「いじめてるやつは冗談でも、いじめられてるやつは本気なんだよ。今日よく分かったろ、更正しやがれ。そして真都に謝れ」

「ああ、もう二度としない。こんな怖い思いなんてこりごりだ」


これでこいつらが二度といじめをすることは無くなるだろうな。そしてこれを知ったこいつらは別の人がいじめをしていたら止めるようになるだろうな。そんなことを考えているとガラガラと扉が開き、医者が出てきた。すると真都のお母さんらしき人が先生と話をしている。その姿を見ていると


「君たちも聞きたかったら聞いて良いよ」


と言ってくれた。しかしと医者は言うが、不安で不安でたまらなかったガキ大将どもはすぐに近寄った。当然俺も。


「良いんですか?彼の状態を教えても」

「良いですよ。その子たちの待っているときが、プルプル震えていたんですよ。不安だったんでしょうね」

「お医者さん、零助、大丈夫なの?」

「教えて良いんですね?」

「はい」

「零助君はね、腕、足、指の骨が骨折していたよ」

「骨折って…」


ガキ大将どもの顔が青ざめる。骨折でそこまで不安になるなら、いじめが理由で自殺でもしたらどうしたんだろうな。ガキ大将達はさっき座っていた長椅子に戻る。俺は医者に聞いてみた。


「零助君、骨折するほどのことされていないんですけど」

「?!」

「あくまで顔や腹を殴られていただけで、足や腕、そして指が骨折するってことはないと思うんですけど」

「じゃあやっぱり…」

「何かあるんですか?」

「ああ、子供に言ってもわからないと思うが、脳のリミッターが外れて動いた場合、骨折する場合があるんだ」

「そうですか、その場合痛みはくるんでしょうか」

「アドレナリンというものが分泌され、痛みはないはずだ」

「なるほど。ありがとうございます。面会は可能ですか?」

「ああ、意識も戻っている大丈夫だ…ってそれは親御さんに言う台詞なんだが」

「オーイお前ら、今日は会えないから帰れよ」

「あ、うん。わかった」


3人はとぼとぼ帰っていった。


「何で帰したんだい?」

「…とりあえず零助君に聞きたいことがあるので、入らせてもらってもよろしいでしょうか」

「?ああ、わかった。それじゃあ私はこれで」


そう言って医者はお辞儀をし、歩いて行った。


「すごいね、あんな難しい話についていけるなんて」

「あの、あくまで僕の予想なんですけど、零助君解離性同一性障害、いわゆる多重人格ですよ」

「へぇ、何でそう思うの?」

「それは零助君に聞いて確証を得てから言います」


そう言って俺は病室に入る。ベッドには腕と足にギブスがつけられた零助の姿があった。


「お母さん居たんだ。…何で神山君がいるの?」

「やっぱりか」

「どういうことなの?」


俺は零助と零助のお母さんに零助がいじめられていたこと、それに俺が止めに入ったが返り討ちにされたこと、そして雰囲気が違う零助が出てきたことを話した。


「…解離性同一性障害はある時期の感情や記憶を切り離し、心のダメージを無くすことによる解離性健忘で、切り離した感情や記憶が別の人格になることです」

「へぇ、つまり僕はそのいじめられていた記憶を無くして、君の言う零を生み出したってことだね」

「そういうことだな。飲み込みが早いね」

「そうか、だから僕にはお父さんの記憶が無いのか」

「解離性同一性障害のことを知っていたのか?」

「そりゃね、本読んでたら出てくるんだもん」

「すごい本を読んでいるな。だけどあくまでこれは俺の推測だ。詳しいことは医者に聞いてくれ」

「そっか、ありがとう言ってくれて。僕だけじゃわからなかったよ」


零助はにこっと笑顔を作った。


「…ただな、二つほど気になる点がある」

「一つは多分、零の出る条件でしょ?」

「ああ正解だ。二つ目はな、零がどうやってリミッターを外して動いているかだ」

「リミッターを外すっていうことは僕のこの状態は零がリミッターを外して暴れたからなの?」

「そうだと思われる。零助君、君は意識が戻った時、どんな痛みだったんだ?」

「腕と足と指から同時に激痛が来たよ。まるで一瞬で痛めたみたいだった」

「零の時、ガキ大将を倒した後俺に近寄ってきた。その骨折している足でだ。普通動けないのに」

「アドレナリンが分泌されているということは?」

「考えたが、明らかにおかしいんだ。零から零助君に戻った時、痛みが来た感じだった」

「つまり、零は()()()()()()()()()と言いたいのかい?」

誤字脱字、文章でおかしな所があれば報告を御願いします。

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