第16話 別の零助
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「ふぁぁあ。ねみぃな。ずっと寝てたからなぁ。久々に出てきたんだ。そこのお前、退屈させんなよ?」
「だ、誰?あなた、零助君じゃないでしょ?」
「ん?ああ、俺は零助だぜ?ただしお前らの知る零助じゃあないけどな」
「そ、それじゃあ勝負はどうなるんだ?」
「あ?そんなもん続けるに決まってんじゃねぇか。あくまでも俺は零助だ。体の主導権が切り替わっただけだからな」
零助君(?)は早歩きで林崎君に近づいていく。どんどん近づいていく零助君(?)に気圧されたのか林崎君は後ろに退く。すると
「おやおやぁ?さっきまであーんなに元気一杯に拳を振り回していたのに、今のお前の目からは恐怖しかみえねぇんだけどなぁ?あれれ?おっかしいなぁ。この勝負仕掛けて来たのって誰だったっけ?」
零助君(?)は林崎君を煽っていく。
「おかしいんだけどなぁ?紗愛花を手に入れたいなら後ろに退いたりしたらいけねぇとおもうんだけどねぇ。まさか、戦意喪失?!ああ、じゃあ紗愛花を連れていかせてもらうねぇ?」
「言わせていれば調子に乗りやがって!食らえ!」
林崎君は殴りにいった。零助君(?)は体が当たるぐらいまで近づいていたので、避けれないと思った。
「零助君危ない!」
私はそう叫ぶ。零助君はなんとかぎりぎりで避けた。
「おっとぉ、危ない危ない。ハハッ、その調子その調子」
零助君(?)は嘲笑する。それが気に障ったようで
「この野郎!」
と叫ぶ。林崎君の怒りのゲージがどんどん上がっていくのがわかる。そして冷静さをなくした林崎君は喧嘩をしているみたいに殴ろうといる。さっきまでの何かのスポーツにありそうな殴り方とは違い、ただ零助君を潰すためだけに動いているみたいだ。しかし、型にはまらず色んな方向から飛んでくる拳や足を零助君(?)簡単に全て避けている。
「そうだよ、怒りに任せて殺りに来いよ。まあ全部避けてやるけどな。ハハハハ」
「クソがぁぁぁ!」
挑発されて、怒りのままに力をふるう林崎君をさらに挑発する。林崎君の放つ拳は骨を折りそうなぐらい勢いがある。しかし、そんな拳も当たらなければ意味がない。
「おらおらどうした?当たらねぇぞぉ?命中率下がってきてるんじゃねぇか?もともと当たってねぇか。アハハハ」
「ハァハァ、黙れ!」
「俺を黙らせたかったら、殴ってみろよ。どうせ無理だろうけどな」
「ハァ、クソッ!」
零助君(?)と林崎君は両方、汗をだらだらかいている。しかし、息を切らしているのは林崎君だけである。どういうことなんだろう?
「クソッ、動け!動け!」
林崎君がとうとう倒れた。足がガクガク震えている。
「ちっ、もう終わりか。あーつまんなかった。殴らなきゃたのしくねぇじゃねぇか。あっ、そういや助けなきゃな」
そう言って私の方に近づいてくる。だけど
「クソッ、俺はまだ倒れてねぇぞ!」
見ると林崎君は足を震わせながら立っている。そして拳を構え、いつでも殴れる体勢を整えている。
「まだ立つのかよ。しぶてぇなぁ。ただの喧嘩だったらそっちの方が面白いんだけどな。今回は違うから、さっさと寝てくれや」
零助君(?)はスタスタと林崎君の方に歩いていった。
「はっ、バカなのか?」
「なんとでも言えよ。さっさと来い」
「ならお望み通り一発食らえ!」
殴る姿を見ると全身全霊で殴っているのがわかる。しかし零助君(?)はその拳を手でバシッと受け止める。次の瞬間、バキバキッと音がした。
「ぐあぁぁぁぁぁあ!ああ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「騒ぐなよ。ただお前の拳を握り潰しただけじゃねぇか」
林崎君はそこに倒れ悶えている。どれだけ痛いんだろう。
「なんだよこの紐。固いじゃねぇ…か!」
ブチッと手を縛っていたものがちぎれる。
「あ、ありがと」
「礼は俺じゃない零助に言ってやれ。立てるか?」
「大丈夫」
「そうか、じゃあこっから出るぞ」
零助君はさっさと出口に向かう。私はそれを走って追いかける。
地下室を出て、そのまま廊下を歩いて扉を開け、玄関を出た。外には玲太君がいた。
「おっ、やっとでてきた」
「玲太、後はよろしくな」
「そのつもりだよ。それと俺のことを呼び捨てにできるほどお前と仲良くなった覚えはないんだけど」
「そうかよ。ああ、そろそろだ。ほんとに後はよろしくな」
「分かってるってーの」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「零助君!?」
零助君(?)は叫んで倒れてしまった。
「玲太君、零助君どうしたの!?」
「話すと長いんだけど…」
「待て!」
バン!と勢いよく扉を開け、林崎君が出てきた。手にはナイフを持っている。
「もういいんだ、どうせ捕まるんだから、紗愛花、一緒に死のうよ。アハハ、アハアヒアハアハハ」
「く、狂ってる」
「紗愛花さんが言える立場じゃなさそうだけど、そうみたいだな」
「一緒に死のうよぉ。なあ!」
ナイフを前に出し、私に向かって走ってきた。しかし、ある程度近付いてきたとき、玲太君がナイフを持っている手を思いっきり叩いた。
「アアアアアア!」
見るとさっき握り潰された手でナイフを握っているようだった。よく持てたなと思った。私は苦しみ悶えるのだと思い耳を塞ごうとしたが
「なんで俺を邪魔するんだ。そんなやつらは死ね!死んじまえ!」
そう言って林崎君は玲太君の首を絞めてきた。
「アガッ!」
「玲太君!」
「死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ!」
「アッ、ガッ!」
「林崎君、お願い離して!」
「アハハアハハハ…オゴッ!」
林崎君が急に苦しむ。どうやら玲太君が林崎君の腹を殴ったようだ。
「ガアァァァァ!」
「おー、いていて。ごめんな、俺は零助みたいに甘くないんだよ」
「クソッ!クソックソックソッ!」
そう言うと林崎君はバタンと倒れた。
「れ、玲太君?」
「ああ、絞め殺されそうだったからちょっと殴らせてもらったんだ。さてあの零助の話だったな。とりあえず―」
ウゥーウゥーウゥー。サイレンの音だ。奥にパトカーが見える。
「警察と救急車が来たか。紗愛花さん、また後で話すね」
そう言うと玲太君は零助君を担いでパトカーと救急車の方に向かった。