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猫カフェ・シャドミラージュ

猫カフェ・シャドミラージュ

作者: 猫山つつじ

 ここは、猫カフェ・シャドミラージュ。おとぎの国のパティスリーみたいな、かわいくておしゃれな猫カフェです。


 私は、猫スタッフのユキといいます。

 純白のオッドアイで、週末の少しの時間しかここにいないけど、私のいそうな時を狙って来るお客さんも多いんですよ。


 今はスイーツタワー型のキャットタワーの上でごろごろしているところです。

 隣にいる三毛の子はハナちゃんといって、保護猫からここのスタッフになりました。お客さんの一人に気に入られて、もうすぐそこの家の子になるんだそうです。


 私を引き取りたいというお客さんも多いんですが、私は住んでいる家も家族もあって、ここでは短時間だけ外部からの猫スタッフとして過ごしています。なので、引き取りはできないので、ごめんなさいね。


 食事タイムが始まりました。

 人間のスタッフさんが、カリカリ餌をあちこちに置いていきます。ほとんどの子は大喜びで群がっていきますが、私はカリカリが好きじゃないので、マイペースでごろごろしています。

 スタッフさんがキャットタワーにもカリカリを置いてしまったので、クレープ風の猫用ハンモックに移動して、また少しごろごろしました。


 ごろごろするのにも飽きてきたので、こんどは猫じゃらしを持っている二人組の女の子と遊んであげることにしました。

 猫じゃらしの先にキャンディーの形のふわふわがぶらさがっていて、私がじゃれつくたびに女の子たちは歓声をあげてくれます。

 ちょっとだけカメラ目線をしてあげたら、さっそく撮影して、携帯電話の待ち受け画面にして、大喜びでした。


 次に、猫柄シャツの女の人の足もとにあるロールケーキのぬいぐるみに抱きついて、後ろ足で思いきり蹴飛ばしてみました。

 気分がすっきりするので何度も蹴飛ばしていると、女の人はかわいいといって私の写真を撮り始めました。

 私がここでもちょっとだけカメラ目線をしてあげると、女の人はますます喜んで撮影して、撮った写真を友達に送信し始めました。


 それから、イチゴ模様の小さなボールを持っているカップルのところに行きました。

 男の人がゆるく投げてくるボールをバレーボールみたいに打ち返してあげたら、女の人が上手だと言って大拍手してくれて、大盛り上がりでした。


 少し疲れたので、こんどは一人でのんびりしている整った顔立ちの男の人の膝の上で、くつろぐことにしました。服装もきっちりとしていて、人間の世界では、クールな男の人という感じなのかなと思います。

 でもここは猫カフェ、私を膝にのせるとご満悦で、私を撫でながら表情を崩しっぱなしです。

 格好いい姿とは言えませんが、それでいいんです。ここは猫カフェ、癒しを求める人間の集まる場所なんですから。

 膝の上はあったかくて心地よくて、私も癒されてしまいます。ちょっとうとうとしてしまいそう…。


 そのとき、カフェのスタッフの人から、声がかかりました。

「ユキ様、お時間になりました」

「え、もうですか?」

「はい。ご延長なさいますか」

「あ、いえ…」

 財布の中身を考えると、仕方がありません。

「では、一時間半で三千六百になります。」

 私はお金を払ってカフェを後にしました。


 カフェを出た私は、いつもどおりの一人の人間です。

 それなりの出費にはなるけれど、このカフェの中でだけ、私は猫になることができるのです。

「また明日から仕事かあ」

 私はため息をつきました。空はもう暗くなり始めています。

 でも、次の週末にまたここに来るために、明日からの仕事をがんばろうと思うのです。

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