第10話 雨
「ふぁぁあ」
昼からの授業は眠かった。まあ、みんな集中してるから眠いの俺だけなんだろうけど。俺の席は窓際なのでお日さんの光が当たり眠くなる。零助みたいじゃねぇか。ダメだ起きろ。そう思い、俺は外の景色を見ていた。段々と空模様が悪くなってくる。しまいには雨が降ってきた。結構な強さで。零助、まさかまだ屋上で寝てるんじゃねぇだろうなぁ。
「ん?そういえば」
あいつ、いっつも眠りが深くて無理やり起こそうとしても起きねぇんだった。この雨でも起きてねぇかも。
「どうしたんだ?神山。なにかあったのか?」
「あー……ちょっとお腹がいたくなってきまして、トイレ行ってきます」
「大丈夫か?」
「大丈夫です。一人で行けますんで」
「そうか?じゃあ行ってこい」
階段の横にトイレがあるのでバレずに階段までたどり着けた。途中で紗愛花さんと出会った。…多分俺と同じ考えだろう。俺たちは階段を駆け上がり、屋上への扉を開ける。その先には大雨の中、堂横になって寝ている零助がいた。
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「―け!零助!」
「んー、ん?なんだ玲太か。無理やり起こすなって何度も…って冷た!」
「取り敢えず中に入るぞ!」
「ああ!」
俺達は中に入る扉に向かって走った。
「はぁ、はぁ。うう!寒い!」
「そりゃそうだろうな。大雨警報出てる中、外で寝てんだから」
「そうだな…へくしゅん!」
くしゃみが出た。とても寒い。
「保健室行こっか」
「あ、ああ、そうしてくれ」
玲太と紗愛花は俺を保健室まで連れていってくれた。俺はガチガチ震えながら歩いていた。
「どうしたの…って本当にどうしたの!?びしょ濡れじゃない!」
「説明は後でするので、とりあえず予備の体操服を貸してくれません?」
「言われなくても。はい。体操服」
俺はびしょ濡れの服を脱いで渡された体操服に着替えた(もちろん紗愛花には廊下に出てもらった。結構文句を言っていたが)。
「それで?何してたらこうなるの?」
「まず、彼が有名なサボり魔だってことはご存知ですよね」
「知ってますよ。校内で知らない先生はいないと言い切れるほど、彼は有名です」
「そんな彼は今日、屋上で昼寝してたんです。それで大雨が降ってきたんですが、彼はずっと寝てたんです」
「はぁ、取り敢えず温めるものは」
「大丈夫です。私が温めます」
「へ?何を言ってるんだ?」
急におかしくなったぞ?なんだ?
「私が温めるんだもん!」
き、急に幼くなったな。
「せ…先生…毛布ください」
「零助君!私が温めるって!」
「まあまあ、良いじゃないっすか。一緒に毛布にくるまって温めれば」
「そ、そっかじゃあ大丈夫か」
「はい、真都君」
「ありがとうございます先生…ううう、寒々」
「それじゃ一緒にくるまろっか」
俺は玲太を助けを求める目で見る。しかし、玲太は首を横に振って「無理無理」と言わんばかりのしぐさをしている。
「?どうしたの零助君」
「何でもないよ。温かいね」
俺と紗愛花は長椅子に座って肩を寄せ合い、毛布をかぶる。
「それじゃあ僕は教室に戻ります」
「ああ、ありがとな」
「へへ、良いってことよ」
玲太は保健室から出て、走って教室に戻っていった。
「玲太君、大丈夫かな」
「なんで?」
「だって、私と一緒で零助君を起こしに行ったとき、雨に結構打たれてるんだもん」
「紗愛花もそうなんだけど。まあ、多分大丈夫だと思うぜ。小2の時のだから何とも言えないが、あいつ大雨の日にゴーグルつけて四時間ぐらい外で遊んでて、次の日ピンピンして学校来てたから」
「へ、へぇ。凄いんだね」
「ああ、玲太は免疫力が多分強いから大丈夫だろ」
「そっか。大丈夫だね」
――――――――――――――――――
「へくしょん!あ゛ー誰か俺の噂でもしてんのかな。うー寒!」
俺も保健室で休めば良かったな。授業めんどくさいし、なんか頭ガンガンしてきたし。ま、しゃーねーか。あのカップルの邪魔しちゃいかんからな。俺は階段を上り、教室に向かう。俺が扉を開けると授業が終わったとこだった。
「ずりぃな玲太。仮病使うなんて」
授業が終わってすぐに俺の方に話しに来たのは波味涼介だった。
「うるせぇ、仮病じゃねぇよ」
「またまたぁ、そんないいわけしなくていいって」
「してねぇって」
俺は半笑いで会話を続けていた。そこに華樹さんが来た。
「あんた紗愛花がどこ行ったか知ってる?」
「え?保健室だけど」
「なんで?」
「玲太が大雨の中、屋上で寝てたから、その付き添い?」
「はぁ、なるほどね」
「全く羨ましい限りだ…ゴホゴホ」
くそっ、頭が痛い。咳も出る。きついな。
「あんた大丈夫?ちょっとこっち来て」
「ほいよ来たけど」
「ちょっと動かないでね」
そう言って彼女は俺の額に手を当て、そして自分の額にも手を当てた。
「熱あるじゃん。保健室行きなよ。一緒に行くからさ」
「マジ?やった!女子に看病してもらえるなんて初めてだ!」
「看病するとは言ってない。さっ、行くよ」
俺は彼女に連れられ、保健室に向かった。途中ぐらついたが、彼女が支えてくれたお陰でなんとか着いた。
「失礼します」
「どうしたの?」
「玲太君が熱あるので持ってきました」
「持ってきたって酷い!…って零助と紗愛花さん寝てんじゃん」
紗愛花さんが零助の肩に頭を乗せて。まるで電車の中で居眠りしてるカップルだ(カップルなんですけどね)。
「数分前ぐらいに二人とも寝たよ。それで玲太君、熱と他に何かある?」
「咳と頭痛ですかね」
「どうする?休む?」
「そうさせてもらいます」
「それじゃ、ベッドの用意するからちょっと待ってね」
先生はベッドの用意をし始める。
「それじゃ、戻るわ」
「華樹さん戻るの?」
「そりゃね。あんたを持ってくるのと、紗愛花が大丈夫かを確認しに来ただけだから」
「そっか、看病してくれないのか」
「看病するなんて言ってないって。じゃあね」
そう言うと華樹さんは保健室から出ていく。それから間もなく、ベッドの用意ができた。
「ありがとうございます」
そう言って俺はベッドに入る。しんどかったのですぐに寝付けた。
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