第14話 林崎
ふいぃぃ。ねみぃや。面白い先生の授業でも集中するとやっぱしねみぃ。
「大丈夫か?部活休んで帰って寝るか?」
「いや、部活すれば眠気も無くなるだろ」
「そうか、じゃあさっさと来いよ」
玲太はそう言うと颯爽と教室から出ていった。ふあぁぁ。俺もさっさと用意して行くか。荷物を鞄に入れて、部活に行くため教室を出る。そして欠伸をしながら階段を下りる。んー、どうしようかな。林崎のやつ。実害がないからどうとも言えないし、そもそもつけてきているという証拠がないんでなぁ。ま、とりあえず帰ってから考えるか。そろそろ靴箱だし。
「うおっと!?」「きゃっ!」
俺はボーッとしながら歩いていたので前方から来ていた女子にぶつかってしまった。
「すんません。こっちの不注意です」
「いえ、私がちゃんと前を向いていなかったからです。申し訳ありません。ごめんなさい、私急いでいますので」
一礼して、その女子は走っていった。謙虚だねぇ。生徒会長もあんなんだったら良いのに。っと部活部活。俺は靴を履き替え、グラウンドに向かう。
グラウンドの更衣室でユニフォームに着替え、出ると部長がミーティングしていた。やっべ、今日は原枚高校との合同練習だった。俺は急いでミーティングをしている方に行く。
「零助ぇ~、今日大事な原枚高との合同練習っつってたよなぁ?なぁんで遅れてきてんだ?」
「えっとですね、靴箱辺りで女子とぶつかってその時に散らばった紙を片付けていて遅れました」
「そんなラブコメみたいなことがあるかぁ!はぁ、もういい。とりあえず練習試合のポジション言うぞ。FW、零助、玲
太。MF、愛崎、亜網、皿島、~、」
へぇ、俺と玲太がFWか。じゃあ完全勝利かな。
「零助、張り切っちゃおうぜ」
「そうだな。本気でやろう。ついてこいよ?」
「こっちの台詞だぜ」
「そこ!何話してる!」
「お互い頑張ろうぜって」
「それは良いが今は喋るな!」
「へーい」
そんなこんなで練習試合が始まり、そして終わった。原枚高校の生徒はへとへとでこっちの生徒はぴんぴんしていた。何故なら俺と玲太で点を取りまくったからだ。点数は13-0。相手は俺たちについてくるのに精一杯で、逆に味方はボールがほぼ回って来なかったので全然動いていない。練習試合のことでうちの部長と原枚高校の部長が話している。相手方の部長は息が上がりきっているな。
「なあなあ零助、ちょっと張りきり過ぎたかな?」
「大丈夫だろ」
「そっか。じゃあな零助。調べるのは帰ってすぐ始める」
「ありがとな」
会話が終わると玲太は思いっきり走っていった。そうだよな。もう6時半だ。暗い。さて紗愛花が待っているのでさっさと行こう。30分ほど待ってもらったのでな。俺が待たすわけにはいかない。さっさとユニフォームから着替え、紗愛花のもとに向かう。
「すまないな。こんな時間まで待たせてしまって」
「んーんー、大丈夫だよ。その代わり」
そう言うと俺の腕に抱きついてきた。
「こうやって帰ってほしいな」
「ああ、良いぞ。それじゃあ帰るか」
「うん!」
俺達は会話を楽しみながら、帰路に就く。そして家が近づいた時、携帯を触っているとある可能性が頭をよぎる。それは今日にでも何か林崎が何かしてくるのではないかというものだった。まあ、家の真ん前まで来ているんだ。そんなことはないだろう。そう思った矢先、
「バチッ!」
っと音がして、紗愛花が倒れる。瞬時に紗愛花を抱え後ろを見る。そこには高伸長で黒いローブをまとっている人がいた。手にはスタンガンを持っていて、フードは顔が見えないぐらい(暗いためでもある)深く被られている。しかし、俺はすぐにその正体にたどり着く。
「スタンガンで紗愛花を放心状態にしたか。一体何がしたい!林崎ぃ!」
「なんだ、やっぱりばれているのか」
そう言いフードを外す。やはり昨日紗愛花に告白していた男子、林崎だった。
「スタンガンで放心状態にして何がしたい?そんなもの教える必要があるのか?」
「くっ、で?どうする?俺も紗愛花の用にするか?」
「ああ、そうさせてもらう!」
そう言って右手に持っているスタンガンを俺に当てようと近づける。しかし俺はその腕を払い、一発顔を殴るため拳を構える。
「何!?」
「一発くらって目ぇ覚ませ!」
「なんてな」
バリッ、っと俺の体に電気が走る。見ると左手にもスタンガンを持っていた。くそっ、確認すべきだった。
「さて、紗愛花は―――行く――て――――――しよ―か―」
ちっ、意識が遠退いていく。ダメだ。もう…無理…だ…。
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「零助!起きろ!」
起きると目の前には玲太が居た。
「林崎は!」
「どこかに行ったよ」
「ちっ!」
「お前が瞬時に俺に電話してなかったら危なかったぜ?何せ車道のど真ん中に放り出されてるんだから」
「ありがとな。それと玲太、調べ終わったか?」
「もちのろんよ」
「じゃあ、紗愛花を連れていった場所の検討は?」
「多分自宅だよ。他にどこもない。どこにも行っていない。監視カメラとかの映像でも、家に入ってそのままさ」
「ほんと、助かるよ。それじゃあ行ってくる」
「ちょっと待て。あいつ、黒帯だぜ?お前じゃ、勝てないんじゃないか?」
「それでも行くしかないんだ」
「そうかよ、じゃあ行ってこいよ。家の住所は送ったから」
ピロンと携帯が鳴る。
「くれぐれも怪我の無いようにな」
「ああ、ありがとう」
そう言って携帯を開いて住所を確認し、俺は走り出した。
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